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ストレスと腰痛 №179

2013-03-26 14:42:18 | インポート

  ストレスは万病の元ともいわれますが、腰痛もストレスに強い関係があるようです。厚生労働省研究班の調査によると、腰痛の人は全国に推定で2800万人いるという新聞記事がありました。特に、40~60代の約4割が腰痛に悩んでいるとのことです。
 腰痛は発熱や胸部痛といった危険信号の有無などで(1)がんや外傷、感染などの重い脊椎疾患が疑われるもの(2)まひやしびれ、筋力の低下など神経症状を伴うもの(3)原因が特定できない非特異的腰痛などに分類することが重要だとあります。
 このうち、原因が特定できない、いわゆる非特異的腰痛といわれるものが(ぎっくり腰やストレスが原因となっているものを含み)全体の85%を占めるとの研究があるというですから驚きです。
 日本整形外科学会と日本腰痛学会では、腰痛の発症や慢性化には心理的なストレスが関与しており、画像検査などでも原因が特定できない腰痛が大半を占めるとの診療ガイドラインを出しています。
 この原因不明の腰痛は、職場での人間関係や仕事量の多さ、仕事上の不満、うつ状態など心理社会的要因が関与している強い証拠があると指摘されています。ストレスにより自律神経がの乱れると、筋肉が緊張したり、血流が悪くなったりして、腰痛が引き起こされるということのようです。このため、ストレスを軽減するためにの認知行動療法などの精神医学療法も有効だとされています。
 ガイドラインの策定委員会のメンバーであるの矢吹省司教授(整形外科)のいる福島県立医科大学附属病院などでは、整形外科と心身医療科が連携し、体と心の両面から腰痛を治す治療法である「リエゾン治療」に取り組んでいるということです。整形外科で痛みを和らげる治療やリハビリ療法で筋力の回復を図っていく一方、心身医療科で腰痛の原因であるストレスを軽減するための心理療法が行います。
 これといった原因のない腰痛については、自律神経のバランスを整え、ストレスをコントロールすることで防ぐことが可能ということですから、生活のリズムを整え、適度な運動を心がけ、ストレスをためないようにしたいものです。
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グリーフ(悲しみの)ケアとしての送り人 №178

2013-03-21 17:27:29 | インポート
 義祖母の葬儀に納棺師を依頼しました。その納棺師は映画「送り人」のモデルとなった方のお弟子さんの一人だということでした。彼は、持参した二枚の薄衣を天井から垂らし、仏壇をしつらえ仏具を並べると、遺族の見守る中で、ぬるま湯で暖めたタオルで丁寧に遺体を拭き清めはじめました。
 「送り人」に促され、遺族が全員でが少しずつ遺体を拭き清めていくと血行が戻ったかのように手足が柔らかくなってきました。「送り人」は、遺族とともに組んでいた指をほどき、腕を広げさせると、シーツで遺体を隠しながら、遺体を遺族の目にもさらすことなく、丁寧にしかも手早く死装束に着替えさせました。そこには、たとえ遺族に対してでも遺体を晒さないという、死者に対するリスべクトがうかがえました。
 次に、遺族に手伝わせながら、「送り人」は義祖母の爪にマニキュアをし、髪の毛をシャンプーし、薄化粧を施し口紅をひいていきます。それらの作業一つ一つが義祖母の「死」を遺族が受け入れることにつながることになります。105歳の長寿だった義祖母だが、生前マニキュアをしていたの見たことはないので、初めてだったのではないかと思いますが、それはそれで、遺族の心をなごませました。遺族は、死者が生前の面影を取り戻し、まるで眠っているような穏やかな表情で旅立っていくことに、何より温かい気持ちになります。
 白い死装束を左前に合わせ、上帯を締め、手甲、脚絆を着け、足袋を履かせます。六文銭を入れた頭陀袋を首に掛けると納棺準備が終わり、全員で納棺します。時間にして40分位でしたが、「死」と十分に向き合い、とても貴重な時間を過ごすことができました。
 「送り人」の仕事は、ただ無造作に棺に納めればいいというわけではありません。手際よく作業を進め、遺族が死と向き合う大切な一時でもあるので、可能な限り遺族に参加を促し、十分な別れができるように努めるのも「送り人」の役目です。厳粛でありながら、おだやかな雰囲気を作り出すことができるかが、「送り人」の力量といわれますが、まさにそのような方でした。有り難うございました。
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「ゆとり世代」から「さとり世代」へ  №177

