大阪芸大のスクールバス、通称「芸バス」。対面授業の本格化で、今年度はコロナ前と違い5月の連休を過ぎても混雑が続いていました。長蛇の列に、「遅刻すると思ったので大学まで歩いた」という新入生もいたほどです。ところが、6月以降その混雑が緩和してきています。バスの運行台数は4月以降変動はないというのに…この混雑緩和の理由はいったいどこにあるのでしょうか?<取材班>
(↑写真:芸バス喜志駅前乗り場で、バスに向かう学生や教員)
私たちが「芸バス」と呼ぶ、大阪芸大の無料スクールバス。近鉄喜志駅前の専用乗り場と芸大11号館前を約15分で結んでいます。
今年度の授業は、新型コロナウイルスの感染拡大が収まる傾向にあったため4月から全面的に対面形式でスタート。年度当初から多くの学生が芸バスを利用しています。
ジャーナリズム研究会では、4月中旬と6月中旬に学生の列(流入数)と、積み残しの人数を調査。週半ばの火曜と水曜のデータを調べました。(4月19日と20日、6月14日と15日の調査)
(↑図1−1 火曜日の積み残し人数 4月19日=青色=と6月14日=橙色=)
(↑図1−2 水曜日の積み残し人数 4月20日=青色=と6月15日=橙色=)
混雑ゾーンは「8時30分〜8時40分」と「10時〜10時40分」
午前中の混雑度合いを、バスに乗れずに滞留する学生数(積み残し数)<図1>でみてみると、4月も6月も変わらず、1限前の8時30分から8時40分ごろと、2限前の10時から10時40分ごろに多いことがわかります。
乗り場にやってきた学生の数(流入数)<図2>のグラフを見ると、波があります。
これは、近鉄電車を利用する学生が喜志駅で降りる時間に、流入数が増えているためです。
特に大阪阿部野橋駅から来る下り電車が到着する時刻が混雑します。積み残し数で見ると、4月も6月ともに100人超の積み残しの行列ができているのが、
▽8時26分着(大阪阿部野橋8時00分発 河内長野行き準急)
▽10時00分着(同9時34分発 河内長野行き準急)
▽10時11分着(同9時44分発 河内長野行き準急、9時50分発 急行・古市乗り換え)
であることがわかります。
(↑図2−1 4月19日火曜日の喜志駅前乗り場の学生流入数)
(↑図2−2 6月14日火曜日 喜志駅前乗り場の学生流入数)
混雑が続く(バスに乗れない学生の滞留時間が長い)のが2限前の10時台で、4月は10時過ぎから10時50分ごろまで混雑が続いていました。
新入生からは、「このままでは遅刻すると思ったので、バスをあきらめて大学まで歩いた」という声も聞かれました。ちなみに徒歩だと、喜志駅前から大学までは30分から40分かかります。
2限の場合、10時30分より前のバスに乗るのがデッドラインだけに、この時間帯に電車に乗った場合は、改札の混雑を抜け出す早さが、遅刻かどうかの分かれ目になります(後述)。
ピーク時の列 4月は300人→6月は多くて200人前後に
4月は午前(1限前の8時台と、2限前の10時台)の混雑がひどく、8時30分過ぎと10時11分すぎの喜志駅前乗り場では、学生の列が300人を超える時間帯がありました。隣の学習塾の看板前にまで列が伸びていました。
ところが、6月には積み残しが減少し、多くても列は200人前後に。混雑解消(積み残し解消)までの時間も短縮していることがわかりました。
(↑写真:観光バスタイプの増車が応援に入れないときは、MKバスの代わりに他社のバスがローテーションに入った)
バスの台数は変わらず なのに混雑は緩和
学生の間では、5月の連休明けに色違いのバスが投入されたため「さらにバスの増車をしたから、混雑が緩和したのでは」との見方が出ていましたが、4月以降、バスの合計台数は変わっていないということです。
バスの運営にあたっているM Kバスの担当者によると、「年度当初から観光バスタイプの車両を3台増車している。途中ではやりくりのために(ペイントの違う)他社のバスで補ったが、1日の運行台数には変更ない」と話しています。
このため、6月に入っての混雑緩和の理由は、バスの増車とは違う要因だったことになります。
(↑図2−3 4月20日水曜日の喜志駅前乗り場の学生流入数)
(↑図2−4 6月15日水曜日の喜志駅前乗り場の学生流入数)
バス停に流入する学生数の減少 混雑緩和の要因か
