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安倍派を中心とする自民党の派閥パーティ裏金問題で、安倍晋三元首相が会長になってから裏金作りはやめにしようと安倍氏が提案していたなどという話を岩田明子元NHK解説委員がでっちあげ、それをフジサンケイグループが流したのですが、最近ではそれを裏付けるような報道が各メディアから流れてくるようになりました。
しかし、たとえそのような話があったとしても、それは桜を見る会前夜祭の政治資金報告書問題で起訴寸前まで追い詰められた安倍氏が怖くなって、露骨なことはやめておこうといっただけです。
週刊ポストの核心を突いた記事
【裏金問題】「安倍元首相は無関係」説を覆す重大証言 「安倍事務所では昔から裏金を『もどし』『還付金』と呼んでいた」
では、古参の元安倍事務所関係者が
「安倍事務所では、昔からキックバックの裏金を『もどし』とか、『還付金』と呼んでいました。安倍先生が派閥の会長になるまで知らなかったなんてあり得ません」
「パーティー券を売ってノルマ以上であれば、カネをそのまま手元に置いていいというのは、先代(安倍氏の父)の晋太郎先生の時代から続いていた自民党の資金システムそのものなわけです。だから晋三先生も先代の秘書だった時代からよく知っていたはず。」
と語っています。
また続編の
【安倍派裏金問題】「桜を見る会」前夜祭パーティー問題での安倍元首相の手法と同じ 「バレなければいい」という体質が蔓延
では、政治評論家の有馬晴海氏が
「桜を見る会前夜祭パーティーのような都合が悪い政治資金の収支を“バレなければいい”と政治資金収支報告書に記載せずに隠すのは安倍さんの体質です。それが今回の安倍派の裏金問題にもつながっている。派閥パーティーのキックバックは、自民党では昔から行なわれていたが、最初は政治資金収支報告書に記載していた。しかし、安倍長期政権下で権力に驕った安倍派は『記載しなくても大丈夫』と法律を犯しても平気な集団になっていった。安倍氏の体質が伝染したわけです」
「安倍さんは以前からキックバックのことを知っていたはずですが、派閥会長になると止めるように指示したと報じられている。安倍さんが会長に就任したのは桜を見る会パーティーで秘書が立件され、罰金の略式命令を受けた後です。だとすれば、前夜祭パーティーで捜査を受けた経験から、キックバックの不記載が違法だと認識していて、派閥会長の自分にも累が及びかねないと考えた可能性がある」
と端的に指摘しています。
安倍派の裏金作りは会長案件だったという報道について、安倍氏でまだ食っていきたいアベ友の橋下徹氏やネトウヨは
「死人に口なしを利用するのか」
と猛反発していますが、むしろそうやって安倍氏をかばうこと自体が、細田博之氏と安倍氏が二人ともたまたまなくなっていることを逆利用しているのです。
橋下徹氏「亡くなった人に全ての責任…えげつない」安倍派事務総長経験者の還流“会長マター”発言報道に(スポニチアネックス) https://t.co/R0bL1Y80Ut
— 橋下徹 (@hashimoto_lo) January 12, 2024
さて、そんな中思い出されるのが、2022年9月に岸田首相が3分の2の国民の反対を押しきって、安倍晋三氏を国葬にしたこと。
安倍氏だけを国葬にすること自体が憲法が規定する法の下の平等違反で、違憲違法なのですが、当時問題になっていた統一教会との癒着だけでなく、この安倍派の裏金問題にしても、赤木俊夫さんが亡くなった森友事件にしても、桜を見る会問題にしても加計問題にしても、よくもまあこんな人間を国葬にしたものだと改めて驚きます。
というわけで、アーカイブということで、2022年9月26日に書いた
