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自閉症を生きた少女~思春期編~について №259

2017-09-04 16:19:47 | 日記
 天咲心良著「COCORA~自閉症を生きた少女2~思春期編」(講談社刊)は、小学校編の続編で、小学校を卒業した作者の海外留学とその挫折が描かれています。作者はおそらく知的障害を伴わない自閉症スペクトラムのため、周囲が障害とは思わないで接していました。両親や祖母や姉の言いつけにしたがうことができず、わがままだとか、生意気だとか、あらぬ誤解を受け、家族からほとんど虐待と言っていい扱いを受けて育ちました。そして、小学校を卒業すると、家から放り出されるように海外留学に出されます。
 たとえ、障害がなかったとしても、英語もほとんど話せないわずか12歳の少女を、単身で留学させる両親というのはどのような人たちなのでしょう。善意に解釈すれば、少女の両親は、障害を持って生まれたとは思わなかったため、外国留学させれることで自律心が芽生え、しっかりしてくれるのではないという親心だったのかもしれません。しかし、単に育てにくい子を厄介払いしたかったとも考えられます。 
 自分の家族と一緒に住んでいても、生育環境の適応に困難を感じている少女にとって、言葉も生活習慣も文化も異なる国で見知らぬ人たちと住むというのは、恐怖以外の何物でもなかったに違いありません。ホームスティ先の子供と初めて留学先の学校へ行きますが、日本語で話してくれる留学生サポートの女性教師の言葉は耳に入ってきません。彼女は、見知らぬ場所にたった一人でいることの不安とパニック、そして、恐らくはそれらの状態からの逃避反応により、無害で不変な自分が理解できるもの、女性教師のブロンドの髪やインテリアに注意がそれ、何も理解することができません。
 彼女は自我を守るために、部屋に引きこもったり、離人症的な状態になったりしながらも、同質性を求めないホストファミリーの優しさや思いやりのある友人に囲まれて、何とか踏ん張り続けますが、ついには力尽きて日本に戻ります。しかし、誰も彼女を温かく迎えてはくれません。よく頑張ったねとも言ってくれません。
 自閉症の人たちが、どれだけ膨大なエネルギーを使って、私たちが「普通」と考えて、何の違和感もなく暮らしている、周囲の環境に適応するために格闘しているのかが、痛いほどに伝わってくる本です。果たして彼女はどのように世界と和解するのか。次作が待たれます。
 

嫉妬は身を滅ぼし、羨望は奮起を促す? №258

2017-08-20 12:21:55 | 日記
 世界史を専門とする方から、古代ギリシャが「嫉妬の文化」であったのに対し、古代ローマは「羨望の文化」であったと伺ったことがあります。古代ギリシャは高い文明を持ちながら、小さな都市国家間で互いに覇権争いをして滅びてしまいましたが、ギリシャ文化を羨望していたローマは他国の宗教や文化を柔軟に取り入れ発展していきました。
 「羨望」というのは、自分にはない才能や、美しい容姿、優れた実績、財産などを他の人が持っていることに対して起こる感情で、「ひがみ」や「劣等感」を起こす場合もありますが、自分が努力して対象に近づきたいという「奮起」を促すための動機にもなります。
 一方で、「嫉妬」は相手への「ひがみ」や「劣等感」が、「憎しみ」となって攻撃的になった感情です。「嫉妬を止められない人」(小学館)の著者で精神科医の片田珠美さんは、「私たちが所有している幸福、もしくは所有しているように思い込んでいる幸福を守ろうとするために生じる感情が嫉妬である。」と言っています。そして、「嫉妬しやすい人の特徴」として、次のような人をあげています。①自己中心的な人。②人の好き嫌いが激しい人。③自分の非をなかなか認めようとしない人。④言い訳や不平不満の多い人。⑤自己愛の強い人。
 また、嫉妬が生じやすい状況として、①自分の立場を脅かしかねない部下や後輩に対して嫉妬を抱きやすい。②閉鎖的な人間関係の中で起こりやすい。③兄弟や夫婦など近親関係ではより激しくなる。④同性の者に対して、より嫉妬が起こりやすい。などの特徴をあげています。そして、自分が他の人から「嫉妬」される対象になったら、どのように身を守るかについて以下の7項目を提案しています。①自分の弱さをさらけ出す。②我を張らず、謙遜する。③功は人に譲る。④実績は誇らずに淡々と示す。⑤正当な努力をし続ける。⑥相手をよく分析する。⑦嫉妬される場所から離れる。
 では、自分が嫉妬する立場になったときはどうすればよいのかについて次の7項目を挙げています。①嫉妬している自分を素直に受け入れる。②一つの価値観に縛られない。③「正当な努力」をしてみる。④嫉妬する場所から離れる。⑤自分を他人と比べるのをやめる。⑥多様なつながりをもつ。⑦自分のテリトリーの限界を見極める。
 しかし、漫画家の手塚治虫氏の弟子の石ノ森章太郎氏に対する嫉妬や、俳優の長門裕之さんの弟津川雅彦さんに対する嫉妬、作家の村上春樹氏に対する編集者安原顕氏等の嫉妬の激しさ知ると、私たちが「嫉妬」の業火から逃れるのはそれほど簡単ではない気がします。

