シリーズ平成の本音―東日本復興事業は国家プロジェクトになっていない!?
東日本大震災から4年を経過し、5年目に入った。まだその恐ろしさと、悲しみは癒えてはいない。
復興も多くの分野で進んではいるが、会計検査院は3月2日、2013年度までに計上された25兆円強の復興予算の内、約5兆円が使われていない上、国の補助金で設立した復興基金や震災復興特別交付税など約3兆6500億円が未消化で、一部は国庫に返納されていることを明らかにした。
2011-13年度の復興事業予算の未使用額約5兆円の内、約2兆円は次年度に繰り越されたものの、約3兆円もの予算が復興事業には使われていない。放射性物質の除染関連事業が進まなかったことが大きく、また道路建設等で地権者との調整に手間取ったことなどが理由に挙げられているが、いずれも復興事業には不可欠な作業であるので、国や県が重点課題として取り組まなくては事が進まないのは当然であり、言い訳は許されない。多額の予算を余している位だから、進められないはずがない。
国の補助金で地方自治体や公益法人の諸基金に関連する事業についても、予算を余らせないために従来から取られている手法であるが、もともと実施の見通しがないので基金として溜め込んだものなので、執行率は約40%にとどまっている。今回岩手、宮城、福島の3県に設置された基金も調査し、11-13年度の3年間に拠出された約4兆7千億円の内、約2兆7千億円は未消化のまま基金に残り、約1200億円が返還されている。50%以上の余剰金が残っていることは異常で、本来であれば未使用額は漸次返還されるべきであろう。そのなかでも進んでいないのが被災地の公営住宅などの整備関連基金に関連する40ほどの事業が指摘されている。「仮設住宅のサポート拠点運営費等」など6事業に至っては執行率ゼロというお粗末な結果となっている。4年近くにわたり、多くの方が仮設住宅や避難地で不自由な生活を送られていることを考えると大変残念だ。
政府はひたすら予算を積んで、復興が進んでいるかのような説明をして来ているが、復興事業を実際に進めるためには、復興事業の企画立案や執行を行う人材や業者と作業者の確保、資器材の確保、作業者の宿泊施設の提供などが行われなくてはならない。その常識的なことが手当されていない。それどころか、政府は従来型の土木建設を中心とする公共事業を増額し景気対策として全国で推進している上、2020年の東京オリンピックの開催に向けて膨大な施設、インフラ建設の計画を進めているため、業者や資器材等の確保の上で復興事業と取り合いの状況になっている。日本各地の業者にしてみれば地元の公共事業やオリンピック関連事業を優先するのは仕方がないことであろう。
更に問題は、公営住宅の建設が20%前後にとどまっているにも拘らず、占有率が低い状態のようだ。仮設住宅に居る限り費用は掛からないが、公営住宅に移れば月7万円程度の家賃が掛かる上、光熱費等の支払いが必要になるためのようだ。仕事や収入源の見通しが明るくなく、将来不安がある状態でそのような負担に躊躇があるのだろう。復興が遅れれば遅れるほど、避難地等で生活をしている人々はそこでの生活が定着し、見通しのない復興地に戻り難くなるし、老齢化も進むので、公営住宅への居希望者を改めて調査し、必要戸数などを再調整すべきであろう。そうでないと空き家が続出する恐れがある。納税者にとっても被災者にとっても貴重な税金を無駄に使用することを極力避けることが望ましい。その上で、無利子、或いは年率1%以下の融資を行うなど、個々人の努力や能力を引出し活用する方向で、支援の在り方を工夫して行くことが望ましい。
復興事業は予算の投入と掛け声ばかりで、結果として追加的な地域的事業にしかなっておらず、人材や資器材等の優先的確保を含む国家プロジェクトにはなっていないように映る。
復興財源についても、復興特別税で賄われることになっており、一見財源は確保されるように見える。しかし特別税であり、通常予算の枠外だ。その上個人所得者については25年間という長期間所得税の一定比率を追加的に納付することになっており、2014年4月からの消費増税と相まって、家計を圧迫し、消費を抑制している。他方法人所得に対する特別税は2014年4月から免除されており、この面でもオール・ジャパンの国家プロジェクトにはなっていない。(2015.3.12.)(All Rights Reserved.)
