先日韓流ドラマ「王と妃」を見終わり、しばらくは休憩しゆっくりしようと思っている。そして久しぶりにゆったりとくつろいでいたら何故か創作意欲がわいてきて、あっという間に短編小説が出来てしまった。かといってこれで完成ではなく、大きな小説の一部分としてである。
秀吉のエピソードを思いつくまま順不同で書きつけ、後につなぎ合わせてそこそこの小説になればいいと思っている。
小説「豊臣への秘密指令」の二回目「出あい」
秀吉、と言っても当時は日吉丸と名乗っていたが、その正体は草である。
出身は尾張の中村郷。今は名古屋市中村区である。いまでは人口密集地だが、当時はまだまだのどかな農村地帯であった。
小さいころ百姓のせがれとして生きていたころのこと、八と名乗る武者が野良仕事をしていた日吉丸に声をかける。
「日吉丸どの、実は大事な話がございます。」
「なんだや、おいらに用事かや?」
「私、八と申します。お見知り置きを・・・」
「ふん、八さんきゃ?」
「実はあなた様はこれから広い世界へ出かけていただくことになります。それが運命なのです。」
「運命?なんで・・・」
「今は百姓のせがれと言う立場ですが、本当は重要な役目を背負って行かれる大事なお方なのですぞ。」
「おいらがか?」
「ご両親には先ほど伝えてあります。今から私と旅に出ます。そのままで結構ですからさあ、行きましょうぞ」
「えーっ?そんなぁー、近所のミヨちゃんにお別れを告げなきゃー」
「そんな小さなことを気にしていては大事はなせませんぞ。道中においおい説明してゆきますが、私たちはこれから全国を巡ります。高いところからのご命令です。」
「高い所って?」
「今は言えません。ただ、この国を実際に支配している方からの指令であるとだけ。」
八は今でいうところのサンカである。全国にネットワークを持つその組織は職業別に分かれており、その性格も単純なものではなかった。ある時は職能組織として既得権を守るための労働組合のような動きをするし、穴太のように専門職として各地の大名から依頼され石組みの仕事を請け負う組織まである。八は主に船頭等を仕切る川仕事の手配師である。
馬引き、下駄の歯入れ、行商、竹かご売り、あらゆる仕事を経験し、夜には軍略、兵法、そして文字まであらゆる知識をたたきこまれる毎日だった。この経験が将来のためであることは言うまでもない。
日吉丸16歳である。故郷をあとにして8年の月日がながれていた。
「日吉さま、今日からは今川氏の城下で商売を始めていただきます。ここで私どもが段取りをしますので今川の殿様から信用を得られるように頑張ってください。」
日吉丸はすでに立派な若者である。浜松城下で酒屋の若旦那という触れ込みである。八は今川家のご用達を得られるようわいろを用意し、着々と計画を進めていた。
そんな時、、浜松城下に傀儡子の一団が通りかかる。日吉丸は物珍しさからその一団を見守っていた。その一団の中に一人の若者がいた。においとでもいうのだろうか、日吉丸はその若者に興味を覚えた。
傀儡子達は民衆の前で宣伝を始めるが、その若者はそこから少々距離を置いたところで一人で立っていた。
「おい、おまえ」日吉丸は小さな声で声をかける。
「なんでしょうか」、若者は落ち着いて答える。
「お前はこの一団の一員なのか?」
「いやー、私は小さいころこの芸人集団に預けられ全国を旅しているだけです。」
「名前は?」、「二郎三郎です。」
「出は?」、「新田庄世良田と聞かされましたが…」
「世良田から来たのか・・・」
「全国を旅し、当分はこの浜松に身を置く所存です。」
「なるほどな、私は日吉丸。尾張は中村の出よ。今川の様子を探り、その後は今急成長している織田家に仕えようとおもっている。おぬしも一緒に尾張へ行く気はないか?」
「織田ですか・・・、私は武田家か松平家に注目してますが…。」
「なるほどな、それもいいかも。なにかおぬしには自分に似た匂いを感じるのだ。将来、仮に出あうことが会ったら、うまくやりたいものよな。」
