福島第1原発事故で、東電は2012年10月12日に行われた外部有識者などでつくる「原子力改革監視委員会」の初会合で、事前の津波対策について
「対処は可能だった」
とする見解を明らかにしました。
原子力改革監視委員会とは、東京電力が国費を投入して国有化してもらう前提として原子力部門の改革を進めるため、国内外の有識者を招き取締役会の諮問機関として設置したものです。原子力部門を中心に構成される「原子力改革特別タスク フォース」が実務を担い、最新の安全対策など改革の内容を検討することになっています。
委員長には海外から元米原子力規制委員会委員長のデール・クライン氏、委員はほかに英原子力公社名誉会長のバーバラ・ジャッジ氏、日本からは原子力エンジニア出身で経営コンサルタントの大前研一氏、国会事故調委員だった元名古屋高検検事長の桜井正史氏、東電会長の下河辺和彦氏がメンバーとなっています。
「原子力改革監視委員会」の初会合であいさつする米原子力規制委員会元委員長のデール・クライン氏(左)と英原子力公社名誉会長のバーバラ・ジャッジ氏(中央)、元名古屋高検検事長の桜井正史氏=12日午前、東京・内幸町の東電本店
そして、東電が2012年6月に公表した社内事故調査委員会の報告書では、事故の直接的な原因を「想定外の津波」とし、山崎雅男副社長(当時)が「できる限りのことをした。その時々では不作為とはいえない」と述べていたのですが、今回はこれまでの見解を一転させました。
物言えぬ入院中の吉田福島第1原発前所長に責任を押しつける東京電力の事故調査報告書
タスクフォースの姉川尚史事務局長は
「その認識は変わった」「同様な事故を防ぐには、東電の報告書では足りない。各事故調が指摘した点を全て盛り 込んだものにすべきだと考えた」と述べ、事実上の不作為=「過失」?を認めたことになります。
さらに、津波の想定が不十分だった点については、巨大津波の痕跡や記録がないことだけで津波は来ないと判断した点を問題視し、
「未成熟な確率論で発生頻度を過小評価した」
と説明しています。
まあ、そんなことは去年からわかっていたことで、東電がしらばっくれていたことがおかしいのですが。
東日本大震災 福島原発事故は天災じゃなくて人災2 東京電力・経産省も知っていた大津波
(素人の私がこの記事書いたのなんて事故翌月の2011年4月ですからね)
東京電力 15メートルの津波を2008年に試算 「想定外」ではない 福島原発事故は天災じゃなくて人災3
また、炉心損傷・メルトダウンなどの「過酷事故」(シビアアクシデント)対策が進まなかった点についても
「経営層に過酷事故は極めて起こりにくいという油断があった」
「過酷事故対策の必要性を認めることで、訴訟リスクが高まることを懸念した」
「過酷事故対策が国民の不安をかきたて、反対運動が勢いづく ことを心配した」
と、訴訟や反原発運動を意識したことが、対策の足かせになっていたことも認めました。なんという本末転倒でしょうか。そもそも、メルトダウンが起こったことさえ否認していた東電ですから、前進と言えば前進ですが、まあ酷い企業体質です。
福島原発1号機メルトダウン=炉心溶融 水素爆発→「死の灰」=放射性降下物飛散の恐怖再び
まとめると、この見解は事故に対する問題点として、
(1)津波に対する必要な対策は取れた
(2)外国の対策を取り入れていれば事故の影響を緩和できた
(3)事故対応を想定した訓練が行われていなかった
としています。
確かに、東電も一定の反省と前進をしたように思われます。
ただ、この規制委員会の海外メンバーも肩書からわかるように国際的な原子力ムラの村民です。たとえば、クライン委員長は同日、野田政権が「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指す政策を打ち出したことについて
「日本でも原発を建設し、安全に運転することは可能だ」
「政府がエネルギー政策を決めるのは当然のことだが、原子力ゼロという政策を採択した場合にどのような結末をもたらすのか、同時に理解し ないといけない。日本は特にエネルギー安全保障を考えないといけない」
などと指摘し、政府の原発ゼロ方針に批判しています。最初から、原発は安全だという結論ありきの人なのです。
では、なぜ今になって、津波と過酷事故についてだけは、東電の「責任」を認めるかのような報告書を出そうとしているのか。
これについて産経新聞の原子力取材班がこう報じています。
産経新聞 10月13日(土)7時55分配信
東京電力は12日、福島第1原発事故の原因に関するこれまでの見解を一転させた。今回、不作為を事実上認めることで、訴訟リスクを抱えることになるが、 経営再建に不可欠な柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を進めるには、これ以上自己弁護に終始しては地元自治体の理解が得られないとの思惑がある。
