安倍首相は2015年7月17日、2020年の東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の建設計画について
「白紙に戻し、ゼロベースで計画を見直す」
と表明せざるを得なくなりました。
安倍首相はこの中で、19年のラグビー・ワールドカップ(W杯)は、工期が間に合わないため会場として使用しない方針も示し、
「コストを抑え、現実的にベストな計画を作る」
とし、下村博文文部科学相と遠藤利明五輪担当相に新たな計画作りに取りかかるよう指示したと述べました。
皆さん、やっぱりな、と呆れませんでしたか?
私はこの第一報を読んでこうツイートしました。
新国立「白紙に戻す」…首相、デザイン変更明言 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) http://t.co/RPQ3peFOtg @Yomiuri_Onlineさんから 戦争法案強行採決を補う、みんなが予測していた通りの展開で、笑うしかない。
— 宮武嶺 (@raymiyatake) 2015, 7月 17
この前々日の15日に、安倍首相は戦争法案を強行採決して、世論が猛反発し始めたところだったので、新国立競技場問題まで抱えたら、もう持たないと判断したのでしょう。
ところで、私は後付けで、
「俺には分かってたもんねえ」
と言っているわけではありませんよ(笑)。
もう、安倍ウォッチングも長いですから、7月11日はこんなツイートもしています。
安倍晋三首相 新国立競技場建設に「見直す思い持ったことも」 #ldnews http://t.co/lYNRk023cD いよいよヤバいと思ったら、見直しすると宣言するね。これぞ橋下直伝「加害者なのに正義の味方兼被害者になる」の術。
— 宮武嶺 (@raymiyatake) 2015, 7月 11
まさに、民衆が首相に「いよいよヤバい」と思わせたわけです。
我々が安倍首相を戦争法案でこれだけ追いつめたから、新国立競技場問題では押し戻すことができたのですから、市民の力に拍手です!
これは、安倍政権打倒物語の中でも、大戦果として特筆すべきですね。
新国立競技場建設阻止をあきらめるな。
しかし、今度は安倍首相がこの問題で点数を稼ぐのを警戒しないといけません。
加害者なのに、急に被害者になって、さらに正義の味方になるというやり方は、維新の橋下市長にさんざんやられて煮え湯を飲まされてきました。
たとえば、大阪府知事・大阪市長として、体罰容認発言を繰り返し、その中で2011年に大阪市立桜宮高校でバスケットボール部の顧問の教師から体罰を受けていた男子生徒が自殺するという大事件になった桜宮高校事件では、橋下市長は自分の体罰容認発言を反省するどころか、
「きちんとした対応が取られなかった。教育現場の最悪の大失態だ」「教育委員会に任せておけない。僕が責任をもって引っ張っていく」「僕が陣頭指揮を執らないと駄目」
と教育委員会を悪者に仕立て上げ、それどころか、体罰を容認する風土があったとか、まだ反省が足りないなどと、桜宮高校の保護者や生徒達まで批判し始めて、とうとう、桜宮高校の入試を中止すると言い出したのです。
反省が足りないのは自分なのに!
体罰を容認してきた橋下市長のあるべき反省と謝罪のしかた 追伸あり
桜宮高校の入試中止、校長・教師の全取り換えをいう橋下市長の市長職「中止」=首のすげ替えが一番の方法だ
橋下市長と盟友関係にある安倍首相も、自分が加害者なのに正義の味方になってしまうあのやり方は、うらやましいな、やってみたいな、と思っていたのでしょう。
そして、新国立競技場の建設計画問題には格好の悪者がいました。
森喜朗元首相・東京五輪組織委員会会長と安藤忠雄氏。
安倍総理「新国立競技場は民主党時代に決めたこと」 安藤忠雄氏「何でこんなに増えてるのか分からへん」
という記事の冒頭に、
『最近のオリンピックのメイン会場5つを合わせた建築費用2480億円よりも高い初期費用2520億円が掛かる新国立競技場。
これに固執する、安倍首相の「後見人」、森元首相(東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長)の責任も忘れてはならない。』
と書いたのですが、安倍首相がその森元首相を官邸に呼んで、1時間半話して見せ、その後、記者団に「白紙撤回」を報告するやり口は、あざとすぎますが、敵ながらあっぱれでした。
自民党御用達と言われる電通の演出じゃないの?
