大阪芸大ジャーナリズム研究会

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この際チェック!ハザードマップ 南河内の災害<地震編>

2024-08-16 17:35:09 | ニュース

 2024年8月8日に宮崎県で震度6弱の揺れを観測した、マグニチュード7.1の地震で、気象庁は南海トラフ地震の想定震源域では大規模地震が発生する可能性がふだんと比べて高まっているとして、注意を呼びかける「臨時情報」を出しました。
 地震の発生から1週間たった8月15日、この呼びかけを終了しましたが、南海トラフ巨大地震が起きる確率は今後30年以内に70パーセントから80パーセントとされ、いつ大規模地震が起きてもおかしくないといわれています。
 いざというとき命を守るために、私たちが学び暮らす大阪南河内の地震被害の可能性をちょっとおさらいしておきましょう。<取材班>

▼海の底で起きることが多い<海溝型の地震>
 
 南海トラフ巨大地震などは、海のプレートと陸のプレートの間や、海のプレート内部で起きる「海溝型」の地震に分類されます。
 下の分布図は、南海トラフ巨大地震発生に<あるモデル>を設定して大阪府内の揺れの予測を地図に当てはめたものです。

(大阪府サイト「第4回南海トラフ巨大地震災害対策等検討部会 検討資料」2013年10月30日から
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/2473/5_shiryou_3.pdf


  揺れは、地震発生の場所がちょっとずれたり、規模が少し違うだけで変わってきますのであくまで目安ですが、南河内はおおむね「震度6弱から6強」の地域です。
 建物の強度や、その場所の地盤(たとえば、山の硬い地盤か、ため池を埋め立てた地盤かなど)によっても、揺れ方や被害は違ってきます。阪神淡路大震災のときは、細い道を挟んで一方の建物は倒壊、もう一方は無事と言うことがありました。

▼浅いところで起きる<直下型の地震>
 
 こうした海底周辺で起きるタイプの地震以外に、比較的浅い地中にある活断層による地震があります。
 下の地図を見てください。大阪は実はこの活断層に取り囲まれています。
 大阪平野を取り囲む山々は、地震を引き起こす可能性があるのです。また大阪平野の真ん中を南北に走る上町断層帯も直下型地震を引き起こす可能性が高いと指摘されています。

 いずれの地震も南河内への影響は大きく、揺れの想定は震度6弱から震度6強。局地的に震度7の想定もあります。


(画像:「大阪府の断層帯」赤い文字・線が断層帯。政府の地震調査研究推進本部サイトから)

【関連サイト】
大阪府の地震活動の特徴(政府 地震調査研究推進本部サイト)
https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_kinki/p27_osaka/

 まず河南町の形を覚えておきましょう(大怪獣ガメラ=1965年大映=が大空を飛ぶ姿を、下から見た時の形に似ています)。北西の突端に、大阪芸大のある東山地区があります。


▼河南町で地震にあったら 大阪芸大も「避難場所」や「避難所」
 
 河南町で地震にあったら、あなたはどう行動しますか?
 大阪府自然災害総合防災対策検討(地震被害想定)報告書(2007年3月)をもとに、河南町は100メートルメッシュで、地震のタイプ別の「ゆれやすさマップ」を作成しています。
 詳しいメッシュ図は、サイトを開いてみてください。
 直下型地震の場合は、震度6弱から震度6強。局地的に震度7が予想された地区もあるのがわかります。



(画像上:上町断層、生駒断層が動いた場合の、河南町の揺れやすさマップ。上町断層がこの想定で動いた場合は、大阪芸大キャンパス付近に赤い「震度7」のメッシュが表示されている。)


(画像上:震度6弱から震度7の体感や被害 河南町サイトから)

【関連サイト】
「河南町 地震揺れやすさマップ」(河南町公式サイト)=https://www.town.kanan.osaka.jp/soshiki/sogoseisakubu/kikikanrishitsu/gyomuannai/1/3/4/1/1244.html

 とりあえず住民が集まる「避難場所(指定緊急避難場所)」には、『大阪芸術大学グラウンド』をはじめ26か所が指定されています。
 また、一定期間滞在する「避難所(指定避難所)」に、『大阪芸術大学総合体育館第1アリーナ』のほか、小中学校や老人集会所、公民館が指定されています。

 余震が続いて、下宿アパートが危険と感じたら、まずはこうした「避難場所」や「避難所」に行って身の安全を確保したうえで、情報収集をしたり、友人の安否を確かめ合ったりして、その後の行動を考えてみましょう。


