日本と太平洋の島嶼(とうしょ)国でつくる「太平洋・島サミット」は2015年5月23日、福島県いわき市で首脳会議を開き、首脳宣言「福島・いわき宣言」を採択し、2日間の日程を終えて閉幕しました。同サミットは、14の島嶼国と日本、豪州、ニュージーランドの計17か国で構成されています。
そして、安倍首相はこのサミットの首脳会議で、海洋の安全保障について
「各国が緊張を高める一方的な行動を慎み、法の支配に基づき行動することが重要だ」
と訴えました。
ところで、安倍首相は先のアメリカ議会での演説でも
「自由、民主主義、法の支配、私たちが奉じる共通の価値を、世界に広め、 根づかせていく」
だとか
「太平洋から、インド洋にかけての広い海を、自由で、法の支配が貫徹する平和の海にし なければなりません。」
「自由世界第一、第二の民主主義大国を結ぶ同盟に、この先とも、 新たな理由付けは全く無用です。それは常に、法の支配、人権、そして自由を尊ぶ、価値観を共にする結びつきです。」
などと再三述べています。
安倍首相の米議会での歴史に残る迷演説 そんなに好きなの?! 祖父岸首相・アメリカの山羊・TPP・軍事同盟
日本国憲法と「法の支配」 | |
佐藤 幸治 (著) | |
有斐閣 |
「個人の尊重」の実現手段としての「法の支配」理念の再考・再興を試みるとともに、「統治客体意識から脱却した自律的個人」を基軸に据えて、近年の一連の改革を捉える視座を提供する。『現代国家と司法権』に続く、現代憲法学の第一人者による待望の論文集。
このように、安倍首相が中国の南シナ海などへの海洋進出をけん制する意味で「法の支配」をしょっちゅう強調するのですが、安倍首相は本当に「法の支配」を理解しているのでしょうか。
そもそも、法の支配は主に英米法で唱えられてきた原理で、すべての国家作用が法規範に従わなければならないという原則です。
難しく言い換えると、
「国民に対する専断的な国家権力の支配を排斥し、権力を法で拘束することによって、国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理」
ということができます。
ですから、ここで言う「法」に従う、拘束されるという時の法は「悪法も法なり」というものではなく、「正しい」法=人権保障をするための法であり、日本では日本国憲法がこれに当たります。
つまり、すべての統治機構・機能は憲法の人権規定に従わなければならない、人権を侵害してはならないという原則が法の支配なのです。
この法の支配を具体化したものが、憲法の人権規定(第3章)、憲法に反する一切の法律や処分などを無効とする憲法の最高法規性の規定(98条1項)や憲法違反の行為を司法裁判所が判断する違憲審査権(81条)などがあげられます。
良い統治と法の支配―開発法学の挑戦 (法セミLAW CLASSシリーズ) | |
松尾 弘 (著) | |
日本評論社 |
武力による安全保障が行き詰まるなか法制度改革による国家の良い統治を通じて国際社会における地球的統治の実現へ。平和へのもう一つの道として法を通じた国際協力の意義とあり方を問う開発法学と法整備支援を考えるテキスト。
ですから、安倍首相が法の支配、法の支配と言う時、私は安倍首相が放ったでかいブーメランが戻ってきて安倍首相の顔面に突き刺さる光景が浮かんでしまいます。
だって、安倍首相ほど憲法を軽んじている内閣総理大臣はいないではないですか。
憲法20条1項、3項、89条に規定される政教分離原則に反して靖国神社に公式参拝するし。
安倍自民党総裁が内閣総理大臣の靖国神社公式参拝=憲法違反を「先取り」 首相になる資格なし
憲法9条違反の集団的自衛権の行使を憲法解釈を変えるという強引な手法で法制化までしようとしているし。
「平和安全法制」=戦争法案を閣議決定 11法案を一挙に提出して十分審議させない安倍政権
法の支配とほぼ同義と言える立憲主義に違反する憲法改悪を目指しているし。
総選挙の争点5 安倍自民党のトンデモ改憲案は大日本帝国憲法より醜い封建主義憲法です
「法の支配」をめぐって 歴史・政治・理論 現代人文社
