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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

維新の党が大阪組を刑事告訴&民事裁判を提訴。橋下市長「僕は離党して党員でもないので、全く無関係だ」

2015年10月31日 | 橋下維新の会とハシズム

 

 維新の党の松野頼久代表ら執行部は、党の事実上の分裂で延期していた代表選挙を、一般の党員も参加して、2015年12月6日に実施することを決めました。

 しかし、代表選挙に必要な5万2000人余りの党員名簿は、大阪市の橋下市長が結成する新党側の議員らが保管していて、執行部側が返還するよう求めています。

 これでは、維新の党が大阪側の議員たちを大量除籍したときに、告知・聴聞の機会を与えられなかったのも無理はなく、かえって維新の党執行部側の除籍処分が適法と言える要素が増えました。

長谷川豊氏の「松野氏たちはもう謝った方がいいと思う超基礎的な理由」が基本的に間違っている理由。

 

 こうしたなか執行部側は、新党側が党員名簿の返還に応じず不法に所持しているとして、10月30日に名簿の引き渡しを求める訴えを、大阪地方裁判所に起こしました。

 また、執行部側は、新党側が銀行口座の預金通帳や印鑑についても返還に応じず、業務を妨害したとして、新党側の議員らを威力業務妨害(刑法234条)の疑いで東京地方検察庁に告訴しました。

 ちなみに、もし、大阪側が維新の党の解散届を総務省に出したら、たぶん、維新の党側はさらに偽計業務妨害罪(刑法233条後段)で告訴すると思いますねえ。

 大阪側も良い弁護士さんに相談したほうがいいと思います。

刑法第233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
 
第234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

橋下市長が「維新の党に勝てる!」という主張の根拠が、全く関係ない監獄法に関する最高裁判例だった件w

もうちょっと、企業法務や株主総会とかの経験豊かな弁護士さんを雇った方がいいと思う。



 それから、総務省から維新の党の口座に振り込まれた6億5千万円余りの政党交付金を大阪側が使っちゃったら、維新の党執行部は業務上横領罪で告訴する可能性もあるでしょう。

 それにしても、大量除籍処分と言い、今回の提訴・告訴と言い、松野氏らは弁護士である橋下氏らの先手先手を意外と打ってくるんですが、誰が参謀なんでしょうか。

刑法253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

大阪組が松野頼久代表を申請者にして、維新の党の政党交付金を受領。これは詐欺・横領の可能性あり!

告訴合戦というわけですが、橋下氏はここでも矢面に立たないんですね。

 

 

 松野代表は国会内で記者団に対し、

「代表選挙を実施する党務に支障が出ている。本当に断腸の思いだが、名簿を返してもらいたいという思いで、提訴に踏み切った。

 新党側が所持している、銀行口座の預金通帳や印鑑の返還も求めていく」

と述べました。

 確かに、正当性の争いにどちらが勝つにしても、大阪側のやっていることが残留組の業務を妨害していることは間違いないので、大阪側は名簿や通帳や印鑑を保持している正当な権限があると証明しないといけません。

 しかし、大阪側自身が「維新の党代表松野頼久」名義で政党交付金の申請を10月に入ってからしてしまっているので、なかなか難しいのではないでしょうか。

維新の党規約を徹底解釈する。少なくとも、大阪系グループの「臨時党大会」と「解党決議」は無効です。

馬場氏が解党して存在しなくなったはずの党の代表というのも、おかしな話です。

 

 

 これらの動きに対して、維新の党の「暫定代表」ということになっている馬場伸幸衆議院議員は、

「われわれが正式な執行部であり、名簿をお渡しする理由はない。代表選挙は松野氏らが勝手に言っていることであり、コメントすることはない。司法の場で判断して頂ければいいと思う」

とコメントしています。

 そして、大阪市の橋下市長は記者団に対し、

「僕は離党して、維新の党の党員でもないので、全く無関係だ。被告になっているなら、今後訴状をみて対応する」

と述べました。

 


