つれズレ愚抄

ズレ：「趣向を凝らした冒頭の構成からそれぞれの糸が撚り合わさって、派手なアクションを絡めつつ漏斗で絞り込むように一気呵成に話が進んでいく展開には一息入れる暇もなく、そう長くはない上映時間がさらにスピーディーに感じられるぜ。
　その分事件の背景だの人間模様だのって方の描き込みについては観客のご想像にお任せってなスタンスも徹底してて、それぞれのエピソードからスピンオフ的なストーリーを連想できる作りは読ませる隙もないほど行間を密着させた代わりに文頭と文末に余白を寄せ集めた按配で、巷間言われるところの余韻とはまた違った趣の余韻が楽しめるようじゃねぇか。
　具体的なディティールを四の五の言うとネタバレにもなるけど、この手の映画のエッセンスを一本にまとめたような印象で、額面通りの暗殺アクションものとして緊迫感に浸るのもよし、現実の出来事に重ねて思索に耽るもよし、細かいアラを探してツッコミを入れるもよしと、存外に一粒で三度おいしい作品だわな」