(画像上:左は一旦身を寄せる「避難場所」。右は一定期間滞在することのできる「避難所」のピクトグラム)

【関連サイト】
「河南町 緊急時の避難場所一覧」(河南町公式サイト)=https://www.town.kanan.osaka.jp/soshiki/sogoseisakubu/kikikanrishitsu/gyomuannai/1/3/3/5004.html


▼怖いのは揺れだけじゃない 建物倒壊、火災、土砂災害、ため池決壊、津波

 地震で恐怖を感じるのは大きな揺れです。
 そして、揺れることで住宅やビルの倒壊が起きる場合もあります。家具が倒れてきたり、梁などが落ちてくると圧死するなどの危険があります。
 建物に閉じ込められたところに、火災や津波が押し寄せるとたちまち命の危険にさらされます。
 また、これまでの地震では、揺れて崖崩れや地滑りが発生するなど、土砂災害も発生しています。
 沿岸や河口付近は津波の危険性があるのはもちろんですが、南河内などの内陸では、ため池が決壊したり、川の流れが塞がってたまった堰き止め湖が決壊したりする危険性もあります。
 大地の揺れでさまざまな現象が引き起こされ、人の命が奪われる可能性がありますます。

【関連サイト】
▽「『中村君はまだ中にいる』 阪神淡路大震災 灘区六甲町の火災」(僕たちの阪神大震災ノート)=http://1995kobe.d.dooo.jp/photo17.html

▽「西宮仁川百合野町の地すべり現場~阪神淡路大震災」(サンテレビ)=https://youtu.be/41AZdcSYhgI?si=exAZfjtMIjV30blO

▽「生活を助ける『ため池』が東日本大震災で決壊」(FNNプライムオンライン)=https://www.fnn.jp/articles/-/143351


▼いざというとき助け合える仲間を

 阪神・淡路大震災のとき、高台の硬い地盤にあった神戸大学 (六甲台地区)の建物はほとんど無事で、多くの学生や市民が身を寄せました。
 学生たち(とりわけ下宿生)は、大学で友人と情報を交換して、引き続き学内の避難所に留まったり、丈夫なマンションの友人宅に集まったり、友人や自分の実家に避難したりしました。
 災害時の学生たちは、避難だけでなく、倒壊下宿からの救出など、学科やゼミの仲間とのつながりに大いに助けられました。
 連絡方法が途絶する災害時。いざというときは、遠くの肉親より、近くの人の力が命を救ったのです。

【関連サイト】阪神・淡路大震災の大学生の体験(神戸大学ニュースネット)
▽「研究室から神戸の街を見ると何本も煙が立ち上っていた 里田明美さん(当時・自然科学研究科修士)の証言」=https://x.gd/YXg0i

▽「落研の後輩の安否確認をして… 落語家・桂吉弥さん(当時・教育学部5年)の証言」=https://x.gd/vtmZ1


◼️地震のタイプ別 大阪南河内はいずれも震度6弱以上

 今回の南海トラフ地震の「臨時情報」を機会に、大阪芸大周辺の南河内にはどのような自然災害があるか、地元自治体や政府の公表しているハザードマップをチェックしてみましょう。

 これらの予測は、あくまでモデルを設定しての値です。モデルと違った地点で地震が発生した場合は、場所によってはこの予想より大きな被害が出ることも考えられます。


□南海トラフ巨大地震で「震度6弱」のエリア

 大阪府では、内閣府が2012年8月に公表した南海トラフ巨大地震による震度分布、液状化可能性等を踏まえ、地盤条件を大阪府独自に作成したものに置き換えて検討しました。
 下記の大阪府のマップを見てください。右下の矢印のところに、(ガメラの形の)河南町があります。
 この想定を見る限り、河南町や富田林市など南河内地区は、山間部を除いてほぼ「震度6弱から6強」のエリアと予想されています。
 震度6弱は、「立っているのが困難な揺れ」で、屋内では、「固定していない家具の大半が移動する」という状況になります。木造家屋は、瓦が落ち、倒れるものも出てきます。窓ガラスの落下など、危険な状態が身の回りに起きます。


(画像上:南海トラフ巨大地震の震度分布の予測。大阪府と内閣府で震度想定は違う 大阪府サイト「第4回南海トラフ巨大地震災害対策等検討部会 検討資料」2013年10月30日から)
https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/2473/5_shiryou_3.pdf


