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2015年11月1日 ロシアのサンクトペテルブルクでの追悼式で。
「ロシア機がテロリストの爆弾で墜落したと断言はできないが、その可能性は高まっている」(イギリス キャメロン首相)
「機内に爆弾があった可能性は私はあると思います。アメリカはそれを非常に深刻に受け止めている」(アメリカ オバマ大統領)
2015年11月5日、英米両首脳が相次いで、10月31日に224人の乗客を乗せたロシア機が墜落した原因が「イスラム国」の爆弾テロによる可能性があると言いだしました。
もちろんこれは、この墜落事件が、9月30日から始まったロシアによるシリア内の「イスラム国」支配地域への空爆への報復ではないか、という意見です。
「イスラム国」から犯行声明が出ているのは事実です。そうだとしたら、第一に責められるべきはもちろん「イスラム国」です。
しかし、ロシアやロシア機が墜落したエジプトはこの見方を否定しています。
英米はロシアともともと対立していますし、両国首脳は「イスラム国」テロ説の根拠もはっきりとは示していませんので、まだ、何が真相かはよくわかりません。
今回の墜落が「イスラム国」の犯行によるものなのかはまだ判然としないものの、ロシアの空爆が「イスラム国」の反撃を呼び、また報復と復讐の連鎖が続いていくであろうことは容易に予想されます。
では、なぜ、ロシアは突然「イスラム国」への空爆を開始したのでしょうか。
もちろん、「イスラム国」の残虐行為を見過ごせないということも大義名分にはなっています。
最も大きい理由は、シリアのアサド政権はロシアが長年援助してきた友好国であることがあげられるでしょう。
ロシアがシリア国内に軍事基地を持っており、またシリアはロシアに軍事援助を受ける上で長期の借款を負っているので、アサド政権に倒れられることはロシアにとって大きなマイナスだというのです。
アメリカなどは、ロシアがこの機会に「イスラム国」だけでなく、シリア内の反アサド政権のグループをも空爆していると非難しています。
ロシアによるシリア空爆。
アメリカによる空爆。アメリカの空爆は良くてロシアの空爆は悪いという理屈は成り立たない。
シリアへの米仏の軍事攻撃は国際法違反だ
さらに、多くの論者が、ロシアがシリア空爆を開始してから、原油価格が上がり原油輸出国であるロシアが潤い、ロシア・ルーブルが上昇していることを指摘しています。
石油の輸出を最大の外貨獲得手段としているロシアでは、ウクライナ問題で受けている経済制裁に加え、原油価格が低迷していることで大きなダメージを受けています。
1カ月の生活費が公式の貧困ラインとされる9662ルーブル(約2万円)に満たない層は2300万人に迫り、人口の1割近くになっています。
アメリカの盟友であるサウジアラビアを中心とするアラブ石油産出国による原油の低価格維持策は、イランとロシアを追い詰めるためだとさえ言われています。
その状況を打開するのがロシアによるシリア空爆で、この地域が不安定になることで原油価格が上昇することは、プーチン政権の基盤をゆるぎないものにするというのです。
プーチン大統領はチェチェン紛争、ウクライナ介入やクリミア併合などの強硬姿勢で高支持率を維持しているわけですが、その結果国内経済が低迷して、次にはシリア空爆が必要になるという、まさに「戦争中毒」と言うべきジレンマに陥っているわけです。
しかし、こういう負の連鎖はロシアだけのことでしょうか。
国内経済がうまく行かないから外敵を作って、その緊張関係を利用して自分の政権基盤を維持する。
これは、東アジアの日本、中国、韓国、北朝鮮全ての国々がやっていることではないですか?
私に言わせれば、アメリカを含めて、これらの国々の政権が持ちつ持たれつなんだと思います。特に軍部や軍需産業は、平和だったら無用の存在なんですから、お互いに「敵国」の存在があるがゆえにやっていけているわけです。
ちなみに、アルカイーダの創始者だったウサマ・ビンラディンが当初CIAの資金援助を受けていたことや、タリバンはアフガニスタンに侵攻したソ連に対抗するためにアメリカが育てたことはよく知られた事実ですが、さらに、「イスラム国」でさえ、裏ではアメリカと通じているという人までいます。
戦争もテロも、世界の紛争のすべては、産軍複合体が自分の利益のために作り出している結果ではないですか?
2015年10月4日、アメリカ合衆国、アフガニスタン北部にある「国境なき医師団(MSF)」の病院を「誤爆」、22人が死亡、37人が重症、爆撃の中止を要請するも米軍は空爆を30分継続。
先ごろ、アメリカが「誤爆」してノーベル平和賞受賞組織である国境なき医師団の施設が破壊され、多数の死者が出ました。
「テロとの戦い」っていったいなんなんでしょう。テロやテロリストは誰が作っているの?