2013-03-19 12:07:26 | インポート
 朝日新聞(3月18日付け朝刊)の記事に「さとり世代」が紹介されていました。「さとり世代」というのは、「ゆとり世代」の次の世代のことで、物心付いた頃から不景気で、浪費を悪と考え、実にまったりとした、穏やかな暮らしを望む草食系世代ということのようです。
 元日経新聞の山岡拓氏著の書籍「欲しがらない若者たち」をベースに書かれた記事についての2ちゃんねるのスレッドが由来とあります。「ゆとり世代」はだめな若者の代名詞のように遣われることが多いのですが、「さとり世代」は、ゆとり教育を受けつつも、さらに勉強をし、現実的な将来を見通す賢い集団でもある。だからこそ悟らざるを得なかった。自分を一歩ひいて見ざるを得なかった世代と説明されています。
 「さとり世代」の特徴として、①車やブランド品に興味がない。②必要以上に稼ぐ意欲はない。③パチンコなど賭け事をしない。④海外旅行への興味が薄い。⑤地元志向が強い。⑥恋愛に淡泊。⑦過程より結果を重視。⑧主な情報源はインターネット。⑨読書も好きで物知り等があげられています。
 当然のことながら、こうした若者は消費意欲が低いため、旅行会社や自動車会社などの企業には危機感があるようです。トヨタ自動車のテレビCMで、妻夫木聡扮するのび太君に、ジャン・レノ扮するドラえもんが免許を取ろうと呼びかけているのもこうした危機感の表れではないでしょうか。
 記事は、「さとったから買わない」のではなく、使うお金がないだけではとややアイロニーを込めて締めくくっていますが、有り余る欲望を抑えて「悟り」の道を開いたのではなく、「欲望」を持つことを禁じざるを得なかったということの方が正しい気がします。
 ちなみに、団塊世代がよく知られているように、生まれ育った時代背景や生活環境によって世代は次のように分けられるようです。
①焼け跡世代(1935年生~1946年生)戦前から戦後すぐの世代で焼け跡闇市派等とも呼ばれる。
②団塊世代 (1947年生~1949年生)第一次ベビーブームで生まれた世代。日本の躍進を支えた。
③しらけ世代(1950年生~1964年生)団塊世代とバブル世代に挟まれた世代でどこか冷めている。
④バブル世代(1965年生~1969年生)バブル景気の頃に就職した世代で、ブランド志向が強い。
⑤氷河期世代(1970年生~1986年生)バブル崩壊後の就職難の世代で失われた世代とも呼ばれる。
⑥ゆとり世代(1987年生~)    「ゆとり教育」を受けて育った世代。
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愛が憎しみにかわるとき  №176

2013-03-16 00:06:27 | インポート
 本当に相手のことを愛していたら、たとえ自分を犠牲にしても相手の幸せを願うのが本来の在り方だといわれますが、愛情のもつれによる殺人事件や傷害事件が時折報道されるのをみると、なかなかそのような心境になれない人が多いのではないかと思います。
 今まで愛していた人の態度が急に変わったからと言ってなぜそこまで憎むことができるのでしょうか。恋愛というのは、義理でも人情でも理性で割り切れるものでもありませんから、愛がさめたり、他の人に気持ちが移ることは仕方のないことです。
 しかし、相手の気持ちが離れていったのを知ると、悲しみと同時に嫉妬心がわき、自尊心が傷つきます。傷ついた自尊心を修復するためには、もともと自分には向いていなかったのだと自分に言い聞かせて諦めるか、相手を憎むことによって自分を正当化していかなければなりません。
 愛が憎しみにかわるのは、相手が自分の思い通りにならなかったことによる恨みからではないでしょうか。自分がこれだけ相手のことを思っているのに、相手が自分の気持ちを無視するのは許せないと思うのです。ストーカー事件によく見られるように、相手が迷惑だと思っているのにもかかわらず一方的に好意を寄せてつきまとい、相手が自分の気持ちを無視しているのが許せないと傷つけたりします。そこには、相手に対する思いやりの気持ちはありません。自分の思い通りにいかないことに対する怒りがあるだけで、きわめて自己中心的なものです。
 マザー・テレサは「愛の反対は憎しみではなく無関心だ」といいました。とすれば、憎しみの中には、まだ、いくばくかの愛が残っていると考えてもよいのでしょうか?


