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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

「21世紀の資本」ピケティ教授も世界第2位の富豪バフェット氏も唱える「所得の再分配」と格差問題の是正

2015年01月03日 | 新自由主義批判 所得の再分配と格差社会の是正

トマ・ピケティの新資本論

『21世紀の資本』が700ページの専門書であるのに対し、本書は「子どもの値段」「相続税の余地」「経済における男性優位」「付加価値税を社会保障に充てるのは誤り」「オバマとルーズベルトの比較」など幅広い問題を取り上げており、ピケティ入門書として格好の内容となっている。フランス大統領オランドや経済危機にもまとまらないEU首脳などへの舌鋒鋭い批判が見どころ。

 

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著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイは2015年、同氏が経営権を握ってから50周年を迎えます。

この投資会社は、優良企業への投資や大型買収などを通じて、長期間にわたり高い成長を続ける同社は時価総額で米企業で5本の指に入る巨大企業に発展してきました。2014年には30%以上時価総額を上げたので、バフェット氏は順位を1つあげて、ビル・ゲイツ氏に次ぐ世界第2位の富豪となりました。

しかし、バフェット氏は日本の大多数の富裕層がそうであるような、自分の責任に自覚のない、金儲けに汲々としたガリガリ亡者ではありません。

同氏はアメリカの格差是正を目指すオバマ大統領に協力しており、「オバマの賢人」と呼ばれているのですが、2010年11月にはアメリカの全国放送ABCニュースのインタビューで、高額所得者は「相当多く」の税金を負担する義務があると語っています。

また、2011年8月15日付のニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、米政権に対し富裕層への増税を訴え

「私の友人や私は長らく、億万長者に優しい議会に甘やかされてきた」

「米政府は今こそ、犠牲の分かち合いについて真剣に考える時だ」

と述べたのです。

日本の富裕層に耳の垢でも煎じて飲ましてやりたい台詞です。

世界長者番付3位のバフェット氏も「甘えた富裕層に増税を」 日本の富裕層には所得税増税を

 

 

 

バフェット氏は抽象論を述べるだけではありません。

2011年11月26日には、富裕層向け増税の是非を巡り与野党が対立している米国の「財政の崖」に関連し、増税の具体策を提案しています。同氏は年100万~1000万ドルの課税所得の下限税率を30%、1000万ドル超なら同35%にすべきだと提案したのです。

これは。富裕層が株式投資への低税率などさまざまな税金の控除制度を駆使するため、2009年の最高所得者400人の平均税率は19.9%」という実態を踏まえ、中低所得層と比べた税率の不均衡の是正を訴えたものです。

ウォール街を占拠せよ 全米でデモ広がる 「国難」東日本大震災に沈黙する日本の富裕層に富裕税の導入を!

 

一方、日本では、フランスの経済学者、トマ・ビケティ教授が2015年1月末に来日するということで話題になっています。この記事の最後にあるように朝日新聞がロングインタビューも試みています。

彼は、その世界的大ヒット著作「21世紀の資本」が翻訳されたのを記念して、来日するものです。

「21世紀の資本」

格差は長期的にはどのように変化してきたのか? 資本の蓄積と分配は何によって決定づけられているのか? 所得格差と経済成長は今後どうなるのか?

18世紀にまでさかのぼる詳細なデータと、明晰な理論によって、これらの重要問題を解き明かす。格差をめぐる議論に大変革をもたらしつつある、世界的ベストセラー。

ノーベル経済学賞受賞の学者たちの推薦文

「時宜にかなった重要書だ」ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授)

「本年で、いや、この10年で、最も重要な経済学書になると言っても過言ではない」ポール・クルーグマン(プリンストン大学教授)

こんな分厚い本ですので、普通の人には読むのちょっと無理。冒頭の本にしておいた方が無難かも。



ピケティ教授は、18世紀までさかのぼって資本主義経済を詳細に分析し、300年分の豊富なデータによって「貧富の差は拡大する。富めるものはより豊かになり、格差がますます広がる。富裕層が所得と富を独占し中産階級は没落していく」という事実を証明しています。

その解決策として、所得の再分配、具体的には所得税などの累進課税や富裕層への富裕税によって得た税収を「年金、健康保険、失業手当、教育」に回すという、社会国家論を提案しているのです。

