平成の本音―森友学園への国有地破格安値の払い下げ問題
大阪府豊中市の国有地(8,770平方メートル)が、「森友学園」(籠池学長)の小学校建設用地の名目で市場評価額(9億5,600万円)よりも大幅に低い価格(1億3,400万円)で2016年に売却され、国会で大きな問題として追及されている。
これに対し、政府、財務省は、‘適正に売却された’とし、また一部保守系紙やコメンテーターは、‘些細な問題’であり、同学園の‘教育方針に感動’し名誉会長に就任していた安倍昭恵首相夫人や安倍首相の関与はなかったと推測されるなどとしている。そう信じたい。
しかし、国家、国民の財産である国有地の処分の問題であり、また「森友学園」の戦前の教育を思わせる特異な教育方針からして、一般入札によらない‘随意契約’での超安値売却が‘適正’であったか否かは、決して‘些細な問題’ではなく、慎重、公正な判断が求められる。
1、不明朗、不適正な低価格と‘随意契約’
政府当局(財務省及び国土交通省)は、売却地の地中から生活ごみや廃材などが見つかったため、その撤去費用分を8億円強と見積もり、評価額から差し引いたもので、‘適正に売却した’としている。政府当局はその根拠資料の提出も、‘関係資料を廃棄した’などとして拒んでいる。
しかし、そのごみは、校舎の下からのみ除去され、校庭に埋め戻されたと言われているが、業者の請求書や領収書を検証すべきであろう。
更に国有財産の処分に係ることであるので、政府当局は、具体的な積算根拠を示すべきだ。売却した国有財産の売却に係る資料は、一定期間保管義務がある。それを売却後1年も経たないうちに‘廃棄’したのであれば、義務違反であろう。また「森友学園」は、建設しようとしている小学校は未だ未認可であり、そのような未認可の私立の小学校建設を目指している一民間団体に国有土地を‘随意売却’することも、非常に不明朗であるし、公正、適正とは言い難い。
そもそも1,000兆円以上の公的負債を抱えている政府として、国有財産の適性な管理と売却は非常に重要であり、8億円程度の値引きは‘些細な事’とするのは、管理能力や金銭感覚に基本的な問題があり、余りにもずさんであり、国有財産を管理する能力にも疑問が持たれそうだ。財務大臣も、‘積算根拠を示す必要がない’などとしているが、同様に管理能力に疑問符がつく。
明らかな格安価格での国有地の随意の売却であれば、国有財産や国庫に損害を与えたことになるので、政治的な圧力があったか無かったかは別として、政府当局の国家、国民への背任行為に当たる。
2、「森友学園」の‘教育方針’は偏狭で不適切
「森友学園」が現在経営する塚本幼稚園における教育は、礼儀や行儀を厳しく教えている点や国を愛する意識などについては一部の親等に評価されている模様であるが、その教育方針は時代錯誤的であり、特異なものがある。また日本の民族を‘日本民族’として、中国、韓国を蔑視するなど、非常に偏狭なナショナリズムを教育している。戦前に中国人や朝鮮人を蔑視していたことが思い出される。校庭に神社を建立するとも伝えられている。幼稚園からの思想教育を小学校などに繋げようとするものであるが、幼児時代からのこのような思想教育は洗脳教育にも等しい。
同学園の教育方針は、戦前に明治天皇の名で公布された「教育勅語」によって教育するというものであり、これを小学校、中学校に継続したいとしている。「教育勅語」は明治天皇の名で出されたものであり、天皇制を前提としている。その中に‘公のために奉仕し’というくだりがあり、それ自体は理解されるところであるが、その次に‘永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい’とあり、要するに万世一系、天皇独裁を擁護しなさいと勅語である。その下で‘修身教育’が行われ、天皇中心の専制国家の精神的な支柱となっていたが、明治憲法が廃止され、現行憲法が公布されたことにより、戦後廃止されている。
このような「教育勅語」を暗唱させ、教育の中心に据える教育方針は、現行憲法に反する。
私学であり、思想、信条の自由であるのでそのような教育もあり得ないことではあるが、義務教育の小、中学校においてこれを使用することは不適正である以上に、現行憲法にも反する。更に、このような偏狭な教育方針をとっている「森友学園」に、国有土地を破格に安い価格で随意契約で売却することは、特定の信条、宗教を持っている民間団体を優遇、奨励するものであり、不適正であろう。