 橋下さんは被告になっていないと思いますよ。

 そうならないように、松井大阪府知事と一緒にいち早く離党したんでしょうか。

 でも、自分でやらせておいて「自分は全く無関係」って言いぐさはないでしょう。この人のやり口はいつも同じです。

 私は個人的には冷たい感じを受けます。

橋下徹大阪市長に使い捨てにされる人々

橋下徹維新の党最高顧問に使い捨てにされる上西小百合議員 「政治の天才」は醜聞議員を必ず除名にする

橋下徹氏は権力欲を満たすためには自身のお子さんまで利用する。「絶対的な権力は絶対的に腐敗する」



おまけに自分は政治家辞めると言っているのに、新党は作っちゃうんですからね。

いくらなんでも無責任なんじゃないですか。

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維新 党員名簿や通帳で新党側を提訴や告訴

10月30日 17時55分 NHK

維新 党員名簿や通帳で新党側を提訴や告訴
 
維新の党の執行部は、大阪市の橋下市長が近く結成する新党側の議員らが、党員名簿の返還に応じず不法に所持しているとして、名簿の引き渡しを求める訴えを大阪地方裁判所に起こしました。さらに、新党側が銀行口座の預金通帳や印鑑についても返還に応じず、業務を妨害したとして、新党側の議員らを威力業務妨害の疑いで東京地方検察庁に告訴しました。
 
維新の党の執行部は、党の事実上の分裂で延期していた代表選挙を、一般の党員も参加して、ことし12月6日に実施することを決めましたが、代表選挙に必要な5万2000人余りの党員名簿は、大阪市の橋下市長が結成する新党側の議員らが保管していて、執行部側が返還するよう求めています。

こうしたなか執行部側は、新党側が党員名簿の返還に応じず不法に所持しているとして、30日に名簿の引き渡しを求める訴えを、大阪地方裁判所に起こしました。

また、執行部側は、新党側が銀行口座の預金通帳や印鑑についても返還に応じず、業務を妨害したとして、新党側の議員らを威力業務妨害の疑いで東京地方検察庁に告訴しました。

松野代表は国会内で記者団に対し、「代表選挙を実施する党務に支障が出ている。本当に断腸の思いだが、名簿を返してもらいたいという思いで、提訴に踏み切った。新党側が所持している、銀行口座の預金通帳や印鑑の返還も求めていく」と述べました。

一方、新党側が、維新の党の代表としている馬場伸幸衆議院議員はNHKの取材に対し、「われわれが正式な執行部であり、名簿をお渡しする理由はない。代表選挙は松野氏らが勝手に言っていることであり、コメントすることはない。司法の場で判断して頂ければいいと思う」と述べました。

大阪市の橋下市長は記者団に対し、「僕は離党して、維新の党の党員でもないので、全く無関係だ。被告になっているなら、今後訴状をみて対応する」と述べました。


2015.10.30 17:52

【維新分裂】
松野氏「開示命令に応じない」名簿返還求め提訴 一問一答

党員名簿返還に関する民事訴訟について会見する維新の党の松野頼久代表=30日午後、国会内(斎藤良雄撮影)

 

 維新の党は30日、橋下徹大阪市長が結党する新党「おおさか維新の会」に参加する議員に対し、党員名簿の返還などを求め大阪地裁に提訴した。記者会見した維新の松野頼久代表の主な発言は以下の通り。

 「以前から大阪の事務局に対し、名簿の開示を命じていたが応じてくれない状況だ。今日、大阪地裁に民事訴訟を起こした。名簿だが、だいたい大阪の党員は10%にも満たない。9割が大阪以外の皆さんが集めた党員。ぜひ、今回の代表選を実施するにあたり党員名簿を返還してもらいたい」

