「もしもし、ぞうさん。
向こうの山のふもとまで
かけっこの競争をしませんか」
ある日Cocoさんは
親友のぞうさんに、もちかけました。
Cocoさんは脚には自信があります。
短足で丸っこいぞうさんに
私が負けるわけがない、と内心で大笑い。
「いいでしょう。負けませんよ」
とぞうさんは答えました。
「そうですか。おたがいにがんばりましょう」
そう言いながら、つい、
心の内が顔に出てしまいました。
「よーい、どん」で
早速スタートです。
最初、順調にリードしたCocoさんでしたが
途中で居眠りを始めてしまいました。
そのすきに、
ぞうさんは、えっちらおっちらと
Cocoさんをぬかしていきます。
ぞうさんの後姿は
はるか遠くに行ってしまいました。
Cocoさんは、はっと目を覚まして
慌てて飛び起き、追いかけましたが
ぞうさんの姿はどこにもありません。
ゴール地点の山のふもとにも
ぞうさんはいませんでした。
何処へ行ってしまったのでしょう。
「あっ、みつけたっ」
と思ったら
残念、人違い。
あちこち探して、ようやくみつけました。
「ぞうさん。勝負を放り出して
どこに行っていたのです」
「実はね、Cocoさん。
耳寄りなもうけ話があったのです」
「家に置いておくだけで
毎日宝物がわいてくるという
不思議な壺を買ったのです。
かけっこの勝負なんかより
ずっとうまい話でしょう」
「ぞうさん。あなたはだまされていますよ」
Cocoさんはあきれて言いましたが
ぞうさんは聞く耳を持ちません。
かけっこの勝負はお預けにして
毎日壺を見張りましたが
思った通り、
宝物は一度たりとも、出てきませんでした。
ぞうさんはがっかりです。
「『うさぎとかめ』のお話の通りに
油断してはいけなかったなあ」と
反省しきり。
「それでも今度の一件は
『詐欺と甕(さぎとかめ)』のお話として
後世に語り継がれるかもしれませんよ」
Cocoさんはそう言って、
ぞうさんをなぐさめましたとさ。
おしまい♪
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