安倍晋三氏の国葬が許されない数多ある理由の中で、実質的に一番なのは「安倍政治が国葬に値しないこと」。法的にはそもそも個人を国葬にすることが法の下の平等に反して憲法違反であることだ。
という記事をあらためて振り返りますので、是非お読みください。
2022年9月25日 東京新聞
『安倍元首相国葬「反対」各世論調査で軒並み増加 9月は全ての媒体で過半数に』より
明日2022年9月27日、安倍晋三元首相の国葬が日本武道館で行われる予定です。
当ブログではこの安倍国葬が決まった7月12日から2カ月半、口を極めて批判してきましたが、その理由を順不同に挙げると以下のようになります。
1 この国葬をする根拠法がなく、国会での審議も経ず、閣議決定だけで行なわれるから
2 国葬に少なくとも16億円、本当はもっと多額の血税が使われるから
3 国葬を強行することは弔意を持たない市民に対して、事実上の弔意の強制になるから(憲法違反)
4 誰か個人に国葬をして神格化すること自体、法の下の平等に反し、差別の温床にもなるから(憲法違反)
5 安倍国葬で弔問外交ができてコスパがいいなどという口実は嘘だから
6 安倍晋三氏に国葬をしてやるだけのさしたる実績がないから
7 アベ政治の害悪はひどく、安倍氏は憲政史上最悪の総理の一人だから
8 安倍氏は統一教会と自民党をつなぐ元締め役だったから
9 安倍国葬をすると、統一教会は自分たちにメッセージをくれるような密接な関係があった安倍氏はやはり偉大だったと「信者」の締め付けと「布教」に利用するから
まだあるかもしれませんが、ざっと数えあげても、安倍国葬をするべきではない理由がいくらでも出てきます。
このうち、もう一回、岸田首相の特に大嘘の5について述べさせていただくと、7月12日に安倍国葬を決めた段階で、9月下旬に国連総会があることはわかっていたわけですよ。
外交ならそこでいくらでもできます。
また、今年11月にはG20首脳会議が決まっており、来年5月にはこの日本でG7首脳会議が行われます。
逆に、安倍氏の葬儀を国葬ではなく内閣葬や内閣・自民党合同葬でやったからといって、弔問外交ができないわけではありません。
だから、安倍氏を国葬にするとコスパ良く外交ができるという話自体が大嘘だったのですが、ふたを開けてみたら、安倍氏国葬にはG7から誰一人首脳が来ない。
G20に広げても、インドとオーストラリアの首相とEUの常任理事国議長しか来ない。
「世界の安倍」が超人気で、主要国の首脳が一杯日本にやってくる、という話自体が幻想だったのです。
さて、数多い安倍国葬を否定すべき理由の中で、私が本当に安倍国葬に最初から瞬間的に拒否反応が出たのは、6と7でした。
安倍氏なんて、国葬に値することは何もやっていなくて、むしろ酷いことばかりやってきた政治家ではないですか。
内政では今の極端な円安を招いているアベノミクスと消費税増税の失敗で、景気は良くならないし、非正規雇用ばかり増えるし。
第一次政権では教育基本法改悪、第二次政権では特定秘密保護法や共謀罪や安保法制などの違憲な法律を作りまくり。
私もこの方と同じ気持ち。「こんな人の国葬反対」。
改憲と軍拡策動を首相在任中も首相を辞めても続けるし、コロナ対策には失敗して二度目の政権も投げ出すし、東京オリパラを中止にせず延期にしてしまうし。
森友・加計・桜を象徴とする政治腐敗を招き、しかもイラク派兵の日誌や森友事件の公文書や桜を見る会の招待簿など公文書の破棄・改ざん・隠匿をしまくり、赤木俊夫さんの死を招いてしまうし。
公文書のほかにも、実質賃金統計など民主政治の基礎であるデータ改ざんという大罪を常態化してしまうし。
議会内では下品なヤジを飛ばしまくって議会制を愚弄し、閣議決定と強行採決を連発し、憲法通りに臨時国会の召集を求められてもこれを拒否して、議会制民主主義を破壊しました。
