鍵穴ラビュリントス

狭く深く(?)オタク
内容は日々の戯言
イギリス、日本、リヒテンシュタイン、大好きです
プラトニックlove好き

小説書いてみました。

2013-03-25 09:57:05 | オリジナル小説
 あるところに、セラとアイという愛らしい娘がおりました。二人は双子の姉妹で、セラが姉、アイが妹でした。二人の住む田舎の小さな宮には薔薇の園のほかに、さらさらと、せせらぎの音を奏でる小川がありました。二人はその宮で、都からきた偉い先生に勉強を教えてもらい、勉強していないときは、睦まじく庭で遊びまわったのでありました。
 あるとき、アイが言いました。
「セラ姉さま、わたし、都にいきたいの」
「どうして?」
ちょうど、一つのブランコにセラがのっていて、アイはその近くのベンチに腰掛け細い毛糸でショールを編んでいたときでした。アイは夢見るような表情で、夕焼けに染まりゆく空を見上げました。
「都のウンディーネ大公園にある噴水。それに金貨を投げると、恋が叶うんですって」
「ああ…きいたことあるわ。でもアイ、わたくしはいま誰にも恋していないのよ。アイはどうなの?」
「わたくしも…。だけど、恋にあこがれるのよ。ほら、雲雀が太陽にあこがれるみたいに」
「…わかるわ。わたくしも風の吹き荒れる嵐の夕べには、柘榴のように紅く燃え上がる心に痛みをおぼえる」
「そうよ。凪いだときにだって、押し寄せては引く浜辺の波、まだ見ぬ水平線かなたの大きな愛に、心は揺らぐわ」
二人は見つめあい、どちらともなく、ふふ、と微笑みました。
 ぎいと縄のきしむ音を立てて、セラの足はふわっと地面に着地しました。風がまた吹いてきて、セラのワンピースをふくらませました。
「そろそろ部屋に戻りましょう。宿題を終わらせないと」
「そうね、姉さま」
かわいらしい靴音をさせながら、二人は家の中へと駆けていきました。あとにはまだわずかに揺れているブランコと、夕日をうけて橙色に輝く庭石が残ったのでありました。
 夜、仲良しな二人は同じ部屋ですやすやと眠るのでした。
「おやすみ、アイ」
「おやすみなさい、セラ姉さま」
セラの紫いろの瞳と、アイの蒼いろの瞳が、きらきら星図のなかにちりばめられた星のように瞬いてあと、二人は眠りの世界へおちていきました。


つづく