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悪夢の超特急 リニア中央新幹線
総事業費9兆円。この史上最大の鉄道事業は、その問題点をほとんど報道されることなく着工目前まで来た。東京・名古屋間の286キロのうち86%の246キロがトンネルになることで発生する水枯れの可能性、処分方法の決まらない膨大な建設残土、掘り当てるかもしれないウラン鉱床、1日に1700台ものダンプカーが12年も走る村、10年以上も続く騒音と振動と土ぼこり、喘息、生活と交通阻害、生態系の劣悪化、立ち退き等々。今からでも遅くはない。JR東海は関係者、特に住民を軽視せず、徹底議論を図るべきだ。
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1 橋下徹市長の切り札 東京・大阪間リニア中央新幹線
このブログの記事も時々転載していただいているBLOGOSには、キラーコンテンツとして、橋下大阪市長の1日のツイートのまとめが記事として掲載されます。
その2014年1月4日の記事の、リニア構想部分がこれ。
大阪都構想と東京・大阪間のリニア開業は、日本再生の切り札だ
大阪都を実現して、東京・大阪間をリニアで結び、国の行政機構をまずは二極化。東京一極集中の是正策の切り札が大阪都構想と、東京・大阪間のリニア開業だ。大阪都構想は来年5月に住民投票。東京・大阪間のリニア開業もいよいよ動き出す
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6144676
名古屋・大阪間のリニア開業促進について関西はまとまりがない。奈良ルートか京都ルートか揉めている。そんなことをやっている場合ではない。ゆえに、大阪府と大阪市、経済界で、東京・大阪間リニア開業促進協議会を結成した。ルートはJRの考えを尊重することが基本。
そして名古屋・大阪間のリニア開業に消極的であるJRの財務負担軽減のためのスキームを構築する。
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6144676
大阪都構想と東京・大阪間のリニア開業は、日本再生の切り札だ。
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6144676
大阪都の実現と東京・大阪間のリニア開業。さらに、自分の行動で少しでも前進させたいと思っている方、是非、堺市議選に挑戦して下さい。
http://oneosaka.jp/election/candiate/sakai2014/…
すかして批判してるだけでは何も変わりません。
確かにどこを通るかもはっきりしない
橋下維新の大阪都構想の無理無体については、散々書いてきたので、ここでは過去記事のいくつかを紹介するに留めます。
また、万一、橋下構想が身を結んで、東京・大阪二極化が実現しても、それは一極が二極になるだけで、日本の地方の衰退という根本問題は全く解消しないことも、今は置きましょう。
そこで、今日は日本全体に影響するリニア構想について書きたいと思います。
堺市を消滅させる大阪都構想
破たんしつつある「大阪市解体・バラ売り」大阪都構想 橋下市長「維新の会にまで言われて非常に辛い」
毎日新聞に経済無策でCランクと書かれた橋下徹市長と維新の会が、カジノ推進法案にのめり込む利権の実態
橋下・松井大阪維新・大阪都コンビ府政で増え続ける大阪府の借金
大阪府作成 大阪府財務ハイライト より
2 国が初めて、東京大阪間のリニアに調査予算をつける
橋下市長はツイートごとにネット記事を引用していますが、よく見るとその記事は毎回同じで、これです。
「リニア大阪延伸」国費で調査 来年度予算初めて計上へ 経済効果など検討
産経新聞 1月4日 7時55分配信