テロリストがやるのがテロなら、アメリカやロシアのやる武力行使は何?
こういう人たちの利益のために、爆弾が落ちてきたり、自分が乗っている飛行機が突然爆発して、わけもわからないまま死んでしまうのはたまらなく嫌です。
ロシアのプーチン大統領のことなら、「さもありなん」とわかる政府の大義名分と本音の乖離。「今外にある」と言われる危機の嘘。
私たちは自分の国はどうなのかも、冷静に見つめる必要があるのではないでしょうか。
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今回の事故・事件を含め、すべての紛争の犠牲者の方々の死を悼みます。
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米大統領、ロシア機墜落「機内に爆弾の可能性」
2015年11月6日(金)12時22分配信 TBS
「機内に爆弾があった可能性は私はあると思います。アメリカはそれを非常に深刻に受け止めている」(アメリカ オバマ大統領)
オバマ大統領は5日、アメリカのラジオ局とのインタビューで、ロシア機の墜落の原因ついて「機内に爆弾があった可能性は確かにある」と述べました。
「ロシア機がテロリストの爆弾で墜落したと断言はできないが、その可能性は高まっている」(イギリス キャメロン首相)
これに先立ち、キャメロン首相もこのように爆発物の可能性を指摘しました。キャメロン首相は、ロンドンを訪れているエジプトのシシ大統領と会談し、エジプト・シャルムエルシェイク空港の保安体制などについて協力することで一致しました。これを受け、イギリス政府は、予防的措置として停止していたシャルムエルシェイクからイギリスに向けての旅客機の運航を6日から再開すると発表しました。
キャメロン首相はこの日、ロシアのプーチン大統領とも電話で会談しました。ロシアの大統領府によりますと、この中でプーチン大統領は、「公式の調査で墜落原因を特定しなければならない」と述べ、爆発物の可能性に言及するイギリス政府に不満を表明したということです。
「(シナイ半島で活動する)IS分派の関与は大いにあり得る」。ハモンド英外相は5日、爆弾テロだった可能性を改めて示した。米メディアも、米情報当局による事件前後の通信記録の解析などから「機内で爆弾が爆発した可能性がある」と報じた。空港関係者が爆弾の持ち込みを助けたとの情報もあるという。いずれも「最終的な結論ではない」としている。
これに対して、エジプトのシュクリ外相は「調査中の事案について予断を示すべきではない」と不快感を隠さない。シシ大統領は墜落直後のISの犯行声明を「プロパガンダだ」と一蹴していた。
エジプト政府は当初からテロの可能性には否定的だった。政府系メディアは、航空事故調査委員会のモカダム委員長が「操縦士は技術的問題を管制当局に報告していた」と述べたと報道。飛行データを記録したブラックボックスの解析で異常を伝える交信がなかったと判明した後も、治安当局は「テロの証拠はない」として警備強化に消極的だった。
こうした姿勢の背景には主要産業の観光に悪影響が出ることへの懸念がある。2011年の革命後に治安悪化から観光業が低迷する中、外国人観光客の約3割をロシアが占めてきた。
墜落機の出発地で世界的に有名なリゾート地シャルムエルシェイクなどで営業する観光業者、ユセフ・ナジールさん(38)は電話取材に「新規の予約は墜落後にストップした。常連客の足も遠のくだろう」と嘆いた。昨年6月の就任以来、治安回復を最重視してきたシシ氏の支持率低下につながる可能性もある。
シリア空爆を続けるロシアにとっても、報復テロだった場合の衝撃は大きい。10月下旬の国際会議で「(空爆によって)テロの脅威は増えても減ってもいない」と豪語していたプーチン大統領のメンツはつぶれ、有利に進めてきたシリア外交にも影響を与えかねないからだ。
プーチン大統領は5日、キャメロン英首相と電話で協議し、「原因特定には公式調査で明らかになるデータが不可欠だ」と強調。テロの可能性を公言した英政府の姿勢に不満を示した。露大統領府が発表した。
