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大阪地検特捜部に業務上横領の疑いで逮捕・起訴され、無罪となった不動産会社「プレサンスコーポレーション」元社長の山岸忍さん。
そのプレサンス事件の捜査に関わった田渕大輔検事を特別公務員暴行陵虐罪で刑事裁判にかけるよう求めた付審判請求で、大阪高裁(村越一浩裁判長)は2024年8月8日、請求を棄却した大阪地裁の決定を取り消して、田渕検事を同罪で審判に付す画期的な決定を出しました!
何が画期的って、現行の刑事訴訟法が施行された1949年から2022年に出された付審判決定はわずか22件。
そのうち9件だけ有罪になったのですが、なんとこれまで罪に問われたのは警察官や裁判官、刑務官らで、検察官の例はなかったんですねえ。
ちなみに、この判決を出した裁判長の村越君もエダノンと同じく司法研修所同期です。
村越、やったな!!
このプレサンス事件では、学校法人から土地売却に絡み、山岸さんが21億円が横領された事件の共犯とされたのですが、一審で無罪判決が出て、検察は控訴することもできずに一審で無罪が確定。
この事件で山岸さんの元部下を取り調べ、起訴の根拠となった
「山岸さんも共犯」
という供述をとった田渕検事を審判に付すよう、山岸さんは大阪地裁に求めました。
ちなみに付審判請求とは、公務員の職権乱用を同じ公務員の検察官が不起訴とした場合に、告訴・告発人が公判を開くよう裁判所に直接求める制度で、検察官が同じ検事など捜査官を一般市民の被疑者と同じように公平に扱わずに優遇する危険性があるための制度です。
この付審判の決定に不服申し立てはできず、田渕検事に関しては、裁判所に選ばれた弁護士が検察官役となって有罪を立証することになります。
さて、2023年3月の大阪地裁決定は、山岸さんの関与を否定する元部下を田渕検事が
「検察なめんな」
などと一方的に怒鳴り、机をたたいて責め立てたと指摘し、録画下でこうした取り調べが行われたのは
「由々しき事態」
で特別公務員暴行陵虐罪が成立しうると認めつつ、田渕検事の違法行為が継続的でないとして付審判にしなかったんです。
どんな犯罪でも1回やったら犯罪なの!
ちなみに、山岸さんの刑事裁判では、この元部下の取り調べ動画が証拠として採用され、山岸氏が共犯だとする証言は信用できないとされて、山岸さんは無罪になっています。
検事に対する付審判請求では、継続的に「陵虐」しないと検事を刑事裁判にしないだなんて、どれだけ裁判所と検察庁は癒着しているのかということです。
これに対して、大阪高裁の村越裁判長は決定で、田渕検事が山岸さんの元部下に
「お試しで逮捕なんてあり得ないんだよ」
「あなた詰んでるんだから。もう起訴ですよ」
「検察なめんなよ。命かけてるんだよ、俺たちは」
などと怒鳴った2019年12月8日の取り調べで元部長を約50分間にわたり責め立てたとし、
「人格攻撃で、検察官に迎合する虚偽供述を誘発しかねない」
と指摘し、翌9日の
「あなたはプレサンスの評判をおとしめた、世間の評判をおとしめた大罪人ですよ」
という田渕検事の発言も
「恐怖心をあおる脅迫的な内容」
として、2日間の取り調べは陵虐行為にあたり審判に付すべきだと結論づけました。
ちなみに、特別公務員暴行陵虐罪は刑法の「汚職」の章にある犯罪で(195条)、
「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、七年以下の懲役又は禁錮に処する。」
と規定されている重罪です。
田渕検事が密室の取り調べで机を叩いて被疑者を罵倒して怒鳴った行為が
「暴行又は陵辱若しくは加虐の行為」
とされ、刑事裁判にかけられることになったのには、同じような取り調べを平気でしている全国の検事たちが震え上がったでしょう!
山岸さんの代理人を務める中村和洋弁護士は
「非常に画期的な判断。捜査実務に与える影響は極めて大きい。刑事司法、検事の取り調べが変わるといっても過言ではない」
と話し、山岸さんは
「公正な判断をいただいて感謝している。その一言に尽きる」
とのコメントを出しました。
黙秘権を行使した江口弁護士に、取り調べ検事が罵倒の限りを尽くした事件でも国家賠償請求が認められましたし、中村弁護士が言うように、検察の取り調べ方法を見直す方向に流れが来ています!
