平成26年度の地方自治法の改正で行政区の役割の拡充された。総合区の制度もその一つにやや唐突に入っている。
区の事務所が分掌する事務を条例で定めることとする(第252条の20第2項関係)とともに、市長の権限に属する事務のうち主として総合区の区域内に関するものを処理させるため、区に代えて総合区を設け、議会の同意を得て選任される総合区長を置くことができる(第252条の20の2関係)ことになった。
内容は、指定都市の区長を一般職から、副市長と同じように、選任にあたって、議会の同意を要する特別職に変えること。要するに、区長は、これまでよりも偉くなったということである。
積極的な区政運営を後押しする規定もある。
・総合区長は、総合区の区域に係る政策及び企画をつかさどるほか、法律若しくはこれに基づく政令又は条例により総合区長が執行することとされた事務及び市長の権限に属する事務のうち主として総合区の区域内に関するもので次に掲げるものを執行し、これらの事務の執行について当該指定都市を代表する(252条の20の2第8項)。要するに、これまでは市長の補助執行であったが、総合区長になると、自分の事務として行うことになる。市を代表するとも書かれている。
・総合区長は、総合区の事務所又はその出張所の職員(政令で定めるものを除く。)を任免する。ただし、指定都市の規則で定める主要な職員を任免する場合においては、あらかじめ、市長の同意を得なければならない(同9項)。要するに、これまでは区長の部下も市長が任免していたが、総合区長が任免できることになる。
・総合区長は、歳入歳出予算のうち総合区長が執行する事務に係る部分に関し必要があると認めるときは、市長に対し意見を述べることができる(同10項)。直接には、法律上の意見具申権を規定しているが、枠予算や局との調整権も内容になるのだろう。
ただ、それによって、実際に区長さんが、自立性を高め、独自の区政運営ができるかどうかは別のことである。例えば、総合区長の任期は4年であるが、市長は、任期中においてもこれを解職することができる。もし区長が、市長の意とは違う政策を提案し、どんどんとやっていたら、市長はきっと許容できないだろう。
そもそも、この制度を待望する指定都市側のニーズがあったのか。大阪の橋下市長が、都構想によって大阪に特別区を導入しようとした動き、さらには横浜市などを中心に、指定都市をさらにバージョンアップした特別自治市を目指す動きに対応したものとされる。大阪が狙うのは、区長公選であり、横浜市が狙うのは、県からの大幅な権限移譲なので、総合区はピントがあっていないように思う。
私は横浜市にいたので、こんな法律をつくらなくても、区に権限はいくらでも移譲できることを体験している。総務省の調査を見ると、横浜市の場合は、区への権限移譲や職員配置は他の指定都市に比べて群を抜いている。
今から、30年近く前、区役所の自主性を確保するために、自由に使えるお金を全区一律に配布する事業を始めた。区づくり推進費といったが、当時の偉い人から、「子づくりか」とからかわれ、「それでは区役所ごと、力量の違いが出る。サービスにバラつきが出る」と反対を受けた。
本来は、こうした積み上げがあって、総合区も動くものになるなだと思う。いずれにしても、総合区は、うまく説明できない制度である。
大阪都構想への対応としてつくられたと聞くが、上からの指示で、さしたるニーズもなく、だれも採用するとは、思われない制度をつくるのは、辛かったのではないかと同情の気持ちが湧いてくる。
役所がポストをつくりたいといったことはないと思う。むしろ、この制度がそっと消えてほしいと思っているくらいではないだろうか。これはむろん、確認した話ではなく、推測です。