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笑いと健康の医学 №175

2013-03-07 15:49:01 | インポート
 日経新聞(3月3日付け)に笑いと健康の関係についての記事が掲載されていました。近年、医学や脳科学の観点から健康維持に役立つ理由を探る研究も活発になっていますが、その作用の仕組みはまだ明確には分からず、信頼性の高い調査も少ないのが事実のようです。
 記事では、笑いが医療に取り入れられた端緒は、米国の雑誌編集長だったノーマン・カズンズ氏が強直性脊椎炎という難病にかかり、笑いを取り入れた治療で完治した経験を著名な医学雑誌に報告した1976年のことだとあります。
 ユーモア小説を読んだり喜劇映画を見たりして大笑いすると痛みが和らいでぐっすり眠れるようになり、数カ月後には職場復帰できたことをきっかけに、カズンズ氏はその後、カリフォルニア大学医学部教授に転じ、笑いの治癒力を説くようになったそうです。
 これを機に笑いの効用を科学的に解き明かそうとする研究が始まり、日本でも1994年に初めて、笑いが免疫機能を高める可能性を示す実験が報告され研究が増えてきたということです。
 免疫機能の向上やストレスの軽減など短時間で一過性の効果は確かめられても、それが長期間の健康維持にどう役立っているのか、本当に元気で長生きにつながっているのかが調べられていない。効果をもたらす仕組みも不明なため、笑うと健康になるのか、健康だからよく笑うのか、因果関係をつかむ議論はいつも堂々巡りになっているようです。
 現時点で信頼できる笑いの医学的な効用について、福島県立医科大学の大平教授は「運動とストレスの解消」の2点を指摘しています。
 声を出して大笑いした後は腹筋が痛くなる。笑い方にもよりますが、笑いは運動と同様に筋肉を使いカロリーを消費することは確かなようです。
 ストレス解消という点では、笑いが脳内の血流を増やしたり自律神経を安定にしたりする作用は認められていますが、これは音楽鑑賞や旅行、趣味などに熱中した時などにも見られ、笑いに限った現象ではないようです。
 大平教授は「よく笑っている人は、人と話す機会が多い。社会とのつながりがあるかどうかも重要な指標」と解説しています。
 人は自分の間違いを笑うというのが、現在の学説のようです。自分の思いこみが外れたときに笑うということですが、そのためには、自分のことを客観視、相対化していないと笑えないわけですから、かなり高度な知性が必要となります。ということは、よく笑う人は頭がいいということになります。頭がよくないと自分のミステイクに気付かないからです。
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ニートと引きこもり、そして孤立無業者  №174

2013-02-20 17:56:34 | インポート
 少子化が叫ばれている一方で、有効求人倍率は一倍を割り込み、働く場所を得られずにニートや引きこもりとなっている人も少なくありません。こうした中で、新たに「孤立無業者」という耳慣れない言葉が出てきました。
 「孤立無業者」(Solitary Non-Employed Persons: SNEP・スネップ)というのは、「20歳以上59歳以下の在学中を除く未婚者で、仕事も通学もせず、無作為に選んだ2日間のうち、ずっと一人か、一緒にいたのが家族だけだった人々」を指す新概念とのことです。
 2月17日付け新聞各紙に、「孤立無業者」162万人という共同通信社の配信記事が掲載されていました。玄田有史・東大教授のグループが文部科学省等から委託を受け、2011年に総務省行が行った「社会生活基本調査」を基に集計した結果、未婚で仕事も通学もしなかった人が256万人おり、このうち「孤立無業者」といわれる人が162万人だったという内容です。景気低迷に伴う就職難やリストラなどが響き、5年前(112万人)と比べて4割以上増えたとあります。
 「孤立無業者」と「ニート」や「引きこもり」との関係はどのようになっているのでしょうか。厚生労働省では「ニート(若年無業者)」を、『15歳~34歳の年齢層でから学生と専業主婦を除き、求職活動に至っていない者」と定義しています。
 「ひきこもり」については、『仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6ヶ月以上続けて自宅にひきこもっている状態で、時々は買い物などで外出することもあるという場合も「ひきこもり」に含める』定義し、「引きこもり」も「ニート(若年無業者)」に含めています。
 2010年に内閣府が行った初の引きこもり全国実態調査(15~39歳対象)では、引きこもりに該当する者は約70万人と推計され、この数と「就業希望を有する」ニートの数およそ30万人を合わせると、単純計算でニートの推計は100万人となります。
  「孤立無業者」のうち、職探しをしている人は半数にとどまり、玄田教授は「今は家族が支えても将来、経済的に厳しい状況に陥る」と指摘。「孤立無業者」の増加は、無業者の増加同様、将来的には、「生活保護受給者」予備軍となり、今以上の財政負担が懸念され、社会保障費の増加を抑えるためにも、政府や自治体による対策が急務だと訴えています。
 働きたくても働く場所がないのに、一方で子どもを産みましょうという社会というのはきわめて矛盾しています。
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健康管理がストレスとなり免疫力が低下する?  №173

