copyright(c)ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
平成の初めの頃。
奈良県からだと、400kmは走って来たのでしょう。
目が、かなり充血してました。
僕も、バイクは嫌いではありません。
そのうちに、免許を取りたいなあと思っています。
原付の免許は、去年取ったので、
50ccまでの二輪車なら乗る事が出来るのです。
流さんに、何となく親しみが湧いたので、
バイクを見せてもらうことにしました。
250ccのオン・オフ兼用の二輪でした。
そのバイクには、Sサヤカという名前まで付けておりました。
変わったおじさんです。
僕も暇だったので、おじさんにつきあうことにしました。
作家の記念館や舞台となった場所を訪ねるようでした。
僕は、その小説は教科書で一部分だけ読んだことがあります。
あらすじも覚えていませんでした。
おじさんと話していると、
いろいろと変わった事をしているらしい、
ということが分かりました。
パソコン通信までしているとのことでした。
僕は、パソコン通信に、興味があったのです。
パソコンは、咽喉から手が出るほど欲しかった。
そんな話をしていると、使っていないワープロがあるので、
あげてもいいという事になったのです。
ワープロでも、パソコン通信は出来るそうです。
僕は、嬉しくなりました。
これで、寂しさも、少しは和らぐんではないんだろうかと、
思ったのです。
その日は、3時間ほど、一緒にいて別れました。
1週間ほどすると、流さんから、
型の古いワープロが、送られてきました。
パソコン通信用の電話工事は、既に終わってました。
工事が必要である事は、
おじさんに教えてもらっていたのです。
5,000円ぐらいだと言っていたのですが、
共同住宅になっているので、特別工事代が要っため、
10,000円近くかかってしまいました。
これは堪えました。
僕にとっては大金です。
包装を解くと、ワープロとモデムが入っておりました。
キーボードには、友達のパソコンで遊んでいたので、
違和感はあまり感じませんでした。
モジュラージャックに差し込み、
ワープロの電源を入れれば、もう使うことが可能です。
簡単でした。
流さんが、それ以外の所は、
既にセットしていてくれていたため、助かりました。
本来なら、それでもう通信が可能なのですが、
通信するためには、パソコン通信用の通信網に、
加入しなくてはなりません。
加入するには、入会金や加入申し込み書などを、
揃える事が必要です。
分厚いワープロのマニュアルが2冊と、
3.5インチのフロッピー・ディスクを、
5枚入れてくれてました。
その1枚に、プレゼントと書いてあったので、
早速読みこませてみました。
これも、友達のパソコンのお陰でありました。
操作はどの機械でも似たようなものであるからです。
パソコンに比べて、ワープロ専用機は、
キーボードに、操作名が書いてあるので、
もう一つ楽でした。
フロッピーを読むにして、実行キーを叩きました。
「
先日は、案内ありがとう。
長い間、訪ねてなかったので、面食らっていた。
君のお陰で迷わずに済んだよ。
君は、誠実そうな高校生だから、
「縄文通信」ネットというパソコン通信を教えてあげるよ。
これは、あまり人には知らせないで欲しい。
何しろ、通信する相手は、人間ではないんだ。
でも、面白いよ。
君にぜひ加入を勧めるよ。
君は高校生ということだから、入会金も使用料も要らない。
但し、働いてお金を稼げるようになったら、
たっぷり頂くということだ。
この「縄通」ネットの主催者は、
樹齢2,500年以上という屋久島の縄文杉の、
ジョジィじぃさんだ。
運営は、奈良県の唐招提寺あたりの千手千眼観音、
観女センティが引き受けてくれている。
君には馴染みの薄い者ばかりだと思う。
でも、みんないい人(?)ばかりだ。
接続番号は、XXXX。
君のIDは、XXXX。
暗証番号は要らない。
接続すれば、
担当の者が、
ワープロの画面に移る、
君の容姿を確認にゆくからだ。
それから、これから私の呼び名は、
オッさんでいいよ。
ネットでは、オッさんで通じるんだ。
いい名前だろ。
馬鹿にしたもんでないよ。
この響き堪らんねぇ。
きみも「縄通」ネット用のニックネーム、
考えておくといいよ。
遠田 真君へ
オッさんこと、
流休人(ながれ・やすと)こと
通称・流ドン作より
」
オッさん。
変わった人だ。
ジョジィに、センティだって。
唐招提寺と言えば、
美術や歴史で習ったことは、
あるんだけれど、忘れてしまった。
縄文杉や観音さまが、相手だって?
本当だろうか。
信じられない。
つづく