「足軽、やめて。その子たちは……その子たちに害はないの」
「…………」
足軽はわざわざ顔を隠した訳だけど……どうやらバレてしまってるみたいだ。そうなると靄を出してる意味もない。いや、もしかしたらブラフの可能性も……と思ったけどその考えは足軽は放棄した。
だって幾代、おばあちゃんと思われるその女性はまっすぐに足軽を見てた。それに足軽と迷いなく言ったんだから、きっと彼女はおばあちゃん何だろう。
その見た目はまるで女子プロレスラーみたいになってるし、長靴にタオルを巻いただけの格好は変質者そのもの。足軽にはおばあちゃんがそんな性癖があるなんて想像もできない。幾代の方で想像してもそうだ。
田舎のちょっと開放的な生娘って感じだったから、流石にこの変態な格好がノイズになってる。はっきり言ってどっちでもあり得ないと思うのだ。
でも目の前の女子プロレスラーは間違いなくおばあちゃんなんだ……そう自身に言い聞かせる野々野足軽。本当は確かめたい気持ちがある。けどなんか雰囲気的にそんな事は言えない感じだ。なんかおばあちゃんもかなりのプレッシャーを足軽に感じてるようだし……
「害はない? でもこいつに俺は襲われたんだけど?」
とりあえずそんな事を聞いてみる。手を顔の前で動かして靄を取り除くと、おばあちゃんがまじまじと足軽を見てくる。驚いてる? 実はやっぱりブラフだった?
(失敗したか?)
とか思ったけど、もう遅いわけで……このまま貫き通すしかない。
「確かにその子たちは凶悪に見えるかもしれないわ。でも、絶対に人を襲ったりしない」
「それはつまりは、君が襲わせたって事?」
そういう事になるのだが? と考える。
(てか、よく考えたらこっちはおばあちゃんをおばあちゃんと認識していいのか? 幾代とおばあちゃんを結び付けるのも、よく考えらまだ種明かしされてないぞ)
今、おばあちゃんはどっちの立場でここにいるんだ? と野々野足軽は思った。だってそもそも、足軽は実は育代とおばあちゃんが=で結ばれてるとわかってるが、おばあちゃんはそれはバレてないと思ってるはずだ。
となると、今のおばあちゃんはどっちの立場をとるのか……だからこそ、足軽はとっさに「君」といった。
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