明け方4時。
薄明るくなった南西の空に月が低く浮かんでいました。
満月のよう丸く、そして淡いオレンジ色の月でした。
秋冬のしろがね色の月と違って狂気は感じません。
吸血鬼になる気分でもなく、寝床にもどってまたひと眠り。
「一つ家に遊女と寝たり萩と月」芭蕉
越後の市振、同じ宿に二人連れのあでやかな遊女がいあわせた。
宿に咲く萩を月が照らす。萩が自分で、遊女が月か・・・。
「わたしたち心細く悲しいのです。お坊様の情けかけて、どうぞ仏の恵みを」
朝になって、遊女二人から同行を求められる芭蕉翁。
「わしらの旅は、あちこちへいったり、ひとところで長く泊まったりするでのう」
冷たいぞ、芭蕉翁。功徳が足りない。
暇田翁なら曽良など放って喜んで同行するものを・・・あんたならお呼びではない?
断った芭蕉、しばらく不憫で気にかかった、と記録しています。
遊女の抜け参り。店には無断で抜け出してお伊勢参りに出かける。
越後の新潟から伊勢へ、ただ、ひたすら歩く・・・行き帰り、どのくらいかかったのでしょう。
一生に一度の伊勢参り、店にも功徳があるというので、黙認だったとか。
昔、西行が大坂で一夜の宿を借りた。
中から遊女が出て来て、歌のやりとりで泊める、泊めない・・・。
それですっかりうちとけた二人は夜を徹して語り明かした。
どうやら芭蕉翁、そのことから、この市振の句を創作したらしい。
幻の遊女と萩と月・・・不憫ですなあ。
そんなことを思いながら、いつの間にか眠ってしまいました。