春の日の花と輝く

中小企業で働く女性の日記です。
ぼんやり子づくり→治療開始→なんとか出産

お知らせ

「独身実家暮らし会社員のしせいかつ」はタイトル変更しました。

コメント欄非公開で復活しました。

『阪急電車』、有川浩(幻冬舎文庫)

2012年01月21日 16時09分53秒 | 読書感想文
 オムニバスフェチを自称する私にとって、ど真ん中を行く作品でした。

 私が読んだことのあるオムニバス形式の小説や漫画は、ほとんどの場合、それぞれの短編で主人公となる人の人間関係の中に別の短編の主人公が登場して、その短編の中ではほかの短編内の出来事と時間を共有しているような描写はあまり出てこないものだけど、この作品の中ではそれぞれの主人公が同じ出来事を共有している描写が多くて、一つの出来事がいろんな角度から表現されるのがとても面白い。

 有川浩作品というのは今まで読んだことがなかったのだけど、非常に読みやすくて、優しい作品でした。

 この後読んだ『東京島』がものすごかっただけにね…。

 私はおこがましくも、作中のデキる女、翔子を自分に重ねてしまう。

 テキパキ仕事をして、弱音を吐かない女は傷つかないわけじゃない。

 私の人生は、耐えずちょっとした「翔子体験」の積み重ねだったような気がして、なんだか少し泣きたくなった。

 まあ実際は、私がデキる女だというよりは、甘えたり本音を言ったりしないで肩肘張って生きていることがいけないんだけど。

 そんなこんなで、色々思い描いては泣きたくなったりもしたけれど、全体的に優しくて幸せになれる作品でした。

 描写も素晴らしくて、駅や町の情景が頭に浮かぶようで、この作品を読んで実際に電車に乗りに行った人がたくさんいるというのが良くわかる。

 今年は西に旅行しようかしら。

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『タイニー・タイニー・ハッピー』、飛鳥井千砂(角川文庫)

2011年12月14日 20時07分51秒 | 読書感想文
 私は10代の頃、谷川史子という漫画家が好きだった。

 当時『りぼん』にオムニバス形式の短編を連載していて、特別刺激的な展開はないもののほんわかと展開するストーリーがとても心地よかった。

 そのせいか、私は「オムニバス形式フェチ」である。

 そしてこの『タイニー・タイニー・ハッピー』は一つの大型ショッピングモールをめぐる登場人物たちのオムニバス形式の物語だ。

 湊かなえの『告白』もそうだったけれど、違う登場人物男独白という形式も、ハマると非常に面白い。

 外側から見た姿と、本人の本当の姿がいかに乖離しているかが良くわかる。

 …と、ここまでストーリーに触れていないことに気づいたけど、別に触れなくてもいいかなとさえ思う。

 内容は若者たちの恋愛模様を中心とした生活の話。

 悩んだり喜んだり決断したり。

 これだけ登場人物がいるんだから、誰か一人ぐらい自分と重なる人がいるだろう…ということだったけれど、残念ながら私は一番空気が読めない「小山」を自分に一番近いと思った。

 正義を押し通すことが必ずしも正しいわけじゃない。

 いや、もう私は人生の中で何度これを言われたか!しかも違う人から。

 明日からはもっと空気を読んで生きます。

*****

 角川文庫は飛鳥井千砂をかなり押していて、これと一緒に『アシンメトリー』という作品も刊行されています。

 実はそっちも読んだのだけど、私にはピンと来なかった。

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『蝶々喃々』、小川糸(ポプラ社)

2011年05月07日 19時40分49秒 | 読書感想文
 谷中で古着の着物屋を営む女性と、妻子のある男性のお話。

 帯に「美味しいものを、一緒に食べたい、ひとがいます。」とあるように、実在するお総菜屋さんやレストラン、居酒屋がたくさん出てきます。

 私は谷中の近くで育ったけれど、ミーハーではないので、ベタな洋食屋さんとか行ったことのない場所ばかり出てくるんだろうなと思っていたら、軒並み知っていて笑った。

 ベタって、正当なのね。

 馬肉の「中江」とか洋食「香味屋」とか、思い出が噴出してしまう。

 「焼きかりんとう」は今年の初めに制覇したばかり。

 イチゴシャンデだけは聞いたことはあるけど食べたことがないので、今度食べてみたいな。

 着物の描写も美しくて、柚子の柄の帯なんてなんてきれいなんだろう、大学の卒業式に来たレンガ色の紋付に合うんじゃないだろうか、是非締めてみたいと思った。

 着物なんて着ないのにね。

 不倫の関係を描いている話なのに、男性の方から妻子の香りがあまりしない。

 でも、そういうものなのかも。

 だって、家庭と家庭の外での恋愛なんて別のものだもんね。

 ラストは、結局そういうことなんだね、という感じでした。

 なんだか悲しくなった。

 この本は友人が貸してくれたもので、彼氏と別れたばかりの友人はラストで泣いたと言ったけれど、私は主人公の家族との描写の方がよっぽど泣けた。

 これは悩んでいる事の違いに依るものだろう。

 文体は好きだし、ストーリーも好き。

 三浦しをんのような品格を感じる。

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DVD『つぐない』(Atonoment)

