来月11月の大阪府知事・市長のダブル選挙まで一か月を切りました。
そこで、朝日新聞社と朝日放送(ABC)は24、25の両日、大阪府民を対象に電話による世論調査を実施したのですが、
「大阪府の松井知事を支持しますか。支持しませんか。」
という質問に対する答えが、
支持する44(47)
支持しない30(33)
だったのには驚きました(丸カッコ内は大阪市民の数字)。支持する人が支持しない人の1・5倍!これなら今度の選挙も安泰です。
ただし、支持した方の支持の理由を見ると、「個別の政策」がたった8%で、「改革の姿勢や手法」が66%だったのには納得でした。
だって、松井府知事ってこの4年間で、大阪「都」構想住民投票をやった以外、これと言ってなにか具体的な政策を打ち出したことがないからです。
たとえば、8年間の橋下・松井府政では、福祉・教育・文化などの支出を削減しているのに、物凄い勢いで大阪の公債(府債すなわち負債)が増えています。
橋下氏の知事選での公約の一つは、「新規に府債を発行しないこと」でした。
ところが発行しないどころか、結果として、大阪の府債=負債の残高は、平成19年度末に5兆8288億円だったのが、平成20年に始まった橋下維新府政で、平成22年度末には史上初めて6兆円!を突破し、松井府政下の平成25年度には6兆4千億円以上になってしまいました。
そして、松井府政になったばかりのときに、とうとう大阪府は公債を発行するのに総務大臣の許可を得なければならない起債許可団体と転落し、近い将来、夕張のような財政健全化団体に転落する可能性さえ取りざたされるようになったのです。
大阪府が起債許可団体に転落 大阪を破産させる経済無策の橋下・松井維新の会に国政進出の資格なし
これは大阪経済の地盤沈下が止まらないからです。
帝国データバンクがこのほど発表した「大阪府・本社移転企業調査」によると、2005年から14年にかけて合計で901社も転出超過です。この10 年間に大阪府へ転入した企業は 1523 社、大阪府から転出した企業は 2424 社にのぼっています。
ちなみに、転出先は兵庫県 843社(全体の34.8%)、東京都358社(14.8%)、奈良県259社(10.7%)の順で多かったのです。
つまり、大阪府は東京だけでなく、近畿でお隣の兵庫や奈良にも魅力作りで負けているのです。これでは税収が改善するわけがありません。
帝国データバンクは
「自治体による企業立地促進補助金・融資、産業集積促進税制など企業誘致や流出防止を目的とした各種支援策などへの期待も大きい。今こそ官民一体となった活性化へむけての取り組みが必要だ」
と指摘しています。
大阪「都」なんて実現するとしても何年も先のことです。それ以外に何の対策もないというのでは、維新は経済に関して無策といわれてもしかたないでしょう。
話は変わりますが、維新応援団である竹中平蔵氏が所長を務める森記念財団・都市戦略研究所の「世界の都市総合力ランキング」2014年版は下の通りで、ライバル都市はどんどん進化しています。
ところが、大阪は2011年の15位をピークに、17位、23位、26位とランクを下げ続けていて、グラフに載ってもきません。
2008年の橋下大阪府知事、2011年の松井府知事・橋下市長の登場以来、地盤沈下を続ける大阪。
2015年2月、自民党大阪府議団の花谷充愉議員が調べた資料によると、大阪府にはこれだけワースト記録があるというのですが、松井府知事ら大阪維新の会は反論していないので事実なのでしょう。
もちろん、これらがすべて橋下・松井大阪府政の責任だとは言いませんが、維新の政治がもう8年も続いているのに改善が見られないのはいかがなものかと思います。
たとえば、維新の重点政策は教育問題のはずなのですが、上の表の最後の全国学力・学習状況調査に関連して、下のような結果があります。
私は、学力テストの成績向上が教育の目的ではないと思いますが、維新はそれを第一の目標にしています。
そこで、松井府知事らは大阪府の全国学力テストの結果が悪すぎるということで「非常事態宣言」を出し、テコ入れをしたのですが、こんな結果に終わっています。
これは、なにか維新の教育政策が間違っていることを示していないでしょうか。
大阪「都」構想のデメリット 橋下市長の教育破壊 教育予算・現役世代予算5倍増の嘘
ちなみに、大阪維新の府政になってから、教員・教育委員会叩きが激しく行われたり、教育基本条例が施行されたり、君が代斉唱口元チェックが行われたりしたので、大阪の小学校教員になろうという人の採用倍率が減り続けています。
教育はまず「人」です。
優秀な教員が大阪に来てくれないのでは、大阪の教育の地盤沈下はますます進むでしょう。