 --提訴に踏み切った最大の要因は

 「党務に支障が出ている。いくら言っても開示されない。本当にこれは断腸の思いだが、返してもらいたいということで提訴に踏み切った」

 --話し合いでの解決は難しいのか

 「開示してもらえればすぐ取り下げる。きちんと党務に支障がないように協力してもらいたい」

 -明日は「おおさか維新の会」の結党大会だ。前日に提訴した狙いは

 「特に明日の結党大会を意識したわけではない。私の任期が11月1日に切れて代表選を実施するので、政党としてどうしてもやらなければいけない。そのためこれまでずっと開示を命じていたが、応じなかった」

--仲間と法廷の場で争うことになるが

 「それは残念だ。ただ、円滑な党務を遂行していく上で、党員名簿の開示がなされなければならないので本当に致し方がない」

 --大阪から名簿を返還しない説明はあるか

 「おそらく現執行部は執行部ではないというロジックなのではないか。ただ、(大阪系は)『解党決議』を党大会なるものを開いて行ったが、解党届もまだ出していない。僕らは(大阪系議員を)除名にしたが、向こうは除名に対する異議申し立てをしてきており、実は党に残っている状態だ。非常に不思議なことが起こっているとしか言いようがない」

 --刑事訴訟は検討しないのか

 「弁護士と相談している。代表選延期に伴う党費の返還も党員に約束しているので、きちんと返還がなされるように通帳や印鑑の返還も求めていかなければいけない。これまでずっと職員の給与や党費の返還など、党が決めたことで迷惑をかけられないものに関しては、お互い「しましょう」ということだったが、それも急になされないという状況だ。それがなされなければ次のことを考えていかざるを得ない」

 

 

郷原信郎弁護士の

「弁護士たる政治家」としての橋下徹氏への疑問

維新の党への法律意見書の作成提出

本日朝、維新の党に、私と清水真弁護士との連名による法律意見書を提出した。

同党の執行役員会のメンバーであった東徹衆議院議員が、「維新の党党大会実行委員長」と称して、10月24日に臨時党大会を開催する旨の文書を党員に送付し、今年5月の江田前代表の辞任をうけ、両院議員総会で代表に選出され、その後、代表として活動してきた松野氏と現執行部について、代表選任及び任期延長が無効で、代表及び執行役員会が存在しない状態となっていると主張していることに関して、東氏が開催を呼び掛けている「臨時党大会」が党大会として有効なものであるのか否か、松野代表及び現執行部の地位が正統なものか否かについて、弁護士の立場から法律意見を求められたことに対して回答したものだ。

私は、維新の党の支持者でも支援者でもない。維新の党執行部からの質問事項に対して、純粋に、法律家の立場から客観的な見解を述べたまでだ。

現在の維新の党執行部と、東議員や、離党した橋下徹元代表など、いわゆる「大阪組」との対立について、どちらの政治的主張が正しいのか、私が関知するところではない。

しかし、維新の党が政党であり、政党助成法に基づいて税金を原資とする政党助成金の交付を受け、また、政治資金規正法による規律の下で、政治資金の寄附を受けるなどして政治活動を行う「法人格を有する組織」である以上、その運営が法律に基づくものであり、党規約その他の内部規則に従ったものでなければならないのは当然である。

その点に関して、法的な争いがあるのであれば、本来は司法判断に委ねるべき問題だ。しかし、事柄の性格上も、時間的にも、裁判所の判断を仰ぐことによる解決は容易ではない。そうであれば、現時点において、両者の政治的対立とは離れて、客観的な立場で可能な限りの検討を行って判断を示すことが社会的にも重要なことだと考え、意見書の作成を受任したものだ。

政治に関連する問題への過去の発言・指摘

私は、これまでも、企業不祥事や検察問題のみならず、政治に関連する問題について、政治とは切り離して、純粋に法律的、或いはコンプライアンス的観点からの判断を示してきた。

最近の例では、維新の党の現執行部側の議員の多くが所属していた「みんなの党」の代表であった渡辺喜美氏が、化粧品販売会社の社長から、2010年の参院選前に選挙資金として3億円、2012年の衆院選前にも5億円の合計8億円の提供を受け、渡辺代表の個人口座に振り込んで貸し付け、そのうち約5億4900万円が未返済であったと新聞で報じられ、公職選挙法違反、政治資金規正法違反が成立するのではないかが問題にされた際、当ブログで、【渡辺喜美代表への資金提供問題、誰のどの選挙の資金なのかと題する記事を掲載し、今回の渡辺代表が受けた資金提供については、公選法・政治資金規正法違反での立件には、多くの隘路があり、容易ではないことを指摘した。

