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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

横浜市の待機児童ゼロ達成は企業参入推進で 保育の質など問題は山積

2013年05月20日 | 少子高齢化問題

「便利な」保育園が奪う本当はもっと大切なもの [単行本(ソフトカバー)] 長田 安司 

 横浜市は2013年5月20日、4月1日現在で保育所へ入りたくても空きがない待機児童がゼロになったと発表しました。

 横浜市は3年前には待機児童数が1500人を超え、全国ワースト1位だったのですが、保育所経営への企業参入や市独自の認可外保育施設の整備などを推し進めたことで、受け入れ先を確保したのです。

 3年でワースト1位からゼロだなんて、凄い!みたいですが、確かにすごいんですが裏があるという話です。


 そしてこの成果を真に受けて、安倍首相も成長戦略で2017年度までの待機児童ゼロを掲げ、「横浜方式」を全国に広げていく考えを示しており、都市部共通の課題解決に向け、 ほかの自治体も注目しています。

 しかしそもそも、横浜市の待機児童数ゼロは、4月1日時点の就学前児童19万106人(前年比1664人減)のうち認可保育所の入所申込者は4万8818人(同3111人増)。入所できなかったのは1746人(同629人減)でした。つうか、待機児童、増えてるやん!

 しかし、ここから市の定義に基づき

(1)市が独自基準で認定し補助金を出す認可外施設「横浜保育室」などの入所数(877人)

(2)4月1日時点で親が育休を取得している児童数(203人)

(3)特定の保育所のみ希望する申込者数(566人)

(4)親が自宅で求職中の児童数(100人)

を引いた結果、待機児童がゼロになった、というもので、単なる数合わせに過ぎない面が多分にあります。

 特に(1)の横浜保育室は、広さやスタッフ数などで国が定める基準を一部緩和した市独自の認可外保育所で計156カ所あるのですから。質に問題があります。

 そして数合わせにしても、わずか3年でワーストをベストにしたツケはこれから続々と出てくるでしょう。

こどもの日 待機児童解消は子ども・子育て支援新制度や株式会社の保育所参入でなく、公立認可保育所増設で

 

子どもと保育が消えてゆく―「子ども・子育て新システム」と保育破壊 (かもがわブックレット) [単行本] 川口 創 

 

 

 まず、横浜では、待機児童が多い地域に新設する際の補助金を手厚くするなどし、企業が参入しやすい環境を整えました。それによりこの3年で企業経営の認可保育所は79か所新設されました。市内の認可保育所580か所のうち152か所を企業経営の保育所が占め、全体の26%に達するのです。

 しかし、他の自治体が株式会社の参入に慎重なのは、株式会社が運営する保育所で、突然の閉園や職員の激しい入れ替わりなどの問題が生じているからです。営利を目的とす る株式会社が保育になじむのかという疑問は保護者や保育関係者に根強くあります。

 2012年に問題が発覚したのも横浜市中区の「馬車道保育園」(横浜市認可)でした。

 保育士の相次ぐ退職や保護者の苦情で運営が困難になったことから2009年12月に別の大手企業に事業が丸ごと譲渡されたものの、元の企業の親会社による税金滞納で、園舎となっているビルは、現在、財務省や横浜市から差し押さえを受けているのです。

 もともと馬車道保育園を運営していた企業は2005年4月の同園開設とともに保育事業に参入し、2006年4月には横浜市港北区に同じく市認可の「ゆめみらい保育園」を新設しましたが、参入から4年余りで保育事業から撤退を余儀なくされました。

 横浜市は運営費として2園に前払いしていた金額のうち、閉園後の分1千数百万円余りの返還を求めているのですが、回収は困難になっていそうで、横浜市によれば、これとは別に2園で少なくとも6千数百万円以上に上る運営費の使い道がわからない状態になっているというというのです。

