新城市の住民投票は決着がついた。ただし、正解が問われるのは、20年後である。
地方自治は、10年後から正念場に入る。団塊の世代が後期高齢者(75歳)になるからである。そして、最も厳しくなるのは、今から20年後である。団塊の世代が85歳になる。税収の大幅減少と社会保障費の急速な増加は確実である。
たとえば認知症だけをとっても、10年後には700万人になり、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になるとされる。社会的経費は、20年後には、24,3兆円にまで膨れ上がるという。国の一般会計予算は96兆円で、そのうち税収は54兆円にしかすぎないから、そのすごさがわかる。ちなみに、毎年の借金(公債費)は、37兆円にも上っている。
この時代には、まちづくりも大きく変化する。国が進めるのは、コンパクトシティである。限られた税金を効率的に使うために、まとまって住んでもらう施策である。それは逆にいうと、周辺の地域においては、行政サービスが撤退を始めるという施策でもある。
公共建築物も、この時期になると、新しい建物を建てる補助金は、ほとんど期待できない(合併特例債のような大盤振る舞いは期待できない)。むしろ高度成長期に造った施設は、なんとかだましだまし使ってきたが、いよいよ更新の時期に入ってくる。国が考えているのは、取り壊しのための補助金である。
公共施設は、町の中心部における集約化が進む。周辺の取り壊した施設を集めた施設であるが、新城市で言えば、旧庁舎は、徐々に、市役所としての機能から、公共施設の集約施設として使われるようになるだろう。20年後、その旧庁舎をどうしようかという議論になる。周辺の公共施設の受け入れ施設として、建て直そうという議論である。
今度は、国の補助が出ないので、自費で建てることになるが、この時の資金繰りは、今よりも数倍の厳しさになる。そこで、お金を使わず、機能を果たせる方法を考えなければならない。知恵を出せば、きっといい方法があるはずである。
何度も書いているが、小さな自治体が、コップの中の争いをしている余裕はすでにない。そんなことをしていると、せっかくこれまで奮闘し、あるいは応援してくれている人たちからも、あきれられて、だれも知恵を出してくれなくなる。資源、権限が乏しい私たちには、知恵で勝負するしかない。
20年後に、なぜあの時と言われないように、今から周到な準備と大いなる知恵を出してもらいたい。
同じ人口規模の市と比べ職員数の多い新城市も、今後は職員数も減り、事務も電子化・ペーパーレス化され広いフロアは必要ない時代が来る。
コンパクトな市庁舎を建設してよかったと思う日が必ず来るのだ。