外交ではプーチン大統領に貢ぐだけ貢いで北方領土は全く帰ってこないし、北朝鮮から拉致被害者も帰ってこないし、トランプ大統領の人気維持のために何兆円も兵器を爆買いしてしまうし。
これでも書き足りないし、安倍晋三氏が国葬にふさわしくないという記事を全部引用しだしたら、何百にもなってしまうのでここに出せないほどです。
そして、法律家の端くれとして言いたいのは、国葬が事実上の弔意の強制になって市民の思想良心の自由を侵害するという憲法問題に隠れてしまっていますが、そもそも、誰か個人を特別扱いして国葬にするということは、憲法14条1項が保障する法の下の平等原則に違反するということです。
人の上に人を作るようなことをしたら、人の下に人を作る差別もまた正当化されてしまうのです。
実績があろうがなかろうが、誰かが亡くなった時に特別扱いして国葬にすることなど、民主政を貫けばあり得ません。
だいたい、首相経験者が国葬になるのなら、国権の最高機関である立法権の長である衆参両議院議長も、司法権の長である最高裁長官経験者もみな国葬にしなければなりません。
中曽根康弘元首相が内閣と自民党の合同葬になり、費用の半額は税金で賄われた時にも指摘しましたが、 半分であっても税金から出すこと自体が許されないのです。
まして、全額を国費から出す国葬は許されません。
その通り!
統一教会と自民党の合同葬にしたらええ
これは天皇が死去した時の大喪の礼もそうで、橋下徹氏や三浦瑠麗氏らは大喪の礼はやるのが当たり前のような立論を展開していますが、憲法7条10号の天皇の国事行為には
「儀式を行ふこと。」
とあるだけで、今回の安倍国葬の根拠法としている内閣設置法と同じで、大喪の礼という国葬自体の根拠法にはなりません。
実際には、大喪の礼は法律と同じ扱いの皇室典範に規定されているだけですから、これはいくらでも国会で改正して除外できるのです。
日本国憲法が象徴天皇制を取っているからと言って、天皇が死去した際の葬儀まで大喪の礼という国葬の形でやるのは必然ではなく、本当は一般市民と同じく、皇室で内々にやるのが当たり前なのです。
このように、今回の安倍国葬も、前回の吉田茂元首相の国葬も、根拠法がないという消極的理由だけではなく、そもそも憲法の平等原則に反するという意味で積極的に憲法違反であり、許されないのです。
というわけで、てんこ盛りに違憲で違法な安倍晋三氏の国葬。
これを右派に取り入るために決定した岸田文雄首相にも、国葬にされる安倍晋三元首相にも、天網恢恢疎にして漏らさずで「天罰」が下りました。
安倍氏の殺害の動機が統一教会絡みだったということで、安倍氏と安倍派と自民党と統一教会のズブズブの癒着が暴かれたことで、市民の目にもわかりやすく、安倍氏が国葬にはふさわしくないということが明らかになったからです。
私に言わせれば統一教会問題を抜きにしても、アベ政治が愚劣で有害無益で、安倍氏が国葬に値しない下劣な政治家だったことは明らかですし、そもそも国葬が憲法上禁止されているのです。
これだけひどい政治家を選りによって憲法に反して、そして世論の圧倒的な反対を押し切って国葬にする岸田政権。
これで岸田内閣を倒せなかったら、安倍晋三という稀代の悪政治家を生前には法的・政治的に追い詰められなかった悔いの二の舞になると言えるでしょう。
ほか
いよいよ議員逮捕にまで発展した安倍派の裏金問題。「安倍晋三・元首相はこの裏金の一件を知った時に激怒して改善を促した」──というのが今、各所で報じられている流れだ。過去を振り返ると、桜を見る会でも森友・加計問題でも、安倍氏が関わってきた問題はおしなべて、「安倍さんは知らなかった」と“免罪”された。この構造にこそ疑惑の「本丸」が隠れている。【前後編の前編。後編から読む】
トカゲの尻尾切り
