▲坊主岩屋下(ヒュッテ大槍との分岐)より槍ヶ岳を見る
▲西日をあびた穂高連峰 槍平小屋より見る
「一生に一度は富士山に登りたいというのが庶民の願いであるように、
いやしくも登山に興味を持ち始めた人で、まず槍ヶ岳の頂上に立ってみたいと願わない者はないだろう。
富士山が古い時代の登山の対象であったとすれば、近代登山のそれは槍ヶ岳である。」
深田久弥 「日本百名山」より
秋色を探しに出かけた
上高地から槍ヶ岳へ、槍ヶ岳から新穂高温泉へ、のんびりと単独行を楽しんできた。
色づき始めた山肌 遠くまで澄わたる空気
天候は最高、空はあくまでも青く、槍ヶ岳上空は雲ひとつない群青の空であった。
槍ヶ岳へは4つのルートがあるが、ゆっくり、のんびり行こうということで、一番楽な上高地-横尾-槍沢-槍ヶ岳-槍平-新穂高温泉のルートを選択した。
紅葉には少し早いが、そこかしこに秋色が感じられた。
自然の中に身を置いている幸せを実感。やはり自然は美しく素晴らしい。
山の自然を楽しみながらゆっくりとしたペースで歩いたが、それでも一人で歩くとオーバーペースになりがちだ。
登山グループの後尾に追いつくと、「お先にどうぞ」と道を譲られるので、仕方なく追い越してゆく。
登山道には人が少なく、1カ月前に来たときとは大違い。
初日は槍沢ロッジに宿泊したが、ここで見た星空が素晴らしく、オリオンが印象的であった。
小屋も空いていて、40人程度の部屋に8名ほどのゆったりとした宿泊状況。
風呂もあり、設備は最高。
2日目は槍を目指して歩を進めたが、他の登山者にほとんど会うこともなく、槍ヶ岳の肩に到着。
肩から穂先への登頂も人がまばらで、12分ほどでゆっくりと登ることができた。
標高3180mの頂きには小さな祠が祀られている。
小さな山頂だが、眺望は360度。
北・南アルプス、八ヶ岳、遠く富士山、白山など、本州中部の名だたる山々を見わたせる。
山頂に立てる人数は十数人程度と限られるが、登頂者が少なく、眺望を十分に満喫できる時間が取れた。
槍ヶ岳山荘に宿泊予定であったが、時間も早いことから、岐阜側の槍平小屋まで足を伸ばすことにした。
槍平小屋から見た穂高連峰も素晴らしく、眼福にあずかった。
3日目は、槍平小屋を早々に出発、新穂高温泉で山の疲れをいやし、帰路についた。
今回は、かつてこれ以上の天気はない、と思うほどの晴天に恵まれ、心地よい疲労とともに大満足な山行きであった。
帰宅した翌日は、台風17号が本土を縦断し各地に被害をもたらした。
1日違いで楽しさも大違い、改めて天候に恵まれたことに 感謝! 感謝!
【日 程】平成24年年9月26日(水)~29日(土) 3泊4日
【メンバー】単独行
【天 候】
27日 快晴
28日 快晴
29日 晴れ
【コ ー ス】
●1日目9/26 京都駅23:30発 さわやか信州号(車中泊)
●2日目9/27
上高地 6:10着
上高地 7:15発 明神館(7:47~8:02) →徳沢(8:45~8:52) →横尾(9:41~10:20) →
一ノ俣(11:08~11:08) →二ノ俣(11:15)→槍沢ロッジヂ11:48着(宿泊)
歩行時間:約3時間30分 休憩時間:1時間
●3日目9/28
槍沢ロッジヂ(6:10発) →天狗原分岐(7:55) →岩屋下(9:00~9:10) →
槍ヶ岳山荘着10:15
槍ヶ岳登頂(10:55~11:07) →槍ヶ岳山荘出発(11:45) →千丈分岐(12:53) → 槍平小屋(14:22着)
歩行時間:約7時間10分 休憩時間:1時間20分
●4日目9/29
槍平小屋(6:35発) →白出沢出合(8:25~8:40) →穂高平(9:09~9:15) →
新穂高温泉(9:45着)
歩行時間:約2時間45分 休憩時間:30分
新穂高温泉入浴
高山発 12:32
京都着 16:42
■9月27日■
【7:10】 -上高地のビジターセンター-
■登山届けを提出し、槍を目指して出発 上高地の気温は3℃ 霜がびっしりと降りていた。
【7:10】 ■上高地の河童橋より朝日をあびた穂高を見る。
【9:40】 -横尾-
■上高地を出発して2時間30分、横尾に到着。
