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肉食は心をいやし、うつや認知症を予防する? №195

2013-08-21 15:54:40 | インポート
 肉食は心をいやし、うつや認知症を予防し、幸福感を与えてくれるという記事が埼玉新聞の医療サイエンスのコーナー(8月14日付け)に掲載されていました。
 私たちは、高脂血症や糖尿病、高血圧などを指摘されると、低コレステロールや低カロリーの食品を摂取し、塩分は控えめにし、動脈硬化予防のために低脂肪の食品を摂るように努めます。また、糖質を抑えるためにご飯を減らし、コレステロールやカロリーを心配して、肉や卵の摂取を控えたりします。
 そうすると、例えダイエットがうまくいっても、同時にやる気がなくなったり、うつの傾向が現れるのだそうです。なぜでしょうか。脳生理学や栄養学、発達心理学の観点から次のように説明されるようです。
 肉類には、私たちに幸福感を与え、心をいやす「アナンダマイド」という物質が含まれているのだそうです。コレステロールや肉の脂である「アラキドン酸」は、動脈硬化や血栓の原因になるといわれています。しかし、コレステロールには「うつ予防」の効果があり、「アラキドン酸」には、「心を癒す」効果があるということです。
 「アラキドン酸」が体内に入ると、酸素の働きによって『アナンダマイド』が作られ、私たちに幸福感を与えたり、リラックスさせたり、不安を和らげてくれるのだそうです。さらに、記憶力を上げるということも指摘されているすごい物質で、「至福物質」ともよばれるようです。
 翌週の記事では、「心によい食事の取り方」が紹介されていました。タンパク質は、腸で分解されアミノ酸として吸収されますが、筋肉の修復などによい「身体系のアミノ酸」と、うつを予防したりやる気を起こさせる「心系のアミノ酸」に分けられるということです。心の栄養に良い必須アミノ酸が含まれているとして紹介されていたのが次のような食品です。
 1 心を穏やかにする食品(トリプトファン)   バナナ、ゴマ、里芋、そば
 2 うつ状態を改善する(メチオニン)      しらす干し、きんめ鯛、さば
 3 記憶力や学習能力を向上する食品(ヒスチジン)まぐろ、かつお、さば
 4 やる気を起こす食品(チロシン)       キウイ、竹の子、のり
 
 身体も大切ですが、心のバランスも大事です。心の栄養不足になって、心の病にならないようにしたいものです。食生活はもちろんですが、十分な睡眠や運動、家族や友人も心には欠かせない栄養です。

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「誤った記憶」と「つくられた記憶」 №194

2013-08-07 16:52:01 | インポート
 先頃、理化学研究所脳科学総合研究センターの利根川進センター長らのグループが、マウスの記憶を操作し、実際の出来事とは違う誤りの記憶を人為的に作り出すことに成功したというニュースが報道されました。
 グループはマウスを遺伝子操作し、記憶をつかさどる脳の神経細胞に光をあてると記憶を思い出すようにし、そのマウスを箱に入れて、安全な環境だと記憶させたということです。次に別の箱に入れ、脳の神経細胞に光をあてて安全な環境を思い出させながら電気刺激を与えて不快な気持ちにさせました。再び元の箱に入れると、安全な環境に戻したにもかかわらず、マウスは恐怖を感じる反応を示したそうです。
 このことにより、グループは、安全な環境にいた状態と恐怖の体験が結びつき、記憶が実際の出来事とは違う状態で再構成される「過誤記憶」が形作られることを確認したということです。
 しかし、人間は記憶をつくり出してしまうこともあるのです。アメリカで実際にあった事例では、19歳の女性が父親に性的虐待を受けたと訴えた事件があります。彼女はこう語っています。「セラピーを受け始めてから2年半たつ頃には、自分が父親に2度妊娠させられたと固く信じるようになっていました。最初の妊娠の時には、父親が中絶処置を施し、2度目は自らの手で中絶したのを思い出しました。」
 父親は聖職者だったのです。そのことにより地位を追われましたが、じつはまったく事実無根の出来事で、医療機関が行った検査で彼女は処女であることがわかったのです。他にも、ノースカロライナ州で29人の園児達の証言により、幼稚園の職員7人が性的虐待の罪で告発された事件がありました。しかし、これも後に事実無根であると判明しました。なんと、29人の園児全員が「記憶をつくりだした」のです。
 なぜ、このような「ありもしない記憶」がつくられるのでしょうか。冤罪事件では、警察官の誘導に追いつめられた被告が、無理矢理「記憶」を創作させられるといわれていますが、幼い子どもたちや暗示を受けやすい人々は、先生やカウンセラーなど権威ある人達に対して、真実を報告するよりも、その人たちが暗に求めているような答えをしようと迎合するため、「ありもしない記憶」を語ってしまう傾向があるからです。
 私たちは、「真実」をありのままに記憶するよりも、自分にとって都合のよい「物語」として記憶する傾向にあります。あえて、自分に嘘をつくつもりがなくても過ぎ去った時間は楽しく美しいものでありたいと願う心が、そうさせるのかもしれません。