末尾に全文を転載しましたが、要は、東京・名古屋間に予定されているリニアを大阪まで延伸開業した場合の経済効果などを調べる費用を、安倍政権が来年度予算案に計上する方針を固めた、大阪延伸の関連費用を国が計上するのは初めて、という記事です。
橋下市長もそれだけで大阪までリニアが来るとはしゃいでいるとは思いたくありません。
彼のツイートの大事な部分は、
「名古屋・大阪間のリニア開業に消極的であるJRの財務負担軽減のためのスキームを構築する。」
というところです。
橋下市長らが狙っているのは、2045年完成予定の東京・大阪間リニアを前倒しで開通させることです。
そこで、問題になるのがリニア線建設の費用負担の問題なのです。
3 気が遠くなるリニア建設費用
リニア開通には莫大な費用がかかります。
今の時点で、2027年開通予定の東京・名古屋間で5兆5千億円。2045年開通予定の東京・大阪間ですと9兆6千億円というのですが、こういう土木事業が当初の目算よりはるかに金がかかったというような例には事欠きません。
リニア開通にはトンネルの掘削一つにしても難しい問題が山積しており、不測の事態も考えられますから、年数も費用も本当にどれ位かかるかは予断を許しません。
その巨大な費用が、今は、当然ながら全部JR東海持ちということになっているのが、リニア推進派のネックなんですね。
4 さほど儲からないリニア
他方、考えてみると当たり前のことなんですが、リニアが開通しても基本的には今の新幹線から乗客が移ってくるだけですから、乗降客数や売り上げはさほど上がりません。
東京大阪間が67分になるという触れ込みなので、航空機利用客はある程度奪えるでしょうが、実は、リニアになっても今より利用者は減ると思われる確かな理由があります。
これ、意地悪ですけど、まだ内緒にしますので、想像してみてください。
さて、現に、当のJR東海当人の予測でも、2027年の名古屋開業時点での予想売上高(鉄道部門)は1兆2130億円で現在とほぼ同水準、2045年の大阪開通時の予想売上高は10%増の1兆3540億円となっています。
危ないリニア新幹線
実験線を走らせるだけで宙に浮いていたリニア計画が、JR東海によるリニア中央新幹線計画の浮上で現実味を帯びてきた。しかし、建設費だけでも5兆4000億円を超え、リニア特有の電磁波の健康影響問題や、中央構造線のトンネル貫通の危険性、地震の時の安全対策など問題が山積している。また電力も膨大に必要になり、自然破壊も問題だ。時間短縮も都心間では在来新幹線と比べてさほどではなく、採算性は極めて怪しいという。本書は、こうした様々な問題点を、専門家が詳しく分析し、リニア中央新幹線の必要性を考える素材を提供する。
5 JR東海が負う膨大な債務
これに対して、JR東海が負う借金ですが、旧国鉄時代の債務を約5兆円被って、分割民営化して開業したJR東海の借金は、それから四半世紀かかってまだ半分にしかなっていません。
このまだ2兆円以上ある有利子負債に、さらに5兆円だの、9兆円だのという有利子負債がのしかかってくるのです。
JR東海の鉄道部門の売り上げが年間1兆2千億円ですから、リニア一本で借金が年間売上の5倍以上という、民間企業としては異常な過剰負債となります。
さらに問題なのが利益水準です。
JR東海によると、設備の償却費用と金利負担で、リニア開業後の経常利益は、現在の水準より大幅に減少すると予想されています。
名古屋まで開通予定の2027年の予想経常利益は40%減の1740億円、大阪開通予定の2045年の予想経常利益は75%減の750億円まで落ち込みます。
つまり、リニアを開業させるとJR東海は儲からなくなってしまうのです。
しかも、これは今の低金利を前提にしています。
安倍政権はアベノミクスとやらで物価を毎年2%以上上げると言っていますから、そんなことになったら当然利息も上がり、JR東海の返済額は急増しかねません。