また、ピケティ教授は、世界的な富の偏在に対処するため、グローバル資産税(富裕税)も提唱しています。

このように、先に述べたノーベル経済学賞受賞学者やピケティ教授のような世界的な経済学者が、とっくに弱肉強食の新自由主義経済政策では国内外の経済・社会問題を解決しえないと断じていて、もはや新自由主義経済学は国際的には時代遅れになっています。

ところが、日本では世界の潮流とは対照的に、竹中平蔵氏のように、格差は問題でないとか、日本の貧困は取り立てて問題にするほどのこともないとか、正社員をなくせとか、トンデモない提言を連発する、新自由主義経済学を信奉する経済「学者」や評論家が猛威を振るっていますので、騙されないように注意をしなければなりません。

(竹中氏は派遣大手のパソナの取締役会長ですから、そりゃあ、解雇自由・派遣自由で労働市場の流動化万歳みたいなことを言うに決まってます)

竹中平蔵 朝まで生テレビで「正社員をなくしましょう」 これが安倍政権が目指す新自由主義経済だ

池上彰さん、しっかり解説してください!日米両国とも富裕層の税率は低く、貧富の差は拡大し続けています!

 



今のアベノミクスのような新自由主義的経済政策は全くうまくいっていません。

彼らが説くのは、富める者がますます富めば下までお流れが来るという「トリクルダウン」理論なる代物ですが、これは非現実的で全く機能していません。

富裕層や大企業は高所得・高収益を得ても資産や内部留保を貯めるばかりで、一向に消費しないため経済は成長しません。また、大企業が得た収益は中小企業の利益や中低所得層の賃上げにほとんど回らないので、彼らの購買力は一向に上がらず、景気はよくなりません。それは、富裕層や大企業にとっても望むところではないでしょう。

アベノノミクスは失敗した2 実質賃金目減り、物価高、負担増で格差拡大。日本人は貧しくなっている。

衆議院総選挙の争点2 「税と社会保障改革(1) 消費税増税か格差是正か」 安倍自民党は1%の金持ち政党

 

これに対して、所得の再分配を目指して、高所得者へ累進課税によって高い所得税をかけることや、富裕層に富裕税をかけることは、まわりまわって彼らをも潤すことになります。

それに提唱されている富裕税は0・1%からせいぜい1%で、決して富裕層を痛めつけるような過大なものではありません。

そうして得られた税金は中低所得層に福祉などで回され、お金の余裕のない人々によって消費され、結局日本経済を成長させ、ひいては大企業や富裕層もますます富むことになります。

このように所得の再分配政策は、中低所得層や中小・零細企業を救って格差問題を是正するだけではなく、成長戦略としても有効であり、さらには大企業や富裕層にとっても決して損にならない社会・経済政策なのです。

トリクルダウンのように上流から富を流すのはうまくいかず、下流から水流を増す、いわば「トリクルアップ」政策ことが有効なのです。所得の再分配政策は、富裕層と大部分の国民を対立的にとらえる政策ではなく、双方がウィンウィンになる政策なのです。

日本にも富裕税の導入を!年間所得100億円以上の富裕層は14%の税率でしか税金を支払っていない

 

いずれにしても、経済政策と社会政策こそ、我々の生活に直結するものです。

今年は、このブログでもいろいろ勉強していきたいと思っています。

我々一般国民は、政府や御用学者・評論家に騙されないように、少しずつ学んでいきたいところです。

 

日本では、政府や学者や評論家の言うことは自分たちに都合のいい屁理屈ばかりだということですね。

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世界3位の富豪バフェット氏、米富裕層への増税訴える

2011年 08月 16日 11:37 JST ロイター

[ニューヨーク 15日 ロイター] 米著名投資家ウォーレン・バフェット氏(80)は、15日付のニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、米政権に対し富裕層への増税を訴えた。「オマハの賢人」とも称されるバフェット氏自身も、米誌フォーブスによる世界長者番付で3位に入る大富豪。

 バフェット氏は「私の友人や私は長らく、億万長者に優しい議会に甘やかされてきた」とし、「米政府は今こそ、犠牲の分かち合いについて真剣に考える時だ」と述べた。

 同氏が富裕層への増税を訴えかけるのは今回が初めてではなく、昨年11月にもABCニュースのインタビューで、高額所得者は「相当多く」の税金を負担する義務があると語っていた。