【#暗黒司法】黙秘権を行使する被疑者に検察官が連日「ガキだよね」「短絡的、お子ちゃま的なんですよあなたの発想って」と罵倒したのは黙秘権の趣旨に反するとして国家賠償命令。検察庁は黙秘権を勉強しなおせ!
今回も取り調べ状況を撮影した動画が決定的な証拠になったわけで、まず、すべての事件で取り調べを撮影する「可視化」を徹底しないといけません。
しかし1000件に1つか2つしか取れない刑事事件での無罪判決を4つも取った、これも司法研修所同期の森川文人弁護士が言うように、捜査機関が動画に都合よく撮影・編集・細工をする可能性も十分あるのですから、本来、捜査機関の取り調べには弁護人の立会権を認めるべきです。
テレビでは「いいもん」ということになっている警察・検察が絶対的な権力を持っているだけにいかに腐りやすいか、市民社会はいくら警戒しても警戒しすぎるということはありません。
弁護士森川文人「捜査機関による録音・録画は、取り調べの『可視化』ではない。」
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大阪高裁決定の要旨は次の通り。
事案の概要
田渕検事は、大阪地検特捜部の検察官として、学校法人の土地売買に関する業務上横領被疑事件の捜査に従事していた。2019年12月8日、プレサンスの山岸忍・元社長の部下だった被疑者を取り調べた際、約50分間にわたり元部下を一方的に責め立て続けた。うち約15分間は大声で怒鳴り続けており、「お試しで逮捕なんてあり得ないんだよ」「あなた詰んでるんだから。もう起訴ですよ」「検察なめんなよ。命かけてるんだよ、俺たちは」などと言うものだった。
翌9日の元部下への取り調べでは、8日より穏やかな口調だったが、「あなたはプレサンスの評判をおとしめた、世間の評判をおとしめた大罪人ですよ」などと言った。
特別公務員暴行陵虐罪の該当性
田渕検事の言動は、捜査対象で身体拘束されている被疑者を畏怖(いふ)させる程度が相当に高く、自己の処分に不安を抱かせて検察官に迎合する虚偽供述を誘発する危険性が大きい。身体拘束下でこのような言葉を強い口調で言われれば、弁解を述べる気力も奪われ、危険性を一層高める。
8日の取り調べは、元部下を起訴する方針を固めたうえで、特捜部の見立てに沿った供述を、強引に、あるいは屈服させて引き出そうとしたと考えるのが自然だ。取り調べで威圧的、侮辱的、脅迫的な言動に出る必要性、相当性を見いだすことはできない。田渕検事の言動は陵虐行為に該当する。
9日の取り調べについては、この日の取り調べだけを見ると全体として口調は穏やかであり、通常の取り調べの中で許容される範囲内とみることもできなくはない。しかし、8日の取り調べによる心身への影響が強く残っている状態でされたことを重視すべきで、8日の言動と切り離して評価すべきではない。
特捜部の見立てに沿った供述をするよう強制しているという点では8日の取り調べから共通していて、9日の取り調べでの一連の発言にも陵虐行為該当性が認められる。
8、9日の一連の取り調べを併せて、特別公務員暴行陵虐罪に該当する嫌疑が認められる。
起訴しない措置の相当性
田渕検事に対する付審判請求の訴えを棄却した2023年3月の大阪地裁の決定は、田渕検事を不起訴処分とした検察官に広い裁量があることを前提に、事後的に検察官の不起訴処分の当否を判断したようにも見受けられる。しかし、付審判請求の制度趣旨や目的などに照らせば、付審判請求を受けた裁判所は、審判に付すか否かを独自の立場で決められると言うべきだ。
検察官は、容疑者を起訴する権限を独占するなど、刑事司法において強大な権限がある。その権限は法令に忠実にのっとり行使されなければならず、その責務は特に重い。
田渕検事は、8日の取り調べの際に威圧的、侮辱的な言動を一方的に続けており、相手に与える精神的苦痛の程度は軽視できない。翌9日にも、前日の取り調べの影響が残っている中、引き続いて侮辱的な発言に及んだ。両日にわたって、職務権限を背景に、検察官に迎合する虚偽供述を誘発しかねない言動に出ている。犯情が軽いとは到底言えず、このような言動が取調官の職権行使の範疇(はんちゅう)に収まらない不法なものであることは明らかだ。
