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安倍政権が憲法改正の突破口にしようとしているのが、緊急事態条項と並んで環境権規定の新設です。
長年改憲を主張してきた読売新聞の本日憲法記念日の社説も環境権から改憲をはじめろと主張しています。
憲法記念日 まず改正テーマを絞り込もう
「衆院憲法審査会は連休明けの7日に会合を開き、今後の審議内容に関する各党の意見表明などを行う。最初に取り組むべきは、改正テーマの絞り込みである。
自民党は、「大規模災害などの緊急事態条項の新設」「環境権など新たな権利の追加」「財政規律条項の新設」の3項目を優先するよう提案している。」
「環境権など、新たな国民の権利の追加も重要なテーマである。
良好な環境を享受する権利については、自民党に加え、「加憲」の立場の公明党も前向きだ。」
と言った具合です。
いつも脇が甘い自民党憲法改正推進本部長の船田元氏はもっと露骨で、2015年4月28日、東京の外国特派員協会で会見し、憲法の条文をいっぺんに改正するのではなく、関連するテーマでまとめて何回かに分けて改正を行う、とした上で、
「私の希望では2年以内に第1回目の改正を実現したい」
と語り、第1回目の改正テーマとしては、
「環境権の設定、財政健全化に関する条項、自然災害などの緊急事態に関する条項」
などが考えられるとして、
「これらのテーマについて各党で深堀りの議論をしていきたい」
と語っています。
そして、本丸の憲法9条の改正については
「憲法改正の中心テーマだと思っている」
が9条をめぐっては世論が二分されているため、
「国会内外でさらに慎重な議論を行わなければいけない2回目以降の改正で手がけることになると思う」
との見通しを示しました。
さらに、自民党の日本国憲法改正草案を手がけ、解説まで出している磯崎陽輔首相補佐官(国家安全保障担当)はさらにわかりやすく、2月21日、盛岡市での自民党党会合でこう言い放ちました。
「憲法改正を国民に1回味わってもらう。『憲法改正はそんなに怖いものではない』となったら2回目以降は難しいことを少しやっていこうと思う」
環境権、緊急事態事項、あと財政規律条項の3点セットで、国民に改憲に慣れてもらって、あとは9条など好きなことを「改正」するというのです。
どうですか、みなさん。ここまで為政者にとことん舐められて怒りを感じませんか。
ちなみに、もう一度言いますが、磯崎首相補佐官が自民党の憲法改正草案を作り、解説まで書いているのですが、彼はこんなことをツイッターでつぶやいて有名になりました。
この人は立憲主義という言葉を見たことも聞いたこともないのに、新しい憲法の草案を書いてるんですよ。
信じられますか?
もちろん法学部の学生としてもろくなもんじゃなかったと思いますが、こんな人が憲法の条文を書いて、解説も書いて。
よくこれで、日本国憲法はGHQが勝手に書いて押し付けた憲法だとか批判できますね。あんたが書くより100万倍マシだよ。
だから私はこんなことを書かないといけなくなってきたのです。
ほんと読んでください、ひどいから。
自民党のトンデモ改憲原案はもはや「憲法」とは言えない この国にはまともな政党はないのか
さて気を取り直して。
このように、安倍政権は国民に受けがいい環境権既定の新設を前面に出して憲法「改正」のハードルを越えようとしています。
国民にとってみれば、大事な基本的人権である環境権の規定が増えるわけですから、これは諸手を挙げて賛成ということになりそうじゃないですか。
ところが!
実は、磯崎氏らが書いた自民党の日本国憲法改正草案のどこにも環境権の規定がないのです!
唯一、それらしいところというと、こちら。
第25条の2(国の環境保全の責務)
国は、国民が良好な環境の恵沢を享受することができるようにその保全に努めなければならない。
これ、どこにも環境権、とか、権利とかいう言葉がありませんよね。
もし、環境権をこのような言葉を使って規定するならこうでなければなりません。
第25条の2(環境権)
国民が良好な環境の恵沢を享受する権利を保障する。
え?