 ただ今回は、米連邦債務上限の引き上げなどで米国の財政問題に関心が集まるタイミングでの寄稿なだけに、注目度はこれまでよりも高い。

 2012年の米大統領選挙でも財政問題や税制が大きな争点になるとみられるが、共和党は財政赤字削減は歳出の削減を通じて行うべきだと主張。ブッシュ前政権が導入した富裕層減税措置について、オバマ大統領と民主党は打ち切りを主張しているが、共和党はこれを頑なに拒否している。

 バフェット氏は「貧困層と中間層がアフガニスタンで我々のために戦い、多くの米国民が生活を何とかやりくりする一方、超富裕層は桁外れの税優遇を受け続けている」と指摘。「非常に多くの国民が真に苦しんでいるときならなおさら、(富裕層の)多くも増税をいとわないのではないか」と語っている。

 




失われた平等を求めて 経済学者、トマ・ピケティ教授
2014年12月31日21時32分 朝日新聞

大野博人・論説主幹

 自由と平等。民主主義の理念のうち、自由がグローバル時代の空気となる一方、平等はしばらく影を潜めていた。だがその間、貧富の差や社会の亀裂は拡大し、人々の不安が高まった。そこに登場したのが大著「21世紀の資本」。不平等の構造をあざやかに描いた著者のトマ・ピケティ教授は「私は悲観していない」という。
■競争がすべて?バカバカしい
 ――あなたは「21世紀の資本」の中で、あまりに富の集中が進んだ社会では、効果的な抑圧装置でもないかぎり革命が起きるだろう、と述べています。経済書でありながら不平等が社会にもたらす脅威、民主主義への危機感がにじんでいます。
 「その通りです。あらゆる社会は、とりわけ近代的な民主的社会は、不平等を正当化できる理由を必要としています。不平等の歴史は常に政治の歴史です。単に経済の歴史ではありません」
 「人は何らかの方法で不平等を正そう、それに影響を及ぼそうと多様な制度を導入してきました。本の冒頭で1789年の人権宣言の第1条を掲げました。美しい宣言です。すべての人間は自由で、権利のうえで平等に生まれる、と絶対の原則を記した後にこうあります。『社会的な差別は、共同の利益に基づくものでなければ設けられない』。つまり不平等が受け入れられるのは、それが社会全体に利益をもたらすときに限られるとしているのです」
 ――しかし、その共同の利益が何かについて、意見はなかなか一致しません。
 「金持ちたちはこう言います。『これは貧しい人にもよいことだ。なぜなら成長につながるから』。近代社会ではだれでも不平等は共通の利益によって制限されるべきだということは受け入れている。だが、エリートや指導層はしばしば欺瞞(ぎまん)的です。だから本では、政治論争や文学作品を紹介しながら社会が不平等をどうとらえてきたか、にも触れました」
 「結局、本で書いたのは、不平等についての経済の歴史というよりむしろ政治の歴史です。不平等の歴史は、純粋に経済的な決定論ではありません。すべてが政治と選択される制度によるのです。それこそが、不平等を増す力と減らす力のどちらが勝つかを決める」
 ――最近は、減らす力が弱まっているのでしょうか。
 「20世紀には、不平等がいったん大きく後退しました。両大戦や大恐慌があって1950、60年代にかけて先進諸国では、不平等の度合いが19世紀と比べてかなり低下しました。しかし、その後再び上昇。今は不平等が進む一方、1世紀前よりは低いレベルです」
 「先進諸国には、かなり平等な社会を保障するための税制があるという印象があります。その通りです。このモデルは今も機能しています。しかし、それは私たちが想像しているよりもろい」
 「自然の流れに任せていても、不平等の進行が止まり、一定のレベルで安定するということはありません。適切な政策、税制をもたらせる公的な仕組みが必要です」
 ――その手段として資産への累進課税と社会的国家を提案していますね。社会的国家とは福祉国家のことですか。
 「福祉国家よりももう少し広い意味です。福祉国家というと、年金、健康保険、失業手当の制度を備えた国を意味するけれど、社会的国家は、教育にも積極的にかかわる国です」
 ――教育は不平等解消のためのカギとなる仕組みのはずです。