安倍派の裏金事件捜査が急展開を見せている。東京地検特捜部は1月7日に池田佳隆・元文部科学副大臣を逮捕。池田氏は同派からキックバックを受けたパーティー券収入のうちざっと5000万円を政治資金収支報告書に記載していなかったとされ、事件発覚後、「証拠になるものは消せ」と秘書に指示して関係資料を廃棄させていた証拠隠滅の疑いまで浮上している。
自民党は逮捕当日に大慌てで池田氏を除名処分にしたが、“トカゲの尻尾切り”で逃れられる問題ではない。
特捜部の捜査は今後、安倍派の複数の議員や中枢幹部に向かい、派閥ぐるみの裏金づくりの解明を進めると見られている。
だが、この事件でなぜか触れられない問題がある。裏金システムの全体像を解明するためには、同派前会長だった安倍氏がどう関与していたかを明らかにすることが欠かせないはずだが、疑惑が明るみに出た当初から、「安倍氏は無関係」という報道がなされてきた。
先鞭をつけたのが元NHK記者で「安倍氏が最も信頼するジャーナリスト」といわれた岩田明子氏だ。夕刊フジのコラムでこう書いた。
〈安倍元首相が2021年11月に初めて派閥会長となった後、翌年2月にその状況を知り、「このような方法は問題だ。ただちに直せ」と会計責任者を叱責、2カ月後に改めて事務総長らにクギを刺したという。
2022年5月のパーティーではその方針が反映されたものの、2カ月後、安倍氏は凶弾に倒れ、改善されないまま現在に至ったようだ〉(2023年12月12日付)
安倍氏が派閥会長に就任して初めてキックバックの存在を知り、怒って止めさせようとした──というストーリーだ。
時期に多少の違いはあるが、“安倍嫌い”の朝日新聞もこう報じている。
〈安倍氏は2022年の派閥パーティーを5月に控えた同年4月、還流の取りやめを提案した。(中略。安倍氏の死後)最終的に4月の方針は撤回され、従来通りの裏金としての還流が9月にかけて実施されたという〉(2023年12月23日付)
いずれも安倍氏は裏金づくりに全く関与しておらず、むしろ是正しようとした“正義の人”という印象さえ植え付ける。
果たしてそうだろうか。
本誌・週刊ポストは安倍氏の政治活動を支えてきた元事務所関係者から全く別の内容の証言を得た──。
「もどし」と呼んでいた
「安倍事務所では、昔からキックバックの裏金を『もどし』とか、『還付金』と呼んでいました。安倍先生が派閥の会長になるまで知らなかったなんてあり得ません」
そう語るのは古参の元安倍事務所関係者だ。
「パーティー券を売ってノルマ以上であれば、カネをそのまま手元に置いていいというのは、先代(安倍氏の父)の晋太郎先生の時代から続いていた自民党の資金システムそのものなわけです。だから晋三先生も先代の秘書だった時代からよく知っていたはず。
私は事務所に入ってすぐ『もどし』のことを知りました。党費のキックバックがもとになっていて、自民党では議員が新たに党員を獲得すると、1人4000円の党費のうち1000円が議員に入る仕組みがある。そこから派生して、党や派閥パーティーなどでカネを集める時には、集めたカネの一部を議員の手元に残していいシステムになっていた。
だから議員も秘書も、それが当たり前の政治資金の集め方だと思っていた。事務所にはパーティー券を売る専門の私設秘書もいたくらい。政治資金規正法はザル法だから、問題になっても収支報告書の訂正で済んできた」
安倍氏は成蹊高校時代に地理研究部で会計担当、成蹊大学時代には運動部の予算配分を調整する体育会本部会計局長を務めるなど、お金には几帳面な性格で知られる。
元事務所関係者は、事務所の資金は安倍氏が管理していたと証言する。