世の中には権利と義務が表裏一体であって、国民の権利という形で規定されていなくても、国の責務という形で規定されていれば環境権が規定されているも同然じゃないのかって?
いいえ、全然違うんですよ、権利が規定されているか否かで。
実はこの自民党草案の環境規定が第25条の2と、枝番号になっていることに気づかれたと思うのですが、25条は有名な生存権の規定です。この25条と25条の2を比べてみると歴然とします。
日本国憲法第25条
1 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
自民党憲法草案 第25条の2
国は、国民が良好な環境の恵沢を享受することができるようにその保全に努めなければならない。
ね?
自民党の環境権は、日本国憲法25条の第1項の生存権規定がすっぽり抜けていることがわかります。25条2項の国の努力規定しかないですよね。
つまり、自民党憲法案には、環境権の規定などないのです。
では、国の努力義務を規定するだけなのと、ちゃんと国民の権利として規定するのとではどう違うのでしょうか。
たとえば、生存権を例にとると、今保障されている国からの給付が「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ギリギリの水準である人がいたとして、国の給付基準が変わって給付が最低限度未満になったら、憲法25条1項に規定されている生存権を侵害されたとして憲法訴訟が提起できるのはわかりますよね?
もうお分かりになったと思いますが、そうなんです、もし国の努力規定しかなかったら、国民が自分の権利を侵害されたとして裁判を起こせないんですよ!権利として規定されていないと!!
なぜなら、日本の裁判は具体的に自分の権利が侵害されるなど損害がないと原告になれないからです。
国に義務違反があっても裁判にはできず、せいぜい国は努力を怠ったとして、政治責任がうんぬんされるだけです。
公明党も環境権を表に出して改憲に賛成する気満々。民主党も全く分かってない。
そこんとこ、実は読売新聞もちゃんと考えていて、冒頭にご紹介した社説でこう書いています。
昨年夏の衆院憲法審査会の欧州視察では、環境権の新設が違憲訴訟の増加を招く恐れがあるとの指摘を受けたという。こうした課題も含めて、新たな権利に関する議論を掘り下げることが大切だ。
つまり、国民に基本的人権として環境権を保障すると規定してしまったら、環境権侵害だとして原発等に対する憲法訴訟が起きてしまうので、絶対に権利・人権としては規定しないんですよ。
でも、
国は、国民が良好な環境の恵沢を享受することができるようにその保全に努めなければならない。
っていう規定があれば、法律に素人の国民は、お、ちゃんと国民の環境権が規定されている、だって国に義務が課されているもの、と思うわけです。
そもそも、条文の表題は(国の環境保全の責務)となっているけれども、条文は「努めなければならない」だから努力義務だけであって、強制力のある法的義務ではないだなんて、わかんないもの。
作った磯崎補佐官も法律の素人のくせに、こういう抜け道だけはよく考えたものです(まあ、悪い法律家がバックにいるのでしょう)。
環境権については、憲法学界でも裁判所でも、実はもう日本国憲法でも以下の規定にある「幸福追求権」の具体的な中身として、憲法上基本的人権として保障されているとされていて争いがありません。
日本国憲法第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする
誰でも幸福を追求するためには、良好な環境が必要不可欠ですものね。
このように真正面から環境権などと書かれていなくても、人権として保障されていることに争いがないものに、有名な「知る権利」もあります。
日本国憲法第21条
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
このように表現の自由として規定されているのに知る権利まで保障されていると解釈されるのは、表現の自由(情報の送り手の自由)が保障されるのなら、知る権利(情報の受け手)も保障されないと意味がないからですね。
