松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆大震災を乗り越えるように自治基本条例はつくられているか

2011-05-04 | 1.研究活動
 東日本大震災は、自治そのものを覆すような危機であるから、これは、その自治そのものを考える自治基本条例をどのようにつくればよいかが試されることでもある。大震災を乗り越えるように自治基本条例はつくられているか。
 今回、あらためて明らかになったのは、
 ①地域の力、住民間での連帯が、結局は、一人ひとりの住民を救うということ。いまだ被害の状況が報道されず、救援もこないなかで、住民間で住まいを提供しあい、食料を分け合って、助け合ったという事例がいくつも報告されている。地域コミュニティの重要さが改めて、明らかになった。
 ②NPOの力が、こんなにも広く、大きかったこと。さまざまな市民が、自分ができる範囲で、自分の得意分野で、被災地に共感し、行動したこと。他者への思いと行動が、民主主義であるが、あらためて日本の民意の高さ(持っている潜在力といったほうがいいかもしれない)が、明らかになった。
 ③市町村職員の頑張りである。自らが被災者であるにも関わらず、住民のために奮闘しているという例が、どこのまちでも行われている。自治体職員魂は健在で、本当にうれしく思う。
 これまでの自治基本条例は、もっぱら役場をターゲットに、行政が悪いことをするという前提で、行政組織や職員をコントロールする(縛る)ためにつくられてきた。これが住民自治だと思われてきたからである。
 たしかに、これもひとつの自治ではあるが、主権国家と国民の関係を機械的に地域にあてはめるだけでは、地域や日々の暮らしはつくれない。住民自治という概念は、もっと重層的で広範だと思う。18世紀の事情に縛られずに、机上やパソコンの中で考えず、地域で活動すればすぐにわかることである。
 今回、あらためて大事さが、再確認されたのは、
 ①地域の力を伸ばすこと。自治会町内会といった地域コミュニティを真正面から取り上げ、それを民主主義(市民の自律と他者への思い・行動)から、再構築する道を希求することである。
 ②NPOの価値を認め、それをまちづくりに活かす道を模索すること。私たちの市民社会は随分とストックを溜めてきたということである。問題はこれをどう活かすか、そのすじ道をつけることである。また、地域コミュニティとの連携も、容易ではないが模索することだろう。
 ③まちは、そこに住民登録している人だけでつくられていないこと。住んではいないが、そのまちのために活動している人、遠く離れているが、その町がすきやねんという人の力が、どれだけ大きいか。ここでも主権国家と国民の関係を地域に機械的に当てはめないことである。排除は、本当に、みすみす・・・、もったいないことだとと思う。
 ④役所や議員をチェックするというのも大事であるが、もっと大事なのは、その力を存分に発揮できるように励ますこと(励ますようにチェックすること)である。自分たちの代表や仲間を応援し励ますのは、日々の暮らしの中では当たり前のことではないか。第一、だれだって、「ありがとう」と後を押されれば、元気が出る。力を削ぐのではなく、持っている力を120%出してもらったほうが、ずっといいと思う。

 うれしい便りがあった。2年間にわたって、一緒に、市民サイドから自治基本条例を考えた長野県上田市のSさんは、地震直後に、市民として救援の体制を組み立てて活動を行い、連休の前半には、忙しい仕事(会社の経営)の合間を縫って、4日間、岩手県へボランティアに行かれた。「行政組織が壊れたときに何が起こるのかを検証しなければいけないと思います。ただ闇雲に行政改革を訴えるだけでなく、何を残して何を進めて行くのか、市民と行政が向かい合って話さなければ 行政改革という津波に市民生活がのみ込まれてしまうと感じました」という連絡をいただたが、私も共感する。あらためて自治基本条例は、創造する条例だと思う。
 
 
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