この記事は、マスコミの報道にも大きな影響を与え、その後、同氏は公選法違反等で告発されたが不起訴に終わり、法律的には、私が指摘した通りの結果となった。

この時も、私は、渡辺喜美氏とは何の関係もなく、支持する立場にもなかった。あくまで、検事の実務経験者たる法律家としての見解である。

さらに遡ると、2009年3月、政権交代をめざす野党第一党民主党の小沢一郎代表の秘書が、東京地検特捜部に政治資金規正法違反で逮捕された際、私は、元検事・検察実務家の立場から、検察捜査の暴走を厳しく批判した。新聞・雑誌等での発言(その中でも特に注目を集めたのが、日経ビジネスオンライン【ガダルカナル化する検察捜査】)のほか、サンデープロジェクトに多数回出演し、検察捜査の見込み違いを指摘した。

私は、小沢一郎氏とは一面識もなかったし、検事時代は、検察捜査の最前線で、公共工事利権に絡む事件と闘ってきた人間だ。民主党では、それまでは仙谷由人氏と親しく、政権交代後の各分野での施策についてのブレーン的な立場でもあった。(拙著【検察が危ない】ベスト新書)

私にとって、小沢氏をターゲットとする検察捜査を批判することについて、政治的意図は全くなかった。むしろ、小沢事件捜査での検察捜査を批判したことで、それ以降、小沢氏の仇敵とも言える仙谷氏とは疎遠になり、同氏が政権交代後、政府の要職を務めるようになってからは音信すら全くない。

また、私は一方で、小沢氏の姿勢も厳しく批判した。陸山会事件で秘書3人が逮捕された際は、検察を厳しく批判し、全面対決を打ち出していた小沢氏が、その後、秘書3人の起訴と同時に自らは不起訴になるや、「検察の公正公平な捜査の結果と受け止める」と述べたことを厳しく批判した。(朝日新聞2010年2月20日15面「私の視点」【小沢氏の対決姿勢はどこへ】)

このように、私は、政治に関連する問題や事件に関しても、純粋に法律的、或いは実務的な立場から発言し、見解を述べてきたつもりだ。

法律意見書作成に至る経緯と結論

今回、維新の党からの質問に対する法律意見書というのは、上記のような、ブログやマスコミでの発言とは異なり、報道されている範囲の事実や、検察での実務経験だけから意見を述べられるような問題ではない。党規約・内部規則・当内部での会合の議事録等の膨大な資料を精査することが必要であり、弁護士業務として、事務所の弁護士・法務スタッフ・他事務所の弁護士を補助的に活用した。そして、法律意見書の客観性を確保するため、日頃から親しい弁護士から、会社法等の組織法に精通する弁護士として紹介を受け、これまで一面識もなかった潮見坂法律事務所の清水真弁護士にも加わってもらい、徹底して議論した末に取りまとめたものである。

今回、この意見書作成を受任したのは、然るべき人物からの依頼があったからである。

先週金曜日、現在、維新の党の幹事長を務める今井雅人衆議院議員から電話があり、維新の党と「大阪組」との対立が法律問題に発展しており、法的検討を依頼したいと言ってきた。

今井議員は、美濃加茂市在住で、収賄事件で私が弁護人を務める藤井浩人美濃加茂市長から、去年紹介を受けていた。藤井市長の兄貴分のような存在で、市長の収賄事件に関しても、いろいろ側面からの支援をしてくれていた。

多くの業務を抱えている上に、ブログ【「姉歯事件」より重大・深刻な「マンションデータ偽装問題」】の執筆や、最近の不祥事事案に関するマスコミへのコメント等も加わって、多忙を極めている中、今回の意見書作成の業務を受任したのは、今井氏からの依頼だったからであり、まさに、「美濃加茂コネクション」によるものであった。