「森友学園」については、安倍昭恵首相夫人が幼稚園の‘名誉校長’を務めていたが、事件発覚後辞任している。しかし同首相夫人は、同学園の幼稚園の教育方針に‘感動’し、これが‘小、中学校に継続されないのは残念’とするなど、その教育方針に賛同していることは明らかであろう。首相自身も国会の質疑において、このような教育を評価する発言を行なっている。また「森友学園」は、小学校建設に当たって‘安倍晋三記念小学校’と銘打って小学校の建設を進めていた。
‘安倍晋三記念小学校’の名称も国会で問題になってから削除されているが、幼稚園の‘名誉校長’ 安倍昭恵首相夫人、‘安倍晋三記念小学校’という2枚看板で小学校建設のための国有地獲得が進められたことは明らかだ。
「森友学園」の籠池理事長(学長)が進めようとしているそのような信条や天皇制への姿勢は、同首相の従来の言動からも明らかであろう。同首相は、東条英機などの戦争責任者も祀られている靖国神社を‘内閣総理大臣’として参拝や榊の奉納をし、‘戦争で命を落とした方々を尊崇し、哀悼の誠を捧げる’としており、「教育勅語」を教育の基礎に据える「森友学園」の考えと一脈通じるものがあると見られている。また同首相やほとんどの閣僚が、神道政治連盟国会議員懇談会や日本会議など、神道や神社、天皇制を擁護する団体に属していると伝えられている。
何故、首相始め自・公両党や財務大臣はじめ政府当局が、籠池理事長を擁護し、国有地の破格安値での売却擁護するのか。
従って「森友学園」問題は、行政当局の適性な国有財産管理義務だけでなく、将来の国の教育方針や信条、政体、日本の民主主義の将来にも影響を及ぼしかねない非常に重要な問題であり、国民一人一人が今後の推移を重大な関心を持って見守る必要がありそうだ。
籠池理事長は、3月10日、小学校建設の申請を取り下げた。しかし、建設中の校舎、土地は残してほしい、またチャレンジする姿勢を示している。‘取り下げ’の裏でも何らかの取引がある可能性がある。1、2年の内に衆院選挙があるが、当面冷却期間を置き、選挙への影響を少なくするためのいわゆる‘争点隠し’なのかも知れない。
しかしこの問題の本質は、上記の通り日本の将来や行政の在り方など、深刻な側面があるので、これで終わりではなく、更に真意を究明していく必要がありそうだ。
(2017.3.10.)
大阪府豊中市の国有地(8,770平方メートル)が、「森友学園」(籠池学長)の小学校建設用地の名目で市場評価額(9億5,600万円)よりも大幅に低い価格(1億3,400万円)で2016年に売却され、国会で大きな問題として追及されている。
これに対し、政府、財務省は、‘適正に売却された’とし、また一部保守系紙やコメンテーターは、‘些細な問題’であり、同学園の‘教育方針に感動’し名誉会長に就任していた安倍昭恵首相夫人や安倍首相の関与はなかったと推測されるなどとしている。そう信じたい。
しかし、国家、国民の財産である国有地の処分の問題であり、また「森友学園」の戦前の教育を思わせる特異な教育方針からして、一般入札によらない‘随意契約’での超安値売却が‘適正’であったか否かは、決して‘些細な問題’ではなく、慎重、公正な判断が求められる。
1、不明朗、不適正な低価格と‘随意契約’
政府当局(財務省及び国土交通省)は、売却地の地中から生活ごみや廃材などが見つかったため、その撤去費用分を8億円強と見積もり、評価額から差し引いたもので、‘適正に売却した’としている。政府当局はその根拠資料の提出も、‘関係資料を廃棄した’などとして拒んでいる。
しかし、そのごみは、校舎の下からのみ除去され、校庭に埋め戻されたと言われているが、業者の請求書や領収書を検証すべきであろう。
更に国有財産の処分に係ることであるので、政府当局は、具体的な積算根拠を示すべきだ。売却した国有財産の売却に係る資料は、一定期間保管義務がある。それを売却後1年も経たないうちに‘廃棄’したのであれば、義務違反であろう。また「森友学園」は、建設しようとしている小学校は未だ未認可であり、そのような未認可の私立の小学校建設を目指している一民間団体に国有土地を‘随意売却’することも、非常に不明朗であるし、公正、適正とは言い難い。
そもそも1,000兆円以上の公的負債を抱えている政府として、国有財産の適性な管理と売却は非常に重要であり、8億円程度の値引きは‘些細な事’とするのは、管理能力や金銭感覚に基本的な問題があり、余りにもずさんであり、国有財産を管理する能力にも疑問が持たれそうだ。財務大臣も、‘積算根拠を示す必要がない’などとしているが、同様に管理能力に疑問符がつく。