もし金利が1%でも上昇した場合には、大阪開業時点での同社の経常利益はほとんど吹き飛んでしまうことになります。
6 国策だったリニア事業
そもそも、JR東海は、リスクばかり高くて儲からない、こんな無謀なリニアをなぜ作らないといけないのでしょうか。
このリニア中央新幹線は、今から半世紀も前に、国家プロジェクトとしてスタートしたものです。
リニアは、利権誘導政治の走りともいえる田中角栄元首相による列島改造ブームを背景に、1973年に基本計画が了承されました。
その後、田中元首相の子分で山梨県を地盤とする金丸信議員が強力にリニアを推進したのを覚えておられる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、リニア計画が持ち上がった1960年代の日本は、現在とはまるで状況が異なっています。
その頃は、高度経済成長が続き、東海道新幹線が開業したばかりで、東京-大阪間の輸送力増強が緊急の課題でした。
そして、新幹線やリニア構想の担い手は旧国鉄だつたわけですが、その国鉄は37兆円もの負債を作って分割民営化の憂き目にあうわけです。
ですから当然、国鉄民営化後、国土交通省を中心に政府内部においてリニア推進を見直す動きが広がりました。
しかし、現実問題として、リニアには莫大な利権がくっついています。
建設予定地の地権者、大手ゼネコン、観光業界、地元経済界などなど、巨大な政治利権を伴うリニア建設の見直しは不可能でした。
そんな実は利権のために過ぎないリニア推進を正当化するために、大規模災害に備えた迂回ルートの確保だとか、技術開発による国力の増進など、様々な必要性が提唱されているわけですが、実は全部建設が先にありきの理由に過ぎません。
もちろん、橋下市長の東京・大阪の二極化云々のためのリニア誘致というのも、先に関西財界からの要望があるのであって、利益誘導という意味では同工異曲です。
7 安倍政権と橋下維新が考える無利子非課税国債発行
さて、かたや企業体力ギリギリの借金をしてリニアを開業させても、売上の増加にはあまり貢献せず、利益は激減すると当のJR東海本人が予測しているのです。
とにかく、JR東海にしてみるとリニアは大変危険な賭けです。
ですから、JR東海は、リニアが東京・名古屋間で開通しても、すぐには大阪までの延伸に着工しないと言っているわけです。
そこで、橋下大阪維新が期待しているのが、安部首相の禁断のウルトラCどころかウルトラQという大技です。
それは、JR東海が全額自己負担する計画になっているリニア建設費のうち、名古屋・大阪間の建設費3兆6000億円を政府が立て替えて工事を進めれば、大阪までの前倒し開業が可能になるというものです。
しかし、今、我が国は1000兆円もの債務を抱えて、財政再建が急務になっており、そんな金はないはずです。
そこで、これまで何度も検討されてきたのが、無利子非課税国債の発行です。
これは、リーマン・ショックに伴う追加経済対策の財源として、2009年の第一次安倍内閣の時も、安倍首相や菅義偉現官房長官が活用を唱えたことがあります。
8 無利子非課税国債とは何か
さて、無利子非課税国債というのは、普通は国債を引き受けて買った人が国に金を貸すのが国債だから、その人が貸した金の利息を取るのが当たり前のところを無利息にする代わりに、国債購入者の相続税をその分なくすという国債です。
これは、相続税対策に悩む富裕層にとっては、相続税の対象となる財産を減らせる(しかも、利息は付かないものの、必ず国が後で元金は返してくれるはず)という、夢のような国債だからどんどん売れるだろうと、安倍首相とその取り巻きたちが唱えました(アノ鳩山由紀夫首相も検討した!)。
しかし、考えてみたら、あとで国家の歳入として極めて重要な相続税納税がごっそり減るのですから、国家財政は逼迫するばかりです。