2010年10月16日 21時17分54秒 | 読書感想文
 好きな小説の映画版を、やっと観ることができました。

 あらすじは小説の感想の方にも書いたけど、小説家を目指す夢見がちな少女が嘘の証言をしたことによって、少女の姉と恋人である男性が引き裂かれてしまうという話。

 犯罪者にされてしまった男性は出所後、戦火の下で戦う兵隊となる。姉は家族を捨ててナースになる。

 ある日2人は町で再開し、共に生活を始める。

 それを知らない少女は姉の影を追いかけ、小説家にはならずにナースを志す。

 映像で見ると小説が持っている細やかな心理描写をすっ飛ばして、救われない部分が強調されてしまっている感じ。

 あの上下巻を2時間にまとめ上げて、違和感(目立った不満)が無いのはすごいと思うけどね…。

 映像で見て良かったと思う点は、イギリスの上流階級のゴージャス感。

 家のデザインが素晴らしいし、何より子ども部屋の素敵な事と言ったら!壁紙の柄、寝具のリネンの柄、ソファにかけられた布のテクスチャとか、本当に可愛い。

 吹き抜けがある内廊下の重厚な木の柱なんか、自分の想像だけでは思い描けないからねー。

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『告白』(湊 かなえ)

2010年06月27日 18時29分55秒 | 読書感想文
 物語は一人の女性教員が、校内で事故死したとされる娘が、実は自分のクラスの生徒に殺されたのだと生徒たちに告白するシーンから始まる。

 その後、登場人物たちが各々の立場から事件に関する「告白」を連ね、ラストを迎える。
 映画はどのように構成されているのか知らないけれど、小説ではとにかく一幕一幕を別々の人が自分の立場で物を語るので、かなり長いこと、女性教員の存在が脇役となってしまう。
 最後にすごい存在感を示すんだけどねー。

 最初から最後まで、映画の宣伝で散々煽られているような「衝撃」感はない。

 ただひたすら「リアルだ」と感じた。

 他人を客観的にみると突飛、滑稽、非常識と思われることでも、行動の主体となっている本人の中では全く平凡で理にかなった行動ということはままあって、複数の登場人物の独白を通して、日常的に起こりえる誤解というか、感覚の違いを体感する感じ(上手く表現できない)。

 一見自分の意思で行動している人が、実は他人に動かされていたりするのもリアル。

 だから、小説を読んでいるというよりは、ノンフィクションのアンソロジーを読んでいるような気分になる。

 そんな風に感じる人がどれ程いるかはわかりませんが…。

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『そして誰かいなくなった』(夏樹静子)

2010年01月30日 16時05分34秒 | 読書感想文
 クローズドサークルと呼ばれる、無人島や嵐/雪山の山荘など、逃げ場がなく閉ざされた空間を舞台にしたミステリが三度のご飯と同じくらい好きな私です。

 仕事やプライベートでストレスが溜まりまくり、amazonでクローズドサークルの小説を何作か購入したうちのひとつです。

 タイトルからもわかるようにクリスティの『そして誰もいなくなった』をなぞったプロット。逃げられないクルーザーの上で、次から次へと乗客が殺されていきます。

 …でも不思議と次々と殺されていくゾクゾク感がないのよね。個々の登場人物の人格もなんとなくぼやけてしまっている気がする(人が死に始める前まではそんなに悪くなかったんだけど)。

 語り部の女の子が憎たらしいのはとても新鮮だった。ここまであからさまに人好きのしない主人公もないと思う。

 本格ミステリ(知らない人に対してざっくり説明するなら舞台やトリックがリアリズムよりもそれ自体の面白さを追求している→ゆえにアクロバティックな展開のものも多い)というジャンルに精通している方なら、トリックや結末はけして目新しいものではないけれども、落ちの付け方は印象的。

 ネタバレするのであまり書けないけど、一読の価値はありです。

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『凍える島』(近藤史恵)