明らかな格安価格での国有地の随意の売却であれば、国有財産や国庫に損害を与えたことになるので、政治的な圧力があったか無かったかは別として、政府当局の国家、国民への背任行為に当たる。
2、「森友学園」の‘教育方針’は偏狭で不適切
「森友学園」が現在経営する塚本幼稚園における教育は、礼儀や行儀を厳しく教えている点や国を愛する意識などについては一部の親等に評価されている模様であるが、その教育方針は時代錯誤的であり、特異なものがある。また日本の民族を‘日本民族’として、中国、韓国を蔑視するなど、非常に偏狭なナショナリズムを教育している。戦前に中国人や朝鮮人を蔑視していたことが思い出される。校庭に神社を建立するとも伝えられている。幼稚園からの思想教育を小学校などに繋げようとするものであるが、幼児時代からのこのような思想教育は洗脳教育にも等しい。
同学園の教育方針は、戦前に明治天皇の名で公布された「教育勅語」によって教育するというものであり、これを小学校、中学校に継続したいとしている。「教育勅語」は明治天皇の名で出されたものであり、天皇制を前提としている。その中に‘公のために奉仕し’というくだりがあり、それ自体は理解されるところであるが、その次に‘永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい’とあり、要するに万世一系、天皇独裁を擁護しなさいと勅語である。その下で‘修身教育’が行われ、天皇中心の専制国家の精神的な支柱となっていたが、明治憲法が廃止され、現行憲法が公布されたことにより、戦後廃止されている。
このような「教育勅語」を暗唱させ、教育の中心に据える教育方針は、現行憲法に反する。
私学であり、思想、信条の自由であるのでそのような教育もあり得ないことではあるが、義務教育の小、中学校においてこれを使用することは不適正である以上に、現行憲法にも反する。更に、このような偏狭な教育方針をとっている「森友学園」に、国有土地を破格に安い価格で随意契約で売却することは、特定の信条、宗教を持っている民間団体を優遇、奨励するものであり、不適正であろう。
「森友学園」については、安倍昭恵首相夫人が幼稚園の‘名誉校長’を務めていたが、事件発覚後辞任している。しかし同首相夫人は、同学園の幼稚園の教育方針に‘感動’し、これが‘小、中学校に継続されないのは残念’とするなど、その教育方針に賛同していることは明らかであろう。首相自身も国会の質疑において、このような教育を評価する発言を行なっている。また「森友学園」は、小学校建設に当たって‘安倍晋三記念小学校’と銘打って小学校の建設を進めていた。
‘安倍晋三記念小学校’の名称も国会で問題になってから削除されているが、幼稚園の‘名誉校長’ 安倍昭恵首相夫人、‘安倍晋三記念小学校’という2枚看板で小学校建設のための国有地獲得が進められたことは明らかだ。
「森友学園」の籠池理事長(学長)が進めようとしているそのような信条や天皇制への姿勢は、同首相の従来の言動からも明らかであろう。同首相は、東条英機などの戦争責任者も祀られている靖国神社を‘内閣総理大臣’として参拝や榊の奉納をし、‘戦争で命を落とした方々を尊崇し、哀悼の誠を捧げる’としており、「教育勅語」を教育の基礎に据える「森友学園」の考えと一脈通じるものがあると見られている。また同首相やほとんどの閣僚が、神道政治連盟国会議員懇談会や日本会議など、神道や神社、天皇制を擁護する団体に属していると伝えられている。
何故、首相始め自・公両党や財務大臣はじめ政府当局が、籠池理事長を擁護し、国有地の破格安値での売却擁護するのか。
従って「森友学園」問題は、行政当局の適性な国有財産管理義務だけでなく、将来の国の教育方針や信条、政体、日本の民主主義の将来にも影響を及ぼしかねない非常に重要な問題であり、国民一人一人が今後の推移を重大な関心を持って見守る必要がありそうだ。
籠池理事長は、3月10日、小学校建設の申請を取り下げた。しかし、建設中の校舎、土地は残してほしい、またチャレンジする姿勢を示している。‘取り下げ’の裏でも何らかの取引がある可能性がある。1、2年の内に衆院選挙があるが、当面冷却期間を置き、選挙への影響を少なくするためのいわゆる‘争点隠し’なのかも知れない。
しかしこの問題の本質は、上記の通り日本の将来や行政の在り方など、深刻な側面があるので、これで終わりではなく、更に真意を究明していく必要がありそうだ。
(2017.3.10.)