ふくろう親父の昔語り

地域の歴史とか、その時々の感想などを、書き続けてみたいと思います。
高知県の東のほうの物語です。

花の谷。蛍

2010-08-10 00:36:46 | 花の谷
「おう。見て見て、今年も蛍が飛びだいた。」にいやンが突然大きな声を出した。
 「かわいらしいもんよ。ちゃんと時期がきたら、飛びはじめるきなあ。」蛍も爺やンが7~8年前に生息空間を整備したことから、急に増えたのだが、知らん振りを決め込んでいる。

 「本当やねえ。今年初めての蛍やねえ。」飲んでいた部屋の前の庭に蛍が2つ、点滅しながら飛びはじめたのだ。

 30分ぐらい、蛍の話やら、鮒やメダカの話ををしているうちに亮子が「爺ちゃん、ありがとう。」「それからあしたまた花を貰うていってかまん??。」いつもの事ながら明日早朝に、一束の花を持たせてやるのだ。
 
「こっちこそなあ。花は前へ出いちょくきに、適当に持っていったらえいき。」
 爺やんも病院に時々出かけるのだが、自分が育てた花々が飾られているのを見て、つい微笑んだことがあるのだ。

 「ほんだら。」亮子はニコニコしながら帰っていった。心配していた兄の仕事が出来そうなのだ。

 にいやんは、テレビの深夜放送が終わるまでゆっくり飲んだ後、「もう帰るきねえ。」小さな声で、すでにベットの中に入っている爺やんに声をかけた。テレビのスイッチを切って、灯を豆球にして出て行った。
 いつの間にか、爺やンの仕事を手伝うことになったことに、不安がないわけではなかったが、「なんとかなるろう。」それだけだったのだ。



 月明かりが、歩きなれた道を照らしていた。街灯などといったものはこの辺りにはないことから、雨が降るような日には、本当の真っ暗闇になる。石垣が連なるこの道は、たとえ暗闇になっても、手を石垣に添えれば田に落ちたりする心配などもないのだ。
 
 我が家の前には亮ちゃんが点けたであろう灯があった。

 

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