総合計画の委員になって、総合計画について、考えることになった。いくつかの論点があり、順次、書いていこう。
最初に、結論部分を書いておこう。
1.総合計画は、参加型総合計画と協働型総合計画の区分できる。参加は信託論を起源とし、公共は行政が担うが、そこに市民が加わるという概念である。これに対して、協働は、市民も公共の担い手ということである。新しい公共論を起源とする。
2.両者の違いは、総合計画の内容となって現れる、簡単に言えば、総合計画が、従来の行政計画にとどまるのか、公共計画となるかである。
3.行政計画の場合は、総合計画には、行政の施策が書かれる。最近では、それが数字目標で表される。頻出用語は、「推進」であるが、市民(自治会、町内会、NPOも含む)がリーダーシップを取る仕事も増えてきたので(例えば、リサイクル)、「支援」という言葉も多くなった。
4.行政計画では、主語は、「市(市役所)は」となる。市民の行動基準は書かれず、市民は施策の対象のような書き方になる。「行政は、市民のリサイクルの取り組みを支援するため、・・・」。お仕着せだという議論も出てきてしまうのだろう。
5.行政計画としての総合計画も、策定プロセスは、市民参加型となる。最近では、若者の声を聞く仕組みを導入するところが目立つようになった。いいことだと思う。私が知っている中では、旭川市の総合計画は、参加型の総合計画の典型例だと思う。
6.協働型の総合計画は、行政計画ではなく、公共計画である。かつては、地方自治法に基本構想の策定義務があったが、それが削除された。そこには、「総合的かつ計画的な行政の運営を図るための 基本構想」(旧4条2項)つまり、「行政計画」としての総合計画を作らなければいけないと書かれていた。その規定がなくなったということは、今度つくるときは、「公共計画」としての総合計画を作るという論理である。
7.公共計画の総合計画には、行政の施策と並んで、市民の行動指針も書かれる。「市民もリサイクルに努める」といった感じである。行政の施策は、それを後押しする(支援)メニュー+独自のリサイクル(推進)メニューが書かれる。
8.基本構想は、10年後こんなまちの暮らしになるということが書かれる。「リサイクルが進んで、無駄にゴミができなまちになっています」的な内容となる。岩手県滝沢市は、これを「幸福感」を言う言葉で表し、具体的な事例をわかりやすく表明して、それで有名になった。
9.協働型の総合計画の初期のものに、阪南市の総合計画である。大阪国際大学にいたときに何度も通った。箕面市の総合計画も早いものだと思う。どこが一番最初なのか、知っている人がいたら、教えてほしい。
10.それを徹底したのが、岩手県滝沢市の総合計画である。ここでは総合計画とは言わず、基本構想は「地域社会計画」、基本計画は、「地域社会行動計画」と銘打っている。地域社会行動計画は、市民主体(市民の行動事項)をまとめた「地区別計画」と、従来型の総合計画に当たる「市域全体計画」に分かれている。地区別計画は市民主体で作る。
11.ここが大事であるが、総合計画を協働型に変えたところは、自治基本条例を持っている。逆に言えば、自治基本条例で、まちのあり方を真剣に議論すると、総合計画の作り方は、自然に変わっていく(協働型になる)。これも自治基本条例で変わることの一つである。あるいは、協働の意味がしっかり身につけば、総合計画は、従来の行政計画とは違ってくる。
余談。岩手県滝沢市の総合計画をリードしたのは誰だろう。ここには、岩手県立大学がある。実は、かつて、ここに行きかけたことがある。雪の日、岩手山がきれいなところだった。もし思い切って行っていたら、私は滝沢市の審議会の委員だったかもしれない。しかし、私では、とても、こんな計画はできなかったろう。岩手県立大学には、高橋秀行先生もいる。しばらく、やり取りがないが、元気で参加論を追求されているのだろう。ともかく、滝沢市は、恵まれている資源を大いに活用しているのだろう。
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