横尾には避難小屋と横尾山荘が建ち、ここは涸沢、穂高方面と槍ヶ岳への分岐点。
橋を渡れば涸沢方面、直進すれば槍ヶ岳へ
横尾大橋の前の広場は大変広く、格好の休憩場所となっている。40分の休憩をとった。
【11:05】 -一ノ俣橋-
【11:15】 -二ノ俣橋-
■一ノ俣、二ノ俣、共に頑丈な橋 橋を渡り、樹林帯を登っていく。
【11:48】 -槍沢ロッヂ-
■一ノ俣、二ノ俣をすぎると、程なく槍沢ロッヂに到着
横尾から1時間30分 高低差は200m 沢に添って歩くので、高度は感じられない。
宿泊には早すぎ、もっと先を稼げたが、
昨夜は夜行便であったので、英気を養うために今宵の宿と決めた。
■部屋の内部の様子 宿泊客も少なくゆったりとしたスペースが確保できた。
■談話室の様子 テレビもあり大変広々としている。
■お風呂もある。 山小屋でお風呂とはこの上もない贅沢。使用可能時間は15:00~18:00
ゆったりと湯船につかる。 さすがは槍沢ロッヂ、設備は整っている。
■ロッヂ前にて記念写真を 宿泊客も少なく写真もセルフサービス
■到着後、荷物を整理し早速ビールを買い込み昼食
昼食は自宅より持参したもので、おにぎり2個、たくあん、ゆで卵、リンゴ、ドライソーセージ
■ロッヂ前から木々の間に槍が見える。 小屋の前には望遠鏡が置かれ、穂先の人が確認できる。
天気は最高、明日もこの天気が続いてくれと祈るばかり
■ロッヂの夕食と朝食 ご飯はうまかった。 おかずは? う~ん コメントはさけよう
海苔佃煮の小袋やふりかけなどは必携であろう。
■ここで見た星空が素晴らしく、オリオンがくっきりと見え非常に印象的であった。 (この写真はいただき物です。)
■9月28■
【6:40】 -ババ平テント場-
■槍沢ロッヂを6:10に出発。 樹林帯を縫うように登り始め、900m、30分程でババ平のテント場につく。
ここは旧槍沢小屋跡地でキャンプ指定地になっている。
【6:50】 -槍沢の雪渓-
■ババ平をさらに沢沿いに登ると、雪渓が見られた。
【7:05】 -大曲-
■右折すれば水俣乗越に通じる。槍へは直進 ここからは徐々に傾斜が増してくる。
ここで槍沢は大きく左(西)にカーブしているので、この辺りを「大曲」と呼んでいる。
【7:55】 -天狗原分岐-
■樹林帯を抜け、ガレ道へと一変する。
左折すれば逆さ槍ヶ岳映る天狗池へ 天狗原-中岳-大喰岳-飛騨乗越-槍ヶ岳ルートがあり、これも人気が高い。
今回は直進することとする。
【8:00】 -天狗原分岐付近のナナカマド-
■ナナカマドが赤く色づき、空の青とのコントラストが素晴らしい。
【8:40】 ■槍が目前に迫り、ピッチが上がるが道はガレとゴーロで登りづらい。 ■はい松の中をジグザグに登る。
【8:55】 -坊主岩小屋下分岐-
■槍の姿を見ながらひたすらゴーロ道を登る。
【8:58】 -坊主岩小屋(播隆窟)-
■槍ヶ岳を開いた播隆上人が泊まったと言われる自然の岩小屋
播隆は5回槍ヶ岳に登山している。4回目の登山時(1834年)には53日間もこの小屋に篭もり念仏を唱え続けたという。
中には、石の仏様が安置されている。
【9:35】 -殺生分岐-
■殺生ヒュッテとの分岐点。槍ヶ岳山荘へは40分ほどの道のりだ。
【9:35】 -殺生ヒュッテ-
■殺生ヒュッテでは、冬を目前に控え山小屋のメンテナンスに余念がない。
この日は、屋根の塗装作業が行われていた。
【10:15】 -槍ヶ岳山荘-
■槍ヶ岳山荘に到着 時間が早いせいか登山者は少なかった。
【10:15】 -槍ヶ岳山荘から見た槍ヶ岳- (写真をクリックすれば大きな画像が見られる)
■拡大画像では穂先の第1はしごと第2はしごは見える。岩にとりついている人は確認できない。
【10:55】 -槍穂先への登り- (写真をクリックすれば大きな画像が見られる)
■槍ヶ岳山荘で40分ほど休憩し登頂を開始する。
急な岩場の登りだが、岩がしっかりしており手がかりも足がかりも問題はない。
特に難しい個所はなく、慎重に登れば比較的容易に頂上にたどり着ける。
長いはしごをクリアするこつは、ゆっくりでも良いからリズミカルに登ることだ。
平日(金曜日)のためか頂上にアタックする人はごく少ない。
