研ぎ澄ませた力。腕は五重にカートリッジを吐き出してその力を最大限に高めてる。二つの腕が全部を赤くして、今にも溢れそうな力をこちらに向けてくる。今までは右左で普通に腕を振るってきたんだが、今回はその腕を後方にピーンと伸ばしてそして更に回転も加えてる。そして大きく回り込んで勢いまでつけてむかってる。
さらにさらに、噴き出したブースターがキラキラとした粒子を放ち、まるで大きな蝶の羽の形を形成してた。美しい光景だ。けどこっちも負けてる訳にはいかない。だからってこっちは力を高めてる訳じゃない。
研ぎ澄ませてる。だから派手な事なんて一切ない。寧ろ、自分はリラックスしてた。深く息を吐き、体内の聖剣と対話する。
「わかりますか? 私はここにいます」
「ああ」
腰を落として、背を丸める。右腕を左の腰の所にもっていき、そこにはない剣を掴む。向かってくる腕の圧力を感じる。けど自分はまだ動かない。
キン――
そんな音が響いた。それは自分が動いた音じゃない。
「行きなさい勇者。今なら切れる!」
アイ殿の言葉。今のは彼女の攻撃だろう。まるで銃弾がはじかれたような音だったけど、疑いなんてしない。きっと彼女はやってくれた。今の腕はこの船のシステムから切り離された状態なんだろう。
何も変わってないように見えるが向かってくる腕がぶつかる直前に自分も動く。そこにはない剣を振りかぶる。ないけど、ある。そもそもが剣は自分自身。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガ――
と、何度でもぶつかりあう音が響く。そして自分たちは交差してた。訪れる静寂。プシューと腕が白い湯気を吐く。その瞬間に膝をつく自分。自分の腕がかなりぼろぼろになってる。感覚がないといっていい。
けど……
ボン! バンッ! ドガン!
――と腕は至る所から爆発して腕自体が落ちていく。そしてそれと共に、腕が繋がってる輪っか。そこにもひびがピギピキ――と広がっていく。
(これで終わりだ)
そう思った時だった。
『ちょっと待ちなさい』
そんな声が頭に響くと同時に、崩れたこの工場の中心、腕が現れた場所からG-01殿が現れた。
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