つまり、環境権も知る権利も、すでに基本的人権として保障されていることは学問上も裁判上も確定しており、あとは裁判や学問上の議論でその中身が決まっていくという段階なのです。
同じく自民党の憲法草案に関わった片山さつき議員のツイート。基本的人権を全く理解していない。よって、憲法草案は人権の制限規定だらけ。
安倍自民党の「日本国憲法改正草案」の恐怖2 基本的人権規定の内容を削減して極小化し法律で好きに制約
この点について、菅義偉官房長官も2015年1月10日、BS朝日の番組で、憲法改正は
「まずは欠けている部分の大事なところから入っていくべきだ」
と述べ、戦争放棄をうたう9条より前に着手すべき事例として、
環境を守るうえでの国の義務、国民の責務をうたった「環境権」の創設
などと言っています。
人権どころか、国民の責務をうたうって言ってますからね。自民党草案よりさらに悪くなってます。
もう、徹頭徹尾、権利としての環境権なんて認めないのは明らかです。
だいたい、環境権なんて認めてしまったら、辺野古の海を埋め立てて基地なんてできるわけがありません。
ですから、安倍政権が憲法を「改正」して環境権を新設しますというのは、二重に毒まんじゅうなんですね。
1 そもそも環境権規定は必要ない
2 実は環境権を権利として規定するつもりはない。
はい、安倍政権の改憲論や、それを支える読売新聞など保守マスメディアのやり口はわかっていただけたでしょうか。
このように、メリットがなくデメリットばかりの安倍自民党の憲法「改正」論議には絶対に乗らないようにいたしましょう。
安倍政権の騙しのテクニック、凄いわあ。
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自民・船田元氏「1回目の憲法改正は2年以内に実現したい」
2015.04.28 16:00 THE PAGE
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自民党憲法改正推進本部長の船田元氏が28日、東京の外国特派員協会で会見した。憲法改正は何回かに分けて行う意向を示し、「第1回目の改正は2年以内に実現したい」と希望を語った。
[写真]会見する船田元・自民党憲法改正推進本部長
船田氏は、憲法の改正議論における原則として、衆参審査会でのオープンな議論、改正反対の政党も交えた議論であることなどを挙げた。改正のやり方としては、憲法の条文をいっぺんに改正するのではなく、関連するテーマでまとめて何回かに分けて改正を行う、とした。その上で、「私の希望では2年以内に第1回目の改正を実現したい」と語った。
第1回目の改正テーマとしては、環境権の設定、財政健全化に関する条項、自然災害などの緊急事態に関する条項などが考えられるとして、「これらのテーマについて各党で深堀りの議論をしていきたい」と語った。
九条の改正については「憲法改正の中心テーマだと思っている」との認識を示した。
ただ、九条をめぐっては世論が二分されているため、「国会内外でさらに慎重な議論を行わなければいけない2回目以降の改正で手がけることになると思う」との見通しを示した。
憲法記念日 まず改正テーマを絞り込もう
◆「緊急事態条項」の議論深めたい◆
きょう施行68周年を迎えた日本国憲法は、一度も改正されたことがない世界で希有けうな存在だ。
日本の社会や国際情勢の劇的な変化に伴う、憲法と現実の乖離かいりを解消する必要がある。与野党は、憲法改正論議に本腰を入れねばならない。
憲法改正の手続きを定める国民投票法は2007年5月に成立した。14年6月には国民投票権を当面は「20歳以上」とし、施行4年後には「18歳以上」に引き下げる改正法も制定された。改正に向けての環境は整備されつつある。
◆現実的なアプローチで
衆院憲法審査会は連休明けの7日に会合を開き、今後の審議内容に関する各党の意見表明などを行う。最初に取り組むべきは、改正テーマの絞り込みである。
自民党は、「大規模災害などの緊急事態条項の新設」「環境権など新たな権利の追加」「財政規律条項の新設」の3項目を優先するよう提案している。
16年夏の参院選を経たうえ、17年の通常国会前後に国会が改正を発議し、国民投票を実施する日程案も取りざたされる。
無論、憲法改正のハードルは高い。衆参各院の3分の2以上の賛成で発議し、国民投票で過半数の賛成を得ねばならない。