様々な断絶が存在するこの世界で、満場一致の支持を得ているかのような「法の支配」。しかしその意味するところは、必ずしも明らかではない。「法の支配」がどのように生まれ、機能しているかを検討、その妥当な理解を助ける。
ですから、日本の「国益」を守るために、中国の強引なやり方に日本としては断固抗議しなければならないこの時に、肝心の我が国の代表が国内でちっとも憲法を守ろうとせず、法の支配を無視しまくっているのですから、中国に対して法の支配を貫徹しろとけん制しても、まるで説得力がないのです。
特に、地域を限定せず世界中どこでもアメリカなどの戦争に加担できる憲法違反の集団的自衛権を行使すると言いながら、中国の軍拡や南シナ海支配を批判するのでは、中国が聞く耳を持たないのは当たり前です。
これはたとえて言うなら、国内で原発再稼働を目論んでいる安倍政権が、中国や韓国に対して
「危険だから原発は廃止してください」
と訴えても全く響かないであろうことと同じです。
というわけで、私としては、自らの行いを正してから人に文句を言え、と安倍首相に対しては思っているのです。
国際社会における法の支配と市民生活―ヒギンズ国際司法裁判所所長の講演とパネルディスカッション (jfUNUレクチャー・シリーズ) | |
横田 洋三 (翻訳) | |
国際書院 |
東京の国際連合大学で行われたシンポジウム「より良い世界に向かって―国際社会と法の支配」の記録である。本書は国際法、国際司法裁判所が市民の日常生活に深いかかわりがあることを知る機会を提供する。
こんな首相がいくら国際社会に法の支配を訴えても、「お前が言うな」と言われてしまう。
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安倍首相、島サミットで「法の原則」強調 共同宣言
- 2015/5/23 21:36 日本経済新聞
日本と太平洋地域の島しょ14カ国の首脳らが集まった太平洋・島サミットは23日、海洋秩序の維持などでの協力を盛り込んだ共同宣言を採択して閉幕した。安倍晋三首相は記者発表で、島しょ国への関与を強める中国を念頭に法の支配の原則を確認したと強調。太平洋の島しょ地域でも日本と中国がせめぎ合う構図を浮き彫りにした。
共同宣言は「福島・いわき宣言」と題し、(1)防災(2)気候変動(3)環境(4)人的交流(5)持続可能な開発(6)海洋・漁業(7)貿易・投資・促進――の7分野での協力強化を打ち出した。首相は今後3年間で550億円以上の援助を表明。「私たちの友好と協力の関係をさらに高い次元に引き上げるための礎になった」と訴えた。
中国を意識した対応として象徴的だったのは「東アジアと米大陸を結ぶ重要な海上中継地点」(政府関係者)とされるフィジーの厚遇ぶりだ。フィジーは2006年のクーデターで軍政に転じた後、島サミットへの首相招待を控えていたが、14年の民政復帰を受けて9年ぶりに招いた。
安倍首相は19日、首相官邸でフィジーのバイニマラマ首相と会談し、夜には公邸で昭恵夫人とともに夕食会でもてなした。人口90万人の国への接遇としては異例の厚遇とした視線の先には中国がある。軍政下のフィジーに日米が接触を控えていた間、中国は経済支援を積み増し、14年には習近平国家主席も訪問していたためだ。
島しょ14カ国のうち、中国と国交のある国が8カ国で台湾と外交関係を持つのは6カ国。今回は中国寄りに傾いた島しょ国を日米に引き戻し、米国のアジア重視戦略を側面支援する意味もあり、共同宣言は「フィジーの民主化の着実な定着」への期待を明記した。
首相は島サミットで「平和国家として国際協調主義に基づいた貢献をしたい」とも語った。平和国家の歩みを訴える場とし、共同宣言では日本の姿勢に支持を取り付けた。中国や韓国が歴史問題を国際社会に訴える「歴史戦」に備えた形だ。
共同宣言は日本が目指す国連の安全保障理事会改革への協力も盛りこんだ。島しょ国は小国でも集まれば国連加盟国数の約7%になる。政権の支持基盤の保守層を意識し、戦没者遺骨収容への協力も確認した。
毎日新聞 2015年04月28日 12時02分(最終更新 04月28日 12時41分)