「憎しみ」をなくす方法 №257

2017-08-02 21:48:41 | 日記
 河出書房新社から出版されている『人はなぜ「憎む」のか』を読みました。作者はアメリカのピューリッツァー賞受作家で、新聞編集者、弁護士等幅広い活動を続けているという、ラッシュ・W ・ドージアJrです。 
 脳はもっとも原始的なレベルで、自分を脅かすものに対する二つの基本的な反応を進化させたといいます。それは、「闘争」か「逃走」です。つまり、「戦うか」、「逃げるか」の選択です。「憎悪」は闘争反応から生じ、「恐怖」は逃走反応から生まれます。
 大昔の人類にとって、「恐怖」は厳しい環境を生き抜くのに役だちました。しかし、文明が進んだ今日、過度に何かを恐れることは心の健康の問題として扱われます。「恐怖」と同じように、「憎悪」には対象をステレオタイプ化しようとする強い傾向があります。「憎悪」で反応するとき、つまり戦いを選択した場合、原始神経システムはある経験を不快なものとして性急に判断を下します。
 例えば、ゴキブリの嫌いな人は、見つけ出して叩き潰すまで執念深く探し回ります。 嫌いなものを徹底的に叩き潰そうという「憎悪」のパワーは、「単純な先入観」に「攻撃性」と「怒り」が合わさって生まれます。原始神経システムによる大雑把な分類の仕方は「憎悪」の特徴の一つである、と作者はいいます。
 私たちが、他者に対して「恐怖」ではなく「憎悪」で反応するのは、「恐怖」を感じても逃げ場がない状況に追い込まれたときだということです。危険が迫り、進退窮まったとき、辺縁系が反応を支配して攻撃に打って出る。それが「憎しみ」に発展していきます。自分を脅かそうとするものに対して、「憎悪」で反応しないようにするための戦略として作者は以下10項目をあげています。
1 怒りや苦しみや脅威の原因を明確にする。
2 最悪の敵対者に対しても共感し、相手の立場になって物事を考えてみる。
3 なぜ怒りや脅威を感じるかを相手に伝える。
4 交渉する。
5 偏見や無知をなくす教育をする。
6 お互いの利益のために協力する。
7 過剰反応せずに冷静に見る。
8 逃げ場をつくり、追い詰められないようにする。
9 敵の懐に飛び込む。
10 復讐ではなく、正義を求める。

知能とは何か №256

2017-07-20 15:16:40 | 日記
 知能の定義には様々な考え方がありますが、一般的に考えられているのは、①抽象的思考能力が優れている。②学習能力が高い。③新しい環境への適応力が高いということです。つまり、「経験から学んだり、抽象的な言葉で考えたり、環境に効果的に対処する能力」が知能だという考え方です。
 ただ、これでは音楽にすぐれた才能を発揮する人やスポーツで高いパフォーマンスを示す人たち等の能力が評価されていないのではないかと考えたのが、アメリカの心理学者ガードナー(1943年生れ~)です。彼は、知的障害のある人が特殊な領域において優れた能力を示すサヴァン症候群や脳損傷患者などの研究を通じて、人には複数の独立した知能が存在し、それらが協調的に働いていると考える「多重知能論」(Multiple Intelligence : MI理論)を提唱しています。 MI理論による8つの知能は以下の能力です。
1 言語的知能:話しことば・書きことばへの感受性、言語学習・運用能力など
2 論理数学的知能:論理的な分析、数学的な操作、科学的に究明する能力
3 音楽的知能:リズムや音程・和音・音色の識別、音楽演奏や作曲・鑑賞のスキル
4 身体運動的知能:身体全体や身体部位を、問題解決や創造のために使う能力
5 空間的知能:空間のパターンを認識して操作する能力
6 対人的知能:他人の意図や動機・欲求を理解して、他人とうまくやっていく能力
7 内省的知能:自分自身を理解して、セルフコントロールする能力
8 博物的知能:自然や人工物の種類を識別する能力
ガードナーは、紙と鉛筆だけで測るテスト知能だけではなく、それ以外の知能にも目を向けるべきだと主張しています。人には複数の独立した知能が存在しそれらが協調的に働いていると考えました。物理学者とスポーツ選手を単純に比較するような物差しは意味がありません。それぞれの能力が多様であるからこそ、豊かな社会があるのではないでしょうか。