東日本大震災から4年を経過し、5年目に入った。まだその恐ろしさと、悲しみは癒えてはいない。
復興も多くの分野で進んではいるが、会計検査院は3月2日、2013年度までに計上された25兆円強の復興予算の内、約5兆円が使われていない上、国の補助金で設立した復興基金や震災復興特別交付税など約3兆6500億円が未消化で、一部は国庫に返納されていることを明らかにした。
2011-13年度の復興事業予算の未使用額約5兆円の内、約2兆円は次年度に繰り越されたものの、約3兆円もの予算が復興事業には使われていない。放射性物質の除染関連事業が進まなかったことが大きく、また道路建設等で地権者との調整に手間取ったことなどが理由に挙げられているが、いずれも復興事業には不可欠な作業であるので、国や県が重点課題として取り組まなくては事が進まないのは当然であり、言い訳は許されない。多額の予算を余している位だから、進められないはずがない。
国の補助金で地方自治体や公益法人の諸基金に関連する事業についても、予算を余らせないために従来から取られている手法であるが、もともと実施の見通しがないので基金として溜め込んだものなので、執行率は約40%にとどまっている。今回岩手、宮城、福島の3県に設置された基金も調査し、11-13年度の3年間に拠出された約4兆7千億円の内、約2兆7千億円は未消化のまま基金に残り、約1200億円が返還されている。50%以上の余剰金が残っていることは異常で、本来であれば未使用額は漸次返還されるべきであろう。そのなかでも進んでいないのが被災地の公営住宅などの整備関連基金に関連する40ほどの事業が指摘されている。「仮設住宅のサポート拠点運営費等」など6事業に至っては執行率ゼロというお粗末な結果となっている。4年近くにわたり、多くの方が仮設住宅や避難地で不自由な生活を送られていることを考えると大変残念だ。
政府はひたすら予算を積んで、復興が進んでいるかのような説明をして来ているが、復興事業を実際に進めるためには、復興事業の企画立案や執行を行う人材や業者と作業者の確保、資器材の確保、作業者の宿泊施設の提供などが行われなくてはならない。その常識的なことが手当されていない。それどころか、政府は従来型の土木建設を中心とする公共事業を増額し景気対策として全国で推進している上、2020年の東京オリンピックの開催に向けて膨大な施設、インフラ建設の計画を進めているため、業者や資器材等の確保の上で復興事業と取り合いの状況になっている。日本各地の業者にしてみれば地元の公共事業やオリンピック関連事業を優先するのは仕方がないことであろう。
更に問題は、公営住宅の建設が20%前後にとどまっているにも拘らず、占有率が低い状態のようだ。仮設住宅に居る限り費用は掛からないが、公営住宅に移れば月7万円程度の家賃が掛かる上、光熱費等の支払いが必要になるためのようだ。仕事や収入源の見通しが明るくなく、将来不安がある状態でそのような負担に躊躇があるのだろう。復興が遅れれば遅れるほど、避難地等で生活をしている人々はそこでの生活が定着し、見通しのない復興地に戻り難くなるし、老齢化も進むので、公営住宅への居希望者を改めて調査し、必要戸数などを再調整すべきであろう。そうでないと空き家が続出する恐れがある。納税者にとっても被災者にとっても貴重な税金を無駄に使用することを極力避けることが望ましい。その上で、無利子、或いは年率1%以下の融資を行うなど、個々人の努力や能力を引出し活用する方向で、支援の在り方を工夫して行くことが望ましい。
復興事業は予算の投入と掛け声ばかりで、結果として追加的な地域的事業にしかなっておらず、人材や資器材等の優先的確保を含む国家プロジェクトにはなっていないように映る。
復興財源についても、復興特別税で賄われることになっており、一見財源は確保されるように見える。しかし特別税であり、通常予算の枠外だ。その上個人所得者については25年間という長期間所得税の一定比率を追加的に納付することになっており、2014年4月からの消費増税と相まって、家計を圧迫し、消費を抑制している。他方法人所得に対する特別税は2014年4月から免除されており、この面でもオール・ジャパンの国家プロジェクトにはなっていない。(2015.3.12.)(All Rights Reserved.)