東電は実質国有化に合わせて今年5月に「総合特別事業計画」を策定。平成26年3月期の最終黒字転換を目指している。収支改善のためには来年4月以降に予定している柏崎刈羽原発の再稼働は絶対条件だ。
だが、地元・新潟県の泉田裕彦知事は、再稼働は福島第1原発事故の徹底検証が前提だとの態度を崩していない。今年6月にまとめた社内事故調報告書では事 故の主要因は「想定外の津波」としていた。事故調委員長に当時の副社長を抜擢(ばってき)したこともあり、「自己弁護に終始」との批判を受けた。
その後に発表された国会事故調査委員会や政府事故調査・検証委員会でも東電の事故前後の対応を問題視する指摘が相次いだ。身内への検証の甘さが原発立地自治体への不信感とつながっていた。
「原子力ムラの体質からの脱却を強力に進める」(下河辺和彦会長)「事故対策をしなければ(原発の)運転の資格はない」(広瀬直己社長)と東電幹部が強 調していたように、地元自治体が納得するには、説得力のある改革プランを打ち出さなければならない必要性に迫られていた。(原子力取材班)
産経新聞と並ぶ原発推進派の読売新聞も「東電、津波対策の不備を初めて認める」という12日付け記事の中で、
東電は、福島第一原子力発電所を襲った津波の大きさを「想定できなかった」としていた従来の主張を変更し、津波対策の不備を初めて認める見解を示した。
過去の教訓を踏まえて、抜本的な安全策を講じる方針を打ち出し、柏崎刈羽原発(新潟県)の早期再稼働につなげたい考えだ。
としていますから、この原子力改革委員会が、原子力を改革することや監視することが結局目的ではなく、東電の利益を出すために原発を再稼働することが目的なのは明らかでしょう。
そもそも、津波が本当に福島原発事故の唯一の原因だったかは疑問があります。津波が到達する前に、すでに全電源が喪失していたという証拠がいくつも挙げられています。国会事故調も認めたその事実をそこだけは東電は頑として認めないわけです。
福島原発事故 冷却機能停止→炉心溶融・メルトダウン 原因は津波ではなく地震 受電鉄塔倒壊と復水器停止
福島原発事故は明らかに人災とした国会事故調報告書のポイントは「津波でなく地震が原因の可能性あり」
なぜなら、福島原発事故の原因が地震であるということになれば、地震国日本はもとより全世界の原発の存立に破壊的な影響を及ぼしますが、津波のみが原因であるということにしてしまえば、原発推進への影響は最小限に抑えることができるのです。しかも、津波なら対処可能だというわけですし。それが国際的な核マフィアの最低防衛ラインなのでしょう。
だから、今回の東電の監視委員会の見解は、やはり、東電は東電でしかなかったなという感想です。「肉を切らせて骨を断つ」といいますか、福島原発事故の責任に肉薄させておきながら、別の原発の再稼働を狙って国民生活の骨を断つ。結局、アリバイ作りでしかありません。
だいたい、日本の場合、海に面していない原発なんてありませんし、当の柏崎刈羽原発も元々敷地内に断層があることが指摘されていたのに、東京電力は、断層ではない(地すべりだ)とか、活断層ではないとか言って原子炉設置許可を取りましたが、中越沖地震の際には、敷地内で多数の地割れ・陥没が生じ、3号機の変圧器から出火して、東京電力の自前の部隊では消火できずに長時間火災が続きました。
その中越沖地震では、柏崎刈羽原発に近い海底の活断層が震源断層とされていますが、その海底活断層が柏崎刈羽原発の直下まで延びているのではないかと指摘されています。
にもかかわらず、またこの原発の再稼働を狙うような企業を活かしたまま自浄作用に任せるなんて無理です。また、東電を国有化してしまいましたが、これから湯水のように血税と全国の消費者の電気代を投入する必要はありません。
やはり、債務超過の東電は原則通り会社整理し、発電・送電を分離する電力自由化の先駆けとするべきです。
ゾンビ企業東電の実質国有化で1兆円の血税を浪費 しかも原発事故被害賠償ではなくメガバンク救済が目的だ
さすが2012年度、ワタミを抑えてブラック企業ナンバーワンに輝いた東電。
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2012.10.13 Sat posted at 09:42 JST CNN
(CNN) 東京電力が原子力事業改革のために設置した「原子力改革特別タスクフォー ス」は12日、昨年、巨大地震と津波により発生した事故で大惨事となった福島第一原発について、震災前に原発の安全性リスクを把握していたが、対策を講じ ると原発が閉鎖されかねないとの懸念からリスクを過小評価していたことを認めた。