ロシアの独立系調査機関レバダセンターが10月下旬に実施した全国世論調査によると、回答者の50%が「ロシアはシリアでアサド政権を軍事支援すべきだ」と答えた一方、23%は軍事介入に反対している。
IS分派は4日、2度目の犯行声明を発表。具体的な手口や映像など証拠は示さず、「お前たちの調査で我々が落としたのではないと証明してみろ」と挑発した。
◇ロシア旅客機墜落
ロシアの航空会社「コガリムアビア」のチャーター便(エアバスA321、乗員乗客224人)は、10月31日午前5時58分にエジプト東部シナイ半島最南端のシャルムエルシェイクを離陸。ロシア西部サンクトペテルブルクへ向かう途中、離陸から23分後に高度約9450メートルで交信が途絶え、同半島北部の山岳地帯に墜落した。乗客乗員は全員死亡。ほとんどはロシア人だった。同機は墜落数十秒前に急激に減速、降下した。
オバマ政権が見透かす、シリア情勢に介入したロシアの「動機」
![オバマ政権が見透かす、シリア情勢に介入したロシアの「動機」 オバマ政権が見透かす、シリア情勢に介入したロシアの「動機」](http://www.newsweekjapan.jp/reizei/assets_c/2015/10/reizei151008-thumb-720xauto.jpg)
シリア政府軍やアメリカ、ロシアをはじめとした外国勢力の空爆がそれぞれの思惑でシリア全土で続く(写真は2月に政府軍に空爆されたダマスカス近郊の街) Bassam Khabieh-REUTERS
ロシアはシリア領内での空爆を拡大する一方で、カスピ海上の艦船から巡航ミサイル攻撃を行ったと発表、4隻の艦船から26発のミサイルを発射して、11カ所の標的に着弾したということです。さらには「ロシア義勇兵」による地上戦介入も示唆するなど、ロシアのシリア領内での活動は、どんどんエスカレートしているように見えます。
これについて、オバマ政権は「ロシアはISILをターゲットにしていると主張しているが、アメリカの支援している反アサド勢力にまで攻撃を加えており、見過ごすことはできない」と不快感を表明しています。
一方、プーチン大統領は「攻撃対象はあくまでISILとアルカイダ系の武装勢力に限定している」と主張しています。そればかりか、アメリカに対して何度も「シリア領内での反テロ共同作戦をやろう」と持ちかけているのです。
この提案に対してオバマ大統領は、批判を加えつつ「米軍の直接介入は行わない」という従来の立場を崩していません。またアシュトン・カーター米国防長官も、「ロシアから共同作戦への誘いが来ているが、時期尚早だと返答した」と話しています。
ロシアがシリア情勢に介入するのは、一見すると歴史的な理由があるように見えます。何よりも、東西冷戦の時代には「イスラエルを支援するアメリカと西欧」に対抗して「ソ連はアラブ勢力を支援する」という構図がありました。特に「アラブ連合共和国」を構成していたシリアは、60年代後半にはソ連との軍事的な関係を密にしていたのです。
また、当時の関係を反映してシリアの地中海沿岸の都市タルトゥースに、ロシアは海軍の補給基地を保有しており、その使用についてアサド政権に便宜を図ってもらっているという関係もあります。
そう考えると、ロシアのシリア領内での利権、そしてアサド大統領との先代の時代を含めた長い関係は、アメリカや西欧の利害とは、そしてイスラエルの利害とは厳しく対立するものだと言えます。
それにも関わらず、オバマ政権は動きません。こうした一連の「オバマの軍事外交」については、アメリカの野党・共和党からは「弱腰」だという批判が続いています。そもそも「反アサド勢力への援助を真剣に行わなかった」こと、そして「アサド政権が反政府勢力に対してサリン攻撃を行った」際に「ロシアの仲介でサリンの廃棄をする」という「甘い」取引に乗ったこと、これに加えて「ロシアやシリアに近いイランとの核交渉」で合意に至ったこと、こうした流れの「全てが弱腰だ」というのです。
では、本当にオバマは弱腰なのでしょうか? 個人的にセンチメンタルな平和主義に傾斜しているとか、イラクやアフガニスタンとの戦争に疲れた世論に迎合しているのでしょうか? そして、アメリカはオバマという「弱腰な大統領」によって「世界の警察官」から完全に降りてしまったのでしょうか?