田渕検事は9日以降の取り調べで、自己の言動の問題の大きさを深刻に受け止めていた様子はうかがえない。取り調べが録音録画されていることを十分理解している中でこのような取り調べが行われ、他の検察官が取り調べを問題視し、検察庁内部で適切な対応がとられた形跡はうかがえない。田渕検事個人はもとより、検察庁内部でも深刻な問題として受け止められていないこと自体が、この問題の根深さを物語っている。
今回の取り調べは虚偽供述を誘発しかねない危険性の高いもので、今後繰り返されないようにすべきだという一般予防の要請も高い。
(田渕検事の)不起訴処分という結果を容認するなら、結果的にはこの取り調べを許容することと大差がない。本件について付審判請求を認める意味は大きい。
陵虐行為該当性の疑いが認められるこの事案は審判に付するべきだ。
補論
これまでに付審判請求が認められた事例は、本件とは類型が異なるものがほとんどだ。その背景には、捜査官による取り調べで、厳しく被疑者に迫るのは当然だという考えが検察官に根強く残っており、そのことが、事件を立件、起訴する場面での意識の低さにつながっていたように思われる。
大阪地検特捜部の検事による証拠の改ざん事件を受け、11年に「検察の再生に向けて」との提言がまとめられ、その内容も踏まえて取り調べの録音録画が導入された。
今回の事案が、このような経緯で導入された録音録画下で起きたものであることを考えると、本件は個人の資質や能力にのみ起因すると捉えるべきではない。あらためて今、検察における捜査・取り調べの運用のあり方について、組織として真剣に検討されるべきである。
日弁連のHPから
2021年10月28日、大阪地方裁判所が、大手不動産会社であるプレサンスコーポレーション(以下「プレサンス社」という。)の元・代表取締役である山岸忍氏(以下「山岸氏」という。)に対し、業務上横領事件につき無罪判決を言い渡したえん罪事件。
事件の概要
Aは、学校法人M学院の経営に関心を示していた。2016年4月頃、Aは、プレサンス社の代表取締役である山岸氏から18億円を借り入れ、M学院の理事の買収(理事に金銭を支払い、理事会の議席の過半数を譲り受ける)に使い、理事長に就任した。
2017年7月、Aは、M学院の土地を売却して得た21億円で、山岸氏から借り入れた18億円を返済した。これは、A個人の債務をM学院の資産によって返済するものであり、業務上横領にあたる行為であった。
その際、Aは、プレサンス社の従業員Kや不動産管理会社代表取締役のY等、複数名と共謀した。
Aが山岸氏以外のものと共謀して業務上横領を行ったことには争いがない。
争点は、山岸氏がAに18億円を貸し付けた時点で、山岸氏に業務上横領の故意・共謀があったか、である。山岸氏は、A個人ではなくM学院に貸し付けたと認識していたと主張しており、業務上横領の故意も共謀もないと主張した。
身体拘束
2019年12月5日、まず、KとYが業務上横領容疑で大阪地方検察庁特別捜査部に逮捕された。
それに続く2019年12月16日、山岸氏も業務上横領容疑で大阪地方検察庁特別捜査部に逮捕された。以後、山岸氏は248日間にわたって身体拘束された。
なお、逮捕直後の2019年12月23日、プレサンス社から山岸氏の代表取締役辞任が発表された。
大阪地方検察庁特別捜査部の取調べ
検察官が立証の柱としたのは、プレサンス社の従業員Kおよび不動産管理会社の代表取締役Yの供述であった。
Yは、公判においては、「山岸氏にはA個人ではなく学院への貸付であると説明した」と証言した。
Yは、捜査段階では、「学校への貸付と説明した」という供述していた。その後、「個人への貸付であると説明した」と供述を変えたが、後に「個人への貸付との説明」という供述を撤回し、「学校への貸付と説明した」と述べた(ただし、その撤回は調書化されていない)。そして、公判でも「学校への貸付と説明した」との供述を維持したという経緯があった。
そこで、検察官は、「A個人への貸付であると説明した」という内容の供述調書を刑事訴訟法321条1項2号に基づき、証拠として採用するよう求めた。