休日ともなると長蛇の列、登頂のための大渋滞が発生するそうだ。
通常は上り下りで1時間程度のところ3、4時間もかかることがあるそうだ。
拡大画像では、私の前に4人がアタックしているのがわかる。
空いていたので12分程で頂上に到達。
ここで特に役に立ったのが手袋である。登山用の高い物ではなく、ホームセンターで買った作業用の手袋だ。
この手袋は手の平側はゴム引きで甲側はゴムのメッシュとなっている。
岩をつかむときも、吸い付くように手がかりが確保できる。とにかく安い。
雨の時は農作業用のゴム手袋を着用することにしている。
とび職用のハイネックの長袖(夏用)もおすすめグッズだ。
ホームセンターの品物を探せば、安くて実用的な山グッズが沢山見つかるはずだ。
【11:07】 -槍ヶ岳頂上にて-
■頂上に着くと槍ヶ岳の看板をもち、早速の記念撮影。
標高3180mの頂きには小さな祠が祀られている。
小さな山頂だが、眺望は360度。
北・南アルプス、八ヶ岳、遠く富士山、白山など、本州中部の名だたる山々を見わたせる。
山頂に立てる人数は十数人程度と限られるが、登頂者が少なく、眺望を十分に満喫できる時間が取れた。
■頂上より、槍ヶ岳山荘、穂高へ続く登山道を見る。
【11:26】 -槍穂先からの下り- (写真をクリックすれば大きな画像が見られる)
■槍の穂先で15分ほど眺望を満喫し、下りに取りかかる。
下りはクサリが連続して設置されているので、あっという間に下から3分の1程度まで下りてこられる。
【11:55】 -槍飛騨乗越-
■槍ヶ岳山荘で、昼食休憩を20分ほど取ったあと先に進む。
槍ヶ岳山荘に宿泊予定であったが、時間も早いことから、岐阜側の槍平小屋まで足を伸ばすことにした。
【12:10】 -槍よ さらば-
■槍下山道より、槍ヶ岳を振り返る。
「返り見すれば遠ざかる~ まぶたに残る槍ヶ岳」 穂高よさらばの歌詞が思い出される。
【12:55】 -千丈分岐点-
■飛騨乗越からの下山道は急な下りのガレ道で、何回も足をすべらした歩きづらい道だ。
■ここ千丈分岐点は左折すれば千丈乗越、西鎌尾根へと続く。
ここには小さなレスキューボックスが置かれ、乾電池や登山靴のソールの応急修理品も置かれている。
槍平小屋にも同様のボックスがあった。きっと槍平小屋主人の好意であろう。
主人の人柄がうかがえる。
【14:25】 -槍平小屋-
■千丈分岐点から約1時間30分で槍平小屋に到着。 (参考:槍平小屋ホームページ)
「ひと休みしてくださいね。
これから山頂を目指す方も、いつもの街に戻って行く方も・・・」
新穂高温泉から槍平を経て槍ヶ岳へ向かうルートは、上高地から槍沢を経て
槍ヶ岳を目指すルートに比べ歩行距離は約5.7km短くなっており、槍ヶ岳登頂への最短ルート。
夏山の混雑激しい信州側を離れて、あなただけの静かな山行をぜひ体験して下さい。
(槍平小屋ホームページより)
■西日をあびた穂高連峰 槍平小屋より見る
■9月29■
【6:35】 -槍平小屋を出発-
■槍平小屋から、こもれ陽をあびながら、爽やかな登山道を下る。
高原の道という印象あり。
【7:20】 -滝谷出合-
■飛騨沢沿いに下ると滝谷出合に出る。ここから穂高を眺めると特徴ある滝谷ドームが、
その存在感を示すかのようにそびえている。
ここ滝谷出合には避難小屋がある。
【8:25】 -白出沢出合-
■登山道はここまでで白出沢(しらだしさわ)を渡り、ここから先は右俣林道を進む。
【9:10】 -穂高平小屋とトチの実-
■白出沢出合からまもなくで、穂高平小屋に到着。
林道には多くのトチの実が落ちている。 これが栗なら拾って帰るのに……
食べ物の乏しい時代に育った者のサガでしょうかねえ
新穂高温泉まではあと一息である。
【9:45】 -新穂高温泉・中崎山荘-
■時間的な余裕があったので温泉でゆっくりと汗を流す。極楽、ごくらくウ~
バス停近くの新しいきれいな日帰り温泉施設だ。
【10:45】 -新穂高温泉バス停-
■すぐ上に新穂高ロープウエイの乗り場があり、西穂高の独標まではハイキング感覚で上れるようになった。
温泉で汗を流した後、10:45発、高山行きバスに乗車、一路帰宅の途についた。