松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆熟議の市長選挙⑭公開政策討論会実施委員会に期待すること(三浦半島)

2017-07-18 | 1.研究活動
 新城市のような公開政策討論会は、ほとんど事例がないので、うまく運用するための制度設計は容易ではない。おそらく、双方から選ばれた実施委員会のメンバーが考えていくのだろうが、指名された人は、今ごろ、どう進めるか頭をひねっていることだろう。

 ともかく基本は、立候補予定者のための公開政策討論会ではなく、有権者市民のための公開政策討論会ということである。もし、この討論会を自陣営を有利に導くために使おうなどと考えたら、それでおしまいである。新城の未来のために一肌脱いているという矜持と、新しい自治の文化をつくっているという「誇り」を大切にしてほしい。

 公開政策討論会については少し調べてみたが、先行事例も十分になく、きちんとした研究論文も限られている。結局、参考事例を踏まえながら、現場で考えていくしかないであろう。

 参考になるのは、
 ①1983年に廃止された立会演説会。なぜ廃止されることになったのか、そこから公開政策討論会の制度づくりの重要なヒントが出てこよう。
 ②JCが行っている公開討論会。今回の熟議の市長選挙との違いを踏まえて、こちらに活かせる意義や課題を考えれば、よりよい公開政策討論会ができるだろう。
 ③リンカーン・フォーラムが行っている公開政策討論会。これも今回の熟議の市長選挙とは違うが、参考になることも多く、その意義や課題を考えるなかで、あるべき公開政策討論会の制度づくりができるであろう。

 例えば、①の立会演説会であるが、これは言うまでもなく、選挙の王道である。候補者がそろって、自らの政策を演説し、それを有権者が聞けば、我々に代表にふさわしい人を適切に選ぶことができるはずである。ところが、実際にはうまくいかず、廃止となった。

 どんな課題があったのか。
 ①ヤジと怒号。自らの意見と違う候補に、ヤジと怒号を浴びせたのである。人として礼を逸した話であるが、実際、そうなった。
 ②漫談調の面白い話をして、一般受けを狙う候補者がいた。これでは、政策を聞いて、比較判断しようという、まじめな有権者は、参加しなくなる。
 ③大挙して出かけ(動員)、自分たちが応援する候補者の演説が終わると、みんなで帰ってしまう。観客のいない閑散とした会場で、残された候補者は、演説をすることになる。

 あまりに低レベルの話で悲しくなるが、日本で実際に頻発し、新城市で同じことが起こらないとは限らないから、こうしたことがないように、知恵を絞って、仕組みを作らなればいけない。その役割を白井さん、穂積さんから推薦された実施委員会のメンバーが主導的に考えることになる。これだけでも大変だと思う。

 繰り返しになるが、公開政策討論会は、自陣営を有利に導くために使ったら自滅行為である。もし、仲間のメンバーがヤジっていたら、「やめてください」と厳しく律するのが、実施委員会の役割である。

 さて、かつて立会演説会で行われた弊害を防ぐために、どのような仕組みをつくるか。実施委員会の人たちは、すでに考えていると思うので余計なことかもしれないが、念のために思いつくまま。

 例えば、ヤジでは、
・心がけも大事なので、始まる前に、きちんとルールの確認が必要だろう。子どもじゃないんだからという反論があるが、過去の立会演説会では、子ども以下のことが頻発した。
・心掛けだけでは、「ついつい」ということもあるから、やはり仕組みである
・ルソーは、民主主義が機能するために、程よい大きさが大事と言っている。公会堂のような大きなところでは、お互いの顔が見えないから、無責任なヤジがでるが、程よい大きさの会場なら、顔が見えるので自制が効く。もしヤジを飛ばしても、誰だかすぐに分かる。ヤジの方向に向かって、みんなで、「あらまあ」という視線を投げかければ、次はやらなくなる。ここから会場の場所や規模、さらには会場のつくり方がイメージできる。
・きちんとした会場管理の体制が必要になる。その会場の運営責任者を決め、簡単な実施マニュアルをつくることになるだろう。
・大事なのは司会者である。話しやすい雰囲気と毅然とした態度が求められる。これはという人を見つけ、早めに頼んで、おく必要がある。
・何よりも、立候補予定者同士の、論点を明確にした、裏付けのある説得的な政策論議が、第一のヤジ防止策である。候補者同士の真摯なやり取りがあれば、ヤジも出ないだろう。

 ここではヤジの問題を取り上げたが、ヤジ以外にも、立会演説会の反省も踏まえた、いくつもの乗り越えるべき課題があるだろう。
 そのほか、JCの公開討論会を踏まえ、またリンカーン・フォーラムの実践例も研究しないといけないだろう。時間との関係もあるので、そうゆっくりも勉強できないので、要点を抑えた基本的枠組みをまずつくり、そのうえで、やってみないと気がつかないことがあるので、やりながら、修正していくという、対応になるだろう。今回は、走りながらの仕組みづくりであるが、その成果は、次回に活かすことができる。

 大変だと思うが、実施委員会のメンバーの奮闘に期待したい。
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