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心の取扱い説明書「WRAP(ラップ)」について №193

2013-08-05 17:47:09 | インポート
 心の変調に備え、元気を回復するための方法をあらかじめ自分で整理しておく、アメリカ生まれの自己管理方法「WRAP(ラップ)」が8月3日(土)付けの埼玉新聞に紹介されていました。
 精神疾患経験者の知恵を集めた「当事者発」の手法という点が大きな特徴で、心の取扱説明書(とりせつ)づくりにも例えられるということです。
 国内のWRAP普及に取り組んでいるNPO法人WRAP研究会の坂本明子理事によるとWRAPは、「Wellness Recovery Action Plan」 の頭文字をとったもので、日本語では、「元気回復行動プラン」と訳されているようです。アメリカで自分自身が躁うつ病を患ったメアリー・コープランド博士が同様の体験をした人々の調査を基に提唱したものだそうです。
・いい感じのときの自分ってどんな感じなのだろうか?
・調子を崩すかもしれない出来事が起きたらどう対処したらよいのだろうか?
・もし調子を崩してしまったらよいのだろうか?
 その時々の状態にあった対応の仕方を考えておくことで、より早く元気を取り戻し、自分の本来の生き方を送ることを目指しています。
 具体的な「元気回復行動プランの」立て方は、自分の心の状態を6つにわけ、段階ごとに元気になるための方法をあらかじめノートなどに書いておくのだそうです。そうすると、不調になったとき、どのようにすれば元気が回復できるかの手助けになるほか、具体的な備えがあるという安心感が、心の状態を安定させるメリットもあるということです。

<段  階>   <自 分 の 状 態>    <対  応  策>
①いい感じの日常    ・元気がある、おしゃべり  ・散歩する、毎日入浴する
②調子を崩しきっかけ ・仕事のストレスが多い  ・落ち着ける場所で休息する
③注意信号  ・酒の量が増える  ・スポーツをする
④調子の悪化 ・怒りを抑えられなくなる  ・親しい友人に慰めてもらう
⑤助けが必要な不調 ・ベッドから起きあがれない  ・医療機関を頼る
⑥不調を脱した ・食欲が出てきた ・無理せずにできることをやる

 この心の取扱説明書のポイントは、「自分のことを一番よく知っているのは自分自身であるから、自分の元気をつくる責任も自分である。」という自己管理の考え方に基づき、自分自身プランを作るところにあるようです。

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やせてる人の方が飲酒による糖尿病リスクが高い? №192

2013-08-01 15:40:13 | インポート
 先日の日経新聞(7月28日(日))に飲酒と糖尿病に関する記事が掲載されていました。飲酒は糖尿病の発症を増やすものと考えがちですが、記事によると、日本酒換算で一日1~2合までのアルコール摂取は、血糖値を下げインスリンの作用を高め、むしろ、糖尿病リスクを軽減するというのです。アルコール好きの人にとっては願ってもないニュースではないでしょうか。
 ただし、このコホート研究は欧米からの報告で、日本人の場合、もともとインスリン分泌能力が弱いため、むしろ、飲酒によって膵臓がインスリンを分泌する能力を低下させ、慢性的に血糖が高まり糖尿病となる危険が高いというのです。
 特に、BMIが22(標準体重)以下のやせ形の男性で、一日1~2合飲む人の糖尿病発症割合は飲まない人の2倍、一日2合以上飲む人の場合は3倍の発症リスクに達するというのです。
 では、BMIが22をオーバーしている人はどうなのでしょうか。じつは、標準体重をオーバーしている場合には、一日のアルコール摂取と糖尿病発症のとの間に明確な関係は認められなかったということです。こと糖尿病に関しては、やせている人よりも肥満傾向の人の方が、アルコール摂取によるリスクが少ないようです。日頃ダイエットを気にしている人達にとっては朗報かもしれません。
 もっとも、毎日2合以上飲酒した場合、ガンや脳卒中、高血圧症、脳の萎縮、うつ病等様々なリスクが飛躍的に高まるということですから、ほどほどに嗜むことが大切なようです。
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母親との関係に苦しむ人たち №191