日米両政府は27日(日本時間28日未明)、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定で合意したことを受け、ニューヨークのホテルで共同記者会見を開いた。岸田文雄外相は中国が南シナ海での海洋進出を強めていることについて、「法の支配の重要性について(日米で)認識を共有した。国際社会と連携してさまざまな取り組みを推進する」と述べ、指針改定を受けて、南シナ海での日米協力を強化していく考えを示した。
会見には、日本側から岸田氏、中谷元防衛相、米側からケリー国務長官、カーター国防長官が出席した。ケリー氏は「今日は、日本が単に自らの領土だけでなく、米国や友好国を守る能力を打ち立てたことを示す日だ。歴史的な転換だ」と表明。米国を標的とした弾道ミサイルの迎撃など集団的自衛権の行使による協力項目が新指針に盛り込まれたことを歓迎した。岸田氏は「日米安全保障の長い歴史の中で新たな一章を刻むものだ」と応じた。
日本のシーレーン(海上交通路)の要衝でもある南シナ海では、中国が領有権をめぐって周辺国と争いがある岩礁を一方的に埋め立てるなど実効支配を強めている。指針改定を受けた日米協力を強化する分野として、米側の期待が強いのが南シナ海だ。ケリー氏は南シナ海問題を念頭に「我々は、航行や飛行の自由、空や海の非合法な利用が大国の小国に対する特権であるとの考えに反対する」と述べ、中国をけん制した。
中谷氏は、南シナ海での日米協力のあり方について問われ、「海洋安全保障をあらゆるフェーズ(段階)でも重視している」と説明。南シナ海問題について「地域の平和と安定に直結し、日米や地域の共通の関心事項だ」と述べ、東南アジア諸国連合(ASEAN)を含めた周辺国と協力していく必要性を強調し、5月末のアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で各国と対応を協議する考えを示した。
また、岸田氏らは米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設に関し、名護市辺野古への移設が「唯一の解決策」とする認識を改めて強調した。
新指針には、シーレーンを防護する「海洋安全保障」での日米協力について、平時の警戒監視での物資提供▽警戒監視中に急な攻撃を受けた米艦を自衛隊が武器を使用して守る「アセット(装備品等)防護」▽集団的自衛権を行使しての機雷掃海やアセット防護−−など幅広い分野での協力項目が盛り込まれた。
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もしかしたら「自分だけが知らない概念」かもしれない。
そこでネット検索を掛けました。
どうやら、私だけではなかったのですね?
とすると、安倍首相だけではなく、側近といわれる方々も安倍首相レベル?
レッテル貼りだとか、というレッテル貼り、ホント、恥ずかしい限りですね。
安倍首相や橋下市長の憲法、法律無視を見ているとまさに人の支配と言う感が否めません。
恐らく彼は、民主主義や立憲主義を認めつつも、日本人の美意識や道徳観を上手く融合させた憲法を作りたいのでしょう。櫻井よしこのような発想でしょう。しかしそれが、権力を縛るという憲法の本来の役割を潰すことになります。
そもそも小林節教授がいうように、法に道徳を介入させてはいけません。安部総理の考える「法の支配」は破綻しているでしょう。
「朕は国家なり」
という言葉を思い起こしましたね・・・・・・・
はるか昔、世界史で習った記憶があります。
安倍総理も橋下徹市長も同じ発想の持ち主です。
いずれも「歴史の藻屑」となって政界(TV界からも)から消えていってほしいものです。
法の支配の意味を理解したいなら、最低限の憲法の学習をする必要があるわけですが、安倍って芦部憲法すら読んでいないのでしょう。別に芦部説に立たなくても、憲法勉強するなら嫌でも読まないと前に進めない文献なのに、それすら読んでいないというのは、安倍が法の支配の正確な意味を知らない証左なわけで。実際彼の言うことやることまったく法の支配と相容れないのはそういうことなのでしょう。
間違いなく、安倍のいう法の支配というのは、彼の中で安倍流の定義がされているはず。次の党首討論でその辺つついてみればいいんですよ。この前は7分と持たずに脳ミソの底を晒してしまったわけですが、今度は3分と持たないと思いますよ。