「君、軽いね。それに――」
そういって仮面の男は膝上にお尻を落とした平賀式部の髪にその手を差し込んだ。そして梳きつつ、顔を寄せて「んーー」とか言い出した。
つまりはそれはあの仮面の男……平賀式部の髪のにおいをかいでるのだ。
「――いい匂いだ」
「――つっ!?」
平賀式部はその動作に反応することができなかった。体が硬直してる。彼女なら睨んだり、肘鉄したりしそうだけど、あまりにも衝撃的過ぎて体が固まったみたいだ。
てかどう考えてもセクハラである。しかも間接的なそれではなくて、もっと直接的なセクハラ。流石に野々野足軽は看過できない。
「平賀さん!」
野々野足軽は硬直してる平賀式部の手を取って彼女を引っ張って引きはがそうとする。けど……仮面の男はどうやら平賀式部の腰に手を回してるみたいだ。
「ノンノン――彼女は俺といる方が似合ってるだろ?」
野々野足軽はその言葉にイラっとした。だからその仮面の男にこう言ってやった。
「随分と調子乗ってるみたいですね」
「調子? これはイケメンの当然のけん……り……あれ? 君」
「離さないと、それ、剥がすぞ」
「おっけーおっけー」
仮面の男はそう言って手を放す。野々野足軽は平賀式部を助け出した。
「野々野君……」
平賀式部は小さくそう呟いて野々野足軽の胸の中に入ってきた。そんな平賀式部を抱きしめる。こんな事いつもなら絶対に平賀式部はしないだろう。
めっちゃドキドキとしてる野々野足軽。平賀式部の弱ってるところにドキドキとしつつ、けどこの仮面の男を見ると、平賀式部をこんなにしたことに怒りがわいてきてた。
「その子お兄さんの彼女だったんだ。いやー流石色男。俺の次くらいにはいい男だもんな」
なんか野々野足軽を持ち上げてくる仮面の男。きっと野々野足軽はこの男の秘密を知ってるから、それをばらされるとヤバい……と思って持ち上げてるんだろう。
「お兄さんもデートだったんだ。俺たちもそうでさ。ほら、そこの美女、俺の彼女なんだぜ。ついさっき知り合ったんだけどさ、ほら俺なら――な?」
何が「――な?」だよ。野々野足軽はますますイラっとする。けどその時だ。ぱぁん! という乾いた音がこの場に響いた。きっとその場の誰もが「え?」と思っただろう。
だって、その美女がひっぱたいた存在。それはなんと……野々野足軽だったからだ。当の本人も――
(え? なんで?)
――と思って何も反応できなかった
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