2013-07-07 14:08:24 | インポート
 私たちは、「母親というのは無条件で我が子を愛してくれる」ものだという神話を、無意識のうちに持っているものなのかもしれません。だからこそ、その愛情が自分に十分に降り注がれていないと感じたり、愛されていないと感じたりすることによって深く傷つき、時には憎しみさえ抱くようになるのではないかと思います。
 かつて(1979年)愛知医科大学教授久徳重盛氏の著書『母原病 ~母親が原因でふえる子どもの異常~ 』(サンマーク出版)という本がベストセラーになりました。久徳教授は母原病を次のように定義しています。
 「ぜんそくや胃潰瘍の子、熱を出しやすい子などの症状と、家庭内暴力ややる気のない子などの症状とは、表面的に見た 現象は異なりますが病根は同じなのです。いずれも親の育て方の誤りに原因があり、子どもの心身形成・人間形成にひずみができ、その結果、子どもたちに病気や異常があらわれたのものです。育児の中心的役割を果たすのはやはり母親なので「母親が原因の病気」という意味で、私たちは「母原病」といっています。」
  しかし、この考え方は、子育てを母親に押しつけている父親や社会構造に責任はないのかという批判にさらされ急速に説得力を失っていきました。
  「母という病」(ポプラ社刊)を書いた精神科医の岡田尊司先生はもちろんそのことは十分に承知しているものと思います。 久徳教授のように、「母親の育て方」が原因とは書かれていません。母親との関係による影響を次のように指摘しています。
 「幼い頃、母親からよく世話をされ、愛情を注がれて育っていれば、母親との関係は安定したものになりやすい。しかし、不幸にして、母親が他のことに気を取られたり、さまざまな事情で幼いあなたに、気持ちや手をかけることができなかったりするとその関係は不安定なものになりやすい。そして、体や脳や心を形作るかけがえのない時期だけに、その影響は、対人関係の持ち方やストレスへの敏感さ、子どもや異性の愛し方、精神的健康のみならず、身体的健康や寿命、老化の速度にまで影響を及ぼす。」 つまり、母親との愛着関係が十分でなかったことが、境界性パーソナリティ障害や摂食障害、うつや不安障害など、心の病や生きにくさを感じている人たちの原因であるといっています。
 母親もまた、生身の人間ですから、過度に子どもに干渉したり、自己愛的で子どもに興味をもてなかったり、別れた夫に似てくる我が子に複雑な気持ちを抱いたり、育てやすい子とそうでない子を無意識のうちに差別したりしてしまうのは、仕方のないことです。母親自身の生育歴や結婚生活の様々な要因も子育てに影響してくるのも当然です。
 それでも私たちは心のどこかで、無条件で自分に愛情を降り注いでくれる母親幻想を持っているからこそ、「母という病」が存在するのかもしれません。
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孤独でいられる能力 №190