しかも、その直後に森氏が
「国がたった2500億円も出せなかったのかね」
という、さらなるトンデモ発言をしてくれて(これは演出じゃないと思う 笑)、安倍首相としてはホクホクのはずです。
森元首相は、いじりがいがあるというか、突っ込みどころ満載なので、やりたくてしょうがないのですがw、そういうことをしてると、相対的に安倍首相が浮かび上がってしまうという関係にありますから、要注意なんですよね。
しかし、突っ込みたい(笑)。
さて、新国立競技場問題に絞ると、次の2点を気を付けないといけません。
1 白紙に戻す、ゼロベースと言うが、本当にそれを実行するのか、検証する。
2 そもそも、こんなことになった意思決定の過程での安倍政権の責任を丁寧に追求し続ける。
1については、一回2520億円という数字を見てしまうと、当初の1300億円に戻っただけで、国民は「半額になった、ほどほどだ」という気分になりかねません。
そもそも、1300億円なんて高すぎるわけで、せめてそのさらに半分の世界の「相場」にならないと話になりません。
この高く吹っかけて、あとでディスカウントして見せて、あたかも相手に得したと思わせるやり口を、橋下市長は「仮装の利益」「架空の利益」と呼んでいるんですが、安倍首相はここでも師匠の橋下先生を見習ってきそうですから、徹底的に監視しないといけません。
そして、もちろん、安倍首相の政治責任を追及しないといけない。
だって、こんなに簡単にひっくり返せるなら、どうして2520億円にゴーサインを出したかということですよ。
安倍首相は7月10日の国会答弁では
「その後、コストがかさむことがわかってきた。確かに費用がかさみ、多くの国民もそう思っているのではないかと思う。
私も、『どうなんだ』と事務方に問い合わせた。
しかし、この案をやめて新たに国際コンペを行ってデザインを決めることをやっていては、2019年のラクビー・ワールドカップに間に合わないし、2020年の東京オリンピックにも間に合わない可能性が高いという報告を受けた」
と言っています。
それから、わずか1週間で状況が変わるわけがありません。同じ状況で、「白紙に戻す」決定ができるわけです。そして、その決定は安倍政権ができてから3年の間にいくらでもできたのにしなかったのです。
安倍首相を、今回の「白紙撤回」パフォーマンスで逃げ切らせないこと。
そして、新国立競技場が白紙撤回できるなら、戦争法案こそ白紙に戻せと言い続けましょう。
橋下市長の悪名高い交渉術に「架空の利益」がある。要は法外に高くふっかけとけば、相場の倍で決着しても相手は得した気分になるし、こっちは本当に得をするというやり口。2520億円とふっかけられていたからといって、元の1300億円に戻ったら得したと思っちゃダメ!せめてその半額にしないと!
— 宮武嶺 (@raymiyatake) 2015, 7月 18
橋下市長には悪い人のいろいろな手口を教わり、こちらも成長させていただきました。
いつも気を付けて、常に相手よりこちらがさらに賢くないといけないですね。
新国立競技場が白紙撤回できるなら、辺野古も原発再稼働も白紙撤回!