極めて短期間での調査・検討と意見書の作成であったが、必要な検討は十分に行ったものであり、判断・結論には自信を持っている。

「松野代表及び現執行部には正統性があり、東議員の送付した文書によって,何らかの会合が開かれたとしても,それは維新の党の党大会ではなく,そこで何らかの内容が決定されても,その効果は維新の党には及ばない」との結論は、質問書に示された現執行部の見解に沿うものだが、法律家として当然の見解だと考えており、党大会依頼者側の判断に迎合したものでは決してない。

「弁護士たる政治家」としての橋下徹氏に対する疑問

以上が、本日、維新の党執行部に提出した法律意見書を作成するに至った経過や、この問題に関する私の立場に関する説明である。

これに関連して、維新の党を8月に離党しているものの、今も「大阪組」の中心人物でもある橋下徹氏のことについても触れておこう。

私は、橋下氏に対して、政治的には、支持するものでも批判するものでもない。これまでツイッター・ブログ等でも、橋下氏についてのコメントは一切行った記憶はない。

唯一の接点は、2008年3月に和歌山市で開かれた近畿ブロック知事会で、私が「談合問題とコンプライアンス」について講演した時であった。

当時、私は、拙著【「法令遵守」が日本を滅ぼす】(新潮新書)で述べた、「日本社会では法令と実態とが、しばしばかい離し、そのような法令の遵守に凝り固まったコンプライアンスが、社会に大きな弊害をもたらしている」との持論につついて、全国各地で講演等を行っていた。

当時、大阪府知事だった橋下氏は、私の講演内容に共感し、「大阪府庁でも、法令遵守が大きな弊害をもたらしている」というようなことを発言していた。

それ以降も、これまで、橋下氏について特に悪い印象を持ったことはない。

しかし、今回、法律見解作成業務に関連して、維新の党執行部と「大阪組」との対立に関する橋下氏のツイッター・ブログでの発言を大まかに把握した。その個人的感想を率直に言わせてもらうとすれば、「弁護士たる政治家」の姿勢としては大きな問題があるように思える。

橋下氏は、法律論や判例等を持ち出しては、「自分は法律の専門家、弁護士ではない人間には法律のことはわからない」という前提で、弁護士ではない人間を徹底して見下した言い方をする。

[10月19日のツイッター・ブログ]

バカども国会議員の連中が、とんでもない法律論を流し始めている。なんかおかしいなと感じている国会議員は、必ず弁護士に相談しに行くこと。

などという言い方が、その典型である。

そして、その中に、「憲法31条 デュープロセス」「平成3年の監獄法施行規則に関する最高裁判例」などと、法律の専門用語や判例などを持ち出して、「やはり法律の専門知識を持った弁護士にはかなわない」と思わせる。

[10月18日のツイッター・ブログ]

維新の党には現在代表がいないという主張について維新の党の国会議員が反論しているが、いやー酷いねこの集団は。顧問弁護士くらいに相談してから発言した方がいいよ。国会議員って法律を作る人達。ところが維新の党の国会議員は法律的素養0

僕がなんと言おうと、大阪組の国会議員がなんて言おうと、最後は必要なプロセスを踏む。当たり前じゃないか。憲法31条、デュープロセスくらいちょっとは勉強してよ。維新の党のおこちゃま集団は、僕が決めれば、大阪組の国会議員が言えばすべてが決まると勘違いしている。手続きというものを知らない。

維新の党の幹部と名乗る人たちの反論の頼りの綱はここだけ。平成3年の監獄法施行規則に関する最高裁判例を一回くらい読んだらどうだ?いわゆる委任立法の限界というやつだ

というような言い方である。

しかし、実は、橋下氏が持ち出している専門用語や判例に対する理解というのは誠に不正確で素人的なものであり、そこで持ち出すことの妥当性には重大な疑問符がつく。

維新の党の幹部に「一回くらい読んだらどうだ?」と言っている「平成3年の監獄法の最高裁判例」は、「幼年者と被勾留者との接見を一律に禁止した上、例外として、限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すと定めた監獄法施行規則が、監獄法50条の委任の範囲を超え無効と判断された事例」であり、被拘留者が外部者と面会を行う自由という人権の制限が問題となった事案である。