2013-06-17 22:10:59 | インポート
 「孤独」は独りでいる状態のことで、「孤立」は人とのつながりが切れている状態のことを言います。孤独は自ら選ぶことができますが、「孤立」は自ら選んだわけではなく、集団から切り離されてしまっている状態です。
 「孤独」ではあっても、いざとなれば、誰かが駆けつけて援助の手を差しのべてくれる状態にあるとき、人は孤独であることに耐えることができますし、むしろ孤独な状態を心地良く感じる場合もあり、「孤独」な時間を求める場合もあります。
 しかし、「孤立」というのは、たくさんの人に囲まれていながらも、誰ともつながりがない状態ですから、望まないのに「孤独」な状態にさせられ、なかなか耐え難い苦しさがあるものと思われます。「孤独」が「孤立」に移行することはあっても、「孤立」から「孤独」に移行することはありません。私たちは、「孤立」を怖れる一方で、「孤独」に耐えうる能力の程度に応じて他者を愛することができるとも言われています。
 では、孤独でいられる能力、独りでいられる能力とはどのように培われるものなのでしょうか。「ひとりでいられる能力」というのは、イギリスの児童精神科医のウィニコットが、幼児と母親の行動を観察することから発見した能力です。「怖くなったらすぐ母親が助けに来てくれる。母親のところへ戻れば自分は安全である。」これを基本的信頼感といいます。この基本的信頼感があるからこそ幼児は、親が何をしているかには注意を払わず、「ひとり遊び」が出来るようになって行くのだということを発見したのです。
 つまり、人間に対する信頼が根底にある人が、孤独に耐えられる能力があるわけなのです。見かけは、独りでいる状態でもその気になれば、親しい人や仲間とつながっている状態にあるとき、人は「孤独」ですが「孤立」はしていません。だから耐えることができるのです。しかし、見かけは、大勢の人と一緒にいても、心のつながりがない場合は、「孤独」ではないかもしれませんが、「孤立」しています。「孤立」は一種の「ひきこもり」状態です。周囲の人に心を開かないとなかなか「孤立」状態からは抜け出せません。「孤独でいられる能力」は、「他者に依存しない生き方」でもあります。
   私は私のために生きている
   あなたはあなたのために生きている
   私はあなたのために生きているわけではありません
   あなたもまた私のために生きているわけではありません
   私は私
   あなたはあなた
   けれど私たちの心がたまたま触れ合うあうことがあれば
   それに越したことはありません
   たとえ心が触れ合うことがなくても
   それはそれで仕方のないことです
             (フレデリック・S・パールズ「ゲシュタルトの祈り」)
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若者は本当に「下流志向」なのか(2)~労働からの逃走~ №189

2013-06-05 16:32:45 | インポート
 若者は消費行動の原理を労働に当てはめ、自分の労働に対して賃金が少ない、十分な社会的威信が得られないことに不満を感じ、努力した分だけ金をくれと、努力と成果の相関を求めています。それが認められないと、賃金が少ないと言って、労働から逃走してしまいます。その考え方の中には、設備投資や利潤を生み出さなければならないという企業体の概念が欠落していると、著者はいいます。
 最小の貨幣で最大の満足を得たいというのが、消費社会のルールです。自分を消費者という立場におけば、自分の労働に見合った対価が得られないと感じればやる気を失ってしまいます。そのため、周囲の人達と円滑な人間関係を築こうとはせず、仕事の質を上げる努力もしません。必然的に人事評価が下がります。すると、若者は職場や環境に不満を感じ、「ここ以外に、もっといい場所があるはずだ。」「自分の能力を発揮できる場所があるはずだ。」と、理想の場所を求めて転職や環境の変化を繰り返す”青い鳥症候群”に陥ります。
 ヨーロッパのニートは移民や貧困という階層化の一つの状況ですが、日本におけるニートのメンタリティは、先に挙げた消費主体、等価交換の発想が幼児期から確立する「幼児期における自己形成の完了」を特徴としているといいます。
 キャリア・アップ、とかキャリア・パス(企業内での昇進を可能とする職務経歴)というのはつきあう相手を上方修正したいということです。こんな仕事をやってられるかという不満がキャリア・アップの原動力の人が周りの人と上手くやっていける訳がありません。また、モチベーションもありませんから、当然評価も低いはずです。今やっている仕事の評価が低い人に、他の企業から、今より良い条件のオファーを受ける可能性は限りなく低いと著者は指摘します。
 内田教授の若者の捉え方も一つの見方とは思いますが、私は今の若者のマインドは、「ゆとり教育」の影響が多いのではないかと思っています。「ゆとり教育」が実施されたのは、小学校・中学校が、2002年4月(平成14年)、高校が2003年4月です。この学習指導要領改定で最も大きかったのは、生徒の評価方法の根本的な変更です。
 それまで、相対評価で序列化されていた生徒が、「意欲・関心・態度」という観点別の3段階と絶対評価による5段階で評価されるようになりました。いわゆる「新学力観」の導入です。絶対評価の導入は、競争原理としての「ナンバーワン教育(相対評価)」から個性重視の「オンリーワン教育(絶対評価)」への転換です。勉強ができなくても、運動が苦手でもそれがあなたの個性だから、「そのままのあなたでいいのよ」というメッセージが与えられたわけです。
 若者は「下流を志向」しているのではなく、ましてや逃走しているのでもなく、学校教育で培われたオンリーワン教育の価値観と企業の競争原理のギャップに納得できない若者たちが、社会の在り方に無言で異議申し立てをしていると考えるべきなのではないでしょうか。現に、ボラティ活動に取り組み、会社を辞め、利潤を追求しないNPO法人を立ち上げて生き生きと活躍しいる若者が多いという報道もあります。
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若者は本当に「下流志向」なのか(1)~学ぶことからの逃走~ №188 