2009年11月14日 21時44分40秒 | 読書感想文
 孤島に集まった人たちが次々殺されていくパターン。

 私は中3の時にクリスティの『そして誰もいなくなった』を読んで衝撃をうけてから、クローズドサークルの虜になってしまった。

 1990年代前半くらいにデビューした作家に良く見られる独特のカタカナ表記に少し面食らうけど、すぐになれる。

 一人一人死んでいく展開にあまりドキドキできない。

 新興宗教の話はもっとふくらませることができたんじゃないだろうか。

 登場人物の描写、性格、犯人の心理、どれをとっても新本格っぽい。

 謎が解明されても心が理解できない。

 リアルな犯罪ってそういうものだろうけど。

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『禁断のパンダ』(拓未 司)

2009年11月08日 17時08分06秒 | 読書感想文
 第6回『このミス』大賞大賞受賞作です(うっかり上巻の表紙を破ってしまった…)。

 「犯人が誰だかすぐわかっちゃった!ミステリとしては失敗だ!」というレビューを見たけど、そもそも最初から犯人が分かるように構成されているし、フーダニットばかりがミステリではないから、犯人がわかったから駄目だという評価はいかがなものかと思う。

 ただ、普段から何も考えずにただ本を読み進めるだけの私にも展開の予想はついたから、ミステリとしては満足度が低いかもしれない。

 でも、料理の含蓄とその表現力は素晴らしいし、今後もこのテーマで書き続ければ私は読み続けたい。

 ミステリ云々は抜きにして、わかりやすい構成を好む私が好きなタイプでした。

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【ネタバレ】『贖罪』(上/下)(イアン・マキューアン)

2008年08月30日 21時52分55秒 | 読書感想文
 いつも空想の中にいるような夢見がちな妹が誤解から姉の恋人を告発し、彼は犯罪者となる。姉は家族を捨てて家を出る。恋人は出所後兵隊となり、孤独なまま戦地へ赴く。

 大人になり小説家となった妹の視点から、60年という長い期間を描く物語。

 mixiのレビューを見ていたら、前半(上巻?)が読みにくいという感想が多かったけど、上巻の細やかな心理描写が醸し出す繊細な雰囲気に私は恍惚となった。

 思い込みが引き起こす過ちと、保身に走るあまり他人を犯罪者に仕立て上げる傲慢、過ちを犯した他者を許せない人間の頑なさには鳥肌が立つ。

 人間が犯しがちな過ちがぎっしりと詰まっていて、とてもリアルだ。

 そして、最後はとても救われない。

 今年の四月から日本でも映画版が公開されていたようで…。出会うのがちょっと遅かった模様。

 結構好きなタイプの小説だったので、アマゾンでマキューアンの小説を大人買いしましたよ。初期の作品から読んでいるけど、『贖罪』とはだいぶ毛色が違っていて面白い。

『春にして君を離れ』(アガサ・クリスティー)

2008年06月18日 18時49分46秒 | 読書感想文
 アガサ・クリスティーが別名(メアリ・ウェストマコット)を使って書いた作品。ネットレビューで評価が高かったので読んでみました。

 なんで別名かというと、ミステリじゃないから。日本ではハヤカワミステリからアガサ・クリスティー名義で出版されています。

 家族(や他人)のためを思ってしたことが、実はひとりよがりだった…というよくある日常の話なんだけど、その状況がいかに恐ろしく悲しいことなのかをリアルに描いている。クリスティーの力量のすごさをみせつけられる作品。

 「クリスティーなんて中学生が読むものだよね」というセリフをずいぶん聞いたものだけど、そう言った人たちにこの作品を渡してみたい。

 自戒のためにも一度読んでおくといいと思うけど、押し付けがましい生き方をしている人はどんなチャンスを与えられても気づけないものなんだよね。その人の押し付けがましさを甘んじて受けている、笑顔の仮面をかぶった家族や友人がいる限り…。

 人間て怖い。

*****

 お気に入りのシーンは、丘の上で4フィートの距離をあけて男女が立っているところ。恋愛の醍醐味って、相手に触れることができない短い期間にギュッと濃縮されてると思うわ。

*****

2013/1/6(正月休みに追記)

 この作品はとても印象に残っているので、ときどき振り返ることがある。

 今回も時間がたくさんあったので振り返っていたのだけど、ネットを見ていると「この作品の持つ意味がわからない」という意見が結構あって驚いた。

 何も感じない人と言うのは、きっと幸せな人生を歩んできたのか、もしくは作品中のお母さんと同じタイプの人なんだろう。

 本気で「わからない」という人がいることに、少し驚いた正月休みでした。