運命の出会いとはあるものだ。まさかこの出会いが因縁の豊臣対徳川の始まりであったとは・・・・。
それは両者ともすっかり忘れていたが、その後、小牧長久手の戦いの最中、秀吉も家康も同時にそれを思い出したのである。つまり、両者の戦闘は不思議なものだった。いわゆる同じ軍略で戦われるのだ。それはサンカ独特の戦略である。
これでは絶対に決着がつかない。
秀吉は感じた。この戦いはまるで自分と戦っている気がすると。あまりにも互角であり、先を読み合えば必ず相打ちになるのである。つまり、天才同士の戦いだからお互いが全滅するまで戦わざるを得なくなるのだ。
片方が和平を求めた時、二人は浜松で会ったあの時の若者であることを知った。そうとも、お互い似たもの同士で、お互いとも草だったのだ。うまく協力すれば良いではないかと…。
さて、話を戻そう。浜松で十分な成果を上げ、彼は今川家に酒を買ってもらう御用商人となっていた。十分な年月が経過し、日吉丸は十分に軍師としての知識と実力をすでに身につけている。八からは織田に出仕するよう指示された。日吉丸は考え込む。さて、どうやって織田家に仕えたものか・・・・。
名古屋の北区に蛇池公園という小さな公園がある。そこにあるのは有名な池なのだ。うつけと呼ばれる信長は小さいころここを遊び場所にしていた。家臣の子供たちを引き連れ池に石を投げたり、筏を浮かべてはしゃいでいた。
それを見ていた家臣は驚きおびえた。
「若様、おやめくだされ、この池には龍が住むといわれています。あまり遊びが過ぎますと龍が目を覚まし、大変なことが起きます。」
「オー、面白い。龍神ってか。見てやろうじゃないか。もし本当に龍がいたなら私はおとなしくしよう。しかし、仮にいなかったらどうするつもりだ?腹を切るか?」
若は本気だった。池の水をくみ出し、本当に龍がいるのか確かめようとした。多くの家臣が集められ、「さあ、くみ出せ!」との若の命令を受けたものの、誰もくみ出そうとはしない。何度かくみ出そうとしたものの、実は池の底は庄内川とつながっており、汲めどもくめども水が尽きることはないのである。
「誰か潜ってみる者はおらんのか?」
神様が住む池である。誰も名乗り出る者はいない。
「私めにお任せくださらんか?」
「うーん、おまえはだれか?」
「はい、日吉丸と申すただの百姓でございます。」
「ふん、おぬし、怖くないのか?」
「何をですか?」
「いや、龍がいるかもしれんのだぞ」
「若様はいないとおっしゃる。私は殿を信じます。」
「ふん、若いのになかなかしっかりしておるな。よい。お前が潜ってみろ。」
「はい、承知しました。仮にですね龍がいたらたぶん私は生きては帰れますまい。でも、殿がおっしゃるよう龍がいなかったら私を草履取りとしてでもお雇いいただけますか?」
「オー承知した。誰もやらんことをしようとするんだ。誰よりも大事にしてやるわ。」
日吉丸はふんどし一つになり、多くの家臣が見守る中池に飛び込んだ。
何度も何度も潜ったものの龍は現れなかった。そのうちに信長はしびれを切らし、「もういい。いないに決まっている。みんな、わかったであろう。迷信なんじゃ。もはや龍の存在を論議するでないぞ。」
「若、私へのお約束は?」
「おー、そうじゃったのー、約束じゃ。わしの草履取りでよかったかな?」
「はい。もちろんで。」
「しめしめ、うまく潜り込んだぞ。」日吉丸はまんまと信長に近づくことに成功した。草履取りとは言え、若の身近にいれば情報はすべて手に入る。八からはとりあえず信長に近づく者をチェックするようにとの指令である。
特に監視するべきはイエズス会と堺の商人である。
その中で一人、日吉丸にとって非常に気になる存在が利休であった。というのも、茶人として有名になるはるか前から利休は清州に出入りしていたのだ。それは草履取りである日吉丸だからこそ知りえた情報である。なにより利休には共通するに匂いがあったのだ。つまり、彼の正体は秀吉、家康と同様のサンカだというのがわかったからである。将来日吉丸と敵になるのか味方になるのか、その時点では判断がつきかねるのであった。