しかし、これについては、判決の前段階で、その取調べ状況等を踏まえて、証拠として採用できないと判断された。すなわち、担当検察官は、Yに対する取調べにおいて、「山岸氏やプレサンス社の強い意向で本件に関与したのであればYの責任の重さが変わってくる。現時点ではAと同じくらい関与した。情状的にかなり悪いところにいる。山岸氏の意向があったというなら、情状は全然違うと思う。」などと述べていた。このような発言から、Yが山岸氏個人への貸付だと説明すれば処分が軽くなると考え、検察官に迎合した可能性を認定し、検察官の前で行った供述が特に信用できる情況で行ったとはいえないと判断したのである。
他方で、Kは、公判でも、「A個人に貸すことを山岸氏に説明した。学校の借り入れにするという説明はしていない。」と証言した。
Kの供述には、その内容が客観的証拠と整合しないという問題があった。すなわち、山岸氏への説明資料として、18億円はM学院を運営する「学校法人に」貸し付けると記載されている「学校法人M学院M&Aスキーム」というものが存在していた。
また、捜査段階からの供述経過を見ると、大きな変遷があった。そこで、検察官のKに対する取調べの録音録画映像の一部が、証拠として取り調べられた。映像には、Kが、検察官に対し、「山岸氏にはA個人への貸付であると言っていない」と供述したことに対し、担当検察官は「Aに貸す金であることを隠し、あたかも学校に出すかのようにしているということだから確信的な詐欺である、今回の事件で果たした役割は、共犯になるのかというようなかわいいものではない、プレサンス社の評判を貶めた大罪人である。今回の風評被害を受けて会社が被った損害を賠償できるのか、10億、20億では済まない、それを背負う覚悟で話をしているのか」などの発言をしていることが記録されていた。
無罪判決
大阪地方裁判所(坂口裕俊裁判長)は、「Kらの説明時の認識に基づき、基本的にはM学院への貸付である、あるいは最終的にM学院に債務を負担させる資金である、などと説明されていたことがうかがわれる」「当時、M学院の債務になると認識していても何ら不合理ではなく、逆に、M学院の債務にならない可能性があると認識していたというには合理的な疑いが残る」として山岸氏に対して無罪を言い渡した。
また、判決は、担当検察官のKに対する発言につき、「必要以上に強く責任を感じさせ、その責任を免れようとして真実とは異なる供述に及ぶことに強い動機を生じさせかねない。」と非難した。
大阪地検特捜部が捜査した横領事件で、無罪が確定した不動産会社の元社長が、事件を担当した検事に元部下が机をたたいて罵倒されるなど、違法な取り調べを受けたとして、刑事裁判を開くよう請求していたことについて、大阪高等裁判所は8日、「一連の言動は脅迫の程度が著しい」などとして、裁判を開くことを決めました。
最高裁判所によりますと、特捜部の取り調べをめぐって検事が刑事責任を問われるのは初めてです。
5年前、学校法人の土地取引をめぐる横領事件で、大阪地検特捜部に逮捕・起訴され裁判で無罪が確定した大阪の不動産会社の元社長、山岸忍さん(61)は、当時、事件の捜査を担当した特捜部の田渕大輔検事(52)が山岸さんの元部下を罵倒するなど、違法な取り調べをしたとして、特別公務員暴行陵虐の疑いで刑事裁判を開くよう求める「付審判請求」を行いました。
大阪地方裁判所は去年、元部下への取り調べは陵虐行為にあたるとしましたが、取り調べの一部にとどまるとして刑事裁判を開くことは認めず、山岸さんは大阪高等裁判所に抗告していました。
大阪高裁の村越一浩裁判長は「机をたたき、弁解を遮りながら一方的に責め立て、大声を上げてどなり続けた。一連の言動は脅迫としても態様や程度が著しく、陵虐行為に該当する。翌日の取り調べも、口調は穏やかであったが、恐怖心をあおる脅迫的な内容だ」などとして、大阪地裁の決定を取り消し、検事を被告として裁判を開くことを決めました。
さらに、14年前の大阪地検特捜部による証拠改ざん事件をきっかけに本格的に導入された録音・録画が行われる中で取り調べがなされたことに触れ、「検察庁でこの取り調べが問題視され適切な対応が取られた形跡はうかがえず、問題の根深さを物語っている。捜査や取り調べのあり方を組織として真剣に検討すべきだ」と指摘しました。
最高裁判所によりますと、付審判請求が認められ、検事が刑事責任を問われるのは初めてです。
山岸忍さん「判断が検察改革の第一歩になることを強く望む」
大阪高等裁判所の決定を受けて山岸忍さんは弁護士を通じて、「公正なご判断をいただけたと考えています。この判断が検察改革の第一歩になることを強く望んでいます」とするコメントを出しました。