では、混雑の緩和の要因は何だったのか。
喜志駅前乗り場での調査を4月と6月で比べて見ると、乗り場にやってきた学生の数(流入数)が減っていることがわかります<図2>。
10時過ぎのピークで見てみると、火曜、水曜のデータ共に4月は600人近くが電車から降りてきて、一気にバス乗り場に流入しています。これが、6月14日は約400人に減っています。
ピーク時の流入数も、学生数は約3分の2に減っています。学生が一気にやってくるピーク時の人数が減っていることが、混雑の緩和のひとつの要因と見ることができそうです。
それでも2限に間に合うには 10時30分前後のバスがデッドライン
混雑が最も激しい10時台を、同じ火曜日で見てみます。
4月19日(火)の調査では、混雑のピークは10時5分ごろ。大阪阿部野橋発の電車が、10時に喜志駅に到着するタイミングで、バス乗り場には580人が一気にやってきます。
バス4台で待ち受けていたものの、240人が積み残しとなり、10時13分には次の電車が到着し、さらに200人が流入。バスが次々にやってきても、滞留学生は解消せず、10時48分にようやく、学生の列はなくなりました。
10時22分から30分の間は、乗り場にバスは1台もなく、学生200人弱が取り残される状況でした。
10時50分の2限の授業に間に合う(10時50分前に11号館前到着)には、10時33分発のバスに乗るのがデッドラインでした。(ただし、交通量や天候によって左右されます)
「10時11分喜志駅着」だと…列の最後の3分の1が遅刻
一方。6月14日(火)の調査では、混雑のピークはやはり10時5分ごろ。
電車を降りた学生398人が乗り場に流入。バス6台が待ち受け、積み残しはありませんでした。
その後、10時11分すぎに235人流入。10時25分にバスが出払った時点で、180人が積み残しになりました。
その後、学生の流入、バス到着を繰り返し、10時42分すぎに積み残しは解消されました。
やはり10時30分ごろのバスに乗るのが、2限に間に合うデッドラインでした。10時11分喜志駅着の電車を降りた学生の列の最後の3分の1ほどが授業に間に合いませんでした。
確実に間に合うためには…「10時00分着の準急」
2限に間に合うデッドラインは、曜日や天気によってばらつきが予想されるものの、10時11分喜志駅着の電車では、早めに改札を出ることができた学生は2限に間に合いましたが、出遅れて列の後方に並んだ学生は、2限に遅刻という状況でした。
2限に確実に間に合うためには、10時00分着の河内長野行き準急に乗らなければならないことがわかりました。(ただし、交通量や天候によって左右されます)
(↑写真:バスが出払ってしまい、積み残された学生の列。)
とりわけ減っている1限開始前の学生数 4月の半分に
同じ火曜日の4月19日と6月14日を比較すると、10時すぎのピーク時では、バス乗り場に流入する学生数が6月は約3分の2に減少し、逆に10時11分すぎの2回目のピーク、10時29分すぎの3回目のピークで増加しています。
これは、授業を受ける学生数が減るとともに、到着時刻の遅い電車に分散していることがわかります。
また、1限開始前のピークでも学生が減少。8時台は4月に比べて半分程度に減っています。「1限の授業を捨てる」という学生が増えていることをうかがわせます。
対面授業の喜び薄れ バスの混雑解消?
5月の取材では、MKバスのある担当者は、「コロナ前は、5月の連休が過ぎれば学生の数は急速に減っていた。今年は学生たちがゴールデンウイークを過ぎても、大学にたくさんやってきている」と話していました。2、3年生にとってはオンライン授業から対面授業への移行で、「それだけ、大学の授業を受けたい、という気持ちが強いのではないか」と話していました。
今年度は授業を受ける意欲が高まったものの、6月に入ってそれがやや落ち着いてきているという見方もできます。
7月中旬に入って、再び新型コロナウイルスの感染が急拡大しています。
対面授業をいつまで受けられるのか、先行きは不透明です。
学習の機会のありがたさを心に秘めながら、どう授業に向き合うか。学生の行動が、これからもバスの混雑を左右しそうです。
了
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