根拠のない自信はどこからくるのか №255

2017-06-19 16:53:20 | 日記
 何事にもネガティブに考えるマイナス思考の人がいる一方、何事にもポジティブでプラス思考の人がいます。それは、失敗して傷つくことを恐れる気持ちが強いか、成功体験による満足を得たい気持ちが強いか、という生き方のポジションの違いでもあります。ただ、一般的には、能力の高い人ほど自信がなく、能力の低い人ほど根拠のない自信を持つ傾向があるといわれています。
 アメリカのコーネル大学のデビッド・ダニングとジャスティン・クルーガーの研究によると、
①能力が低い人は、能力が低いために、自分がいかに能力が低いかを理解できない。
②したがって、能力の低い人は他人のスキルも正しく理解できない。
③そのため、能力の低い人は自分を過大評価する傾向にある。
ということです。このように、能力の低い個人が、自らの発言・行動などを実際よりも高く評価してしまう認知バイアスを、二人の名前を取って「ダニング・クルーガー効果」といいます。
 能力の高い人は、自分の能力を正しく認識しているが故に、謙虚で自信がない傾向が強いということになります。しかし、自信がないゆえに、さらに研鑽するためにより成長してゆきます。逆に、能力が低く自分を客観視できない人は、自分を実力以上に評価するため、学習や研鑽を怠り、現状にあぐらをかくため、能力がさらに劣化していくリスクがあります。
 さて、皆さんはいかがでしょうか。ただし、気を付けなくてはいけないのは、この「ダニング・クルーガー効果」について初めて聞いた人の多くが、「自分が該当する」かもしれないということを棚に上げて、「確かに勘違いしている人がいますね。」というのだそうです。しかし、これは「ダニング・クルーガー効果」の一種で「バイアスの盲点」と呼ばれるのだそうです。ご注意あれ、御同輩の方々。
イギリスの哲学者でノーベル文学賞を受賞したバートランド・ラッセルは、「ダニング・クルーガー効果」がイグノーベル賞を貰うずっと前に、「こんにち世界の問題の根本原因となっているのは、愚か者が自信満々である一方、識者は疑念しか持てなくなっていることだ。」と憂えていたということです。

男の子はなぜ乱暴なのか №254

2017-06-18 09:33:51 | 日記
 男の子を育てたことのある多くの母親が一度は感じるのが「なぜ、男の子はこんなに乱暴で、落ち着きがなく、言うことを聞いてくれないのだろうか。自分の子育てが間違っているのか、それとも自分の子はどこかおかしいのではないか。」という疑問だそうです。そんな疑問に応えるのが、PHP研究所から出版されている「男脳がつくるオトコの行動54の秘密」という本です。著者はカリフォルニア大学のローアン・ブリゼンディーン教授で、女性の精神神経医学者です。彼女の研究は、自身が男の子を育てながら感じたことがはじまりのようです。
 研究によると、男の子は生後7ヶ月になる頃には、母親の怒りや恐れの表情を読み取れるようですが、生後12ヶ月になると、母親のそうした表情に「免疫」ができてしまいあっさり無視するようになるという。女の子の場合は逆に母親の怒りに敏感になるということです。実験によると、玩具にさわってはいけないと父親が叱っても、女の子の倍の警告が必要だということです。生後2歳7ヶ月頃になる頃には、親に隠れて禁断のものを追いかけたり、手に入れたりすることを平気でするようになる。玩具の取り合いや取っ組み合いのけんかの回数は、女の子の6倍になるということです。
 なぜ、男の子は競争的な遊びを好み、女の子は協調的な遊びを好むのか。それはホルモンの関係であるということです。テステステロン(支配欲と攻撃性が強く、力強い。これと決めた目標に向かって邁進し、他の男を出し抜こうとする)やMISホルモン(屈強で探索的な行動の回路を形成し、女性的な行動回路を抑制する)が男の子に、動きのある玩具や競技スポーツ、戦争ごっこに誘うという。
 では、いつになったら男脳といわれるホルモンをコントロールすることができるようになるのでしょうか。男性ホルモンの抑制システムが完全に成熟するのは20代前半であるということです。16歳から24歳までの交通事故発生件数が群を抜いて多く、自動車保険の保険料が高くなっているのは理にかなっているといえます。