人権の制限について法による委任の範囲を超えることが許されないということと、今回の維新の党のような、組織法に関して上位規範による委任の範囲をどのように解釈するかという問題は、性格が全く異なるのであり、同列に論じることはできない。

また、「代表任期延長についての手続き」の問題に関して「憲法31条、デュープロセス」という言葉を持ち出しているが、「何人も、法の適正な手続きによらずに、生命、自由、または財産を奪われることはない」というのが憲法31条のデュー・プロセスであり、本来は、刑事手続きの適正さの保障である。それが、行政的手続きによる権利侵害での手続的保障にまで及ぶとの議論はあるが、「組織の長を決定する手続き」という組織法上の「手続き」とは、これも性格が異なる。

「平成3年の最高裁判例」についても、憲法31条についても、橋下氏の論理は、あまりに表面的かつ素人的な「こじつけ」にしか見えないのである。

そして、橋下氏は、別のツイートで

国会こそが国権の最高機関であり、唯一の立法機関(憲法41条)だから、行政で何でもかんでも決められるわけじゃないよ、というのが平成3年の最高裁判例

党で言えば、党大会が国会。党大会が最高議決機関(規約6条)。執行役員会は内閣、行政・執行機関(規約第4章)なんだよね。維新の党の国会議員には三権分立から教えないといけないよ。

規約6条2項において党大会にも『その他重要事項を決めることができる』とバスケットクローズ条項が定められている

代表選出なんて、明らかに組織の重大事項。そうなれば規約6条2項に基づいて党大会で審議し決することは当たり前

というように、監獄法に関する最高裁判例を、憲法41条に結びつけ、「代表選は党大会で行うべし」という議論にまで無理やり結び付けていくのである。

しかし、組織内部において、構成員全体で構成される機関と、その委任を受けて業務執行を行う執行部との間で、どのような権限配分、役割分担が行われるのかは、組織内における自律的な判断に委ねられるのであり、それは、国会が国権の最高機関であることを前提とする国政レベルでの法律の規則等への委任の範囲の問題とは異なる問題である。

しかも、橋下氏が強調している規約6条2項の、党大会が「その他重要事項を審議し決定する」というのも、党大会の招集権者が、規約に基づく招集通知を期限内に行い、その中で審議事項とすることを連絡するなどの手続きがとられた場合に、「その他重要事項」が審議されることになるのであり、党大会の開催手続きを無視して、代表選出が当然に党大会での決定事項となるわけではない。

橋下氏の論理は、幾重にも飛躍しており、凡そ法的な論理になっているとは言い難い。

このように、適切とは言い難い法律専門用語や、一般人には容易にアクセスできない判例などを持ち出して、自論の根拠づけとなるかのように見せるやり方は、「弁護士たる政治家」として厳に慎むべきだと思う。弁護士としての法的素養や実務能力は、そのようなことのために与えられたのではない。

検事時代の経験だが、レスリング・ボクサー等のプロ選手が、その技を一般人に使った場合には、「凶器使用」と同等の厳しい量刑で求刑するのが通例だった。プロは、プロスポーツで培った技能を、プロ相手に使うべきであって、一般人に危害を加える方向で使うことは許されない。弁護士も、その技能を政治の分野で、非弁護士の政治家や国民を欺く方向で使ってはならないのである。

繰り返しになるが、私は、政治的に維新の党を支持するものでもなければ、近く立ち上げられるという「おおさか維新の会」を批判するものでもない。両者は、政党らしく、正々堂々と、政策による論戦を行ってもらいたい。

