鋼の話。
鋼は鉄と炭素の合金である。
純粋は鉄は常温でbccの結晶構造を持ち、温度を上げていくとfccに変態し、更に温度を上げるとbccに戻ってから溶融する。この鉄はどんなに早く冷やしてもゆっくり冷やしても、bccの鉄に戻るので、熱履歴に依存せず、柔らかいままである。
身近な材料で純鉄というのもはなかなか見ないが、自動車の鋼板は結構柔らかい鉄を使っていることが多い。
炭素濃度が低く、熱処理しても硬さがあまり変化しないような材料、一般には炭素量0.2%程度以下の材料を低炭素鋼といい、溶接を前提にしている材料など、急激な冷却を伴うが、割れては困る材料によく使われる。
建築材料のSS400などは低炭素鋼です。低炭素鋼はグラインダーで削ったとき、火花が途中で飛び散らず、まっすぐに飛ぶだけになります。炭素量が多いと鳥足とかいって、火花が途中で弾けて枝分かれします。
一般に炭素鋼と言われるものの代表はS45Cという炭素0.45%含む材料があります。焼戻し状態の組織でもパーライト組織があるので、そこそこの強度があるし、焼入れ焼戻しをすると固くなるので、使い勝手がいい材料です。
高炭素鋼というのもありますが、メジャーなのはベアリングで使われるSUJ2というものかと。炭素1.2%とすごい量が入っていますが、Crも1%程度入っているので、クロム炭化物を生じます。通常は球状化焼きなましと言って炭化物を球にするような熱処理をしたフェライトセメンタイト組織になっており、加工後に焼入れ焼戻しで、セメンタイトマルテンサイト組織にします。SUJ2は高清浄(不純物が少ない)で流通量も多く安価であるため、え?こんなところにSUJ2みたいな使われ方をします。
更に炭素が多いものというと、そうです。鋳鉄があります。鉄と炭素の共晶は融点が1100度くらいと、純鉄の1540度程度と比較すると低いためいろいろメリットがあります。ですが、Fe-Cの状態図からすると溶融した鋳鉄を冷却するとセメンタイト(炭化物)をたくさん出現するはずですが、FC200などは、フェライト-グラファイトという組織です。これはケイ素を添加しているためにグラファイトの吐き出しが行われ、セメンタイトの発生を阻害しているためです。なので、ケイ素を抜いたら、セメンタイトがたくさん出てくるはず。これは銑鉄(白銑鉄)において顕著なのかと思います。
しかし、鋳鉄には用途によっては固くあってほしいものもあります。量産品ですと鋳鉄カムシャフトなんかは、全体は鋳込みなのだが、カム山の部分は摺動性がほしいので、チルとうセメンタイトが多く出た状態にしておかないと耐摩耗性が担保できません。
しかしケイ素を減らすとセメンタイトの析出は増やせるものの、セメンタイトだらけになってしまって、加工できなくなる。