引きこもりになりやすいタイプと家庭 №253

2017-05-09 15:23:04 | 日記
 『大人の「引きこもり」を救え』(扶桑社刊)という本を読みました。著者の廣岡政幸氏は引きこもりの人たちや不登校、非行など様々な問題を抱えて社会での居場所を失った人たちの立ち直りを支援する施設、ワンステップスクール校長です。
 厚生労働省は引きこもりについて「仕事や学校に行かず、かつ両親以外の人との交流をほとんどせずに、6ヶ月以上続けて自宅に引きこもっている状態」と定義しています。厚労省ではこの数を推計25万5千人としています。一方で、内閣府は「自分の趣味の用事の時だけ外出できる」46万人を含めて推計70万人としています。
 とくに深刻なのは、引きこもりの人たちが高齢化し、彼らを支えてきた年老いた両親と共倒れする危険が大きいことです。こうした人たちを数多く支援してきた著者が実際に経験したことから、引きこもりになりやすい子のタイプや引きこもりがうまれやすい家庭について次のように書いています。

1 引きこもりになりやすい子
① 自己主張が苦手: 非行少年と違い、問題を起こさず、周りからはいい子に見えるが、協調性ばかり育ってしまって、自分を抑えて我慢してしまうので疲れやすい。
② 成功体験が少ない: 何かを頑張って人から認められたという成功体験が少ない。依存心が強く、その場だけの快楽をもとめる傾向がある。達成感や承認欲求が満たされないので人間関係を築くのが難しい。
③ 人との間に壁を作りやすい: 人に配慮しすぎて壁を作りやすいので、人を信頼できず、誰かに頼ったり、甘えたりすることができない。
④ 外見は大人でも中身が幼い: 苦しんでいても、本気でどうするか考えることから逃げている人が多い。他人事のように感じていたり、高い理想を掲げて、現実逃避している場合もある。

2 引きこもりが生まれやすい家庭
① 経済力がある: 子どもが引きこもっていても養っていける。また、社会的地位が高く、プライドもあるので問題を隠す傾向があり、誰にも相談できずに長期化しやすい。
② 夫婦仲が悪い: 父親は仕事人間で子育てを母親任せにし、母親の育て方を問題にし、一方で母親は父親が向き合ってくれないと責める。それを見た子どもは、自分が原因で両親の仲が悪くなったと思い、ますます落ち込んでいく。
③ 親の規範意識が高い: 子どもの悩みに寄り添うのではなく、親の価値観を「こうでなくてはいけない」とか「こうするのが普通だ」と押しつける傾向がある。
④ 子どもの話を聞かない: 子どもの気持ちに寄り添わない。

「直感」に頼ることに潜む危険な罠 №252 

2017-05-04 13:39:47 | 日記
 私たちは、合理的な判断や難しい選択に迷ったとき、しばしば考えることを中断して、「直感」に頼ることがあります。「ひらめき」や「直感」を大切にして、最初から深く考えることなく物事を決める人もいます。しかし、「直感」に頼った決め方には、スピードがある分だけ精度に欠けるところがあるようです。
厳密な論理で一歩一歩問題解決に迫るアルゴリズムとは別に、「直感」ですばやく結論を出す方法を「ヒューリスティスクス」といいます。ヒューリスティスクスは、日常生活の多くの場合に有効ですが、その性質上、トラップ「罠」が存在するので、このことを自覚することが重要であると警鐘をならしたのが、行動経済学という概念を提唱してノーベル賞を受賞した心理学者カーネーマンです。
 彼は、私たちは確かな手がかりのないまに「直感」に頼りがちで、そのために非合理的な判断や意志決定をすることを実証しました。このことを「ヒューリスティスクス」によるバイアス(偏り)といいます。この認知バイアスのトラップ(罠)として以下の3つがあげられています。
1 典型的なものを手軽に判断に利用してしまう「代表性」のトラップ
  あの人はいつもにこにこしているから良い人に違いないという思いこみや、コイントスで3回続けて「表」が出たから
次は「裏」に違いないという確率の無視等があげられます。
2 日常的に簡単に利用できる情報で判断してしまう「利用可能性」のトラップ
  ある事象が起きる確率や頻度を考える際に、最近の事例やかつての顕著な事例など「思い浮かびやすい」事例と特徴に   よって、判断や評価の基準にしてしまうことで、デング熱や鳥インフルエンザなどマスコミが大きく取り上げるとあたかも すぐに自分に降りかかってくるのではないかと判断してしまうことです。
3 最初に示された特定の数値などにとらわれて判断してしまう「固着性」のトラップ
  最初に1万円と示され、次に8千円と示されるとそれが適正な値段であるにもかかわらず、お買い得と思って衝動買い  してしまうことです。必要であるとか欲しいというより、安さが意志決定の第一原因となってしまいます。本日限り、女  性半額、先着10名さま限りなどはすべてが根拠のない、思いこみによるバイアスです。