また、山岸さんの代理人の中村和洋弁護士は、「今回の決定は画期的な判断であり、刑事司法の歴史が変わるといっても過言ではない。田渕検事だけではなく、検察庁全体として大きく反省し組織として改めるべきだ」と話していました。
大阪地検 田中次席検事「適正な取り調べ実施に努める」
大阪地方検察庁の田中知子次席検事は、「個別の事件における裁判所の判断についてコメントは差し控えるが、検察としては、今後も適正な取り調べの実施に努めてまいりたい」とコメントしています。
これまでの経緯
大阪の不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長、山岸忍さんは5年前の2019年、学校法人の土地取引をめぐる横領事件で、大阪地検特捜部に逮捕・起訴されましたが、裁判で無罪が確定しました。
山岸さんは捜査の中で、元部下が検事に机をたたいて罵倒されるなど違法な取り調べを受けたとして、2022年に特別公務員暴行陵虐の疑いで刑事告発しましたが、大阪地検が不起訴にしたため、これを不服として刑事裁判を開くよう求める「付審判請求」を行いました。
大阪地方裁判所は2023年3月、この検事の取り調べについて、「机をたたき、およそ50分の長時間、ほぼ一方的に責めたて続け、このうち15分は大声でどなっている。相手に精神的苦痛を与える行為で、みずからの意に沿う供述を無理強いしようとしている。取り調べの範囲を超えて悪質だ」と指摘し、陵虐行為にあたると認定しました。
しかし、「こうした言動は、取り調べのうちの一部だ」などとして請求は退け、山岸さんは、これを不服として大阪高等裁判所に抗告していました。
一方で、山岸さんは取り調べの違法性を訴え、民事裁判も起こしています。
この中で、元部下への取り調べを録音・録画した映像を開示するよう求め、2024年6月の裁判で、およそ5分間が再生されました。
映像では、元部下の男性が逮捕されたあとに、一転して山岸さんの事件への関与を否定するようになったことについて、検事が「山岸さんの会社の評判をおとしめた大罪人ですよ」とか「会社の損害を賠償できますか。10億、20億じゃすまないですよね」などと発言していました。
この発言について、取り調べをした検事は証人尋問で「誠実に取り調べに向き合っていない態度だと感じた。自分の供述の重みを理解してもらうためだった」と述べました。
民事裁判では、これまでに、この検事を含む4人の検事の証人尋問が行われています。
専門家「取り調べの録音・録画制度の定着が決定の背景に」
元刑事裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は、取り調べを録音、録画する制度が定着し、8日の決定につながったと指摘しています。
検察の独自捜査事件などを対象にした、取り調べの録音・録画は、2019年から義務化されています。
水野教授は「これまでは分からなかった具体的な取り調べの様子について、録音・録画によって分かるようになったのが、今回の決定の背景にある」と指摘しています。
今後については、「検察は裁判所の決定に対して不服の申し立てができないので、今後、刑事裁判が行われることになる。通常の刑事裁判とほぼ同じ手続きが行われるが、検察官の役を指定の弁護士が務めることが異なる」としています。
そして、「検察には、真実のためには多少厳しく迫ってもよいという考えがあったと思うが、本当に適切なのか問われる裁判になる」と話していました。
「付審判請求」とは
「付審判請求」は、特別公務員暴行陵虐や職権乱用といった、検事や警察官などの公務員による犯罪の疑いを告発したものの、不起訴になった場合に、これを不服として裁判所に刑事裁判を開くよう求めることができる制度です。
裁判所が請求を認めると、公務員は拒否することができずに刑事裁判の手続きが始まり、裁判所が指定した弁護士が検察官役となって裁判に出廷します。
最高裁判所によりますと、この制度で検事が刑事責任を問われるのは初めてです。
「付審判請求」これまで22件の刑事裁判
最高裁判所によりますと、刑事訴訟法が施行された1949年から2022年までに「付審判請求」で22件の刑事裁判が開かれ、このうち、
▽9件で有罪