15の春を泣かせ続ける橋下市長の強権姿勢が体罰の実態調査と対策をできなくしてしまった
こんな体たらくなのに、どうして松井大阪府政は支持されているのでしょうか。
その理由の一つが、橋下大阪市長の「発信力」にあることは間違いありません。
下は、5月の大阪「都」構想住民投票運動の中で、橋下・松井氏ら大阪維新の会がさかんに使ったパネルなのですが、どこをどういじくったらこういうグラフになるのか見当もつきません。
フジテレビと橋下市長に見る「詐欺にパネルは使いよう」 気を付けよう、ハシモトトオルとフジサンケイ。
だって、実際はこうですから。
「大阪府 府債残高の推移」。大阪府作成の大阪府の主な財政状況の推移より。
橋下府知事誕生の平成20年以降も、悪化の一途をたどっていることがわかる(平成27年度はまだ年度途中)。
破たんしつつある「大阪市解体・バラ売り」大阪都構想 橋下市長「維新の会にまで言われて非常に辛い」
冒頭でご紹介した世論調査に、
「橋下さんや松井さんが大阪市長や知事を務めてきたことで、大阪はよくなったと思いますか。悪くなったと思いますか。それとも、変わらないと思いますか。」
という質問があるのですが、その回答結果は
よくなった35(35)
悪くなった9(15)
変わらない49(46)
です。
「よくなった」とお答えになった3分の1以上の方々は、維新のふりまくイメージ戦略にふりまわされているということはないでしょうか。
松井府知事1人が無策無能なわけではありません。
毎日新聞に経済無策でCランクと書かれた橋下徹市長と維新の会が、カジノ推進法案にのめり込む利権の実態
「橋下徹」ニヒリズムの研究 | |
森田実 著 | |
東洋経済新報社 |
橋下徹の言葉の大胆さ、着眼点の斬新さを見るだけでも、彼がいかにして民心を把握することに新たな視点を持ち込み、負のマインドセット、虚無的心情を巧みにシステム化したかがわかる。橋下徹を知ることは単に一人の地方政治家を知るというにとどまらず、現在がいかに危険な地点かを異なる視野から見つめるのに役立つ。橋下徹は現代を読み解く回路であり、導きの糸である。彼の存在と向き合うことで、今なすべきことを知ることができる。
「仮面の騎士」橋下徹 独裁支配の野望と罠 | |
大阪の地方自治を考える会 | |
講談社 |
大阪、そして日本を破滅に導く恐怖専制の実態を決意の実名告発。「閉塞ニッポンを救う男」の実像は、「傲慢」「気紛れ」「無責任」―。連戦連勝の選挙戦の陰で露になる暴君の素顔を、部下たちがついに明かす。
橋下徹のカネと黒い人脈 (宝島NonfictionBooks) | |
一ノ宮 美成+グループ・K21 (著) | |
宝島社 |
サラ金業界などの財界アウトサイダー、食肉王ハンナンの浅田満をはじめとした関西アンダーグランドの面々……橋下人脈は徹頭徹尾、きな臭いのだ。週刊誌さえまだ気づいていない、時代の寵児の正体がここに明かされる! 橋下「大阪維新の会」は、一皮むけば旧態依然としてた利権屋集団、ブレーンから財界パトロンまでアウトサイダーの巣窟だったのだ。改革の旗手の仮面に隠された“ペテン"のカラクリを大胆に暴く!! 新しい告発ノンフィクションリシーズ「宝島NF」の最新刊。
「最も危険な政治家」橋下徹研究 孤独なポピュリストの原点―新潮45eBooklet | |
上原善広 | |
新潮社 |
「改革」と称して次々と奇策を繰り出し、それを疑問視するものは徹底的にやりこめる。チャパツの弁護士から政治家に転進し、自身の政党まで作り上げたこの人物は、いったい何に突き動かされているのか。そして彼の思想、行動力はどんな環境が育んできたのか。新潮45掲載時に大反響を呼び、いくつもの後追い記事を生んだ「橋下徹研究」の嚆矢。
橋下徹 改革者か壊し屋か―大阪都構想のゆくえ (中公新書ラクレ) | |
吉富有治 | |
中央公論新社 |
大谷昭宏事務所所属の気鋭のジャーナリストによる橋下ウォッチング最新刊。
大阪府起債許可団体に
日経 2012.09.21
大阪府は2011年度決算を基に算出した実質公 債費比率(暫定値)が18.4%となり、新たな地方債発行に総務相の許可が必要な起債許可団体になると発表した。財政規模に占める借金返済の割合(過去3 年度の平均)を示す実質公債費比率が18%を超える起債許可団体は10年度に全国で6道県あるが、大阪府は初めて。
10年度で17.6%まで上昇していた府の実質公債費比率は、臨時財政対策債の発行増などで今回初めて18%を超えた。総務相に公債費負担適正化計画の提出が求められるが、当面の財政運営に影響はない見通しだ。