「お金については代議士本人(安倍氏)がしっかり見ていました。金庫番である筆頭秘書と会計担当の女性秘書の2人が経理を担っていましたが、それも、代議士から『今月はこのくらいで』と毎月予算を指示されて、その金額でやりくりしていた。大元は代議士が握っていたわけです。会計担当の女性の仕事は、帳簿の表面上の金額を合わせるという感じでした。だから事務所のパーティーの収支は全部把握していたし、派閥のキックバックの仕組みについても代議士が知らないわけがなかった」
当時の安倍氏の金庫番だった秘書の自宅を訪ねると、夫人が応対し、「本人は退職しているのでお答えすることはないとのことです」と答えた。
なぜ、証言にあるような資金集めが必要だったのだろうか。前出の元事務所関係者はこんな言い方をした。
「大きいのは総裁選でしょう。総裁選は公職選挙法の規制がないこともあって、お金がかかる。一流ホテルに選対本部を構えて、ホテル代から議員や秘書団の飲み食い代まで大変な金額になる。そうした状況に日頃から備えておかなければならなかったわけです」
安倍氏や安倍派だけのことではないとも言う。
「若手議員の頃は選挙のため、入閣適齢期になれば大臣ポストを得るために派閥に上納し、総理・総裁を目指すようになれば総裁選の資金と、昔から自民党の政治にはカネが必要。そういう金権政治の体質が問題なのです」(同前)
安倍氏の父・晋太郎氏の時代から安倍派と安倍家を取材してきた政治ジャーナリスト・野上忠興氏の話も元事務所関係者の証言を裏付ける。
「清和会(安倍派)では、晋太郎氏が会長だった時代にはすでに派閥パーティー券のキックバックが行なわれており、その後も引き継がれてきた。晋三氏は晋太郎氏の秘書としてそのやり方を側で見てきたし、議員になってからも清和会で育ったから、キックバックの仕組みや歴史を誰よりよく知っているはずです」
このような実態があるからこそ、今回の裏金問題では安倍派を中心に数多くの自民党の大物議員の名前が挙がっている。にもかかわらず、「安倍氏だけが知らなかった」という流れができていることこそが、病巣の根深さを示している。
(後編に続く)
※週刊ポスト2024年1月26日号
いよいよ議員逮捕にまで発展した安倍派の裏金問題。「安倍晋三・元首相はこの裏金の一件を知った時に激怒して改善を促した」──というのが今、各所で報じられている流れだ。過去を振り返ると、桜を見る会でも森友・加計問題でも、安倍氏が関わってきた問題はおしなべて、「安倍さんは知らなかった」と“免罪”された。この構造にこそ疑惑の「本丸」が隠れている。【前後編の後編。前編から読む】
報告していないはずがない
安倍派の裏金づくりは、派閥パーティーの議員へのキックバック分の収入や支出を「政治資金収支報告書」に記載しないという手法だった。
これは安倍氏自らが用いてきた手段だった。政権を揺るがした「桜を見る会」前夜祭パーティー問題がまさにそうだ。
安倍氏は首相時代(2013?2019年)、各界の代表者など約1万人を招待して新宿御苑で「桜を見る会」を開き、その前日に都内の高級ホテルで地元から招待した後援者を集めた政治団体「安倍晋三後援会」主催の前夜祭パーティーを開いていた。会費は5000円で、約850人が参加していた。
ところが、同後援会の政治資金収支報告書にはこのパーティーの開催も、収支も一切記載していなかった。これが問題化し、国会は大紛糾した。
安倍氏は首相在任中、「すべての費用は参加者の自己負担で支払われている。安倍晋三後援会としての収入・支出は一切ない」として、報告書に記載する必要はなかったという説明で押し通した。
それが、安倍氏の首相退任後の2020年12月に東京地検特捜部が捜査に乗り出し、事務所側がパーティー費用を補填していたことなどが発覚。安倍氏の当時の公設第一秘書(安倍晋三後援会代表)が政治資金規正法違反(不記載罪)で略式起訴され、100万円の罰金の略式命令を受けた。安倍氏自身も特捜部に事情聴取されたが、「嫌疑不十分」で不起訴処分となった。
