滋賀県多賀町の家庭で作られてきた郷土料理を記録し、発信する「YOBISHI(よびし)プロジェクト」。
活動は今年4月に5年目を迎えるが、調査はまだまだ終わりそうにない。代表の龍見茂登子さんは「郷土料理には多賀で生きる知恵がある。その魅力をたくさんの人に知って欲しい」と話す。
活動は今年4月に5年目を迎えるが、調査はまだまだ終わりそうにない。代表の龍見茂登子さんは「郷土料理には多賀で生きる知恵がある。その魅力をたくさんの人に知って欲しい」と話す。
↑写真:中日新聞より
プロジェクトの名称にある「よびし」とは、滋賀県多賀町付近の湖東地域の方言。お正月や法事などの冠婚葬祭の時に、親戚やご近所さんを招き、もてなす「寄り合い」の事を「よびし」と言う。
龍見さんらプロジェクトのメンバーは、よびしの際に振る舞われた料理や、家庭で親しまれてきたおやつを主に高齢者から聞き取り、レシピとして残している。
↑写真:中日新聞より
山菜のイタドリを使った「イタドリ煮」、うどんを酢みそであえた「うどんぬた」、山野で育つサルトリイバラの葉を器として使った「ぼんがら餅」など、これまでに記録した料理は数え切れない。
多賀町内のイベントの際に高齢者に尋ねたり、人づてで情報をつかんだりと、聞き取りのきっかけはさまざまだ。「作り方は集落や家庭で少しずつ違い、それぞれ独自の文化が継承されていたことが分かる。話を聞かせてほしい人はまだたくさんいる」。龍見さんは言う。
香川県出身の龍見さんは、15年ほど前に多賀町で暮らし始めた。地域住民が山菜をたくさん採って冬に備え、保存食として家庭で大量の漬物を作る生活は、故郷では見たことがなかった風景。「多賀らしさ」に関心を持つきっかけになった。
自分にとって珍しいからという理由だけで、記録を進めているわけではない。地域で手に入る食材を使ったレシピが多く、災害などで物流が止まった場合に活用できるとし、「多賀で暮らす中で伝わってきた知恵で、生きる力。それを残すことには意味がある」と力を込める。
プロジェクトメンバーの小島晴香さんは、生まれも育ちも多賀町だが、「龍見さんの話を聞いて、自分が当たり前だと思っていたことにめちゃくちゃ価値があると感じるようになった」。中心メンバーとして活動し、多賀の魅力を“発見”している。
龍見さんたちは、郷土料理作りの体験会を開くほか、食文化やレシピを紹介する「よびし通信」も発行している。懐かしさを感じてもらい、ライフスタイルが変わる中で消えている「多賀らしさ」に関心を持ってほしいとの願いも込めている。
5年目に入るプロジェクト。龍見さんは「郷土の食と人を知ると、多賀の魅力も見えてくる。一緒に多賀らしさを見つけにいきませんか」と呼びかける。
『多賀の 食べるを つなぐ』
販売価格 1500円
販売価格 1500円
発行・販売・問合せ先: 多賀町立文化財センター
TEL 0749-48-0348
E-mail bunkazai@town.taga.lg.jp
YOBISHIプロジェクト
前身の団体を引き継ぐ形で2019年4月から始まった。龍見さんら3人の中心メンバーを含めて約30人で活動している。「よびしの食」は22年3月、歴史と伝統がある地域の食文化の継承を目指す文化庁の「100年フード」に認定された。プロジェクトは、官民共同の取り組みで、多賀町文化財センターが事務局を務める。
問い合わせ: 滋賀県多賀町文化財センター
0749(48)0348
<中日新聞より>