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新国立競技場、何が問題か: オリンピックの17日間と神宮の杜の100年 | |
槇 文彦 (著, 編集), 大野秀敏 (著, 編集) | |
平凡社 |
東京屈指を誇る外苑の、歴史的景観、市民の憩いの場は守られるのか。建築界・市民社会に大きな問題を投げかけた、槇文彦のエッセイ、それを論じたシンポジウムの全貌、論考を掲載。
国立競技場の100年: 明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ | |
後藤健生 著 | |
ミネルヴァ書房 |
国立競技場はどのように生まれ変わり、その後、どのような歴史を辿っていくのか…。サッカージャーナリストの第一人者が問いかける力作、ついに刊行。
2015.7.17 15:29
【新国立競技場】
安倍首相、見直し表明「白紙に戻す」
安倍晋三首相は17日午後、2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場の建設計画見直しを正式に表明した。東京五輪組織委員会会長を務める森喜朗元首相と官邸で会談後、記者団に「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで計画を見直す。そう決断した」と語った。首相は遠藤利明五輪相と下村博文文部科学相に新たな計画づくりに着手するよう指示した。これを受け下村氏は「コンペをやり直す。半年以内にデザインを決める」と述べた。
新国立競技場の現行計画は「キールアーチ」と呼ばれる2本の巨大な鋼鉄製アーチが屋根を支える特殊な構造。これが総工費を押し上げ、当初計画の2倍近い2520億円に膨らんだことから、批判が強まっていた。首相は計画について「国民、アスリートから大きな批判があった。このままではみんなで祝福できる大会にすることは困難と判断した」と説明。「1カ月ほど前から見直せないか検討してきた」と述べた。
また、首相は「東京五輪までに間違いなく完成させることができる。残念ながら19年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会には間に合わせることができない」と語った。
森氏は首相との会談に先立ちBS朝日番組収録で巨大なアーチ構造のデザインについて「見直した方がいい。もともとあのスタイルは嫌だった」と指摘した。菅義偉官房長官も17日の記者会見で「デザインそのものが大きな工事費につながっている」と述べ、工費縮減にはデザイン変更が必要だとの認識を示していた。
森元総理「国がたった2500億円出せなかったのかね」(07/17 18:25)
新国立競技場の建設計画見直しを受け、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長・森元総理大臣がコメントしました。
森喜朗元総理大臣:「ああいう、でかいものやったことないんだよ。スーパーゼネコンと話し合うような行為をしたことないわけですよ。JSCだけじゃないですよ、文科省もそうですよ。国がたった2500億円も出せなかったのかねっていう、そういう不満はある。何を基準に『高い』と言うんだね。皆、『高い、高い』と言うけれど」
森氏 見直し容認も恨み節「たった2500億円出せなかったのかね」
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新国立競技場の総工費高騰の“キーマン”だった東京五輪組織委員会会長の森喜朗元首相は、競技場の現行案を「あのスタイルは嫌い」などと語り、態度を一変させた。
これまで、新国立競技場について批判することがなかった森元首相が態度を一変させた。巨額の総工費の原因となった競技場の屋根を支える「キールアーチ」と呼ばれる2本の巨大なアーチ構造について、「生ガキをドロッと垂らしたようなデザイン」と批判。建設計画の見直しを容認した。
17日昼のBS番組収録では、デザインについて「見直したほうがいい。もともと、あのスタジアムは嫌だった。生ガキみたいだ。合わないじゃない、東京に」と指摘。ラグビーW杯は森元首相の尽力で日本開催が決まった経緯があり「ラグビーをターゲットにされるのは非常に不愉快だ。(建て替えが)間に合わないなら、他の競技場ですればいい」と述べた。
ラグビーへの思い入れが強く、W杯を招致した実力者。以前は、巨額の建設費に異論を唱えた舛添要一東京都知事に対し「オリンピックをやりたいと言ったのは東京都。全部場所を用意するのは当たり前」などと話していた。16日夜に都内の日本料理店で安倍首相と会食。17日にも官邸で会談し、計画の見直しを了承した。