東電の報告書によると、同社は2002年に格納容器ベントなどの過酷事故対策を講じたが、それ以降は何の対策も講じていなかったという。その理由と して、新たに安全策を講じれば、地元住民や国民の間に原発の安全性に対する懸念が広がり、反原発運動を勢いづかせる恐れがあったことなどを挙げている。
東電は、過酷事故対策を講じるまで原発の閉鎖を求められる懸念があった、とした上で、海外の過酷事故対策を参考にすれば、安全設備の多様化も可能だった、と述べた。
東電はこの1年間、福島第一原発事故の根本原因の究明に積極的ではないとして、世間の厳しい監視の目にさらされてきた。政府の事故調査・検証委員会も7月に出した最終報告書の中で、東電や原子力規制機関の災害対策、事故対応は不十分だったと指摘した。
2012年 10月 13日 10:40 JST ウォールストリートジャーナル
【東京】東京電力は12日、昨年未曾有の危機を招いた福島第1原子力発電所の事故に関し、できる限りの予防措置は講じてきたとのこれまでの主張を一転して、財務的・社会的影響の懸念から、必要な安全措置を一部講じていなかったことを初めて認めた。
Associated Press
東電本店で会見するデール・クライン氏(左)、デール・クライン氏(左)、英原子力公社名誉会長のバーバラ・ジャッジ氏(中央)、元名古屋高検検事長の桜井正史氏(12日)
同社は12日、同社の原子力関連改革の取り組みについて監視・監督することを目的として設立された取締役会の独立諮問機関「原子力改革監視委員会」に 32ページの報告書を提出した。この報告書は、このような事故が二度と起こらないように東電がとるべき改革の進め方を提案するもので、どのような過ちが あったのか、その原因についても振り返っている。
そのなかで同社は「過酷事故対策が不足した背後要因」の1つとして「過酷事故対策を採ることが、立地地域や国民の不安を掻き立てて、反対運動 が勢いづくことを心配した」ことを挙げている。
そのほかにも、対策が不足した理由として過酷事故対策の必要性を認めることが「訴訟上のリスクになると懸念した」、また、「過酷事故対策を実施するまでの間、プラント停止しなければならなくなるとの潜在的な恐れがあった」などと述べている。
原子力改革監視委員会の委員で元米国原子力規制委員会(NRC)委員長、デール・クライン氏は12日、第1回委員会会合後に開かれた記者会見で「過ちが あったことは非常に明らか」と述べ、「当委員会の目標はこのようなことが二度と起こらないよう、東電が適切な慣行と手続きを採るよう徹底することだ」と 語った。
昨年の事故を受けて調査を進めてきた政府や民間セクターの諮問委員会からの度重なる批判にもかかわらず、東電はこれまで事故を防ぐために最善を尽くしてきたとの主張を繰り返してきた。今回の報告書はそこから180度の転換といえる。
昨年の事故では、巨大な地震と津波によって発電所への電力が絶たれ、3基の原子炉が制御不能となった。最終的にはメルトダウン(炉心溶融)が発生して近 隣地域は大量の放射能で覆われ、何十年にもわたって居住不可能となっている。東電は、今回の態度の変化は、福島事故を二度と繰り返さないようにとの願いに よるものとしている。
東電は先に実質国有化されており、東電生え抜きの元会長は退任し、原子力損害賠償支援機構のトップが会長職に就任した。
東電が過ちを認めたことで、事故関連の訴訟問題から同社がどこまで事故の損害賠償を負担するのかまで、幅広い影響が予想されるが、どのような影響になるかは不明だ。
東電の広報担当者は12日、同社は事故の責任を負うとは言っていないが、責任を否定するわけでもないと述べた。
同報告書はまた、東電は津波災害を防ぐためにもっと必要な対策を講じ、事故対策計画を強化できたはずで、さらに事故対応のために職員をもっと訓練していれば福島第1原発危機が制御不能になることは防げた可能性があるとしている。
記者: PHRED DVORAK
東電の原子力改革監視委が初会合 柏崎再稼働目指し、信頼回復図る
2012.10.12 11:12 sankeibiz
東京電力が原子力部門の改革を進めるため、国内外の有識者を招いて設置した「原子力改革監視委員会」の初会合が12日、本店(東京都千代田区)で開かれた。昨年の福島第1原発事故で地に落ちた信頼の回復を図り、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働につなげる狙いがある。
監視委は取締役会の諮問機関として設置。監視委の監督下で、東電の原子力部門を中心に構成される「原子力改革特別タスクフォース」が改革案を策定する。次回会合は12月を予定しており、年内には一定の方向性を打ち出す方針だ。
委員長に就任した米原子力規制委員会(NRC)元委員長のデール・クライン氏は、「東電は大々的な改革が必要だ。場合によっては聞きたくないことを申し上げるかもしれない」と述べ、積極的に関与する考えを示した。
