買い物をしてくれた老夫婦を自宅に送った後 近所の壊れかけの建物を見て思い出した。
去年秋に亡くなった夫の兄は美大を出て絵を描いていました。抽象画がほとんどで 私には全くわからない世界でした。
その兄が元気で帰省した時に 古い建物の壁を見て
『この家を壊す時には教えて欲しい、この壁の鉄板が欲しい』と言っていました。
当時の私は『持ち主も知らない、壊れかけの古い家の壁の鉄板になんの価値があるのか?』と聞き流していました。
そして 義兄は去年亡くなってしまいました。
今日その壁を久しぶりに見て その時の義兄の気持ちに寄り添えなかったことに 申し訳なかったと、後悔の念が ふつふつと湧いてきました。
現場で写真を撮りました。



兄が最後に この場面を撮った写真は さすがに芸術家らしく 切り取れば まさに抽象画になりそうな写真ばかりです。






なんだか 兄の抽象画に似ている気がします。
この壁も そのうち朽ちてしまうのでしょう。
人間同様 形あるものは いつかは無くなっていくのです。
もうすぐ兄の初盆です。初の盆、兄を静かに迎えてあげます。