 「教育への投資で、国と国、国内の各階層間の収斂(しゅうれん)を促し不平等を減らすことができるというのはその通り。そのためには(出自によらない)能力主義はとても大事だとだれもが口では言いますが、実際はそうなっていません」
 「米ハーバード大学で学ぶエリート学生の親の平均収入は、米国の最富裕層2%と一致します。フランスのパリ政治学院というエリート校では9%。米国だけでなく、もっと授業料の安い欧州や日本でも同じくらい不平等です」
 ――競争が本質のような資本主義と平等や民主主義は両立しにくいのでしょうか。
 「両立可能です。ただしその条件は、何でもかんでも競争だというイデオロギーから抜け出すこと。欧州統合はモノやカネの自由な流通、完全な競争があれば、すべての問題は解決するという考えに基づいていた。バカバカしい」
 「たとえばドイツの自動車メーカーでは労組が役員会で発言権を持っています。けれどもそれはよい車をつくるのを妨げてはいない。権限の民主的な共有は経済的効率にもいいかもしれない。民主主義や平等は効率とも矛盾しないのです。危険なのは資本主義が制御不能になることです」
■国境超え、税制上の公正を
 ――税制にしろ社会政策にしろ、国民国家という土台がしっかりしていてこそ機能します。国民国家が相対化されるグローバル時代にはますます難しいのでは。
 「今日、不平等を減らすために私たちが取り組むべき挑戦は、かつてより難しくなっています。グローバル化に合わせて、国境を超えたレベルで税制上の公正を達成しなければなりません。世界経済に対して各国は徐々に小さな存在になっています。いっしょに意思決定をしなければならない」
 ――しかもそれを民主的に進める必要があります。
 「たやすいことではありません。民主主義の運営は、欧州全体という大きな規模の社会よりも、デンマークのような500万人くらいの国での方が容易です。今日の大きな課題は、いかにして国境を超える規模の政治共同体を組織するかという点にあります」
 ――可能でしょうか。
 「たとえば欧州連合(EU)。仏独が戦争をやめ、28カ国の5億人が共通の制度のもとで暮らす。そしてそのうちの3億人が通貨を共有する。ユートピア的です」
 ――しかし、あまりうまくいっているようには見えません。
 「ユーロ圏でいうと、18の異なった公的債務に、18の異なった金利と18の異なった税制。国家なき通貨は危なっかしいユートピアです。だから、それらも共通化しなければなりません」
 ――しかし、グローバル化と裏腹に多くの国や社会がナショナリズムにこもる傾向が顕著です。
 「ただ、世界にはたくさんの協力体制があります。たとえば温室効果ガスの削減では、欧州諸国は20年前と比べるとかなり減らしました。たしかにまだ不十分。けれど同時に、協力の可能性も示してもいます」
 ――あなたは楽観主義者ですね。
 「こんな本を書くのは楽観主義の行為でしょう。私が試みたのは、経済的な知識の民主化。知識の共有、民主的な熟議、経済問題のコントロール、市民の民主的な主権、それらによってよりよい解決にたどり着けると考えます」
■民間資産への累進課税、日本こそ徹底しやすい
 ――先進国が抱える巨大な借金も再分配を難しくし、社会の不平等を進めかねません。
 「欧州でも日本でも忘れられがちなことがある。それは民間資産の巨大な蓄積です。日欧とも対国内総生産(GDP)比で増え続けている。私たちはかつてないほど裕福なのです。貧しいのは政府。解決に必要なのは仕組みです」
 「国の借金がGDPの200%だとしても、日本の場合、それはそのまま民間の富に一致します。対外債務ではないのです。また日本の民間資本、民間資産は70年代にはGDPの2、3倍だったけれど、この数十年で6、7倍に増えています」
 ――財政を健全化するための方法はあるということですね。
 「日本は欧州各国より大規模で経済的にはしっかりまとまっています。一つの税制、財政、社会、教育政策を持つことは欧州より簡単です。だから、日本はもっと公正で累進的な税制、社会政策を持とうと決めることができます。そのために世界政府ができるのを待つ必要もないし、完璧な国際協力を待つ必要もない。日本の政府は消費税を永遠に上げ続けるようにだれからも強制されていない。つまり、もっと累進的な税制にすることは可能なのです」