▽13件で無罪や、罪に問えないとする免訴が確定しています。
これまで問われたのは警察官や裁判官などで、検事が被告になるのは初めてです。
大阪地検特捜部が手がけた業務上横領事件で違法な取り調べをしたとして、大阪高裁は8日、担当だった田渕大輔検事(52)を特別公務員暴行陵虐罪に問う刑事裁判を開く決定をした。不動産開発会社「プレサンスコーポレーション」元社長(無罪確定)が刑事裁判にかけるよう付審判請求していた。村越一浩裁判長は「威圧的、侮辱的な言動を続け、不法だ」と指摘した。
検察官が付審判決定を受け、裁判で被告になるのは初めて。今後、裁判所が検察官役の弁護士を指定し、大阪地裁で公判が開かれる。
田渕検事は2019年12月8日、山岸忍・元社長(61)の部下だった元部長の取り調べで机をたたいて「検察なめんなよ」と述べ、翌9日にも「あなたはプレサンスの評判をおとしめた大罪人」などと発言。元部長は山岸氏の関与を認めた。特捜部は山岸氏を逮捕したが、21年10月の地裁判決は元部長供述の信用性を否定し、山岸氏を無罪とした。
山岸氏は田渕検事を刑事告発し、地検に不起訴(嫌疑不十分)とされて地裁に付審判を請求した。地裁は昨年3月、取り調べは陵虐行為にあたるとした上で「継続的ではなかった」として請求を棄却。山岸氏が高裁に抗告していた。
村越裁判長は決定で、田渕検事が8日の取り調べで元部長を約50分間にわたり責め立てたとし、「人格攻撃で、検察官に迎合する虚偽供述を誘発しかねない」と指摘。9日の発言も「恐怖心をあおる脅迫的な内容」とし、2日間の取り調べは陵虐行為にあたり審判に付すべきだと結論づけた。その上で「取り調べが録音・録画されていたにもかかわらず、検察が問題視して適切に対応した形跡がみられないことが問題の根深さを物語っている」と述べた。
地検の田中知子次席検事は「個別事件の裁判所の判断にコメントは控える。今後とも適正な取り調べの実施に努めたい」とした。
大阪高裁決定は、不適切な取り調べを検事個人の問題に 矮小 化せず、検察組織の体質が背景にあると踏み込んだ。警鐘を鳴らし、猛省を促す異例の内容だ。
検察の独自捜査事件では、逮捕された容疑者の取り調べで録音・録画が義務づけられる。今回の言動も記録されたが、検察内で問題視はされなかった。容疑者を追及する過程で厳しく迫ることはやむを得ないとの声は今も根強い。
これに対し、今回の決定は威圧的、侮辱的な言動で、「不法だ」と断じた。容疑者の逮捕から起訴まで一貫して担う特捜部では、批判的にチェックする役割が軽視される危うさも指摘した。
検事の取り調べを巡っては、他でも問題が相次いで発覚している。<密室における追及的な取り調べに過度に依存した捜査は、もはや時代の流れと 乖離 したもの>。これは2010年に発覚した大阪地検特捜部による証拠品改ざん事件の後に取りまとめられた検察改革の提言だ。あのときの反省が生かされているのか。検察は、高裁の警鐘を看過してはならない。(林信登)
◆ 付審判請求 =不起訴となった公務員の職権乱用事件の審理を求める刑事訴訟法上の手続き。裁判所が認めれば通常の刑事裁判と同様に審理される。公務員側は付審判決定に対する不服申し立てはできない。最高裁によると、2022年までに出された付審判決定は22件で、9件で有罪が確定し、13件は無罪や裁判を打ち切る「免訴」となった。
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反社を司法に関わらせるのは社会正義に反するので、もう現在の検察官の法曹資格を全員取り上げて、検察組織全体を一度解体すべきでしょう。
「法曹一元化」に関しては日本は見習うべきことばかりだと思います。
で、山岸氏が著書「負けへんで」の中で田渕検事と並んで悪徳ぶりを暴露したのが、俺も噂には聞いてた「美人検事」山口智子氏ですね
今回付審判請求が通った田渕検事と違い、この人は適格審査で済んだんですかね
芸能人や財界人との付き合いやテレビ出演も多いらしいこの山口氏は、山岸氏が国を訴えた6月11日の公判にも現れ頭のいい悪女ぶりを発揮し、言質を取られぬ巧妙な証言に終始したとか、、、
ここまで出来すぎてると、山岸氏役を西岡徳馬あたり、山口検事役を他ならぬ山口智子でドラマ化せざるを得んのじゃないでしょうか(どうせボツになるでしょ)