なにはともあれ、日吉丸が大きくデビューするのは例の一夜城、墨俣城を築く時である。
つづく
秀吉のエピソードを思いつくまま順不同で書きつけ、後につなぎ合わせてそこそこの小説になればいいと思っている。
小説「豊臣への秘密指令」の二回目「出あい」
秀吉、と言っても当時は日吉丸と名乗っていたが、その正体は草である。
出身は尾張の中村郷。今は名古屋市中村区である。いまでは人口密集地だが、当時はまだまだのどかな農村地帯であった。
小さいころ百姓のせがれとして生きていたころのこと、八と名乗る武者が野良仕事をしていた日吉丸に声をかける。
「日吉丸どの、実は大事な話がございます。」
「なんだや、おいらに用事かや?」
「私、八と申します。お見知り置きを・・・」
「ふん、八さんきゃ?」
「実はあなた様はこれから広い世界へ出かけていただくことになります。それが運命なのです。」
「運命?なんで・・・」
「今は百姓のせがれと言う立場ですが、本当は重要な役目を背負って行かれる大事なお方なのですぞ。」
「おいらがか?」
「ご両親には先ほど伝えてあります。今から私と旅に出ます。そのままで結構ですからさあ、行きましょうぞ」
「えーっ?そんなぁー、近所のミヨちゃんにお別れを告げなきゃー」
「そんな小さなことを気にしていては大事はなせませんぞ。道中においおい説明してゆきますが、私たちはこれから全国を巡ります。高いところからのご命令です。」
「高い所って?」
「今は言えません。ただ、この国を実際に支配している方からの指令であるとだけ。」
八は今でいうところのサンカである。全国にネットワークを持つその組織は職業別に分かれており、その性格も単純なものではなかった。ある時は職能組織として既得権を守るための労働組合のような動きをするし、穴太のように専門職として各地の大名から依頼され石組みの仕事を請け負う組織まである。八は主に船頭等を仕切る川仕事の手配師である。
馬引き、下駄の歯入れ、行商、竹かご売り、あらゆる仕事を経験し、夜には軍略、兵法、そして文字まであらゆる知識をたたきこまれる毎日だった。この経験が将来のためであることは言うまでもない。
日吉丸16歳である。故郷をあとにして8年の月日がながれていた。
「日吉さま、今日からは今川氏の城下で商売を始めていただきます。ここで私どもが段取りをしますので今川の殿様から信用を得られるように頑張ってください。」
日吉丸はすでに立派な若者である。浜松城下で酒屋の若旦那という触れ込みである。八は今川家のご用達を得られるようわいろを用意し、着々と計画を進めていた。
そんな時、、浜松城下に傀儡子の一団が通りかかる。日吉丸は物珍しさからその一団を見守っていた。その一団の中に一人の若者がいた。においとでもいうのだろうか、日吉丸はその若者に興味を覚えた。
傀儡子達は民衆の前で宣伝を始めるが、その若者はそこから少々距離を置いたところで一人で立っていた。
「おい、おまえ」日吉丸は小さな声で声をかける。
「なんでしょうか」、若者は落ち着いて答える。
「お前はこの一団の一員なのか?」
「いやー、私は小さいころこの芸人集団に預けられ全国を旅しているだけです。」
「名前は?」、「二郎三郎です。」
「出は?」、「新田庄世良田と聞かされましたが…」
「世良田から来たのか・・・」
「全国を旅し、当分はこの浜松に身を置く所存です。」
「なるほどな、私は日吉丸。尾張は中村の出よ。今川の様子を探り、その後は今急成長している織田家に仕えようとおもっている。おぬしも一緒に尾張へ行く気はないか?」
「織田ですか・・・、私は武田家か松平家に注目してますが…。」
「なるほどな、それもいいかも。なにかおぬしには自分に似た匂いを感じるのだ。将来、仮に出あうことが会ったら、うまくやりたいものよな。」
運命の出会いとはあるものだ。まさかこの出会いが因縁の豊臣対徳川の始まりであったとは・・・・。