見直し決定後の同日午後には、都内の組織委オフィスで「施設に掛けるお金は都が3000億円。組織委が五輪に掛けるお金はその比ではない。国がたった2500億円も出せなかったのかね、という不満はある」と恨み節も。コスト削減を促す国際オリンピック委員会(IOC)の五輪改革の趣旨に沿う判断と認めつつ「日本スポーツの聖地としていろいろと生み出していけると夢を描いていただけに大変残念」と述べた。
下村博文文部科学相に対して「これまで責任があるっていったって何もやってやしない。今度は少し本気になってやらなきゃ」と注文を付けるのも忘れなかった。
「新国立競技場は白紙、ゼロベースで見直す」安倍首相が政治決断(発言全文)
2520億円の建設費をめぐって批判が集中していた、新国立競技場の建設計画について、安倍晋三首相は7月17日、白紙に戻しゼロベースで見直すと明らかにした。2019年のラグビー・ワールドカップまでの完成は断念した。以下は安倍首相のコメント。
***
2020年のオリンピック・パラリンピックの会場となる新国立競技場の現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで計画を見直す。そう決断いたしました。オリンピックは国民皆さんの祭典であります。主役は国民、お一人お一人、そしてアスリートの皆さんです。ですから、皆さんに祝福される大会でなければなりません。国民の皆さん、またアスリートたちの声に耳を傾け、1カ月ほど前から、計画を見直すことができないか、検討を進めてまいりました。手続きの問題、国際社会との関係、オリンピック・パラリンピック開催までに工事を終えることができるかどうか、ラグビーワールドカップの開催までには間に合わなくなる可能性が高い、という課題もありました。
そして本日、オリンピック・パラリンピック開催までに間違いなく、完成することができる、そう確信することができたため、決断をいたしました。オリンピック組織員会の会長である森会長の了解もいただきました。ラグビー・ワールドカップには残念ながら間にあわせることができませんし、会場として使うことはできませんが、今後とも、ラグビー・ワールドカップに国としてしっかり支援していく、その考えに変わりはありません。
オリンピックにおいてまさに世界の人々に感動を与える場と新しい競技場をしなければならない。その大前提のもとに、できる限りコストを抑制し現実的にベストな計画を作っていく考えであります。そして大至急、新しい計画を作らなければなりません。先ほど、下村文科相と遠藤五輪相に直ちに新しい計画作りに取り掛かるように指示をしたところであります。
2020年のオリンピック・パラリンピック、国民みんなで祝福できる、そして世界の人々から賞賛される大会にしていきたいと思います。
――白紙に戻す原因は?
やはりコストが当初の予定より大幅に膨らみ、国民の皆様、アスリートたちからも大きな批判がありました。このままではみんなで祝福できる大会にすることは困難である。そう判断したわけであります。
ただ工期の問題がありましたが、今日、オリンピック・パラリンピックまでに完成できる、そう確信しましたので、決断いたしました。
○去年の解散総選挙だって橋下の「出直し市長選」を思い起こさせますし。
○品の悪さにも最近は磨きがかかってますよね。デタラメは前からみたいですけど。
○で、今度の「白紙撤回」だって1300億から1800億に増えてますよね。やっぱり「仮想の利益」ってやつですよ。
他で破廉恥なことしようとしてるにちげーねぇ
元総理、文部科学大臣、都知事、建築家、JOC…日本を代表する偉い人が集まって全員「どうなってんですか?」と他人事みたいに済ませている中、結局は首相の意向一つで決まるってことは、最高責任者が安倍総理ってことをようやく認めたってことだ。そもそも「見直しを決定する権限はあっても推進する権限がない」とか理論的にありえんもん。
「侵略する宇宙人から地球を守った英雄」みたいに今回の一件で安倍総理を評価するのって全然違ってるだろ。
ホレ、コネズミの時に「干からびたチーズ」ってお芝居があったじゃん?
"森喜郎が小泉に衆議院解散を回避するように説得に行った時、ビールのつまみとして出された‘干からびたチーズ
選挙で圧勝した後、森が自分であの会見は実は小泉と周到に仕組んだ芝居だったと白状した。
あの握りつぶしたビールの缶も、これ見よがしに晒した‘干からびたチーズ’も,その芝居の小道具に過ぎなかった
選挙後、森が何を思ったか
‘あれは芝居だった’
‘出来るだけ憤慨しているように振舞ってくれ、と小泉に頼まれた’と自白した"
今回もアレの2番煎じですよ。サメの頭とか、裏口入学とか、”me too”とかネタの宝庫だけど、この古狸の尻尾は18くらいに裂けていそうだわ。
悪例だが、最後の自民党らしい老練、狡猾な政治ゴロだね。