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「無事」
大徳寺黄梅院太玄師
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高麗卓 薄茶点前
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主菓子 京の師走
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実家の父が喜寿の時に
お祝いをいただいた方々へお配りした茶碗です
実家の座敷机の上にたくさん積んであったその一つを
持っていっていいぞと言われ
いただいて帰ったその日から
あっという間に15年の月日が流れました
先週11月23日の未明
父は91年の生涯を閉じました
いくつになっても
働くこと・身体を動かすことだけが
趣味のような父でした
そんな父の最期の日が
勤労感謝の日だったことは
偶然ではないような気がします
そして
私が父の思い出の中で
今でも心に残っていることと言えば
社会人になりたてでまだ学生気分の抜けていなかった頃
「お金をいただいて働く」ということには
自分が思っているより責任がつきまとうことだ
と教えてもらったことでした
その時私は
父が一人前の社会人として
認めてくれたような気がしました
お葬式をすませた後
実家にもう一晩泊まってくることも考えましたが
父に「家に帰って自分のやるべきことをしろ」と
言われているような気がして
母の許しを得て帰阪しました
実はお葬式の当日
ちょっとしたきっかけがあって
私は自分でも全く想像もしていなかったほど
強いものがこみ上げてきて
母の膝に顔を埋めて大泣きしてしまいました
その感情の乱れを抱えたまま
帰宅したのですが
それでも
翌日普段通りにお稽古をし
その後に予定していた茶事の準備に
一つ一つ集中していくうちに
激しく暴れた心が
少しずつおとなしくなっていきました
お茶のお陰で
自分自身の光を見失わずにいることができました
お茶の力です
そして
そんな私を父は
きっと許してくれていると思います