 ――ほかに解決方法は?
 「仏独は第2次大戦が終わったとき、GDPの200%ほどの借金を抱えていました。けれども、それが1950年にはほとんど消えた。その間に何が起きたか。当然、ちゃんと返したわけではない。債権放棄とインフレです」
 「インフレは公的債務を早く減らします。しかしそれは少しばかり野蛮なやりかたです。つつましい暮らしをしている人たちに打撃をもたらすからです」
 ――デフレに苦しむ日本はインフレを起こそうとしています。
 「グローバル経済の中でできるかどうか。円やユーロをどんどん刷って、不動産や株の値をつり上げてバブルをつくる。それはよい方向とは思えません。特定のグループを大もうけさせることにはなっても、それが必ずしもよいグループではないからです。インフレ率を上昇させる唯一のやり方は、給料とくに公務員の給料を5%上げることでしょう」
 ――それは政策としては難しそうです。
 「私は、もっとよい方法は日本でも欧州でも民間資産への累進課税だと思います。それは実際にはインフレと同じ効果を発揮しますが、いわばインフレの文明化された形なのです。負担をもっとうまく再分配できますから。たとえば、50万ユーロ(約7千万円)までの資産に対しては0・1%、50万から100万ユーロまでなら1%という具合。資産は集中していて20万ユーロ以下の人たちは大した資産を持っていない。だから、何も失うことがない。ほとんど丸ごと守られます」
 「インフレもその文明化された形である累進税制も拒むならば大してできることはありません」
     ◇
 Thomas Piketty 1971年フランス生まれ。パリ経済学校教授。米マサチューセッツ工科大学助教授などを経て現職。不平等の拡大を歴史データを分析して示した「21世紀の資本」(邦訳、みすず書房)は世界的な話題に。同書より前に著した論文は、金融資本主義に異議を申し立てた米ウォール街でのオキュパイ運動の支えになったともいわれる。
■取材を終えて 論説主幹・大野博人
 「格差」の問題を語るとき、英語やフランス語ではたいてい「不平等」という言葉を使う。ピケティ氏もインタビューでは「in●(eに鋭アクセント付き)galit●(eに鋭アクセント付き)=(不平等)」を繰り返していた。
 同じ状態を指すにしても、「不平等」は、民主主義の基本的な理念である「平等」を否定する言葉でもある。これがはらんでいる問題の広さや深刻さを連想せずにはおれない。
 「不平等」の歴史をたどり、その正体を読み解いて見せた「21世紀の資本」が、経済書という役割にとどまらず、著者自身が述べているように政治や社会について語る書となっていったのは当然かもしれない。また、読者も自分たちの社会が直面する問題の本質をつく説明がそこにあると感じたのではないか。
 同氏は資本主義もグローバル化も成長も肯定する。平等についても、結果の平等を求めているわけではない。ただ、不平等が進みすぎると、公正な社会の土台を脅かす、と警告する。
 そして、平等を確保するうえで必要なのは、政治であり民主主義だと強調する。政治家や市民が意識して取り組まなければ解決しない、というわけだ。
 たとえばインタビューで、フランスが所得税の導入で他国より遅れ、不平等な社会が続いたことを例にあげ、「革命をしただけで十分」と考えて放置してきたからだ、と指摘していた。
 この考えは、財政赤字の解決策としてインフレと累進税制を比較したときにもうかがえた。インフレ期待は、いわば市場任せ。それに対して累進税制も民間の資金を取り込むという点では同じ。だが、だれがどう払うのが公正か、自分たちで議論して考えるという点で、「文明化された」インフレだという。
 つまり、自分たちの社会の行方は、市場や時代の流れではなく自分たちで決める。「文明化」とはそういうことも指すのだろう。
 「不平等」という言葉の含意をあらためて考えながら、日本語の文章での「格差」を「不平等」に置き換えてみる。「男女の格差」を「男女の不平等」に、「一票の価値の格差」を「一票の価値の不平等」に……。
 それらが民主的な社会の土台への脅威であること、そして、その解決を担うのは政治であり民主的な社会でしかないことがいっそう鮮明になる。


