ねこ

朝、外から猫が呼ぶ声がする。
我が家の子がどっかから落っこちたのか？と、焦って外に出たが、足跡すら無い。

空耳だったか。

戻ってコーヒーを淹れて。
ゆったりと飲んでいたら、また、かすかに聞こえてくる。
確かに、呼んでいる、しかも、かなり切羽詰まった声で。

猫嫌いのパパさんに気づかれないように、こっそ～～～、っと出てみた。
ん？
見知らぬ若い女性が、スタスタと外に向かって歩いて行く。

えっと。
うちに、何かご用でしたか＞と尋ねようとするも、早足で、足元は雪で、追いつけない。

うちの駐車場に停めてあった車に乗り込んで、さっさと出て行く。

んもう、ひとんちに、勝手に停めてるし。。。

と、口の中でぶつぶつ。
いや、それより、あの声が気になる。。。

見回す。じっと、心を澄ませる。


はっ！！ライオンのような、細くて先っちょに小房がついた、尻尾が！

雪山の陰に消えた。

怖がらせないように、そろそろと追いかけたら、物陰に潜むところの「尻尾」を発見。

ずずずっ、と近寄る。
覗いてる、あ、赤毛の猫さん。
怯えてる。
隠れた。

そのまま、自分の愛車まで戻って、載せてあったカリカリを持ち出す。
さっきの場所に行って、手づかみで、そこらにあった板の上に、一握りだけ、置いて。

ご飯だよ、お食べ

ちぃっさな声で、ささやく。

あとずさってしゃがみこんだら、おずおずと、出てきて。
夢中で食べ始めた。

お腹すいてたんだね。
こんな寒いのに、なんなんでしょ、まったく。

とりあえず戻って、ぬるま湯を持って、またさっきの場所に。
今度は、少し距離を保ちながら、こっちを見てるね。

持参した小皿に、ぬるま湯を入れて。
ペットボトルに残ってる白湯を、あたしも飲む真似をして。

お飲みよ

そう声をかけた。
おずおず、くんくん、ちゃぴ。

ちゃぷちゃぷちゃぷ。

ん、美味しいかい？よかったね。
ていうか、こんなに寒いのに、見た目飼い猫さんだけど、どうしてこんな町外れに居るの？
どっから来た？
赤毛の虎さん、男の子か女の子かまでは分からない、新顔さん。

誰か、この子を知らないか？？