安倍政権や橋下維新は、そんな相続税収入の利食いのような禁じ手を使ってまで、リニアを大阪に早く開通させようというのです。
説明が長くなりましたが、これが、橋下市長がツイートした
「名古屋・大阪間のリニア開業に消極的であるJRの財務負担軽減のためのスキーム」
の中身です。
なにが「スキーム」か、という。
かっこいい呼び名をつけただけで、今まで何度となく浮かび上がっては、弊害が大きいと却下されてきた、使い古された禁じ手を本当に使うだなんてことが出来るわけがありませんし、万が一やったら、東京大阪二極化など吹っ飛ぶ、日本の破滅です。
白石興二郎・日本新聞協会会長(読売新聞グループ本社社長)は、「大型補正予算は財源がいるので、無利子非課税国債の発行も検討のなかに入る」と堂々と主張しているが、相続税が激減することについては何も言わない
9 なぜ、リニアを作っても乗降客数は増えないのか 理由1
さて、冒頭に出した問題ですが、覚えておられるでしょうか。
なぜ、新幹線に加えてリニアを作っても、利用者・乗降客数は増えないのか。
まず、第1に挙げられるのが、日本の少子高齢化に伴う人口の急減です。
最も楽観的な厚生労働省の予測でも、2050年には、日本の人口は今より2千万人以上減って、1億人を割ります(涙)。
総人口が8割になってしまうのですから、どんなに便利な輸送手段ができても、利用者がふえるわけがありません。
そこから、どんどん人口が減って、リニアが開業してから半世紀後の2100年には、日本の人口は今の半分の!6千万人!になるんですが、リニア、どうするんですか。
東海道新幹線が出来て半世紀、日本の経済は概ね成長し、人口も増えてきましたから、新幹線開通に手間と費用をかける意味がありましたが、これからの時代は全く様相が変わるんですよ。
いかに、安倍晋三という人が考えなしで、橋下徹という人が先見の明がないかがわかるでしょう。
リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」 (集英社新書)
最高時速五〇〇キロ超で、東京・大阪を一時間で結ぶ“夢の超特急”リニア新幹線。しかし、その実像は、ほとんど知られていない。全区間の七割が地下走行で、車窓は真っ暗。遠隔操作で運転手不在。乗り換えは不便で、安全対策も環境対策も穴だらけ。中間駅建設は地元負担。新幹線の三~五倍の電力を消費。そして、二〇四五年(予定)の全線開通時には人口が二四%減少するにもかかわらず「移動需要は今より一五%増える」という不可解な試算…。本当にこんな巨大インフラは必要なのか、徹底的に検証する!
10 なぜ、リニアを作っても乗降客数は増えないのか 理由2
次に挙げるべきは、IT技術の発達により、国民がビジネスで移動する必要性が極端に減ることです。
もちろん、テレビやIT技術の発達によって、観光地に行かなくても臨場感が味わえるような装置がどんどん出てくるでしょうから、観光客数にさえ、IT技術の進歩は影響するでしょう。
しかし、はるかに減るのはビジネス客です。
今でも、日本国内はおろか世界中に散らばる関係者が、現地に居ながらにしてWeb会議をしています。
そんな技術を使って自宅で仕事をするSOHOも増えています。
いまや、スカイプを使って、事務所に来て下さらなくてもお客様の法律相談に乗る弁護士が多数いるんですよ。
ご存知のように、ネット、Web、ITの技術革新はまさに日進月歩です。
これから何十年も先にですよ、皆んなで集まり顔寄せ合って話さなきゃいけないような用事が、どれだけあるというのでしょうか。
人口減も相まって、ビジネス客は激減の一途をたどりますよ。
まったく、安倍首相はFacebookでネトウヨにいいね!されて鼻を膨らませるだけ、橋下さんはツイッターで鬱憤ばらししてメールで市職員に仕事させるだけしか、ITと関わっていないんじゃないですか?