 御自分の「直感」に信頼を置いている方々は、そこに潜む認知バイアスのトラップ(罠)に充分注意してください。

自閉症を生きた少女  №251

2017-02-21 13:45:33 | 日記
 10年ほど前、オーストラリア生まれのドナ・ウィリアムズという女性の「自閉症だった私へ」(新潮文庫)という本を読んで、衝撃を受けたことがあります。 その本は、世界で初めて自閉症の人が、どのような辛さを抱いて生きているかをつづったもので、私たちの無理解がいかに障害のある人達を傷つけているかを教えてくれました。
 天咲心良著「COCORA~自閉症を生きた少女1~小学校編」(講談社刊)は、成人してから初めて自分が自閉症スペクトラムだったことを知った日本人女性が、小学校時代のつらい思い出を自伝風にまとめたものです。障害に対する無理解がこれほどに一人のいたいけな少女を傷つけるのかと、正直言って、読み進めるのが辛い本です。
 作者はおそらく知的障害を伴わない自閉症のため、周囲が障害とは思わないで接していました。両親や祖母や姉の言いつけにしたがうことができません。わがままだとか、生意気だとか、あらぬ誤解を受け、家族からほとんど虐待と言っていい扱いを受けます。もちろん、作者の視点から描かれているものなので、家族の側から見れば、違った風景が見えくるのかもしれませんが、本当に残酷な扱かわれ方をします。
 幼稚園や学校では、友達と遊ぶことができず、先生からは家庭のしつけや、本人のわがまま、だらしない性格の問題と誤解され、叱責され、仲間はずれになりますが、彼女にはその理由がわかりません。
 幼いうちは、まだ反抗的・挑戦的であるに留まりますが、この状態が続くと、いらいらが爆発して、行為障害が生じ、それがエスカレートすると、反社会的人格障害にまで移行していくこともあるといわれています。
 この作品は、三部作ということで、小学校を卒業した彼女は海外留学に旅立ちますが、果たしてどのような成長をしていくのでしょうか。

毒になる親 №250

2017-02-08 12:54:27 | 日記
 アメリカの医療機関でセラピストやインストラクターをしているスーザン・フォワードの著書に、「毒になる親~一生苦しむ子供~」(講談社刊)という本があります。その中で毒になる親の一つの例として、「あなたのため」と言いながら子どもを支配する親が紹介されていますが、毎週金曜日、午後10時からNHKテレビで放映されている「お母さん、娘をやめていいですか」というドラマがまさにそれです。
 ドラマは、娘の人生を支配する母親の物語です。食べる物、着る物、部屋の模様、職業等々すべてを自分の思い通りに押しつけ、それが娘のためだと信じて疑いません。娘は一生懸命母の期待に応え、二人はまるで恋人同士のようです。
 自分が願ったとおりに教師となった娘の仕事ぶりが心配で、授業の進め方や問題児の対応の仕方まで口を挟み、授業参観日には学校に出向いていきます。さらに、自分で交際を勧めておきながら、その男とのデートを尾行するというモンスターぶりを発揮し、ドラマはとんでもない方向に展開していきます。 
 このドラマの臨床心理考証を担当しているのは、共依存やアダルトチルドレン等で名高い臨床心理士の信田さよ子先生です。
 スーザン・フォワードが「毒になる親」として紹介しているのは、以下のような親です。
1 子どもが従わないと罰を与え続ける「神様」のような親
2 大人の役割を子どもに押しつける義務を果たさない親
3 「あなたのため」と言いながら子どもを支配する親
4 脈絡のない怒りを爆発させるアルコール(薬物)中毒の親
5 残酷な言葉で子どもののしり傷つける親
6 気まぐれに暴力をふるう親とそれを止めない親
7 性的な行為をする親と見ぬふりをする親
 これらの親は、意図しようとしまいとにかかわらず、「子どもの人生を支配する親」です。こうした親に育てられた子どもは成人しても、一人の人間として存在していることへの自信が傷つけられているため、「自己破滅的な傾向を示し、自分に価値を見いだすことが困難で、人から本当に愛される自身がなく、何をしても自分は不十分であるように感じる。」傾向があるといわれています。