ゲンさんに聞きたかったこと

こんにちは！　れいです。

ただいまファイナル企画
「あっち向いてホイ！スピンオフ　～Bridge story of another rainbow～」
をお届けしております。
もう一つの虹の橋物語をお楽しみ下さい。






…そこにいるの娘ちゃんか？


あっゲンさん。私今日ずーっと探してたんだよ？


さっき郵便局の前で息子に会って俺を探してるって聞いたよ
いろいろびっくりするような話しを聞いてて遅くなってね
さすがに娘ちゃんも家に帰ってるだろうと思って来てみたんだ
…夜になってごめんな？


ううん。わざわざありがと


息子ってのは娘ちゃんのお兄さんなんだって？
兄貴のくせに随分小さいチワワだな
あんまりにもチビだから簡単に踏みつけ…


お兄ちゃんのことバカにしないで！
バカにしていいのは私だけだから今度何か言ったらゲンさんでも怒るよ


ごめんごめん、わかった。　…で？話しって？


あ、うん…
お隣ね？ここ。お家があったの


・・・。


突然何もかもなくなって空き地になっちゃった
私こっちに来て初めて会う動物だったんだけど
ウォンバットっていう動物が住んでたのね？
あの子撫でられるのが大好きで可愛かったんだよ？
仲良くしてたんだけどどこ行っちゃったんだろう…


・・・。


ねぇゲンさんあの子のこと知らない？
引っ越したのかなあ…


娘ちゃんはこっち来てまだ日が浅いよな？


もうちょっとで１年　…かな？
ああもう１年も経つんだ…


虹の橋での生活が長くなればなるだけ顔見知りも増えていくが
そうなると知ってる人がいなくなることも出てくるんだよ


え？何で？


虹の橋の向こうに行くからさ


虹の橋の向こう…　向こうなんてあるんだ


ああ
遠い昔誰かに聞いたことだが虹の橋の向こうは…
天国、といったかな…
迎えに来た飼い主とその動物にしかわからない世界があって
ここで再会できたやつらは皆虹の橋の向こうに渡るらしい


へえ…


それはそれはきれいな橋が架かるらしいよ
もっともその橋は飼い主とその動物にしか見えないらしいがな
…この場所に住んでたウォンバットは飼い主が迎えに来て
一緒に橋を渡って天国とやらに行ったんじゃないか？
ここで暮らしてる動物が突然いなくなって二度と会えなくなるっていうのは
飼い主が迎えに来たと思ってまず間違いない


そうなんだ…


淋しいか？


うん
もう会えないって解ってるならあいさつくらいしたかった


あいさつ…か
もし今娘ちゃんの飼い主が
思いっきり自分の名前を叫んでるのがはっきり聞こえたらどうする？


声が聞こえる方に走る！　
走るよ当たり前じゃない、だって私ママに会い…


目の前の俺のことは？


・・・。


そういうことだよ
誰でも皆心のどこかで何となく飼い主を待ってるもんさ
ウォンバットよかったじゃないか。もう一度飼い主に会えたんだ
撫でられるのが大好きだったんだろう？
久しぶりに飼い主に抱っこされて撫でられて
嬉しくてたまらなかったはずだよ
娘ちゃんはさみしかったかもしれないが自分に置き換えて考えてごらん


・・・。


淋しいことではないだろう？


そうだね…


俺はこんな目の色だし体もでかい。体力に自信もある。
一見怖がられることも多いが飼い主には散々甘えたんだよ


えっ？！　ゲンさんが？！


ああ
だからここでは飼い主のことを口に出さない動物でも
怖そうに見える動物でも
心の中では飼い主が迎えに来るのを待ってるもんなんだ


そっか…
ゲンさんにも会えなくなっちゃう日が来るの？


いつかはわからんけどな
飼い主が迎えに来るのは俺が先か娘ちゃんが先か
それは誰にもわからないさ


ふーん…
ウォンバット、虹の橋の向こうでずっと飼い主さんと一緒？


そうだろうな


いいね、飼い主さんとずっと一緒…


・・・。


いいな…
私もボスとママに会いたいな…


ハコ持って帰ったらいいじゃないか


ときどき帰るよ？
でも最近ボスもママも全然気付いてくれない
…いま虹のしたって春だからたくさんちょうちょ飛んでるでしょ？
だから”わたし一緒にいるよ”って知らせるために
ママたちのそばで飛んでもらうの


パピヨン、か


うん。あの子たちいつも協力してくれるんだ
そしたらね、私がそばにいることにちゃんと気が付いてくれて
ママなんて「娘、娘、わかってるよ」って言ってくれるの
でもね？私がいるのはこっちなのに
ママったらいつもちょうちょのほう見ながら話すんだよなー


一緒にいるってわかってもらえたならそれで充分じゃないか
少しずつ思いが伝わらなくて歯がゆいのは
虹の橋の動物も虹のしたの人間もきっと同じだ
大事なのは一緒に過ごした日々が
互いの心の中でずっと生きてるってことなんじゃないのか？


・・・。


思うように会えなくても心のどこかで忘れなければ
飼い主が迎えに来て懐かしい声で自分の名前を呼んだとき
どこにいたってそれは必ず聞こえると俺は思ってる
それまでは何も考えずに虹の橋で楽しく暮らしていればいいのさ


・・・。


…ウォンバットの件、理解できたかい？


ん、わかった


…上見てごらん？今日もきれいな満月だ
娘ちゃんの飼い主も見てるといいな


うん。　…うん！






上記作品は次の作品の二次的著作物です。
Original Update by Yasser Alghofily
「So boring to be your model!」