2013-02-19 17:18:32 | インポート
 私たちがストレスが多いというときは不安や苛立ちなど心理的なことを考えがちですが、暑さや寒さ、過度な運動や飲酒、喫煙、騒音なども体にとってはストレスとなっています。私たちの体はストレスを受けるとある種のホルモンを出して耐えようとします。しかし、このことにより免疫力の働きが低下してしまうのだそうです。
 免疫力が低下すると、体内に入ったウィルスを撃退したり、ガン細胞の増殖を抑えられなくなります。免疫力はストレスや加齢によって低下するようです。東京医科歯科大学の廣川名誉教授の研究によると長生きの人は免疫力が高いということです。
 免疫力の維持にはバランスの良い食事や適度な運動、規則正しい生活習慣により健康を維持することが欠かせませんが、最近、腸内環境が影響することもわかってきたそうです。腸内細菌が大幅に減るとインフルエンザにかかりやすくなるといわれています。ヨーグルトを食べ続けるとインフルエンザにかかりにくくなるという研究結果もあるようです。
 ただ、健康に良いことでも、それがストレスになると逆効果になるのだそうです。フィンランドで血圧やコレステロール値が高かった40代の男性1200人を半分に分け、1974年から15年間追跡した調査によると、最初の5年間はまじめに健康管理し、喫煙や飲酒、塩分、糖分の摂取を控えさせたグループのほうが、なにもしなかったグループより死亡者数が多かったのだそうです。
 まじめに健康管理したグループの方が血圧などは改善したものの、健康的ではあるけれど窮屈な生活がストレスになり免疫力を下げた可能性があるということです。責任感が強く自分自身を追い込む真面目な良い人は長生きできない傾向にあるともいわれます。
 ストレス解消方法は人によって様々でしょうが、てっとり早いのは笑いのようです。笑いがナチュラルキラー細胞の働きを活性化して免疫力を高めるようです。無理にいやなことをせず、「あはは」と笑いながら適当に生きるのが良いのでしょうが・・・・・・。
 日経新聞(2月17日付)によると廣川名誉教授が開発した免疫力判定検査があるようですので、心配な方は受けてみてはどうでしょうか。
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お酒を飲めない人は肺ガンリスクが高い  №172

2013-02-15 18:08:58 | インポート
 愛知県がんセンター研究所の調査で、お酒をまったく飲めない人は、お酒に強い人に比べ何倍も肺ガンリスクが高いということがわかったと新聞に紹介されていました。お酒をまったく飲めない人は一刻も早く禁煙したほうがよいと警鐘をならしています。  
 喫煙により肺ガンリスクが高まることは以前から知られていましたが、お酒を飲めないことと肺ガンとどのような関係があるのでしょうか。
 アルコールから代謝されるアセトアルデヒトの分解能力が関係しているようです。愛知県がんセンター研究所が肺ガン患者700人とガンになっていない人1400人を対象に、DNAの型で酒に強い人(アセトアルデヒドの分解能力が高い人)、飲むと顔が赤くなる人(アセトアルデヒドの分解能力が弱い人)、全く飲めない人(分解能力がない人)にわけて、喫煙量と肺ガンリスクの関係を解析したところ次のような結果が得られたということです。
 一日一箱(20本入り)×喫煙年数=45以上、つまり、20歳から一日一箱ずつ45年間吸っていたと仮定した場合、65歳での肺ガンリスクは、お酒の強いや飲むと赤くなる人はたばこを吸わない人の5倍~7倍高なのに対して、お酒の飲めない人では23倍と異常に高くなるのだそうです。 
 ちなみに、DNAの型で酒に強い人の割合は約50%、飲むとすぐに顔の赤くなる弱い人が約45%、まったくだめな人の割合が5~10%程度ということです。
 お酒に強いということは良いことだ思うのは早計で、飲酒は食道ガンのリスクを高めるということをお忘れなく。