近未来、リニアが大阪まで来ても、大阪都が出来ても、みんな東京から出てこないんですから二極化なんて実現するわけがありません。
彼らのような、「IT革命」をイット革命と読んだ(笑)森喜朗元首相並みの感覚では、今の変化の早い時代に、なんとか構想なんて出す資格はありません。
11 政治家は言い訳でなく、事実に基づいて政策を語れ
橋下さんは先にご紹介したツイートにもあるように、批判だけして行動しない、と橋下維新のやることに文句をつける学者や評論家やマスコミを叩くんですが、彼がそう言う時は批判に反論出来なくて困った時であってね。
自分の資料を読んでください、全部書いてあるとか言い出すんですよ。それを説明するのが政治家の仕事なのに。
でも、あからさまに間違ってて失敗するに決まっていたら、批判して止めさせるのが、一番建設的なんですよ。
というわけで、借金はかさみ、利用者はどんどん減るリニアに未来なんかありません。
今ある新幹線をメンテナンスして大事に使っていくのが、ちょうどこれからの時代の身の丈に合っているんです。
建設費で膨らんだ膨大な借金を抱えて、新幹線とリニアが並行して走っているのを茫然と眺める。
子や孫をそんな目にあわせてはならないのです。
今の目先の利権や実現不可能な壮大な構想のために、将来世代にツケを残してはなりません。
リニア新幹線問題、ここで触れなかった環境問題、電力需要問題、電磁波問題など、勉強すればするほど、ヤバイです。
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「リニア大阪延伸」国費で調査 来年度予算初めて計上へ 経済効果など検討
産経新聞 1月4日 7時55分配信
政府は3日、JR東海が平成39年の東京(品川)-名古屋間の開業を目指して昨年着工したリニア中央新幹線について、大阪まで延伸開業した場合の経済効果などを調べる費用を来年度予算案に計上する方針を固めた。大阪延伸の関連費用を国が計上するのは初めて。政府・与党内にはリニアの前倒し開業を促すため、JR東海が自己負担する建設費を財政支援する案も浮上しており、大阪延伸関連の国費投入は波紋を呼びそうだ。
来年度予算案に盛り込むのは、リニアを含む高速交通ネットワーク形成の影響をつかむための調査費で、数千万円を計上する見込み。39年の開業を目指す東京-名古屋間と、その18年後に大阪まで延伸した場合の経済効果を調べるほか、リニア全線開業に伴う首都圏・中部圏・近畿圏の一体化が既存の新幹線網などを通じて全国に波及する効果も検討する。
これまでリニア関連の政府予算は、担当局である国土交通省鉄道局が東京-名古屋間の地下トンネルの防災対策費などを要求し、計上してきた。ただ、同区間は昨年12月に着工しており、今回は概算要求に関連費用を盛り込んでいない。
このため、政府は来年度予算案の編成過程で、国土の利用や開発を担う国交省の国土政策局が「国土形成計画の改定などに向けた調査・検討」費用として求めている約2億5千万円の中から、リニア関連費用を計上する方針だ。
国交省は、国や地域づくりの基本方針「国土形成計画」の見直し内容を27年度中にまとめるが、地方創生や国際競争力強化の観点から新しい国土像づくりにはリニア全線開業に伴う影響を取り入れたい考えだ。
政府は昨年6月に閣議決定した成長戦略に、リニアの早期整備を目指す方針を明記。首相官邸や関西経済界には前倒し開業を求める声も根強く、リニア担当とは別の部局の予算要求の中から関連費用に充てる異例の措置で対応する形。「前倒し開業に直結する意味はないが、政府・与党内の声も念頭にある」(政府高官)という。
【経済インサイド】リニア大阪延伸、官邸一転「名古屋と同時に」の肩入れ 財政出動に脅える財務省、沈黙のJR東海の“三つ巴”
2014.12.2 11:00 産経新聞
リニア新幹線をめぐり、官邸、財務省、JR東海が三つ巴の神経戦を繰り広げている 最高時速が500キロを超える夢の超特急、リニア中央新幹線の大阪延伸をめぐり、政府・自民党がJR東海との神経戦を繰り広げている。東京(品川)-名古屋間の開業予定は平成39年、大阪まで結ばれるのはその18年後の57年だ。自民党からは「そんなに遅いのか」との声が日増しに強まっている。安倍晋三首相も前倒し開業を促すため、莫大(ばくだい)な建設費を政府が用意する「ウルトラC」を模索しており、JR東海に揺さぶりをかけている。
東京五輪後の「夢」模索
「リニア建設は国策として考えても良いのではないか…」
