copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
* 唐招提寺の千手千眼観音・センティ登場(051)
ジョジィが、コロを帰す変わりにと要求を一つ出してきた。
唐招提寺の金堂あたりに住む千手観音菩薩はんから、
手を2本1セット借りて来て、コロに持たせてくれないだろうか?
そうして貰えれば、もうコロを煩わせずに済むし、
ワシも空を飛べるようになっているので、
コロを開放してやれると言う。
その手は数10m以内なら脳波のコントロールの下に、
あたかも自分の手のように自由に使えるようになって
いるらしい。
[ジィさん、空飛べるんだったら、
自分で借りにくればいいのに!]と思うのだが、
何か事情でもあるのだろうか?
それとも昔に不義理でもしているのだろうか?
頼まれたら文句を言いながらも断れないのが、私の性分。
仕方がない。
また一肌脱いでやるとするか。
何でも、ジョジィによれば、
センティは5・35mもある木心乾漆像である。
芯に木材を用い、その上に乾漆で形を整える手法で
作られている。
その木心に使われている木が、ジョジィの遠縁に当たるという。
千手観音で手が千本も有ると言うから、センティと
呼ぶことにした。
実際は、大きな手42本と小さな手912本の
計954本しかないらしい。
残り46本分はずっと大昔の解体修理の時、元に戻せなくって
何処かに隠しているのだろうか。
彼女は、器用な上科学にも強いらしい。
ペルシヤの方の血も少し混じっているという。
つづく
あ@仮想はてな物語 唐招提寺の千手千眼観音・センティ登場 (2/6)
copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
唐招提寺と言えば、
薬師寺の東塔・西塔コンビ、トフトフのすぐ近くではないか!
そこから歩いて10分ぐらいとかからない。
トフトフは、テレパシー通信網の中心基地である。
相輪が、その役目を果たしている。
彼らは、デュプレックス・システムを採用していて、
一方が故障しても片方が
すぐその代わりをするため、システム自身止まる
可能性は少ない。
もし万が一、2塔とも駄目でも興福寺、法隆寺、
法起寺等々の塔が
すぐさま、その肩代わりすると言う。
それにしても進んでる!
完璧に近い通信網システムだ。
誰が構築したのだろう。
羨ましい限りだ。
テレパシー通信も、通信網を必要としない能力の優れた奴も
居れば、必要とする奴も居る。
また、ジョジィのように身内同士で専用回線を引いている
者もいる。
一体どうなっているのだろう。
聞けば聞くほど複雑怪奇。
頭がコンガラがってきた。
その素晴らしいシステムの足元に科学に滅法強いセンティ。
手が954本。
と言うことは、
指が・・・954 X 5 = 4,770 本も・・・
これを利用しない手はない。
会って是非ともシス・オペになってもらおう。
非公開で閉じられたグループ内の運営責任者としては最適だ。
会員も序々に増やして横の繋がりを拡げてゆこう。
言葉も違い、全然繋がりもなかった縄文杉のジョジィと
万博公園の太陽の塔・タイタイが知り合いになり、
今ではもうすっかり友達になってしまっているのが強みだ。
こりゃ、おもろいぞ。
つづく
あ@仮想はてな物語 唐招提寺の千手千眼観音・センティ登場 (3/6)
copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
4月の昇給があった。
ピカ輪世代と呼ばれる私たちの年代は、
他の年代に比べて圧倒的に人数が多い。
40も半ば近くになると、
今まででも賃金カーブが緩やかになっていたのに、
ピカ輪世代がガバッと入り込めば、さらにそのカーブが
寝てしまう。
と言うことは、ベア(べースアップ)にあまり期待出来ないと
いうことだ。
これから、3人の子供にますます金が掛かるというのにだ。
しかし、ボヤいてもどうしようもない。
私は、中途半端な上がり方に腹が立ったので、
その昇給分でブック型の携帯用パソコンを買った。
Oさんには内緒である。
アドオン方式の24回均等2年払いにした。
コロ専用のパソコンである。
Sサヤカのガソリンの給油口を通してでも、
コロの奴と話を出来ないことはないのだが、
話をする度に一々フタを外すのは面倒だし、
ガソリンの匂いには閉口している。
サヤカとともに、コロを連れてゆけば何かと便利そうだし、
そうするとすればコロの奴ともある程度自由に話をしたい。
その為、小型で持ち運びが出来るブック型にしたのだ。
メーカーは、T社製。
オレのワープロはN社製。
つづく
あ@仮想はてな物語 唐招提寺の千手千眼観音・センティ登場 (4/6)
copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
フロッピー・ディスクの互換性はないそのため、コロの打った
フロッピー・ディスクを、オレのワープロにセットしても
読み取りは出来ない。
わずか数mしか離れていないのにパソコン通信を
利用しなければならないのだ。
それも回線利用料を払って!
