松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆「地方自治法がある」・・・

2012-05-22 | 1.研究活動
 自治基本条例は、なぜか政争の種になりやすい。随分前のことになるが、自治基本条例をマニフェストの掲げた前町長を破った新町長さんが、自治基本条例を否定する理由として、「地方自治法がある」といった。
 そうだろうか。職業柄、私には、現行の地方自治法の欠陥が目だってしかたがない。
 大げさに言えば、①地方自治法は、自治体(特に市町村)の首長、職員、議員を信用していない法律である。だから、400条にもわたって、箸の上げ下げまで詳細に書いているのである。自治体の自由に任せたら何をするかわからないということなのだろう。②地方自治法は、市民を相手にしていない。400条にわたる条文のうち、市民が主語の条文は、ほんの5,6条である。出てくるのは、請求あるいは監査する主体としての市民である。要するに、市民は欠点をあげつらって文句を言えばよく、自ら創造していく能力は全く期待されていない。
 それではあまりにも悔しいではないか。こうした物言いに対して、役所も議員も、そして市民も自らの力を示そうというのが、自治基本条例である。どうせ何もできないと思われているのに対して、「ほらどうだ」と示すのが自治基本条例である。
 地方自治とは、地域の課題を解決して、そこに住む人が幸せに暮らせるようにするという極めて簡単なことである。そのためには、みんなが集まって力を出すことが基本で、これは国民国家ができる前から、私たちは、ずっとやってきた。18世紀に国民国家の理論ができて、それを地方自治に当てはめた結果、自治とは、政府をチェックすることに矮小化されてしまったが、それだけでは、私たちは幸せに暮らせないことは、あまりに自明である。
 新地方自治法の検討はどこまで進んでいるのか、よく分からないが、国民国家の理論から一度離れて、自治の基本から考える必要があるように思う。
 なお、地方自治の本質について、固有説と伝来説があり、固有説が地方自治の基本に合致しているように理解されるが、これもあまりに単線思考だろう。そんなに単純に話が済めば、苦労はいらない(単純な結論はデメリットも多い)。「地域の課題を解決して、そこに住む人が幸せに暮らせるようにする」という基本から考えると、ここでも両者を止揚することになるだろう。
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