□大阪府は直下型の地震もいろいろ予想されている

 大阪府に被害を及ぼす地震は、こうした太平洋側沖合で発生する地震(南海トラフ地震など)のほかに、主に陸域の浅いところで発生する直下型の地震(中央構造線や上町断層帯、生駒断層帯などで発生)もあります。大阪湾の海底にも活断層が確認されています。
 
▽上町断層帯の震度予想

 上町断層帯は豊中から堺や岸和田まで大阪府を縦断していることがわかっています。南河内を含む大阪府南部も大きな揺れが予想されます。
 上町断層帯地震の今後30年以内の発生は、2〜3%の確率と推定されています。我が国の主な活断層の中では高い確率のグループに属しています。
 南河内の平野部は、予想マップを見るかぎり震度6弱前後の揺れが予想されています。



(画像上:上町断層帯の震度予想。いろいろな想定・解析があるが、いずれも南河内の平野部は「震度6弱」以上のエリアだ。 政府 地震調査研究推進本部サイトから)
https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_katsudanso/f080_uemachi/


▽生駒断層帯の震度予想

 生駒断層帯は、大阪府の枚方市から羽曳野市までほぼ南北に延びる全長約38kmの断層帯です。
 南河内は、予想マップを見ると震度6弱・6強前後の揺れが予想されています。


(画像上:生駒断層帯の震度予想 想マップを見ると震度6弱・6強前後の揺れが予想ている。政府 地震調査研究推進本部サイトから)
https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_katsudanso/f077_ikoma/


▽中央構造線断層帯の震度予想

 中央構造線断層帯は、南河内のすぐ東側の奈良県境にある金剛山地の東縁から、和歌山県境の和泉山脈の南縁、淡路島、四国北部を横断し、伊予灘、九州の別府湾を経て由布院に達する長大な断層帯です。
 南河内は、予想マップを見ると震度6弱・6強前後の揺れが予想されています。


(画像上:金剛山地の奈良県側である、香芝市から五條市付近までの区間の「金剛山地東縁区間」で中央構造線断層帯が動いた場合の震度予想。南河内でも震度6弱・6強前後の揺れが予想されている。 政府 地震調査研究推進本部サイトから)
https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_katsudanso/rs_chuokozosen/


(画像上:和泉山脈南縁のうち、奈良県五條市から和歌山県紀の川市付近までの区間の「五条谷区間」で中央構造線断層帯が動いた場合の震度予想。南河内では震度6弱・6強前後の揺れが予想されている。 政府 地震調査研究推進本部サイトから)
https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_katsudanso/rs_chuokozosen/


 ちなみに、政府 地震調査研究推進本部が公表している全国の活断層の一覧は、下記サイトを参照してください。判明して分析されているだけでこれだけの数です。
 こうしてみると、地震国・日本に住んでいる限り、地震に対する備えは、マストだといえそうです。

【関連サイト】
「全国の内陸の活断層」(政府 地震調査研究推進本部サイト)=https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_katsudanso/


9月まで府内各地で開催中 キャラクター造形学科「グループ展」

2024-08-14 18:57:17 | ニュース

 大阪芸大キャラクター造形学科の6つのグループ展が、9月まで大阪府内各地のギャラリーで開催されています。同学科の「プレゼンテーション」の講座を受講する3年生と4年生が6つのグループに分かれ、テーマを決めて、ギャラリーの手配から広報、運営まで、展覧会を自らの手で行うというものです。<神農 雄、狭間 翼>

【動画ニュース】↓ここをクリック 

 このうち、「現実と架空の民族衣装展」は、8月13日から大阪市福島の「STUDIO COOTE GALLERY」で開催されました。
 会場には、4人のメンバーそれぞれが創作した、オリジナルの民族衣装のイラスト13点が展示されました。
 各自の心の中に持っている領域を国と位置付け、「自分ならどんな民族衣装を作るだろう」と、自分の心の国に問いかけ、生まれた自分だけの民族衣装のイラストです。 

 虹色金閣寺さん(アニメーションコース3年)は、古風なものと自然に魅力を感じているといい、今回の作品にもその2つの要素が表現されています。
 紫を基調とした袴のような衣装に、大きな帯が特徴です。