私は違うと思います。オバマ政権は「ロシアの動機」を見抜いています。ロシアがシリアの領内で異常なまでに活動をエスカレートさせている背景には、原油価格とルーブル安の問題がある、それがオバマ政権の見方です。
産油国ロシアは、国際的なエネルギー価格の低迷に苦しんでいます。中国経済のスローダウンなどを受けて再び歴史的な安値圏にある原油価格は、あらためてロシア経済を追いつめており、通貨のルーブルも1ドルが60~70ルーブルと下落しています。
そんな中で、仮にシリア情勢が緊迫化すれば、中東全体に戦火が及ぶことも考えられ、原油価格が上昇する可能性があります。悪く言えば、そのような情勢を作り出すためには、シリア情勢が「混沌化すればするほど」良いわけです。
ちなみに、ロシアが原油価格の下落要因となりかねない「イラン核合意」に乗った背景には、イランの核開発がなくなれば西欧の「ミサイル防衛構想」がスローダウンするという思惑からであって、いずれにしても「原油の高値誘導」がロシアにとっての国益だという構図に変化はありません。
対するオバマの姿勢は一貫しています。自国内ではシェールガスの開発を進める一方で原発の新規建設を許可するなど、エネルギーの多様化を進めて中東の石油への依存度を下げ、原油安誘導政策を続けてロシアを追いつめているのです。
オバマ政権としては、ロシアのシリア介入に対して激怒しながらも、シリアを舞台にした(あるいはウクライナも加えた)「米ロ代理戦争」をエスカレートさせる気は「さらさらない」のです。その計算には根拠があり、「弱腰」という批判は当たらないと思います。
ロシアの貧困層、300万人増 経済制裁や原油価格下落で
2015.07.23 Thu posted at 14:31 JST
ロンドン(CNNMoney) 欧米の経済制裁と原油価格の下落による景気悪化を受けて、ロシアで貧困に陥る世帯が急増している。3月末の時点で、1カ月の生活費が公式の貧困ラインとされる9662ルーブル(約2万円)に満たない層は2300万人に迫り、前年同期より300万人増えた。
オリガ・ゴロジェツ副首相はロシアのテレビ局に対し、危機的な状況になりつつあるとの認識を示している。
ルーブルの暴落に伴いインフレが加速して、今年1~3月期の物価は年率16%上昇。一方で実質賃金は5月に14%減、6月は7%減となった。
ロシアの貧困率はプーチン政権下の15年で着実に改善を続け、2014年には11%まで下がっていたが、再び上昇に転じて16%になった。ウクライナ危機に終息の兆しは見えず、状況の好転は見通せない。欧米の対ロシア制裁は2016年まで延長された。
生活水準の低下で今年に入って小売売上高は毎月落ち込み続け、6月は9.4%下落した。
ロシアの経済規模は1~3月期で2.2%縮小。国際通貨基金(IMF)の予想によると、今年は3.8%減、来年は1%以上の縮小が見込まれる。
ロシアの銀行や企業は欧州からの資金を断たれ、欧米への武器輸出もできない。政府当局者や一部企業は渡航禁止や資産凍結の対象になっている。
ロシア最大の貿易相手国である欧州連合との貿易は今年1~2月で3分の1以上減少。メドベージェフ首相は、制裁による年間の損失額は1060億ドル(約13兆円)に上ると推定している。
ロシアは報復として西側からの食品輸入を禁止したが、そのあおりで6月の物価は21%近く上昇した。
【ニューヨーク共同】米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は14日、米中央情報局(CIA)がアフガニスタンに供与した秘密資金のうち約100万ドル(約1億2千万円)が国際テロ組織アルカイダに渡っていたと報じた。アルカイダが拘束したアフガン外交官の身代金の一部として2010年に使った。
ずさんな管理体制のため、戦っている相手に米国が資金を供与してしまった一例とされる。しかし、アルカイダ指導者だったビンラディン容疑者は身代金支払いが米国の策略である可能性を警戒。現金に細工をして自分たちを殺害したり、居場所を特定したりする狙いがあると疑った。
世界の底流
オサマ・ビンラディンとは何者だったのか
2011年5月31日
北沢洋子
1.ビンラディン射殺の報
オバマ大統領は、5月1日、日曜日の夜半、ホワイトハウス東棟からドラマティクなテレビ出演をした。その内容は、現地時間で2日、月曜日の未明に、アメリカ本土で最も破壊的な攻撃を行い、世界中で指名手配されていたオサマ・ビンラディンをパキスタン国内で殺害した、と発表した。この報は、来年の大統領再選を」狙うオバマ大統領の支持率を高めた。
