『梨花一枝春』
前大徳文雅師
あちこちで桜が満開です
庭の利休梅の花も
春風に吹かれて
ゆらゆら揺れています
こんな春の喜びのまっただ中にいながらも
一週間もすれば
やがて散ってゆく花々の無常を思うと
どこか切なく感傷的な気分になるのは
今も昔も変わらない
日本人の感性なのでしょうね
今日は
月に一度の研究会を行い
・炭所望
・薄茶
・唐物 草
・台天目
以上の稽古をいたしました
唐物や台天目などの相伝物は
点前の内容が書かれた書物が一切なく
全て口伝によって
師匠から弟子へと伝えられます
そのため
細かい点において
先生によって
多少の違いがあるようです
また場合によっては
同じ先生でも
その時によって
少しニュアンスが変わるようなことも
あるような気がします
そうなると
何が「正しい」のかわからなくなり
「本当のこと」を知りたくなります
しかし
誤解を恐れずに言うなら
お茶の点前においては
唯一絶対の「正しい」「本当のこと」は
存在しない
と考えるのが
「正しく本当のこと」
のような気がしています
実際
点前は時代によって
少しずつ変化していますし
同じ先生でも
お若い時とお歳を召されてからでは
お考えが変わることもあるでしょう
相伝物ではなく
基本的な点前についても
出版されている本によって
若干異なる場合があります
とは言え
やはり『正解』を求めたくなるのが
人情でしょう
特に
人様に教えるとなると
いい加減なことを
お伝えしてはいけないと思うので
答えを探して悩みます
昔は
「本にはこう書いてあります」などと言えば
先生に
「もう明日から稽古に来なくてよろしい」と
言われたという話も聞いたことがあります
まあ
そこまで極端なことは言いませんが
迷った時は
今ご指導を受けている師匠のおっしゃることに
従うという姿勢が
基本的なお茶の道なのではないかなと
私は思っています
その一方で
書かれた物なども参考にしながら
迷ったり悩んだりして
自分なりの答えを選択していくのも
またお茶の道かもしれません
主菓子 初花 鼓月製
干菓子 鶴屋八幡製