 もちむぎさん(ゲームコース3年)は、色鮮やかな韓服や琉球衣装にインスパイアされたといいます。
 「あの夏の花束」は、少女のワンピースのまわりに大きなひまわりの花が描かれた明るい作品。衣装の色鮮やかさを引き立たせるため、実在する風景写真を加工した背景を使用。影にもこだわり、少女をリアルに、身近に感じさせる工夫をしたといいます。

(写真下:「現実と架空の民族衣装展」が開かれている「STUDIO COOTE GALLERY」 大阪市福島区福島で 2024年8月14日12時30分)

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 一方、8月14日から大阪北区中崎のギャラリー「イロリムラ」で始まった「ある天使の分岐展」では、メンバー6人の15点が展示されました。
 参加メンバーは、今年4月のグループ分けの段階では、挑戦したいと考えていたテーマが全く異なっていたといいます。メンバーそれぞれが表現したい「もしもの世界観」の人生の分岐点を、「天使」をキービジュアルとして統一し、作品制作を行ったということです。

 宮本悠一さん(フィギュアアーツコース3年)の作品「天使の眺め」は、夜の公園のベンチで周りを見渡しながら一休みする人を、天使に置き換えたといいます。天使にとっての公園のベンチは、高層ビルのクレーン車のてっぺんと想像し、筆を進めました。

 カタヤマ ヨシトさん(漫画コース4年)の作品「さようなら」は、デートでの別れ際を描いています。「また会おうね、また遊ぼうね。」と明るい笑顔でほほ笑むその姿も、天使に見えます。

 るくあさん(漫画コース3年)の「失ったのは」は、電源を入れると背景にLEDがともり、聖堂の天使が立体的に柔らかく浮かび上がる仕組みになっています。

(写真下:「ある天使の分岐展」を開催中のギャラリー「イロリムラ」 大阪市北区中崎で 2024年8月14日14時30分すぎ撮影)

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 「現実と架空の民族衣装展」は8月18日(日)まで、「ある天使の分岐展」は19日(月)までそれぞれ開催されました。

 このあと、「国獣祭展」が8月26日(月)~31日(土)まで、大阪中央区久太郎町のコンセントカフェで、「服くらい自由に着たい展」が9月4日(水)~7日(土)まで、東大阪市今米の「Gallery kirittai」で開催されます。
 キャラクター造形学科「グループ展」の合同のサイトのURLは、http://groupten.web.fc2.com。休廊日などは各自で確認してください。

【関連記事】=今年もキャラ造グループ展 7月から9月まで6会場で(2024年07月29日)https://blog.goo.ne.jp/oua_journal/e/74cb7713d3d13b07edda723f01c40f87


【動画あり】笑顔と感謝で送る 「カーテンコール!浜畑賢吉学科長」

2024-07-25 23:59:59 | ニュース

 7月2日、81歳で亡くなった、俳優で演出家の浜畑賢吉さん。この3月まで20年にわたって大阪芸大舞台芸術学科で教鞭をとった浜畑・前学科長を笑顔で送ろうと、お別れの会でもなく偲ぶ会でもない、「カーテンコール!浜畑賢吉学科長」が7月25日、大阪・天王寺のホテルで開催され、200人近くの教職員や卒業生が参加しました。<取材班>

【動画ニュース】笑顔と感謝で送る 「カーテンコール!浜畑賢吉学科長」(2024年7月25日撮影) https://www.youtube.com/watch?v=LgA59mOj0_0&t=147s

 浜畑さんは9年前に前立腺がんを発症し、2年前に再発。闘病しながらも、そんな様子を一切みせることなく、最後まで俳優を、そして舞台芸術学科の教授・学科長を全うした浜畑さん。そんな浜畑さんに感謝し、笑顔で送り出そうと、舞台芸術学科が企画しました。


(写真:会場中央には愛犬と写る浜畑さんの遺影とともに愛した日本酒も 2024年7月25日19時30分 大阪・阿倍野区の「都シティ大阪天王寺」吉野の間で)

 会場となった大阪・阿倍野区の「都シティ大阪天王寺」には、教職員や副手をはじめ、浜畑さんから学んだ卒業生ら200人近くが平服で駆けつけました。


(写真:司会進行を務めた現学科長の山本健翔さん)

●懐かしい写真で俳優・演劇人生を振り返る
 宴会場の正面には、白や薄紫の花で飾られたディスプレイが設けられ、愛犬とともに微笑む浜畑さんの写真が据えられました。
 浜畑さんは1942年生まれで東京都出身。劇団俳優座の養成所を経て、1966年に劇団四季に入団。ドラマにも多数出演し、NHK大河ドラマでも活躍。1994年の四季退団後は、ミュージカルやオペラの演出も手掛けました。大阪芸大の舞台芸術学科では2004年から教壇に立ち、今年3月まで学科長を務めました。