それは両者ともすっかり忘れていたが、その後、小牧長久手の戦いの最中、秀吉も家康も同時にそれを思い出したのである。つまり、両者の戦闘は不思議なものだった。いわゆる同じ軍略で戦われるのだ。それはサンカ独特の戦略である。
これでは絶対に決着がつかない。
秀吉は感じた。この戦いはまるで自分と戦っている気がすると。あまりにも互角であり、先を読み合えば必ず相打ちになるのである。つまり、天才同士の戦いだからお互いが全滅するまで戦わざるを得なくなるのだ。
片方が和平を求めた時、二人は浜松で会ったあの時の若者であることを知った。そうとも、お互い似たもの同士で、お互いとも草だったのだ。うまく協力すれば良いではないかと…。
さて、話を戻そう。浜松で十分な成果を上げ、彼は今川家に酒を買ってもらう御用商人となっていた。十分な年月が経過し、日吉丸は十分に軍師としての知識と実力をすでに身につけている。八からは織田に出仕するよう指示された。日吉丸は考え込む。さて、どうやって織田家に仕えたものか・・・・。
名古屋の北区に蛇池公園という小さな公園がある。そこにあるのは有名な池なのだ。うつけと呼ばれる信長は小さいころここを遊び場所にしていた。家臣の子供たちを引き連れ池に石を投げたり、筏を浮かべてはしゃいでいた。
それを見ていた家臣は驚きおびえた。
「若様、おやめくだされ、この池には龍が住むといわれています。あまり遊びが過ぎますと龍が目を覚まし、大変なことが起きます。」
「オー、面白い。龍神ってか。見てやろうじゃないか。もし本当に龍がいたなら私はおとなしくしよう。しかし、仮にいなかったらどうするつもりだ?腹を切るか?」
若は本気だった。池の水をくみ出し、本当に龍がいるのか確かめようとした。多くの家臣が集められ、「さあ、くみ出せ!」との若の命令を受けたものの、誰もくみ出そうとはしない。何度かくみ出そうとしたものの、実は池の底は庄内川とつながっており、汲めどもくめども水が尽きることはないのである。
「誰か潜ってみる者はおらんのか?」
神様が住む池である。誰も名乗り出る者はいない。
「私めにお任せくださらんか?」
「うーん、おまえはだれか?」
「はい、日吉丸と申すただの百姓でございます。」
「ふん、おぬし、怖くないのか?」
「何をですか?」
「いや、龍がいるかもしれんのだぞ」
「若様はいないとおっしゃる。私は殿を信じます。」
「ふん、若いのになかなかしっかりしておるな。よい。お前が潜ってみろ。」
「はい、承知しました。仮にですね龍がいたらたぶん私は生きては帰れますまい。でも、殿がおっしゃるよう龍がいなかったら私を草履取りとしてでもお雇いいただけますか?」
「オー承知した。誰もやらんことをしようとするんだ。誰よりも大事にしてやるわ。」
日吉丸はふんどし一つになり、多くの家臣が見守る中池に飛び込んだ。
何度も何度も潜ったものの龍は現れなかった。そのうちに信長はしびれを切らし、「もういい。いないに決まっている。みんな、わかったであろう。迷信なんじゃ。もはや龍の存在を論議するでないぞ。」
「若、私へのお約束は?」
「おー、そうじゃったのー、約束じゃ。わしの草履取りでよかったかな?」
「はい。もちろんで。」
「しめしめ、うまく潜り込んだぞ。」日吉丸はまんまと信長に近づくことに成功した。草履取りとは言え、若の身近にいれば情報はすべて手に入る。八からはとりあえず信長に近づく者をチェックするようにとの指令である。
特に監視するべきはイエズス会と堺の商人である。
その中で一人、日吉丸にとって非常に気になる存在が利休であった。というのも、茶人として有名になるはるか前から利休は清州に出入りしていたのだ。それは草履取りである日吉丸だからこそ知りえた情報である。なにより利休には共通するに匂いがあったのだ。つまり、彼の正体は秀吉、家康と同様のサンカだというのがわかったからである。将来日吉丸と敵になるのか味方になるのか、その時点では判断がつきかねるのであった。
なにはともあれ、日吉丸が大きくデビューするのは例の一夜城、墨俣城を築く時である。
つづく