橋下氏にも、法律論を持ち出すのであれば、「弁護士たる政治家」としての矜持を持って、正確かつ適切に行うべきであり、それができないのであれば、「弁護士」という意識は捨てて政治家としての活動を行ってもらいたい。

 
 
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8 コメント

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Unknown (タケ坊)
2015-11-01 09:42:14
その米山隆一氏ですが、おおさか維新の会は政党じゃないようですねw東京組に土下座せんと政治団体にもなれるのか、素人の自分にはわからないですw会派すら作れるのかな?
http://www.election.ne.jp/10840/98599.html
返信する
Unknown (とら猫イーチ)
2015-10-31 16:44:29
バードストライク 様

 いえ、いえ、あなたのコメントに怒りは、しておりません。

 ただ、都構想に反対の運動を、個人的にしておりまして、その折に、下町の人々と色々と話を伺う機会がありましたので、脳裏に色々と浮かんだことを書きましたのみです。

 私が幼少時には、父母に連れられて、平野は勿論ですが、阿倍野や西成の下町へ良く行きました。

 今は亡き南海天王寺線や、同じく南海平野線も懐かしかったのですが、現在は、乗りたくても乗れません。

 この春には、何度となくその街を訪問しました。

 亡母は、阿倍野区に、今でもそのままの姿で残る大谷学園の出身でしたので、其処へも何度も訪問しました。 昭和30年代のままでした。

 帝塚山の高級住宅地もそのまま、西成の各地にあるアーケードのある商店街もそのまま、まるで、昭和30年代のままでした。 

 松虫の阪堺線の停留所の近辺にありますタオルを販売しているお店も、亡母と立ち寄った折のまま、その他も昭和30年代のままでした。 

 一人で歩いていて、この街を大阪市から切り離して、バラバラにさせるものか、と怒りが湧き出て来ました。 
 下町の人々は、府や市の行政に何も期待していません。 ただ、街を壊さずに、そのままに自分たちが生きることをこの先もさせて欲しい、と願っているのです。 

 亡父母は、戦前に自分たちが住んでいた大阪市へ帰りたくて、子供ともどもに大阪市を歩き、不動産を探したのですが、やっと探し当てた阿倍野の家へ引っ越す前に、亡父の事業が破綻して目的を遂げること無く不動産を売りました。 

 その時代への郷愁から、大阪市へ何度も通った訳です。 

 私のコメントに、少し思い入れがあるのは、それが理由です。 私こそ、その思入れが強すぎましたので、申し訳ありませんでした。 
返信する
そりゃないよ(困) (リベラ・メ)
2015-10-31 16:05:35
そりゃないよ、橋下市長。「政治を維新する」為に“維新の党”を作ったのに、(原因は兎も角)自分から出て行って於いて「維新の名を使うな!!偽物維新!!」だなんて…。“潔く”出て行って、「俺は新しい政党を一から築いて行く!!」って言えないのかしら…。
返信する
イーチさんへ (僭越ながら バードストライク)
2015-10-31 12:38:24
ゴメンチャイ、やはり憤激を買ったようで...。

拙者の住んでいたのは市内北部なので、平野区には、行ったこと、アリマセーン。
街が汚いというのは、ゴミ・吸殻のポイ捨て、中身入れたまま捨てられたビンや缶、目に余る不法駐輪・駐車( 確信犯!) 、列の割り込みなど。天神橋筋 (歩行者天国のアーケード街 )を駆け抜ける自転車の多さ、危険です。いろいろな街を旅行しますが、モラルの低さは日本有数ではないかと思います。ーーもちろん、良識ある人、親切な人もいます。でもそういう人たちは、とても控えめなんですね。だから傍若無人な方々が目立つのです。

ご気分を害したようで、申し訳ありませんでした。
返信する
Unknown (とら猫イーチ)
2015-10-31 10:37:08
 大阪人は、アホ=?、 かしこ=? だと思いますね。 
 
 しかも、みなさんが、アホぶる! 