(写真:浜畑さんの舞台人、演劇人としての活動の軌跡を伝えるボードに貼られたスチール写真。

 1968年放送の浜畑さん主演の『進め!青春』(東宝制作、日本テレビ系放送)のテーマ曲とともに、会場のスクリーンには映像が流れ始めました。時代劇から現代劇、ミュージカルまで、浜畑さんのスチール写真構成を来場者は懐かしそうに見入っていました。
 また、浜畑さんの俳優人生、演劇人として日本の演劇界に与えた影響から、20年間務めた大学での様子までが、現学科長の山本健翔さんのナレーションで紹介されました。

●7月2日午後4時半、夫人に見守られながら
 浜畑さんとは50年来の親交があり、舞台芸術学科、放送学科で教鞭をとっていた俳優の穣晴彦さんが、浜畑さんの妻で女優の上村香子さんからの手紙を代読。「7月2日午後4時半。痛みも苦しみもなく、目の前で安らかに眠るように息を引き取りました」と読み上げられると、来場者は静かに聞き入っていました。


(写真:浜畑さんの妻で女優の上村香子さんからの手紙を代読する穣晴彦さん 2024年7月25日19時46分)

 浜畑さんは、今年3月8日に兵庫県立芸術文化センター大ホールで上演されたオペラ『氷山ルリの大航海』(原作:高円宮妃久子殿下)を演出。手がけた最後の舞台になりました。激しい痛みに襲われながらも、それを気取られることなくやりとげたことが、山本健翔・現学科長から報告されました。
 「7月2日、世界という舞台から退場されました。その引き際は見事なもので、明るく飄々とこの数年をかけて綺麗に仕舞っていかれました」と語りかけ、「お別れの会でも偲ぶ会でもなく、もう一度浜畑先生を呼び出して、にぎやかに送ろうと思います」と笑顔であいさつしました。


(写真:今年3月8日に上演されたオペラ『氷山ルリの大航海』の映像。カーテンコールで「ありがとうございました」と客席にお礼を述べる浜畑さん。これが舞台での最後の姿となった)

●日本酒で「乾杯」 最後の舞台『氷山ルリの大航海』の映像も
 会場が明転し、祭壇に浜畑さんが好きだった日本酒が供えられ、献杯ではなく乾杯の音頭で開宴。
 スクリーンには、オペラ 『氷山ルリの大航海』のステージのオープニングとフィナーレの映像が映し出されました。張りのある声のナレーション。カーテンコールでは、浜畑さんが両手を口に当てて「ありがとうございました」と客席にお礼を述べるシーンも。歩くのもままならない時期だったということは、全く感じさせない姿が映像に残されていました。


(写真:乾杯の音頭をとる塚本学院理事の工藤皇さん)

●スクリーンの映像に感謝の「ブラボー!」
 会場では「思い出酒場」と題して、ゆかりのあった大学関係者らが次々に登場し、浜畑さんの思い出を語り合いました。


(写真:「思い出酒場」のコーナーには、浜畑さんのパネルをはさんで、ゆかりの人々が登壇)

 2023年の学外公演『朝が来るまで「夏の夜の夢」』の映像では、スーツの背中に白い羽根をつけた浜畑さんの「妖精」の姿が。舞台の上から「若者に才能のない人なんていません。彼らは私の宝物です」と語りかける姿が大写しに。カーテンコールの映像に合わせて、会場からも手拍子が起こりました。

 浜畑さんお気に入りの五本締めのあと、会場からは「浜畑学科長、ありがとうございました!」「ブラーボー!」と、感謝の掛け声とあたたかい拍手がおくられ、笑顔に包まれた「カーテンコール!浜畑賢吉学科長」は幕を下ろしました。


(写真:浜畑さんお気に入りの「五本締め」。音頭をとる舞台芸術学科教授の内藤裕敬さん。 2024年7月25日21時10分)

●来場者のコメント
「いつも我々のコースの公演に駆けつけてくださって、学生に声をかけてくださいました。先生に感謝の気持ちを込めて、これからも踊りを続けていきたいと思います」(舞踊コース教員)