2013-06-04 16:56:40 | インポート
 若者は本当に「下流志向」なのでしょうか?学ぶことによって得られる果実を信じない子どもたちが学ぶことから逃走し、働くことの対価が少なすぎる、と労働から逃走する若者たち。内田樹教授は彼らは努力して下流を志向していると言いますが、本当でしょうか。
  神戸女学院大学の内田樹名誉教授著「下流志向」(講談社刊)のサブタイトルは、~学ばない子どもたち、働かない若者たち~です。著者によれば、今の子どもたちは、家事労働の中で感謝と認知を獲得し、そこから、幼い自我のアイデンティティを確立していくという機会が失われてしまっている。初めての社会経験がお金を使うことになり、消費者マインドの中で育つことになった。そのため、教育の場においても、子どもたちは、買い手、すなわち「教育サービスの担い手」という意識を持っているのではないか。
  教育を権利ではなく、義務だと理解している子どもたちは、僕はこれだけ我慢しているけど、それに対して先生は何をしてくれるの。自分は教育を受ける義務を果たしているのだからその対価をくれと言ってくる。その答えが納得できればやるし、気に入らなければやらない。つまり、消費者マインドとすれば、気に入れば買うし、気に入らなければ買わないということになります。
 「これを学ぶことが何の役に立つのですか。」と、その商品(教育内容)に興味がないふりをすると、先生が教育内容のレベルをディスカウント(低下)してくれる。だから、子どもたちは値切ること、即ち、最小の努力で最大の商品(成績)を手に入れようとする。子どもたちは教室では貨幣をもっていないので、「不快」を示すことで等価交換しようとしているのだ、と著者は説明しています。
 さらに、東大・刈谷剛彦教授「階層化日本と教育危機」(有信堂高文社)の中から、「階層下降することから達成感を引き出す子どもが出現してきた」と、以下のように引用しています。
 相対的に出身階層の低い生徒たちにとってのみ、「将来のことを考えるよりも今を楽しみたい。」と思うほど、「自分には人よりすぐれたところがある。」という根拠のない「自信」が強まる傾向がある。
 グローバル化する社会は、学校で努力しても就職できない人が増大するとしいうリスクを抱えています。努力と成果の相関が崩れ、努力しても必ずしも報われない社会は、二極化し格差社会を生む。上層家庭の子どもは、勉強して高い学歴を得た場合は、そうでない場合より多くの利益が回収できることを信じられる。しかし、下層社会の子はそれを信じられない。学力差ではなく、学力についての信憑性の差が、学ぶことから逃走する子どもを生み出すというのです。
 頑張れば誰も同じような成果を達成できるというのがメリトクラシー(業績主義)の前提だが、努力への動機に階層的な格差があるとすれば、フェアではなく、すでに勝っている者がさらに勝ち続けることを正当化する社会となってしまうのではないか。努力しないのは本人のせいだから、自己責任だと言われるが、自己責任、自己決定は自分でリスクヘッジできない。それゆえに、社会のセーフティネットが必要だと提言しています。
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怒りと憎しみからの解放 №187

