反応遅くて申し訳ありませぬが、
私たちが(ご本人をお呼びして)日本文学協会ラウンドテーブルで扱った『吸血鬼』が、ツイッター文学賞を受賞したとのこと。
佐藤亜紀さん、おめでとうございます。
そういえばラウンドテーブルのときに、訳語の問題で「なぜ吸血鬼」という語になったのか、「鬼」っていうのは何なのか、という話題になったのですが、
「心の鬼」の話すればよかったかなあ、とふと思いました。
紫式部に
絵に、物の怪のつきたる女のみにくきかたかきける後に、鬼になりたるもとの妻を、のしばりたるかたかきて、男は経読みて物の怪せめたるところを見て
44 亡き人にかごとをかけてわづらふもおのが心の鬼にやはあらむ(『紫式部集』)
って歌があるんですよね。
ものすごく近代的な解釈で、ちょっと面白くない、って思ってたんですが。
『吸血鬼』の中で、マチェクの父親が次のように説明するんですね。
―ウピール、言うのはものの喩えですわ。村の嫌われ者をそう言うばっかで。あれはウピールだろ言うてこそっと後ろ指を指す分には、まだ形もねえ。皆が皆そう言うて後ろ指さして、嫌な顔をしてるうちに段々と人の形を取って、終いにはぴたっとその人間の姿形になるがれすて。ま、そうなったら人間、終いですの。(240頁)
思えば、マチェクの父親が一番近代的な解釈をしてるわけですが。「心の鬼」って、この説明に割と合致するかも、と思いました、です。
*『紫式部集』の引用は新潮日本古典集成、『吸血鬼』は佐藤亜紀『吸血鬼』(講談社、2016年)による。
――――――
うちでお預かりしている幼犬、まだ里親さん見つかっておりません。 →2020年1月2日に急逝しました。
詳しくは、以下をご参照ください。
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佐藤亜紀さん、おめでとうございます。
そういえばラウンドテーブルのときに、訳語の問題で「なぜ吸血鬼」という語になったのか、「鬼」っていうのは何なのか、という話題になったのですが、
「心の鬼」の話すればよかったかなあ、とふと思いました。
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絵に、物の怪のつきたる女のみにくきかたかきける後に、鬼になりたるもとの妻を、のしばりたるかたかきて、男は経読みて物の怪せめたるところを見て
44 亡き人にかごとをかけてわづらふもおのが心の鬼にやはあらむ(『紫式部集』)
って歌があるんですよね。
ものすごく近代的な解釈で、ちょっと面白くない、って思ってたんですが。
『吸血鬼』の中で、マチェクの父親が次のように説明するんですね。
―ウピール、言うのはものの喩えですわ。村の嫌われ者をそう言うばっかで。あれはウピールだろ言うてこそっと後ろ指を指す分には、まだ形もねえ。皆が皆そう言うて後ろ指さして、嫌な顔をしてるうちに段々と人の形を取って、終いにはぴたっとその人間の姿形になるがれすて。ま、そうなったら人間、終いですの。(240頁)
思えば、マチェクの父親が一番近代的な解釈をしてるわけですが。「心の鬼」って、この説明に割と合致するかも、と思いました、です。
*『紫式部集』の引用は新潮日本古典集成、『吸血鬼』は佐藤亜紀『吸血鬼』(講談社、2016年)による。
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