保育園が差押え!民主党の子ども子育て新システム「総合こども園」は幼児を不幸にする


 さらに、安倍政権により2015年からの導入が目指されている「子ども・子育て関連3法」(新システム)では、現行制度では認められ ていない株主配当が認められ、株主配当のために人件費が抑制される危険が指摘されています。

 保育所急造のため、保育所増設で保育士の確保が厳しくなっている上、経験の浅い保育士も増えています。経験豊かな年配の保育士さんは費用が掛かるということで敬遠されるのです。

 それでも、保育所に入れない子供が何百、何千といるより良いという考え方もありますが、狭くて危険な保育所、いつつぶれるかわからない保育所が、質より量、保育より儲けとばかりに全国に多数できるのも好ましいものではありません。

『子どもと保育が消えてゆく』 子どもと親を追いつめ、少子化を促進する野田民主党と橋下維新の会

 

 

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「横浜方式」待機児童ゼロ…ワースト1から3年

 横浜市は20日、今年4月1日現在で保育所への待機児童がゼロになったと発表した。

 3年前には待機児童数が全国ワースト1位だったが、保育所経営への企業参入や市独自の認可外保育施設の整備などを推し進めたことで、受け入れ先を 確保した。安倍首相も成長戦略で2017年度までの待機児童ゼロを掲げ、「横浜方式」を全国に広げていく考えを示しており、都市部共通の課題解決に向け、 ほかの自治体も注目している。

 同市の待機児童数は、2010年4月時点で全国の市区町村でワースト1位の1552人だった。全国でも都市部を中心に待機児童の解消は大きな課題 となっている。厚生労働省によると、12年4月時点の待機児童は全国で約2万5000人。最も多い名古屋市で1032人、札幌市は929人。東京都杉並区 やさいたま市などでは、子どもが認可保育所に入れなかった親たちが、自治体に不服申し立てをする事態となっている。

 待機児童削減を掲げ09年に初当選した横浜市の林文子市長は、待機児童対策費を同年度の約72億円から10年度には約84億円、12年度には約157億円まで増額した。

 待機児童が多い地域に新設する際の補助金を手厚くするなどし、企業が参入しやすい環境を整えた。それによりこの3年で企業経営の認可保育所は79か所新設された。市内の認可保育所580か所のうち152か所を企業経営の保育所が占め、全体の26%に達する。

 さらに、市が独自の基準で認定する「横浜保育室」を28か所増やしたほか、保護者の相談に乗る「保育コンシェルジュ(相談員)」を市内全18区に配置。幼稚園での預かり保育の定員も拡充するなどして受け入れ枠を全体で計約1万4000人増やした。

(2013年5月20日12時30分  読売新聞)
 
 

 横浜市で認可保育所に入れない待機児童数が、四月一日時点で前年同期より百七十九人減り、ゼロになった。待機児童数が全国ワーストだったが、「二 〇一〇年から三年間でゼロにする」という目標を達成したと市が二十日、発表した。ただ、認可保育所の急増で保育士不足を招くなど、保育の質の確保が今後の 課題となっている。

 市によると、入所申込者数は四万八千八百十八人と、前年同期と比べて三千百十一人の大幅増。市は、民間の保育所を新増設するなどして、国の基準を満たした認可保育所の定員を三千七百四十人増やし、受け入れ枠を拡大した。

 横浜市は一〇年四月時点で、待機児童数が千五百五十二人と全国自治体で最多だった。市は待機児童解消を重点施策に位置付け、一〇年度以降、対策に毎年八十五億~百五十七億円の予算を付けてきた。施設整備面では、三年間で認可保育所を百四十四園増やした。

 市有地を無償で貸し出すなど積極的に民間業者の参入を誘致。市立を除く認可保育所四百九十園のうち、百五十二園が株式会社の運営。既存の保育所は園舎を増築し、受け入れ定員の拡大を図った。

 一方、ソフト面では、一一年度から保育の相談に乗る専門職員「保育コンシェルジュ」を全区に配置。国の基準に沿った認可保育所にこだわらず、国の基準を緩和した市独自の基準による認可外施設「横浜保育室」など、保護者の個々のニーズに合った保育サービスを紹介している。