メーカーを同じにしようかと思ったのだが、
一社に偏れば、世の中の流れに
取り残されるように思ったし、実際に使ってみないと、
機能の違いがよく分からないからだ。
コロには不評であった。
キーボードが小さいため、コロお得意の手足4本使いの
インプットが出来ないのである。
Oさんは、その昔の姓の通り、おおらか(王等香)である。
昇給しようが、平だろうが一向に頓着しない。
私には、それがとても有り難い。
勤めらしい勤めを経験していないので、
会社のことなど、まるで関心がない。
通勤電車の一部のように思っている。
役職がどうのこうの、幾ら給料上がったの、などということは、
自分の口からは言い出さない。
私には、それが救いでもある。
本人の力では、どうにも出来ない事を周りから、
くどくど言っても、何の解決にもなりはしない。
相手を傷つけるだけである。
そういう点では、私には過ぎた嫁さんである。
そんなOさんを欺いて、
コロ専用のパソコンを買ってやったのは、
少々気が引ける行為である。
そのうちに何かお詫びに喜ばす事をしてやろうとは思っている。
5月に入って連休の続くある夜、西の京に出掛けた。
サヤカの荷台にダンボールを付けコロを乗せて3人で行った。
コロは自分で空を飛べるのだが、やはり根は怠け者の犬コロ。
エネルギーの消耗が激しいので、
サヤカに乗せて貰う方がいいみたいだ。
チョコンと大人しく座っている。
その昔、丹波の山奥へ置き去りに連れて行った時の、
大暴れとは大違いだ。
5月とは言え夜は寒い。
走れば寒さが倍加する。
24号から唐招提寺にゆく。
国道の立体橋から、トフトフがそのシルエットを見せてくれる。
夜間あまり寺に近づくと不審がられるので、
少し手前でサヤカを止め犬を散歩させているような振りをする。
しかし、バイクに、犬に、中年のオッさん、
誰が見てもおかしい取り合せと思うはずである。
サヤカから離れると少しはマシなのだろうが、
センティと初対面の話をする、
必要があるから、サヤカからは離れられない。
例によって、ガソリンの給油口に口を当てる。
つづく
あ@仮想はてな物語 唐招提寺の千手千眼観音・センティ登場 (5/6)
copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
むかむかっ。
辛抱! 辛抱!
[千手観音はん、初めまして]
[オッさん、いらっしゃいませ]
ムムッ。
さすがに、ヤルー!
オレをオッさん呼ばわりして!
すべて、お見通しだ。
さては、私たちの通信、盗み見していたのだな。
プライバシーの侵害もいいところだ。
シス・オペも簡単に引き受けてくれた。
その時、一瞬、ワープロを何台用意しなければならないのかと、
立ちくらみがしたが、
センティの指自体がキーボードとして使えるらしい。
さすがは科学者、助かった。
手の貸し出しも、あっけないほど簡単だった。
両手1セット、4年リースで、リース料率はお近づきの
特別サービス、1・03%。
基本価格は10万円、貸し出し期間中の機能アップには、
随時応じると言う。
商売慣れしている。
メーカーも、リース会社も兼ねている。
もしかして、あの足りない46本分は、
センティの奴、どこかにリース中ではないのか!
私は、2セット借りることにした。
ジョジィの分とサヤカの分だ。
サヤカの分は急に思いついたことだ。
月々1,030円 X 2 = 2,060円になるのだが、まあ、
彼らが便利になるのだから何とかしてやろう。
つづく
あ@仮想はてな物語 唐招提寺の千手千眼観音・センティ登場 (6/6)
copyright (c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
それにしても、センティの奴、1・03%の0・03%は
どこから出てきたのだ。
まさか消費税でもあるまい。年間3,000万円も
売り上げがあるわけではないし、
税金など納めるようには思えないし・・・
仕入の費用なんかゼロではないか。
さすがに、しっかりしている。
ジョジィが直接借りに来ないわけが分かるような気がする。
親戚筋と言ってもバッチリと金を取るに違いない。
一応話がついたので、コロに手を借りに行って貰った。
この分では月々の支払いの運搬もコロの世話になることだろう。
コロのヤツ、手を借りてくるや否や、
[ちょっと遊んできます。4~5分、時間下さい]
と携帯用パソコンに文字を打って居なくなった。
サヤカも使える手が出来たので喜んでいることだろう。
1km以内に人が居るので、何も答えてはくれないのだが。
しばらくすると、コロのヤツがへんな歩き方をしながら
帰ってきた。
後足の様子がおかしい。
すぐに携帯用パソコンを通して教えてくれた。
[唐招提寺の金堂の大屋根の傾斜があまりに素晴らしかったの
で、滑り台代わりに2回ほど滑ったら尻の皮が剥けた。
ヒリヒリして痛いので、オッさん、帰ってからメンソレ塗って!]
ヤラレタ!
コロのヤツに先を越された。
私が、ずっと昔、初めてこの寺を訪ねた時から、
思っていたことなのに、
コロのヤツめ、いい思いしやがって!
でも、いい気味だ。
私に内緒でそんな事をするから天罰が下ったのだ。
見ていろ。
帰ってから、たっぷりとメンソレ擦(なす)り込んでやるからな!
天平も 平成の世にも 風は撫でる
甍おおらかなり 青き西の京
ち ふ
この項おわり