しかし、比率が25%を超える早期健全化団体になると起債が制限される。府が7月に公表した中長期試算では過去の負債の償還で今後も比率は上昇する見込み。歳出削減などをさらに進めて実質公債費比率をピーク時の18年度で24.9%に抑える方針を示している。
◇
府は18日、大阪市と堺市を除く府内41市町村の11年度決算見込みをまとめた。合計の実質収支は8年連続の黒字だったが、扶助費の増加などで実質収支の黒字額は約1億円減の171億円。
赤字団体は前年度同様、泉佐野市だけだった。
赤字の基を観たければ、関空へ行かれると良いのです。
閑散としたロビー、悠長に離発着する民間航空機の少なさ、売店、レストランの暇を託つ店員さんの姿、等を観れば、こんな広い空港が必要であったのかどうかが歴然としています。
関空のみでは無く、それを当て込んで建てた周辺自治体の箱物も軒並み赤字です。
大阪府は、下手なゼネコン並みに箱物を建設し、それらが赤字の基です。 言わば、自民党土木建設ゼネコン政治の府レベルでの実践であったのです。
自民党や維新の政治では、土木建設偏重ゼネコン政治からの脱却は、不可能です。 安倍政権を観れば分かるとおりに、未だに、ゼネコン偏重バラマキ政治から抜け出ることが出来ません。
未だに、一度限りの高度経済成長の夢から抜け出ることが出来ずに、叶わぬ夢を見続けているのです。
近未来には、壮大な廃墟を大阪の其処此処に見ることが出来るでしょう。 その時に、我々の子孫は、何と言うのでしょうね。
そうは言っても、とら猫イーチさん御指摘のように、おおさか維新の政治のみがここまでの財政悪化を招いたのでは無いので、結局、大阪府民の自己責任です。
府から都へ行政システムを変更すれば、おおさか維新の主張通りに財政の浪費は収まるのかもしれません。おおさか維新に夢を託すのもいいでしょう、それも大阪府民の選択ならば。でも、遠巻きに見ている限りは、大阪府の財務体質がそれで改善されるとは到底思えません。結局は、大阪府民がどこまで酷い財政状況を自覚して、いかなる負担をも覚悟できるかに尽きると思います。しかしながら、テレビなどでインタービューを受ける大阪府民の印象を見る限りは、そこまで覚悟のある人は、当方の印象としてはそれほど多くは無いように思います。
おおさか維新の手法も目立った実績も残せていないし、その政治思想も今の自民党執行部と変わりません。だから、今回の都構想の騒動に決着がついた後は、大阪以外の日本国民に迷惑を掛けないよう、国政に携わることなく解散をして欲しいです。
例えば、土木建設部門での、公共下水道事業です。
下水道事業は、地方自治体の最小単位の市町村レベル単独でも可能な小規模での事業化が可能であれば、現在では、全国レベルで、必要な規模で事業化は既に、終わっていたかも知れません。
ところが、スケールメリットを追及した揚句が、市町村レベルで事業化出来ない大規模な広域下水道を建設し、その傘下に市町村レベルでの公共下水道を建設する、と言う二重事業化に依るところの、目論見は、ゼネコン奉仕事業化するところとなり、下水道事業は、果てしなく大規模化し、事業予算も果てしなく増大したのです。 必然的に赤字も大規模となったのでした。
これは、国からの赤字の押し付けに他なりません。
しかも、こうした構造は、下水道事業のみでは無く、殆ど全ての部門に及ぶのです。 即ち、地方自治体の赤字体質は、地方自治制度の持つ構造的なものなのです。
別に維新を庇うのではありませんが、この点に沈黙したままで、地方を責めるのは、一方的に過ぎるでしょう。
更に言えば、大阪府財政のみが特段に赤字体質と言うものでもありません。 他の自治体との差が特段にある訳でもありません。
赤字隠しが巧妙な自治体も存在します。
普通会計のみの黒字化ならば、特別会計への繰り出し金を押さえることで数字合わせは可能ですし、一部事務組合制度や公社を使えば、議会の統制抜きで、赤字隠しも可能です。
民間会社を偽装した公社制度では、債務保証制度に依り、実質の債務を隠せます。
これ等全てを通算した実質的歳入歳出決算を見ることが出来なければ、当該自治体の実際の歳入歳出決算が分かりません。
全貌を把握してから、財政改革の展望を語ることが可能になるのですが、現時点では、全てが公開されているのかどうかが分かりません。
少なくとも、ネットで調べた限りでは、大阪府関連の財政資料全てを収集出来得たとの自信は、私にはありませんので、その一部について語れるだけです。
恐らく、国でも地方でも、構造的に、巧妙に仕組まれた財政制度に隠された赤字は存在するのでしょう。
ただ、地方には、日銀のような打ち出の小槌はありませんがね。