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アルコール依存症に新薬登場  №171

2013-02-13 21:11:37 | インポート
 2月8日の日経新聞にはアルコール依存症患者向けの新薬が登場したという記事が掲載されていました。国内の飲酒人口は6000万人で、アルコール依存症の患者数は約80万人と推定されています。そのアルコール依存症患者向けた新薬が5月に日本新薬から発売されるということです。
 従来アルコール依存症患者に使用されていたのは、シアナミドやジスルフィラムという抗酒剤です。抗酒剤は酒が嫌いになる薬ではなく、アルコールを分解する作用を阻害して、少量の飲酒でも気分が悪くなり、飲酒のもたらすほろ酔い気分をなくしてお酒を遠ざけるようにする薬です。いわば、二日酔い状態にさせてお酒を飲ませないようにするわけですが、いったん断酒しても、再飲酒の危機は至る所にあります。
 もともと、嫌いではありませんから気がついたら飲んでいたというようになんの抵抗もなく飲酒してしまう場合もあります。抗酒剤を服用していれば、アルコールを飲んだら苦しくなるということが分かっているので、強い飲酒欲求に見舞われることは少ないのですが、逆に服用しなければなんの効果もなく、完治につながりにくいとされていました。
 新しく発売される「レグデクトデクト」という薬は、飲むと気分が悪くなるのではなく、飲みたいという気持ちそのものを抑えるのだということです。ただし、今日は酒を飲むのをやめて、薬で我慢しようというようにはいかないようです。新薬の販売は医療機関向けだけで市販されないようです。
 アルコール依存症の治療には、治療を受ける気になるため心の準備や離脱症状の治療、身体合併症の治療、心理的問題や人間関係の問題の整理、家族療法、断酒継続のための援助、自助集団への出席など多くのことが必要で、抗酒剤を飲んだからといって、アルコールに依存しなければならなくなった状態を変えられるものではないと言われてきました。
 つい先日は、大脳前頭前野の腹内側部や背外側面に磁場をあてることで喫煙欲求や飲酒欲求を抑えるという記事が紹介されていましたが、こちらは自分の意思とは無関係に飲みたくなくなるものです。お酒を飲むか、薬を飲むかを自分で選択できるとしたら、お酒好きな人が薬を飲むことを選ぶことは考えにくいのですが、新薬が特効薬になることを期待したいものです。

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自己愛性人格障害と国家  №170

2013-02-09 22:40:08 | インポート
 人格障害というのは、その人の属する文化から期待されるものより、認知や感情、対人関係、衝動の抑制が著しく偏っていて、柔軟性に欠けることを言います。(「精神疾患の分類と診断の手引き」)
 自己愛性人格障害については、「誇大性、賞賛されたいという欲求、共感の欠如の広範な様式で、以下のうち5つ以上ある場合に診断される」とあります。
1 尊大で傲慢な行動や態度がみられる。
2 自分が重要だという誇大な感覚をもっている。
3 特権意識が強く、自分だけ特別有利な取り計らいをするよう望んだり、自分の期待に相手が自動的に従うことを理由無く期待する。
4 対人関係で相手を不当に利用する、自分自身の目的を達成するために他人を利用する。
5 共感が欠如していて、他人の気持や欲求を認識しようとしない。またはそれに気づこうとしない。
6 自分が"特別"で、独特で、他の特別なまたは地位の高い人たちにしか理解されないと信じている。
7 限りない成功や権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
8 過剰な賞賛を求める。
9 しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。
 自己愛性人格障害の人は、自分の都合がなによりも優先されて当然だと思っているので、周りの人などおかまいなしに列に割り込もうとしたり、順番が待てずに、自分を特別扱いするよう要求したり、約束を一方的に変更したりしても、当然だと思っています。
 相手がミスや過ちを犯したりすれば大騒ぎをして糾弾するのに、自分がミスをしても何ともおもいません。自分は偉く、自分のすることは、どんなことでも特別に許されるという思い込みがあります。
 こういう人が同僚や上司にいたら、周囲の人は何かと苦労するかと思います。ましてや、国家がこのような傾向を持っているとしたら、関わっていくのは並大抵のことではありません。

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