東近江市糠塚町の国道421号沿いに土の山のような外観の建物がお目見えし、通行人らの視線を集めている。
東近江市内で20年にわたって整体ヨガの教室を主宰する福井千珠子さんが「長年の夢」だったという私設の道場「湖月庵」で、市民らが心身を整える場として親しまれそうだ。
↑写真:中日新聞より
建物は土壁のドーム状で、木造一部2階建て。1階は、洞窟のような静けさと開放感のある畳敷きの道場で、トイレやシャワー室、キッチンを備える。らせん階段で上がった2階は、居住スペースになっている。そばに立つエノキの大木がシンボルだ。
福井さんは会社勤めをしていた20代のころ、ストレス解消のために始めたヨガにのめり込み、会社を辞めてインストラクターの資格を取得。2006年には、思想家の内田樹さんに師事し、合気道も習得した。
東近江市内を中心に2000年から整体を兼ねたヨガ、2013年から合気道の稽古会「澄月会」を開いた。
次第に「自分の拠点がほしい」との思いが強まる中、セトレマリーナびわ湖(守山市)を訪れた際、自然と調和した構造に魅了され、この建築を担当した滋賀県立大の芦沢竜一教授に道場の設計を依頼。同大の学生らの協力も得て、足掛け6年で完成にこぎ着けた。
「五感に響く建築」をテーマに、母親の胎内や、近所にある太郎坊宮、旧陸軍八日市飛行場の掩体壕(えんたいごう)を連想させるドーム形の構造を自ら提案した。滋賀県産の土を使った土壁の表面には、道場の生徒ら30人で空手チョップをして手の跡を付けており、外光や照明の当たり具合によってさまざまな陰影を生む。窓からは建物両脇の田んぼや背面に広がる山々の風景も楽しめる。
整体ヨガ、合気道に加え、ユダヤ系フランス人考案の体操「フェルデンクライス」の普及を見据える福井さん。手本を見せず、言葉を頼りに自由に体を動かしてもらう指導法で、他人と出来を比べず、柔軟性に自信のない人でも気軽に運動できるという。
福井さんは「四季折々の風景や、さまざまな光の入り方があり、生きている建物だと感じる」と完成を喜び、「豊かな自然環境の中で体を動かし、自信を取り戻せる場所にしたい」と意気込んでいる。
5月9日10:00からは、合気道の無料体験会を開く。
問い合わせ: 福井さん=080(3138)7114
<中日新聞より>