サウジ生まれのビンラディンは、9.11事件によって、それまでヒトラーやスターリンなみの「独裁者」というレッテルを貼られ、米国の最大の敵となってきた。
オバマ大統領は、「正義は行なわれた」と語った。そして、これまで10年以上も米軍の追及を逃れてきたビンラディンをついに追い詰め、ビンラディンが抵抗したので、頭部に向けて射殺した、と述べた。彼の遺体は、埋葬すれば、将来テロリストの聖地になるので、海に捨てられた、と付け加えた。
オバマ大統領の演説の直後、ワシントンのホワイトハウス前、ニューヨークのタイムズ・スクエア、9.11の跡地などに熱狂した米国市民が集まり、米国旗を振りながら「USA!USA!」と叫んだ。
しかし、米国以外の国では、ビンラディンが射殺され、遺体が海に捨てられたことに疑問視するものが多かった。米国でも、9.11の犠牲者の家族の中には、ビンラディンが逮捕され、国際法廷にかけられ、真実を明らかにして欲かったと主張するものもいた。
2.CIAの最大の敵
ビンラディンの捜査は、アフガニスタンからタリバン政権を追放した2001年12月、
パキスタンとの国境近いトラ・ボラの洞窟に対する何日もの米軍機による猛爆ではじまった。しかしビンラディンとその仲間は見事逃れたようであった。以後、10年近く、彼の行方はわからなかった。
以来、ビンラディンは、イスラム世界の英雄となった。少なくとも、CIAは、ビンラディンが、エジプトからチェチェン、イエメンからフィリピン、イラクからスペイン、インドネシアにいたるまで広がった戦闘的なグループを「アルカイダ」のもとに統一することに成功したと言った。はたして、これが本当だったか判らない。「アルカイダ」のメンバーの数、その細胞がどの国に広がっているのか、全く憶測の域を出ない。ただ、ビンラディンが「アルカイダ」は、化学、細菌、核兵器で武装していると、自称している。
ビンラディンは、イスラムの「聖戦」を極めて近代的な方法で行なっている。彼は、「ファトワ(イスラムの法令)」をファックスやE-メイルで送る。また爆弾製造法をCD-ROMにして送っている。或る米国の高官は、米政府よりかビンラディンの方が、良い通信手段を持て入ると嘆いた。ビンラディンはグローバリゼーションを存分に利用した。
ビンラディン以前は、テロは国家のスポンサーであった場合が多いが、ビンラディンはテロリストが国家をスポンサーすることになった。1996年から2001年の5年間、ビンラディンは彼を匿ってくれる代償として、アフらニスタンのタリバン政権に巨額の資金を提供した。この間、一方では、ビンラディンは「アルカイダ」を、テロを輸出する多国籍企業に仕立て上げた。
彼は、国際メディアを存分に利用した。「富裕な生活を投げ捨てて、大義のために生きる」というスタンスをとった。1997年、CNNが彼にインタービューした時、それはトラ・ボラの洞窟の中であった。しかも彼は、米国の経営者と同じく「事前に質問表を要求した」。
ビンラディンの言い分で1つだけ真実がある。それは、「米国のダブル・スタンダード」である。1997年、CNNに対して「米国は、我々のことをテロリストと呼ぶ。パレスチナの子どもが石を投げても、テロリストと呼ぶ。しかし、イスラエルがベイルートの国連ビルを爆撃したとき、その中には女性や子どもたちが沢山いたのに、米国はこれを非難しなかった」と述べている。
3.パキスタンの軍都に隠れ家
ビンラディンの隠れ家は、パキスタンの首都イスラマバードから北東56キロのところのアボタバードにあった。ここはパキスタンの軍都であり、隠れ家の1.5キロの所に陸軍士官学校がある。
隠れ家は4~5メートルの高い塀に囲まれ、一辺が61メートルもある三角地にあった。この家には電話もインターネットもなかった。
月のない5月2日夜、79人の米特殊部隊を乗せたヘリコプター2機がアフガニスタン領から侵入した。パキスタン軍のレーダーに気付かれないように低空を飛行するステルス型であった。その中の一機が着地の際に壊れたので、米軍部隊自ら破壊した。
戦闘はわずか40分に終わった。特殊部隊は、邸内の5人を殺害した。その中に、背の高い白い髭を生やした男がいた。頭を撃たれていた。それがビンラディンだったという。ビンラディンと一緒に二階の寝室にいた第三番目の妻(29歳)は、彼を庇おうとして、足を撃たれた。彼女は期限が切れたイエメンのバスポートを持っていた。同じ部屋にいた13歳のビンラディンの娘は、「父は逮捕された直後に、目の前で射殺された」と述べている。米軍側は「ビンラディンが自爆用のベルトをしていると思ったので、射殺した」と述べている。いずれにせよ、ビンラディンが武器を持っていたかったことは、明らかである。