2013-05-26 14:41:34 | インポート
 もし、あなたが、あなた自身を含めて、愛する家族や友人を不当に傷つけられたと感じたとき、その加害者に復讐するのではなく、「ゆるす」ことによって、あなたの怒りや憎しみから解放されたいと望むでしょうか。
 「ゆるし」というのは、これまでどちらかという宗教の分野でしたが、これを初めて科学的に検証したのがアメリカ・ウィスコンシン大学心理学教授ロバート・D・エンライトの「ゆるしの選択」(河出書房新社刊 水野修二郎訳)です。
 先日、日本カウンセリング学会認定カウンセラーの研修会で、翻訳した麗澤大学の水野修二郎教授から直接お話を伺うことができました。
 私たちは、不当に傷つけられたと感じると、相手には怒りや憎しみを感じ、加害者と同じように醜い存在になってしまうことさえあります。自分自身に対しては何もできなかったという無力感が残り、自己嫌悪に陥り、時には自分を否定してしまうこともあります。
 また、怒りや憎しみは、それを向けられた人(加害者)よりも、むしろ、怒りや憎しみを向ける人(被害者)に悪い影響をもたらします。怒りや憎しみを抱き続けることより、精神的に疲労し、生活の活力を失うような事態を招き、二重の被害者となります。
 そうした、怒りや憎しみから解放されるには、悪いことをされたのだから同じように相手を痛めつける、というリベンジの気持ちを脇に置いて、「ゆるし」の決心をすることが必要だといいます。では、「ゆるし」とは何でしょう。
1 個人が自由意思で始める心の内側のプロセスである。
2 あなたに対してアンフェアな行動をした人に対する激しい感情をレッツ・ゴー(手放す)する。
3 過去にあなたを傷つけようとした人を罰しようとは思わなくなる。
4 罰したところであなたの傷はいやされない。
5 あなたの持つエネルギーをもっと良いほうに活用する。
6 先に進む。
 しかし、「ゆるす」ことに対しては、相手に対する敗北であるとか、自分の感情を否定することであり、反省もしない相手を不当にのさばらせることになる等々、様々な感情があり、それほど単純なことではありません。
 それでも、怒りや憎しみの感情の牢獄から抜け出すにために、相手を「ゆるす」という選択肢があってもいいというのが、カウンセリングとして必要なのではないかということでした。ただ、この「ゆるし」の作業には様々なワークがあるようです。また、大目にみたり、忘れたり、冷静に対処したり、和解することは「ゆるし」ではないとも言っています。

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血液型でわかるかかりやすい病気(2) №186

2013-05-14 17:13:23 | インポート
③ B型は遊牧民族
 アフリカから移動した人類のうち、ヒマラヤ山岳などへ移動した人類は、遊牧民となり、過酷な環境の中で家畜の肉や乳製品を食料にしていたたため、腸内細菌が乳製品を分解するのに適したB型物質をつくるようになりB型が誕生したということです。
 環境の変化に適応する生活をしていたため、常識や慣習にとらわれず、行動力があり、他人に対する警戒心がうすいため、結核や肺炎などの感染症や食中毒にかかりやすい。性格的には、狩猟に適した動物的カンが鋭く、本能や衝動で行動することが多い。
④ AB型は突然変異
 人類が世界中に拡がっていくことによりそれぞれ違う血液型の混血が誕生するようになり、およそ 1000年~1200年前にAB型がうまれた。このため、AB型は新人類的な特性を持っているということです。 きまぐれで、感受性豊かで、天才かだらしないかの両極端にぶれやすい、消極的なくせに、他人に対する優越意識が強いが、A型タイプに弱い。ただ、免疫力がもっとも弱く、病気にかかりやすい血液型なのだそうです。ただし、ノロウイルスやフィラリア、コレラには強く、体質的にあわない食べ物はないという特徴あるということです。

 免疫学的に見た場合、①AB型はAとBのふたつの血液型物質をもち、どちらににも抵抗できないためもっとも病気に弱い。②A型はA型の細菌が多く、自分と同じA型の細菌に対して抵抗できないため2番目に弱い。③B型は A型と同じだが、B型をもつ細菌がすくないためA型より強い。④O型はA型とB型の両方に対して抵抗できるため、様々な病気に強い。
 また、各血液型の精神的な力関係は、①AB型はB型とO型には強いが、A型には弱い。
②A型はO型とAB型には強いが、B型には弱い。③B型はA型には強いが、O型とAB型には弱い。④O型はB型には強いが、A型とAB型には弱い。という構造になっているということです。
 生育環境や生活習慣との関係もあるのでこの通りとはいかないでしょうが、大変興味深い説得力のある本でした。
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