このほか、委員には英原子力公社名誉会長のバーバラ・ジャッジ氏、原子力技術者出身で経営コンサルタントの大前研一氏、国会の事故調査委員会委員だった元名古屋高検検事長の桜井正史氏らが就任した。
津波「対処可能だった」 東電、事故の責任認める 原子力改革監視委初会合
東京電力福島第1原発事故で、東電は12日、事前の津波対策について「対処は可能だった」とする見解を明らかにした。外部有識者などでつくる「原 子力改革監視委員会」の初会合で東電が示した。シビアアクシデント(過酷事故)対策が進まなかった点についても「経営陣の油断があった」と自らの問題点に 言及。6月に公表した社内事故調査委員会の報告書では、事故の直接的な原因を「想定外の津波」としており、これまでの見解を一転させ、事実上の不作為を認 めた。
見解は同委員会の監視下で、実務を担う「原子力改革特別タスクフォース」がまとめたもので、事故に対する問題点として、(1)津波 に対する必要な対策は取れた(2)外国の対策を取り入れていれば事故の影響を緩和できた(3)事故対応を想定した訓練が行われていなかった-の3点を挙げ た。
津波の想定が不十分だった点については、巨大津波の痕跡や記録がないことだけで津波は来ないと判断した点を問題視し、「未成熟な確率 論で発生頻度を過小評価した」と説明。炉心損傷など過酷事故対策が不足していた背景については「経営層に過酷事故は極めて起こりにくいという油断があっ た」と認めた。過酷事故対策の必要性を認めることで、訴訟リスクが高まることを懸念した点も明らかにした。
さらに、「過酷事故対策が国民の不安をかきたて、反対運動が勢いづくことを心配した」と、反原発運動を必要以上に意識したことが、対策の足かせになっていたことにも言及した。
東電は6月に社内事故調の報告書を公表した際、山崎雅男副社長(当時)が「できる限りのことをした。その時々では不作為とはいえない」と述べていたが、タ スクフォースの姉川尚史事務局長は「その認識は変わった」と明言。「同様な事故を防ぐには、東電の報告書では足りない。各事故調が指摘した点をすべて盛り 込んだものにすべきと考えた」と述べた。
同委員会はこうした見解を元に東電の改革案の検討を進め、12月14日に予定されている次回会合で、中間報告を示す予定。
↑ この点について、原発廃止派である徳岡さんはどのように考えられていますか?
一昨年に、中国がレアアースを輸出制限したのは記憶に新しいですが
有事の際のことを考えると一抹の不安が残ります。
自分も廃止派ではありますが
それは、あくまで感情的反対であり、論理的反対では無いで
論理的に反対されている徳岡さんの意見を聞かせてください。
よろしくお願いします。
お詫びして訂正いたしますm(_ _)m
エネルギーの安全保障についても真剣に考えないといけない。
でも、原発は無くなって欲しい。
原発を無くしてもやっていける秘策はないですかね?
まだプルトニウムを燃やせるというなら別ですが。
その点、地熱・風力・太陽熱など再生可能エネルギーの方が安全保障の点からも、はるかに有利です。
ってことは、あと残るは"コスト"の問題だけですね。
よく、右巻きの人たちが
「韓国と国交断絶しろ!」と叫びますが
すかさず、左巻きの人たちが
「対韓国での貿易黒字は3兆円だけど良いの?」
と反論してます。
でも、原発では逆転して
左巻きの人たちが
「原発を廃止しろ!」と叫び
それに対して、右巻きの人たちが
「廃止したら5兆円ぐらい損するけど良いの?」
と反論してます。
お互いがお金を理由に反対してるのが謎です。
個人的には「国民の命 > お金」なので
いくら損しようと廃止すべきだと思ってます。
危険な目にあってまで豊かな生活をするぐらいなら
ド貧乏でも、安心・安全な生活がしたいですから。
思うんですが、命も金も、という選択は可能だと思うんですよ。
原発だって廃炉費用1基5000億円×54基とか、10万年も放射性廃棄物を管理するお金を考えたら、完全に赤字です。
こちらこそ、宜しくお願いいたします。
白状すると、、、
実は、自分は最初、原発存置派でした。
でも宮武さんのブログを読んで廃止派に変わりました。
ですので、コメントのやり取り or ブログ閲覧を通して
自分の考えをまとめていけたらなと思っております。
記事の内容と関係ないのでココでは控えますが
・死刑問題 → 死刑存置派の廃止論者
・少年法 → 同一犯罪、同一刑罰
・蔑視呼称 → ネトウヨなどと呼ぶのは逆効果
・ブラック企業 → 企業査定による法人税増減案による解決
・社会保障 → 労働義務化とセットで希望者全てに生活保護権
↑現時点での自分の考えです。
これも、また色んな意味で変われたらと思います。
気が向いた時にでも、絡んでやってくださいませm(_ _)m