 今後の課題は保育の質。保育所増設で保育士の確保が厳しくなっている上、経験の浅い保育士も増えている。市は資格を持つ潜在保育士の発掘に努めたり、研修を増やしたりして育成に力を注ぐ。

 待機児童対策をめぐっては、安倍晋三首相が四月、市の手法を参考に「一七年までの五年で待機児童をゼロにする」と表明した。

(東京新聞)

 
 

毎日新聞 2013年05月20日 12時27分(最終更新 05月20日 13時48分)

横浜市の保育所定員と待機児童数の推移
横浜市の保育所定員と待機児童数の推移

 横浜市は20日、現在の形で統計を取り始めた2001年以来初めて、4月1日時点の保育所待機児童数がゼロになったと発表した。市の人口は全国の市町村でトップの約370万人。待機児童は10年4月時点で1552人と全国最多だったが、認可保育所増設やきめ細かな情報提供に取り組み、3年で解消にこぎ着けた。一方で、定員割れや保育士不足という課題も浮上しており、現場は「より良い保育環境に向けたスタート地点」と受け止める。【高木香奈、山田麻未】

 横浜市は10年以降、株式会社などの新規参入を活用したほか、民有地と保育運営事業者を公募して仲介する土地マッチングの手法を導入。認可保育所を144カ所整備し定員を1万人以上増やした。

 11年6月以降は、個々の保護者に応じ多様な保育サービスについて情報提供する専門相談員「保育コンシェルジュ」を全18区に配置。待機児童は12年4月に179人にまで減っていた。

 12年4月時点の全国の保育所待機児童は前年比で731人減の2万4825人。安倍晋三首相は横浜市の取り組みを全国展開すると表明している。

 横浜市によると、4月1日時点の就学前児童19万106人(前年比1664人減)のうち認可保育所の入所申込者は4万8818人(同3111人増)。入所できなかったのは1746人(同629人減)だった。

 ここから市の定義に基づき(1)市が独自基準で認定し補助金を出す認可外施設「横浜保育室」などの入所 者数(877人)(2)4月1日時点で親が育休を取得している児童数(203人)(3)特定の保育所のみ希望する申込者数(566人)(4)親が自宅で求 職中の児童数(100人)−−を引いた結果、待機児童がゼロになった。

 横浜市の林文子市長は記者会見で「多くの熱意が結集して達成できた。これからも潜在的なニーズに応えるため整備を行い、子育て支援の充実に取り組みたい」と話した。

 

 

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4 コメント

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勉強になりました。 (向 めぐ美)
2013-05-21 08:10:29
品川区議のむこうです。
はじめまして。

横浜の待機児童対策がすばらしい?というような報道が連日続いていますが、違和感があって。
ブログ記事、とてもわかりやすいですね。
ありがとうございます。
とても参考になります。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-05-24 01:38:44
横浜市在住です。待機児童0って本当でしょうか?去年は8人定員のところ既に8人待っている、と言われ入所を断念したのですが。
返信する
裏にあるもの (通りすがり)
2013-05-24 02:13:19
横浜市で待機児童ゼロ達成だそうですね。
けれども、その横浜市の待機児童を受け入れているのは鎌倉市の保育園だったりするわけです。

ちなみに鎌倉市は待機児童ゼロではありません。
返信する
Unknown (園児の母親)
2013-07-21 07:58:33
分かりやすい解説、ありがとうございました。
これからも是非、この問題を取り上げて頂きたい。

横浜方式がなぜ、ここまでマスコミに礼賛されるのか
よく分かりません。

横浜はもともと認証が多い地域であることもあり、
保育士の入れ替わりが激しいのは有名ですよね。

保育士の入れ替わりが激しいということが
子供にどのような影響を及ぼすか、
親があまり認識していないように思われます。
返信する

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