「私が知らないなかで行なわれていたこととはいえ、道義的責任を痛感しております」
安倍氏はそう謝罪したが、前出の元安倍事務所関係者は、「安倍先生は『自分は知らなかった』と説明していますが、金庫番だった第一秘書がパーティー収支を報告していないはずがありません」と振り返る。
政治評論家の有馬晴海氏が指摘する。
「桜を見る会前夜祭パーティーのような都合が悪い政治資金の収支を“バレなければいい”と政治資金収支報告書に記載せずに隠すのは安倍さんの体質です。それが今回の安倍派の裏金問題にもつながっている。派閥パーティーのキックバックは、自民党では昔から行なわれていたが、最初は政治資金収支報告書に記載していた。しかし、安倍長期政権下で権力に驕った安倍派は『記載しなくても大丈夫』と法律を犯しても平気な集団になっていった。安倍氏の体質が伝染したわけです」
さらに安倍氏がキックバックを止めさせようとしたという報道についても、真相をこう見る。
「安倍さんは以前からキックバックのことを知っていたはずですが、派閥会長になると止めるように指示したと報じられている。安倍さんが会長に就任したのは桜を見る会パーティーで秘書が立件され、罰金の略式命令を受けた後です。だとすれば、前夜祭パーティーで捜査を受けた経験から、キックバックの不記載が違法だと認識していて、派閥会長の自分にも累が及びかねないと考えた可能性がある」(同前)
“隠蔽体質”の継承
安倍派裏金事件で逮捕された池田佳隆・元文部科学副大臣は、安倍氏に声を掛けられて家業の化学薬品社長から政治家に転じたこともあって、安倍氏を「師」と仰いでいた。その池田氏に裏金の関連資料を廃棄させていた疑いが生じているわけだが、こうした「証拠隠滅」も安倍氏から受け継いだ“悪しき体質”と言える。
安倍氏をめぐる数々の事件で、証拠隠滅や隠蔽が図られてきたからだ。
前述の桜を見る会パーティー問題では、野党が招待者名簿などの資料を要求すると、内閣府が大量の名簿を大型シュレッダーにかけて廃棄し、しかも、名簿のバックアップデータはまだ残っていたにもかかわらず、国会で「すでに破棄した」と答弁して隠蔽した。
安倍事務所側でも、特捜部が前夜祭パーティーの捜査に着手すると、ホテルから受け取っていた領収証を廃棄していたことが明らかになっている。
森友学園問題では、財務省が国有地払い下げに至る経緯や安倍昭恵夫人の関与などを記した文書を改竄し、改竄を命じられた財務省職員が自殺する犠牲まで出した。しかし、これまで安倍氏自身の責任は問われていない。
今回、安倍派幹部たちは特捜部の聴取に、キックバックは「会長案件だった」と供述しているとも報じられたが、既に亡くなった安倍氏は今回の捜査の対象外とされる。安倍政治の「黒い体質」まで含めてメスを入れ、再評価しない限り、自民党の金権政治の裏にある構造を改めることなどできないはずだ。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2024年1月26日号
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この人によって恩恵を受けた人もいるでしょうが、たった一握りの(いや、ひとつまみの)人だけで、大多数の国民は暮らしがつらくなったり、不幸にされました。「あんな人達」を排除したり、自己都合で政権を投げ出したのに「三度目に…」との声にまんざらでもない悪い笑みをしていたのが今でも思い出されて気分悪くなります。
不幸な亡くなり方をしたのは同情しますが、亡くなった後にいろいろ動いたのは、どれだけこの人によってストップをかけざるをえない状況にされていたのかがわかります。統一教会との繋がりもはっきりしていますし、いい加減、国民も目を覚ましてほしいです。