3月は、学校も休みで、講演や研修が少ない。4月から新年度のスタートで、構想を練るにはちょうどよい。
主な科目の授業の内容は、毎年、変えている。同じことを2年続けて話すのが、いやだというだけの理由である。というわけで、来年度の地方自治論を考えた。
来年度は、「自治の原点から」とした。数年前に、同じテーマで面白い授業をしたので、さらにバージョンアップしようと考えている。そして第１回目のオリエンテーションは、「サガジョ」である。
長いが、こんな感じ。
・サガジョ
私は、相模原市南区にある相模女子大学（サガジョ）に勤務している。相模原市そのものが、いま一つ知名度が低いので、大学のほうも、知らない人も多いが、実は相模女子大学の歴史が古く、創立が1900年ということで、日本でも６番目に古い女子大学ということになる。略称はサガジョと言うが、サガジョといえば、今から50年以上も前、近くの高校に通う純朴な学生であった私にとっては、憧れの女子高だった。特に、その制服の清楚さは、私の表現能力では適切に再現することはできないが、ともかく魅力的であったったことを今でもはっきりと覚えている。
そういう大学であるが、新しい試みもたくさんやっていて、５年連続で日経グローカルの地域貢献度ランキング女子大№１になった。私も地域連携をしながら、学生たちと一緒にあちこちに出かけている。
・社会マネジメント学科
ちなみに、私が所属するのは、社会マネジメント学科である。人とお会いして、社会マネジメント学科ですと名刺を出すと、怪訝な顔をされることがある。社会マネジメント学科とは、何をやるのですかと聞かれることも多い。その場合、いつも、次のようにお答えをしている。
文句を言い、欠点をあげつらうのは簡単である。しかし大事なのは、対案や対応策ではないか。つまり社会マネジメント学科は、「文句を言い、欠点をあげつらうのではなく、その欠点を克服する対案や対応策を考え、提案し、それを現場で実践できる学生を育てる学科である」とお答えする。なるほどと、頷いてくれる人も多い。
私たちは、民主主義の社会に暮らしているが、この民主主義が有効に機能するには、市民一人ひとりの自律性と、共同体のことがらを我がことのように思う貢献性が求められる。これが「市民」であるが、サガジョのような教養大学は、こうした市民を育てていくのが任務である。そこに、ただ文句言うだけでなく、対案を提案できる学生を育てる社会マネジメント学科の存在意義がある。社会マネジメント学科は、案外、サガジョの基幹学科ではないかと思っているが、ここでも声高に主張するのではなく、地道に実践していくなかで、存在意義を示していくことが大事なのだろう。
いずれにしても、文句を言うのではなく、対案を示すというのは、私の信条にも合致しているから、本当に良いところに勤めさせてもらっていると感謝している。
・地方自治と社会マネジメント
私の専門は、現代自治体論であるが、それに対する私の学問的態度も、まさに社会マネジメントである。
フランス革命以後、国民国家ができて以来、国民と政府との関係は、政府の専横から国民を守ることにあった(立憲主義)。自治の理論は、その政府を市民がコントロールするということで組み立てられてきた。つまり、役所は暴走し、悪いことをするという前提で、理論が組み立てられているのである。
この考え方は、要するにお役所をチェックしていれば、市民はハッピーになれるという思想である。しかし、長い間、市役所で働いた経験から、それではとても市民は幸せになれないと実感している。だから、私は、役所をコントロールすることも大事であるが、同時に、市民自身も、まちのことを考えて、それを実践することも重要であると考えている(新しい公共論)。要するに、政府に要求し、文句をいうだけでなく、市民一人ひとりが、提案し、対応策を出すのが重要であるということであるが、これはまさに社会マネジメントである。
ただ、私のような自治理論は、学会では少数派である。今は、フランス革命があった１８世紀ではなく、２１世紀ではないかと小さな声で反論しているが、力及ばず、居心地の悪い思いをすることもある。
そんな私を支えてくれるのが、社会マネジメント学科である。文句を言うだけでなく、創りあげていくことが重要というのは、私の自治理論と同じだからである。
続きは、4月に。