ビンラディンの遺体は写真に撮られ、そのままヘリはアラビア海北部に向かい、カールビンソン空母から海に投げ捨てられた。もはや誰も彼を発見することはできない。米軍は、イスラム教の習慣に従って、24時間内に埋葬しなければならなかったから、という。
4.富豪の息子からグローバルなテロの頭目になるまで
ビンラディンは、イエメンからの移民で、メッカの巡礼者のポーターから身を起こして、サウジアラビア最大のゼネコン王となったムハマッド・ビンアワド・ビンラディンの50人の子どもの中で、1957年、七番目の息子として生まれた。彼の母親は、オサマたった1人を生んだ。他の年上の3人の妻がサウジアラビア人であったのに比べて、シリア人であった。シリア女性はアラブ世界では最も美しいと信じられていた。
子どもの頃のオサマ・ビンラディンは、サウジの王子たちと馬に乗って遊ぶようなエリート社会の一員であった。父はオサマ・ビンラディンが10歳の時に、飛行機事故により死亡した。"レバノンの床屋"によると、「オサマは酒を飲み、女遊びをしていた」と言うが、一方では、彼は17歳のときに最初の結婚をしている。妻は従姉妹で14歳だった。
中東情勢が急変したのは、1978年、ソ連がアフガニスタンに侵攻し、79年にイランでイスラム革命が起ったことだった。しかし、米国は、ベトナムの敗北から立ち直っておらず、ソ連の侵略に直接介入することは不可能であった。
そこで、CIAが、サウジアラビアその他のイスラム国から、「ジハド(聖戦)」のゲリラを募集した。この際、CIAは直接手を染めず、パキスタンの軍情報部(ISI)を通じて行なった。
多数のジハド・ゲリラが応募した。これを統率するリーダーが必要だった。しかし、サウジの王子たちは誰でも嫌がった。そこで、当時、ジッダのアブデル・アジズ王立大学の学生で、イスラム同胞団の一員だったビンラディンが候補に挙がった。「富豪の息子がジハドの戦士となる」ことは、アラブ世界で一つのエピソードになった。
この時、ビンラディンは、一つの条件を付けた。1年のうち最低2度帰国して、大学を卒業することということだった。数年の後、彼は大学を卒業した。一方、ビンラディンは、戦士ではなく、あたかも外交官のようにアラブ諸国を訪問し、支配者に会い、莫大な資金を集めた。その中に、CIAの資金も含まれていたのは間違いない。せいぜい彼が訪問したのは、パキスタン領ペシャワルの難民キャンプであった。ビンラディンはここに彼が宿泊するゲストハウスを建設した。
5.米国CIAとパキスタンISIの代理人
ビンラディンはパキスタンのペシャワルにゲリラ訓練所を設立し、「アルカイダ(基地)」と名づけた。一時期、隊員は25,000人を越えた。アフガニスタン国内の彼らのゲリラ基地は、トラ・ボラの洞窟であった。
ビンラディンは、カラシニコフ銃AK47を手にした写真を好んで使った。彼は、これを殺したソ連兵から奪ったものだと称した。しかし、彼が戦闘に参加したことはない。ビンラディンはカリスマ性を持ち、優れた組織力を発揮し、資金集めに長けていたことは確かだ。
オサマ・ビンラディンは「アルカイダ」を中央主権の「政党」にするのではなく、それぞれ細胞自身が独立した運動体にした。これは、最近の「反・組織」方式に似ている。通常「暴力」は権力を取る出段だと考えられているが、ビンラディンは違っていた。
彼は、花々いいテロ活動を通じて、資金集めのネットワークを広げ、マスメディアを動員することにある。かれは、「アルカイダ」には、人種、派閥、国籍を問わなかった。したがって、ビンラディンが亡き後も、「アルカイダ」は行き続けるだろう。ただし、彼ほどのカリスマ性と資金集めに長けたものはいないだろう。
そして、2011年2月、チュニジアとエジプトで起った「アラブの春」は、ビンラディンのテロを霞ませることになった。そして、米国は、これ以上イラクとアフガニスタンに駐留する理由はなくなった。
ソ連撤退後、アフガニスタンでタリバンが政権を握った。貧しい神学生のタリバンに、資金を供給したのは、オサマ・ビンラディンであった。彼は、父親の遺産を投げ出したと称しているが、アラブの支配者やCIAの資金を流用したことは間違いない。
ビンラディンが、家族とともにアボタバードに移ったのは05年と推測される。彼はこの家の建築費に100ドルを費やしたと言われる。3人の妻と幼い子を引き連れて、要塞のような家に引きこもっていたのだ。彼の仕事は、年に数回、声明を出すことだけだった。
