鍵穴ラビュリントス

狭く深く(?)オタク
内容は日々の戯言
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プラトニックlove好き

ロビン

2013-03-26 20:25:50 | オリジナル小説
 二人の家庭教師の先生はロビンという名でした。
 ロビンはこげ茶色の瞳をし、白髭をはやした、お爺さんでありました。そのこげ茶色の瞳は、ときおりいたずらっぽく煌めき、彼がいまでも陽気な性格であることを物語っていたのであります。
 ロビンはよく、自分の孫娘の話を二人にきかせてくれました。
「オーロラはなあ、勉強がよくできたんじゃ。このわしが教えてあげたからのう。ああ、しかしオーロラにもう何もしてやれることはないのじゃ。オーロラは、母とともに都から姿を消した。噂では北にいく、とのことじゃった。そのオーロラの母というのは、わしの息子が愛した物静かな女性でなあ、宮廷衣装のお針子さんじゃった」
そして、小さな老眼鏡の奥に溜まった涙を、真白いハンカチーフで拭うのでした。
 その日もロビンは馬車で、二人の宮に、やってきました。
「ロビン!」
セラが屋敷から飛び出してきて、瞳を細めて、呼びかけ、腕をさしのべました。ロビンは胸を広げて、飛びついてきたセラを抱きかかえました。
「あ、姉さま、先にずるいわ」
アイもロビンの腕にしがみつくと、ロビンは二人ごといっぺんに抱きしめました。ロビンの胸はあたたかでした。ゆっくりゆっくり、心臓がとくんとくんといっている音に、二人は耳を傾けました。二人はロビンが大好きでした。
 連れ立って、庭を通り抜け、いや、走り抜けといったほうが正確でしょうか、姉妹は彼をお屋敷の中に迎えました。
「ねえロビン。わたくしたち、宿題ぜんぶやったのよ。一つ分からないところがあったんだけど、二人で考えたら分かったの」
アイがにっこりそう言いました。
「ねえロビン。折り入って話があるのよ。あとで聞いてほしいの」
セラが小声で言います。
「わかったよ。さあ、まずは宿題をみようかね。相談事はそのあとだ」
ロビンは微笑を浮かべています。セラとアイは背を押され、勉強部屋へと連れていかれました。


つづく