 アホと言われて喜ぶのも大阪人ですが、馬鹿と言われるとホントに怒りますよ。 

 大阪市の中と、市外とでは、別世界で、市内の中も、南北で、別世界です。 

 本当の大阪人は、他の世界とは隔離された南の下町に生活していて、他の世界とは、隔絶しています。 

 行けば分かりますが、五十年以上前と変わらない街で、外界とは隔離されたようです。 大阪市も、こうした街は、再開発が不可能と判断したのか手付かずのままです。 

 こうした街中が、本当の大阪で、温かい人情が未だにあり、私は、過去を懐かしんで何度も、何度も訪問してしまいます。 

 都構想に対して、怒りを露わにしたのが、こうした街に住む普通のおっちゃん、おばちゃんたちでした。 

 私たち、大阪の街を愛している者は、北や南の綺麗な街並みは好きではありません。 あれは、外界の世界の人向け、と思っています。

 汚い街でも、人々が住んでいるのです。 住んでいるからこそ汚いのです。 

 汚い台所で、美味しい料理が出来る、と言われますが、そのとおりで、整然と片づけられた小奇麗なキッチンで出来る料理は、形式のみです。 

 更に、歴史を観れば、分かりますが、大阪には、平野と堺と言う自治都市がありました。 侍に統治されていない環濠自治都市が、この狭い地域に二つも存在したのです。 

 因みに、私の母は、平野の出身でした。 言葉にも、独特のものがありました。 大阪の中でも、他とは異質な存在です。

 また、宗教団体が強力でした。 本願寺が織田信長に制服されず抵抗した歴史があるように、中央政権に与しない抵抗勢力が強い風土があるのです。 

 橋下氏は、この風土を上手く利用して、己の政治的野望を遂げようとしているのですが、都構想が住民投票で敗れたように、大阪人の中核部分に嫌われたのは痛いでしょう。 

 彼が、安倍首相と懇ろになったのが間違いでしたね。
中央の政治家と馴染みになれば、大阪人の中核部分がどう見るかを考えなかったのでしょう。 

 策士、策に溺れる、の諺どおりです。 
 
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行く末 (通りすがり)
2015-10-31 10:04:56
これで万が一当選したあと、裁判沙汰になって負けたらどうするんだろう?
市長選挙のほうは捨てるってことかな?
そして松井のほうは「自分はおおさか維新とは無関係、ただ推薦されただけ」とか主張するのかな?
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大阪の印象 (僭越ながら バードストライク)
2015-10-31 06:21:16
大阪に住んでいた時、大阪人というのは、

アホ 2 対 かしこ 1

ではないかと思った。この3つくらい前の、維新を取り上げた項に載っていたデータを見て、やはりそうかと思った。でも、橋下支持は不支持の1.5倍程度なので、少し学習したのか。

基本的に野次馬体質、面白ければいいという無責任体質が優勢なように思う。言うなれば、ネトウヨ体質か。昔は反権力精神の息づいている街と聞いていたが、住んでみた大阪は、今この時、自分が良ければいい、という刹那主義、利己主義が支配しているように思った。そしてひたすら街がキタナイ。

以上、目覚めたるかしこの大阪人の憤激を買いそうな、偏見に満ちた大阪人評を書きまして、ゴメンクサイ~。

でも、数年前、ちと用事がありまして、前住んでいたマンションに行きましたら、ゴミが分別して置かれていたんですね。私らが住んでいた時は、何もかも一緒くたでしたから、分別回収するようになっていたのです。平松市長の時代に行われるようになったと聞きました。大阪人にゴミ分別させる平松氏、素晴!

悪態つきましたけど、いま日本中、似たようなものですよ。安倍の支持率をご覧なさいな...。
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誰が参謀かといえば (ゆう)
2015-10-31 03:07:08
維新の党の米山隆一氏ですね。
彼は元大阪派の弁護士です。
橋下氏の主張をことごとく論破しており、橋下氏は維新の党が意見書を公開した郷原弁護士のことは「頓珍漢」と訳のわからない批判をしていますが、米山隆一氏の主張が公になると不都合なので、全く触れずにいます。
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