昨年8月、CIAはパキスタン国内のビンラディンの隠れ家を突き止めた。これはグアンタナモ基地や東欧のCIAの秘密収容所で、アルカイダやタリバンの捕虜をひどい拷問にかけて、パキスタン人の連絡係の正体を聞きだした。
この連絡役は双子で、彼らの妹がビンラディンの息子の1人と結婚している。CIAは、この連絡役の後をつけて、ビンラディンにたどり着いたのだった。その家は、パキスタン人の連絡役には、立派過ぎた。
CIAは、「スズキ」に乗った連絡役をペシャワルで発見した。後をつけると、パキスタンの北部のアボタバードに行き着いたのであった。これが、ヘリコプター襲撃の8ヵ月前のことであった。
6.ビンラディンの息子たちの声明
5月10日、オサマ・ビンラディンの4番目の息子であるオマール・ビンラディン(30歳)は、『ニューヨークタイムズ』紙に声明を送った。彼は1999年、父親の「テロリズム」に反対し、別れて、母親(Najwa Bin Laden)と幼い兄弟姉妹と共にサウジアラビアに帰り、母と共著で『ビンラディンとして育って(Gwoing Up Bib Laden)』というタイトルの本を出版した。
彼は、「あらゆる暴力に反対」という立場を貫ぬいでいる。そこで今回の彼の声明では、「非武装の人間(ビンラディン)を殺し、家族(29歳の妻)を撃ち、遺体を海に捨てるという基本的な法的原則を破った」と米政府を非難している。彼は「イラクのサダム・フセインや、セルビアのミロシェビッチなどと同様に」、なぜ「オサマ・ビンラディンは、逮捕され、国際法廷で裁かれなかったのか?」「そうすれば、世界は9.11を含めた一連の真相をしることができたはずだ」と主張した。さらに彼は。パキスタン政府に対しても、オサマ・ビンラディンの3人の妻と子どもを釈放するよう要求し、国連に対して、ビンラディンの死の真相を明らかにすることを要求している。
オサマ・ビンラディンと別れて、サウジアラビアやカタールで暮らしている残り3人の成人の息子たちも、この声明に同調しているという。
明らかに米特殊部隊の作戦は、オサマ・ビンラディンを逮捕するのではなく、暗殺することが目的だった。彼が法廷で何を喋るか、恐れたのであろう。CIAを最もよく知る男だからだ。
ビンラディン攻撃について、事前に知らされていなかったパキスタン政府と軍は、「主権侵害」だと怒った。米国側は、ビンラディンがパキスタン軍の保護なしにアボタバードに居住することは出来なかった筈だと応酬した。しかし、これには、パキスタンが核兵器保有国であり、パキスタンが米国から月10億ドルの軍事援助を受けている、ことが背景にある。
アフガンの米軍、国境なき医師団誤爆 医師ら19人死亡
- 2015/10/3 22:36 (2015/10/4 1:19更新)
【ニューデリー=黒沼勇史】アフガニスタン北部の都市クンドゥズで反政府武装勢力タリバンの掃討作戦を続ける米軍は3日、非政府組織(NGO)「国境なき医師団」の病院を誤爆した可能性があると公表した。同医師団は少なくとも医師ら19人が死亡したとしており、米国にも「病院の正確な位置を常に知らせていた」などと米軍を非難する声明を出した。
アフガンのガニ大統領は3日夜に声明を出し、米主導の「北大西洋条約機構(NATO)軍の司令官が電話を寄越し、事件(医師団病院への誤爆)について謝罪した」と明らかにした。現地の米軍報道官もタリバンを狙った3日未明の空爆を認め「事件は調査中」とする声明を出していた。9月28日にタリバンがほぼ全域を支配下においたクンドゥズを奪還するため、米軍は同29日に空爆を始めていた。
誤爆時、病院内にはアフガン国内外出身の医師らスタッフが80人、患者らが105人おり、死傷者数はさらに膨らむ可能性がある。
同医師団は3日の声明で「ワシントンとカブールの両国の軍関係者に(誤爆を)最初に知らせてから30分以上も空爆が続いた」とも非難した。米軍内部で何が起きたのか早期の説明を求める構えだ。病院の位置は全地球測位システム(GPS)でも随時捕捉可能な状態だったという。
タリバンも同日声明を出し「我々のムジャヒディン(イスラム聖戦士)は1人もその病院にいなかった」と表明した。その上で「この蛮行は侵略者(米国)の偽善と冷酷さをアフガン内外に改めて示した」と強調した。アフガンや隣国パキスタンではこれまでも、米軍の誤爆で市民ら多数の犠牲者が出ている。タリバンは今回の誤爆についても国内の反米感情を高めるのに利用しそうだ。
米主導のNATO軍は2014年末に戦闘任務を終了。15年年初からは政府軍を訓練・指導する非戦闘要員のみが駐留し、治安維持は政府軍が担う態勢だった。ただ昨年の大統領選後の混乱が長引き、選挙で争ったガニ大統領とアブドラ行政長官の2陣営は今も対立する。政府軍も統率が取れていないもようだ。