「心はどこにあるの?内臓にあるよね。という先生の言葉を、いまでも心に留めています」(卒業生)

「学生にとにかく寄り添ってくれる先生だった。学内公演で学科長と夫婦役を務めたことが印象に残っている」「卒業式の際、『次は“仕事場“で会えることを楽しみにしているよ』という言葉を忘れません」(2017年卒業生)

「副手時代に『お忙しいですね、お疲れではないですか』と声をかけると、『僕は忙しいという言葉は使わないんだ。だって“心”が “亡くなる”と書くでしょ』と先生はおっしゃった。コトバは大事だと知りました」(元副手)

「浜畑さんはおおらかで寛容で、太陽のような方だった。さすがに“あっち”へ行ってしまうとへこむけど、ありがたい存在だった。ゆっくりお休みください」(教員)

「少年の心を持ちながら、舞台、あらゆる生き物、何よりお酒を愛したその人生を全うし、最後まで現役で生き抜いた浜畑賢吉という人と一緒にいられた。浜畑先生が作ったこの舞台芸術学科をさらに発展させていければと思っています。ほんとうにありがとうございます」(山本健翔・現学科長)

(写真下:愛犬とともに。浜畑賢吉・前学科長)


若手を応援!第1回「卒業生作品展」 64人の作品スカイキャンパスに

2024-07-20 16:36:07 | ニュース

 7月12日(金)から28日(日)まで、あべのハルカス24階の大阪芸大「スカイキャンパス」で第1回「大阪芸術大学卒業生作品展」が開催されています。絵画や立体作品など、美術学科、デザイン学科、工芸学科の卒業生64人の作品が展示されています。いずれも11:00~19:00開催、入場は18:30まで。22日(月)は休館。最終日入場は14:30まで。<神農 雄>


(写真:あべのハルカス24階の大阪芸大スカイキャンパスで開催中の第1回「大阪芸術大学卒業生作品展」 2024年7月19日午後撮影)

 この「卒業生作品展」は、社会に出て働きながら創作活動を続ける卒業生を応援しようと、今回初めて開催されています。

 展示されているのは、油画、日本画、版画、彫刻、金属工芸、陶芸、ガラス工芸、 テキスタイル、染織、イラストなど、さまざまなジャンルで、美術学科、デザイン学科、工芸学科の卒業生64人の作品です。


(写真:sanaenvyさんの「popping!」=左端、あべのハルカス24階の大阪芸大「スカイキャンパス」で)

 sanaenvy(サナエンビ)さん(2020年デザイン学科卒)の作品「popping!」は、アクリル板に四角いピクセルで縁取られたカラフルなイラストがプリントされています。そのアクリル板を重ねることによって、ビデオゲームのような世界が、立体的に浮かび上がります。

(写真:中村幹さんの「Floating Glass」)

 中村幹(もとき)さん(2024年工芸学科卒)の焼き物の杯、「Floating Glass」は、グラスがふわりと浮いて、鎖でつなぎ止められているように見えます。


(写真:みすぎひろのりさんの「ステゴザウルス」ほか計12点には、間違い探しの仕掛けがある)

 みすぎひろのりさん(1994年美術学科卒)の、恐竜の立体造形の写真は、左右一対で12点が展示されています。

 左右の作品は似ていますが、足や顔に微妙に違うところがあります。

 つまみを持ってパネルを上げると、その下には正解が隠されていて、「間違いさがし」ができるという楽しい仕掛けです。

 松原市から来場した年配の女性は、ラジオの告知でこの展覧会を知ったといいます。イラストや彫刻、テキスタイル作品を見ながら、「これみんな(芸大の)卒業生の作品ですか。おもしろいですね。(美大を目指している)知り合いのお嬢さんにも伝えます」と話していました。

 この制作展では、若手アーティストたちの今後の励みになるよう、実際に芸術で生計を立てている先輩卒業生の作品も展示されています。

  会期中の土曜・日曜には、そうしたプロの先輩たちが来場し、若手卒業生と交流して「どんな場所で個展をひらけばいいですか」などの質問に答える場面もあったということです。

 この第1回「大阪芸術大学卒業生作品展」は、7月12日(金)から28日(日)まで(11:00~19:00。最終日の入場は14:30まで、15:00閉館)、あべのハルカス24階の大阪芸大「スカイキャンパス」で開催されています。


(写真:第1回「大阪芸術大学卒業生作品展」の会場)