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3 コメント

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朝日の偉い人は、消費増税に賛成で、公務員賃上げに反対みたいね。 (L)
2015-01-04 21:28:43
 インタビューを読むと、朝日の偉い人は、消費増税に賛成で、公務員賃上げに反対みたいね。言い換えれば、ドアホノミクスに賛成と。
 朝日の偉い人は、ドアホノミクスに賛成すると、いい目に遭えるんだろう。
 民主党は、違憲・”違法”な公務員8%賃下げをやったが、それを戻した自民はややマシということか。びっくりだけど。官製ワープアもあるから、総人件費を更に5+3%以上上げれば、特に地域経済にいい効果が出ると思うけど。立派な人が昼休み1時間はけしからんと文句を言ったら役場周辺のお店の顎が干上がったとか、バッシングが嫌で家飲みになり飲み屋に閑古鳥が巣を作ったとか、給与カットざまあ~と喜んだら、地域に流れるお金が減って首がギリギリ締まったとか言うし。

 3本の矢で、99%の負担とリスクで、金持ちを肥やすより、インフレのための公務員賃上げはよほどわかりやすい。財源はドアホノミクス用の金ね。人勧計算用の比較対象の50人以上の事業所を500人に戻すなどすればいい。まあ、時節柄で言えば生活保護などの漏給率を0にすると共にナショナルミニマムの水準を20%ぐらい上げるというのも良い。こちらのほうが技術的にもチャレンジだろうけど。
 
返信する
経済学者のタイプ (土筆の子)
2015-02-04 00:51:30
以下のことについて、です。
========
ところが、日本では世界の潮流とは対照的に、竹中平蔵氏のように、格差は問題でないとか、日本の貧困は取り立てて問題にするほどのこともないとか、正社員をなくせとか、トンデモない提言を連発する、新自由主義経済学を信奉する経済「学者」や評論家が猛威を振るっていますので、騙されないように注意をしなければなりません。
========

最近大学図書館で借りて読んだ、ガルブレイス ほとんどすべての人のための現代経済入門(1978年)。の以下の文章に感じ入りました。ピケティーさんは、勘ぐれば、「聴衆に受けるかどうかを真理の基準にしている経済学者」ともいえましょうが、それは、今後の彼の展開でわかることだと思います。それにしても、最近のテレビに出てくる経済学者は、おかしいのではないかと思うことが多い。 例えば、どなたか、経済学者が書かれたと思うのですが、Wikipediaの最低賃金のところを読んでも、肝心の1959年に日本に最低賃金がどういった背景で導入されたか。その時の国内議論は?その後の推移は、現在の状況は。地域ごとに違うことなどなど何も伝えていない。ピケティーさんの本の方にアメリカの民主党政権と共和党政権の対処の違いと、現在の目減りぐわいが、興味深く触れられていました。

====ガルブレイスさんより引用===
経済学者の意見はなぜ一致しないのか?
まず、私利がある。ニューヨークの大銀行に勤めているエコノミストは、彼の雇主が考えている意味での銀行の利益に反するような結論を出すことはめったにないでしょう。アメリカでは、いくつもの会社から結構な報酬をもらって相談役になっている経済学教授の見解にたいしては、いつも疑念の念がもたれてきましたが、これは健全なことです。
政治的な立場も意見の不一致につながります。
聴衆に受けるかどうかを真理の基準にしている経済学者も少なくありません。
次に変化の問題があります。会社、労働力、消費者行動、政府の役割など、すべてが常に変化しています。
一部の経済学者は、以前に身につけた考え方を生涯にわたって永続させようと努めます。
頭のよし悪しから生じる意見の不一致もなにがしかあるでしょう。
誰かがひそかな魂胆をもっているのを見きわめることはさしてむずかしくありません。金の出所がどこかをみればよい。また、金持から度をこえた喝采を受けている経済学者にたいしてはいつも疑惑を持つべきです。
もしある経済学者が、その専門的な知識ゆえに頭から信じてもらいたいというようなことがあれば、そのような人はあなたの思考から追い出すべきです。
政府の経済予測は、正しくあることを意図しているのではありません。それは、政府にとってそうなってもらうことが必要だといっているにすぎません。経済に関する予見はむしせよ。これこそ市民にとって安全な規則です。
=====
返信する
Wikipediaの最低賃金 (土筆の子)
2015-02-04 12:58:13
驚きました。先ほど、Wikipediaの最低賃金をチェックしたら、とても、充実した内容になっていました。
最終更新 2015年1月26日 (月) 03:19 とのことです。
返信する

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