政治空白を突くようにタリバンは今春から攻勢をかけた。クンドゥズは同名の州の州都だが、01年のタリバン政権崩壊後で州都がタリバンに掌握されたのは初めて。国際戦闘部隊の必要性が改めて認識されつつあっただけに、今回の米軍の誤爆は事態を複雑化し、タリバンの勢力拡大につながる恐れが高まっている。
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○タイミングから見てISの仕業と見るのは自然なのですが、ロシアが空爆を始めた途端に報復テロってのは出来過ぎです。
○アメリカはこの地域でロシアが主導権を握る事を阻止したいのです。
○ISには動機があるでしょうが、それなら狙われるのは第一にアメリカでしょう。
ISは、何でも自身のテロと犯行声明するので、犯行声明があったとしても、それが証拠にはなりません。
米英は、ウクライナ上空でのマレーシア機撃墜事件では、各種の証拠を出して、ロシアが支援する分離派の犯行と指弾したのに、今回は、何の証拠も出さずに口先だけですので、その論拠は明らかでしょう。
即ち、ロシアのISへの敵愾心を煽っているだけです。
戦争(紛争も同じ)は、政治の異型ですので、戦争や紛争の形態を分析すれば、政治の分析に繋がるので、ロシアのISへの爆撃が充分では無く、シリア反政府への爆撃が真の目的とすれば、ISがロシア相手にテロを行う必要は無いでしょう。
プーチンもそれを承知で、簡単に米英の口車には乗らないでしょう。
そうした状況では、米英もテロ加担する危険を犯しても得る利益は過小なので、加担するのは、口先のみでしょう。
私は、反対にテロの可能性は少ないのではないか、と思いますね。 物的証拠が出てくれば別ですが。 但し、その証拠が出ても、捏造の疑いが無いもので無いと信用は出来ません。 只の事故をテロと見せかける工作は、簡単ですからね。
① 墜落機は、2001年に、機体後部に損傷を受けている、とあります。
② ミサイルの可能性については、墜落機は、33.000フィートを飛行中であったので、地上からの射程内には無かった、とあります。
③ 爆弾については、機体から回収された遺体には、爆発物の反応は無かった、とロシアの報道にある、とあります。
報道中で大騒ぎしているのは、英国の旅行者 の飛行機への搭乗が本国の方針で、一時、出来ず、移動が不可能になった旅行客が騒いだからです。
キャメロン首相曰く、のテロに関わっては、何一つとして、具体的には示されていません。
毎年、英国からは、90万人がエジプトへ旅行するのですから、それは、混乱しますよね。
(以下の記事より抜粋)
Sharm el-Sheikh flights shutdown triggered when British spies uncovered Isil bomb plot after Russian air crash The Telegraph 10:00PM GMT 05 Nov 2015
政治というものを止めるということは不可能なので、戦争なども宿命として付き合わざるを得ないという気もしますが何とか知恵でもって飼い慣らして大人しくさせて行くことは出来るかも知れないと思います。
参考資料があまりに長いので、途中で端末を取り落として寝ていましたが(笑)。
中東地域の混乱は、米露の代理戦争、アラブ各国または部族間の反目や対立、過去の植民地政策などが複雑に絡み合って起きているのですし、アメリカの尻馬に乗ってのこのことそんな場所に出て行くのは、思いっきり自殺行為です。自衛隊員を殺し、殺されの戦闘に巻き込んで、アラブ世界から恨みを買うつもりですか?
日本にいると、ロシア=悪の論調ですが、クリミア半島併合も、正当な手続きで民意に沿って行われたという見解もあり、判断がつきません。
おつむの弱いアメポチ政権が、しゃしゃり出ないことを祈る思いで暮らしています。
米国軍産複合体は密かにISISを支援してきましたが、これにオバマは対抗してプーチンやイランを誘導したということ。これにより米国覇権を崩壊させ、中東の覇権をロシアに譲り、多極化への移行を加速させると。
また、原油安はサウジの仕業ですが、これは米国のシェール潰しの為と国際エネルギー機関(IEA)が公式に認めています。
これに対し米側はサウジのライバルであるイランを制裁解除しました。
サウジがロシア経済フォーラムに4年振りの参加をするなど、急接近していますし、どうやら「米国とサウジが結託して原油を増産し、イランやロシアを潰そうとしている」という説は怪しいようですよ。