6月に閣議決定した成長戦略の中に「リニア整備」を盛り込む際、安倍首相がポツリと漏らした言葉に、国土交通省幹部は耳を疑った。首相官邸サイドに、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後、日本経済の牽引(けんいん)役となる「夢」が必要との考えが生まれ、それにリニアの早期開業が結びつけられていたのだ。
その結果、練られた首相のプランは、この幹部が「異次元」と表すほど大胆なものだ。9兆円超に上るリニアの建設費は、JR東海が全額自己負担する計画になっている。しかし、首相は名古屋-大阪間の建設費3兆6000億円を政府が立て替えて工事を進めれば、前倒し開業が可能になるイメージを描いていたのだ。
JR東海は、建設費調達による急激な財務体質の悪化を懸念しており、東京-名古屋開業後には建設を「一時休憩」する計画。同社は民間の株式会社として、利益をきちんと上げて株主や利用者に還元していくことが求められている。
当然、東京-名古屋のリニアの利益などを大阪延伸のための建設費に充て、企業として健全経営を確保する「2段階方式」が必要とみているのだ。
だが、政府にとっては、この方式が大阪延伸を遅らせる原因に映る。政府が建設費を立て替え、JR東海側の財務負担を大幅に軽減する形をとれば、名古屋-大阪も早期に着工する「同時方式」が理論上は可能になる。
信用できない政治家
観光需要などリニアがもたらす経済効果は大きく、東京-名古屋間が39年に開業すれば、東京圏と中部圏の経済的結びつきは一気に強まる。半面、それから大阪延伸までの18年間は、関西圏に光が差さないことも懸念されている。
焦る関西の自治体や経済界は大阪までの早期開業を政府に働きかけており、大阪市の橋下徹市長も「官民共同で資金を引っ張り、JR東海が運営すれば成り立つ」と意気込む。
だが、JR東海側は「具体的な支援策が提示された段階で初めて(延伸時期の前倒しを)検討できる」(柘植康英社長)と慎重な姿勢を崩していない。企業として健全経営を確保していくためには、安易な計画変更には慎重にならざるを得ないのは当然といえる。
そもそも公的な援助に頼らず、全額を自己負担することを決めたのは、税金を投入すれば「政治が口を出す」(自民党中堅)ことが目に見えているからだ。いまや全国を結ぶ新幹線網も予算獲得に絡んでルートや停車駅などをめぐり、政治家が横やりを入れてきた苦い経験があり、「夢の超特急」では超えてはいけない一線だ。
消費税に続き抵抗する財務省
JR東海を翻意させるだけのメリットを政府・自民党が具体的に提示できるかどうか。その「回答」作りは、27年度予算編成に合わせて急速に進んでいる。
最近、安倍首相は自ら温めてきた構想の一端を官邸に呼んだ財務省幹部に披露した。
「国家のためには、無利子非課税国債で財源を調達して進めればいいんじゃないか」
「そんな国債を発行すれば、相続税収が減ることになります。絶対に駄目です!」
無利子非課税国債の発行はリーマン・ショックに伴う追加経済対策の財源として、21年の時も現在の安倍首相や菅義偉官房長官が活用を唱えたことがある。だが、この国債は年間約1兆5000億円の相続税収入の「先食い」ともいわれ、当然ながら財務省は反対だ。当時も「相続税を減免すれば金持ち優遇になる」と野党から猛反発を受け、断念した経緯がある。
それから5年を経て、再び無利子非課税国債に注目しているのは、国の借金が1000兆円を超える財政状況では、国策として進めるための財源が見つからないためだ。円安対策を柱とする26年度補正予算案の財源としても、読売新聞の白石興二郎グループ本社社長らが活用を提唱しており、自民党税制調査会幹部は「首相が大号令を出して、財務省に『やれ』といえば財源調達は実現するのではないか」と話す。
大阪延伸までの建設費は政府が調達して早期に工事を進め、JR東海側には無利子で貸し出して元本だけを返済してもらう-。こうしたプランが実現すれば、数百億~数千億円とされる利子の支払いがなくなるため、JR東海側にとってもメリットは大きい。
消費税率10%への再引き上げを延期し、財務省を泣かせた安倍首相。リニア整備推進の財源捻出策をめぐっても、激しい攻防が繰り広げられるのは必至だ。首相に近いJR東海の葛西敬之名誉会長が今後、政府との距離をいかに保っていくのか注目されており、夢の超特急の建設「スピード」から目が離せなくなっている。(尾崎良樹)
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!
自分が儲かりゃそれで良いんです。