<第1回大阪芸術大学卒業生作品展>
●開館期間=2024年7月12日(金)~28日(日) 7月16日(火)、22日(月)は休館日
●開館時間=11:00~19:00 入場は18:30まで。最終日の入場は14:30まで、15:00閉館。
●場所=あべのハルカス24階 大阪芸術大学「スカイキャンパス」(大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43、電話 06-6654-5557)。スカイキャンパスへは地下1階からシャトルエレベーターを利用し、17階で乗り換え。
地図]。
●アクセス=
 ▽近鉄「大阪阿部野橋」駅下車、西改札からすぐ。
 ▽JR「天王寺」駅下車、中央改札からすぐ。
 ▽大阪メトロ御堂筋線「天王寺」駅下車、西改札からすぐ。
 ▽大阪メトロ谷町線「天王寺」駅下車、南西・南東改札からすぐ。
 ▽阪堺電軌上町線「天王寺駅前」駅からすぐ。
●入場料=無料。
●出展者=稲葉海斗/上田小晴/江崎栄花/塩冶清美/おうにし/岡本博紀/小熊香奈子/開藤菜々子/ 硝子屋ゆう/河合紅美/河合芙幸/川野昌通/喜愛来/国本真絵/小谷光/近江志織/小山大地/ 今野志穂/齊藤秀樹/さかはらまゆ/佐田涼香/sanaenvy/ザ・ロケット・ゴールド・スター/ 澤田光希/塩路麻尋/正元嶺至/新拓馬/スミコフスキ ー百合子/たかいよしかず/高松威/ 立本倫子/田仲哲也/たま/都志真優奈/ナイマ・ワジティ/中田裕理/なかだまり/中村幹/ 中村和可/西井輝/ノダタカヒロ/畑山綾太郎/H@L/ HARUTO/開聡良/平山海/堀口彩花/ マサヨアニー/益田啓嗣/松田梨奈/松森洋駆/三島寛也/みすぎひろのり/mindynunu/ 森永航世/矢野茜/山崎達也/山田真也/吉田ショウヘイ/RyojiNakano/りんたろうJr./ 若林いぶき/渡邊紫音/ヲノダエマ 。
●サイト=https://www.osaka-geidai.ac.jp/whatsnew/sky_exhibition_graduation_1st
●問い合わせ=大阪芸術大学スカイキャンパス事務室 電話 06-6654-5557。

(画像下:第1回「大阪芸術大学卒業生作品展」 のリーフレット)

【訂正】記事中の作家名で「みずきひろのりさん」とありましたが、「みすぎひろのりさん」の誤りでした。おわびして訂正します。また、「近鉄『大阪阿倍野橋』駅」は「近鉄 大阪阿部野橋駅」の誤りでした。訂正します。(2024年7月22日10:23 編集部)


俳優の浜畑賢吉さん死去 3月まで舞台芸術学科の学科長

2024-07-07 18:40:59 | ニュース

 俳優で大阪芸大舞台芸術学科の学科長を務めた浜畑賢吉(はまはた・けんきち)さんが7月2日、前立腺がんのため亡くなりました。81歳でした。複数の報道によれば、葬儀は近親者のみで行うと報じられました。喪主は、妻で俳優の上村香子さん(78)。<取材班>


(画像:OFFICE MIYAMOTO公式サイトの浜畑賢吉さんプロフィール欄から)

 7月7日4時にスポーツ報知が死去の一報を流すと、昼前から午後にかけて日刊スポーツ、読売新聞など各メディアの訃報が続きました。

 浜畑さんは1942年生まれ、東京都出身。OFFICE MIYAMOTO所属。
 劇団俳優座の養成所を経て、66年に劇団四季に入団しました。初舞台は「カラマゾフの兄弟」でした。その後も「ハムレット」や「コーラスライン」など数々の名作ミュージカルに出演しました。

 ドラマにも多数出演し、1968年には日本テレビ系「進め!青春」で主演を務めたほか、NHK大河ドラマでも活躍しました。「天と地と」で武田信繁、「国盗り物語」で朝倉義景を演じ、96年の「秀吉」では細川藤孝役を務めました。

 1994年の四季退団後は、俳優業だけでなくミュージカルやオペラの演出も手掛け、大阪芸大の舞台芸術学科では2004年から教授を務め、今年3月まで学科長、その後も教授職でした。

 7月7日19時52分現在、まだ所属事務所「OFFICE MIYAMOTO」のサイトでの発表はありません。