憲法9条の定める自衛権のあり方や衆参両院の役割分担の見直しは、極めて重要な課題である。96条の発議要件の緩和も、高すぎる改正のハードルを是正するのに有効だ。ただ、いずれも国会での合意形成には時間を要しよう。
憲法改正は条項別に実施されるため、全体を見直すには、国民投票を複数回行う必要がある。まず、より多くの政党の賛成が得やすいテーマから取り上げるのが現実的なアプローチだろう。
世界のほとんどの国が憲法に緊急事態条項を備えている。
東日本大震災のような緊急事態時には、多くの国民の生命や財産を効果的に守ることが最優先される。首相権限を一時的に強め、地方自治体などを直接指揮することなどを可能にしておくことには、幅広い理解が得られよう。
自民党が12年4月に発表した憲法改正草案は、首相が緊急事態を宣言すれば、法律と同等の効力を持つ政令を内閣が制定できるとしている。その政令は国会の事後承認が必要となる。
憲法に、どんな条項を新設するのか。法律では、より具体的に何を定めておくのか。与野党は、大いに議論を深めてもらいたい。
環境権など、新たな国民の権利の追加も重要なテーマである。
良好な環境を享受する権利については、自民党に加え、「加憲」の立場の公明党も前向きだ。
◆環境権の新設も課題だ
昨年夏の衆院憲法審査会の欧州視察では、環境権の新設が違憲訴訟の増加を招く恐れがあるとの指摘を受けたという。こうした課題も含めて、新たな権利に関する議論を掘り下げることが大切だ。
財政規律条項にも、同様の論点がある。国家財政の健全性を維持することは重要だが、不況対策としての機動的な財政出動が制約されるのは避けねばなるまい。
疑問なのは、民主党が「安倍政権の下では、改正論議に応じられない」などとして、後ろ向きな姿勢を続けていることだ。
現憲法について「連合国軍総司令部(GHQ)の素人たちがたった8日間で作り上げた代物」とする13年の安倍首相の発言を、「憲法軽視」と問題視している。
憲法がGHQ主導で作成されたのは事実だ。この発言を根拠に憲法論議さえ拒むのは野党第1党としての責任の放棄ではないか。
党内に改正に前向きな勢力と慎重な勢力を抱える中、対立の深刻化を避けるために論議を先送りしているようにしか見えない。
◆幅広い合意形成目指せ
維新の党は、憲法改正に基本的に前向きだ。道州制、一院制など統治機構改革に力点を置きつつ、自民党の優先する3項目についても理解を示す。最高顧問の橋下徹大阪市長は「できることがあれば、何でもする」とまで語る。
「自主憲法の制定」を前面に掲げる次世代の党は、国家緊急権の規定などを主張している。
多くの政党や議員が改正に賛成するが、実際に改正項目を絞り込み、具体的な改正原案をまとめ上げる作業は簡単ではない。各党が積極的に歩み寄り、幅広い合意を得ることが肝要である。
国民全体の改正機運を醸成する努力も欠かせない。自民党は、他党や関係団体の協力も得ながら、国民との対話集会などを充実させてもらいたい。
憲法改正「9条より先に環境権や私学助成」 菅官房長官
2015年1月10日18時37分 朝日新聞
日本国憲法は3日、施行から68年を迎えた。憲法改正をめざす安倍晋三首相のもと、自民党は国会での改正発議と国民投票の実施に向けた戦略を模索している。連休明けには、憲法論議の舞台となる衆院憲法審査会で実質的な審議が始まる。改憲へ動く安倍自民党に、他党はどう臨むのか。憲法をめぐる攻防の「現在地」を検証した。
2月4日夕、首相官邸5階の執務室。安倍首相は、自民党の船田元・憲法改正推進本部長と礒崎陽輔・首相補佐官を招き入れた。
数日前から面会を求めていた船田氏の狙いは、憲法改正に向けた段取りについて首相のお墨付きを得ることだった。
「国民投票までの手続きを考えれば、憲法改正は来年夏の参院選には間に合いません」。憲法改正は衆参両院の3分の2以上の賛成で発議し、国民投票で過半数を得る必要がある。それを念頭に、船田氏は国会での与野党の合意形成を優先すべきだと主張した。
改憲を政権の究極目標とする首相は折に触れ、早期改正への意欲を見せてきた。だがこの日は、急がば回れと迂回(うかい)を説く船田氏に賛意を示した。「それが常識的ですね。改正の中身はこれからの議論に任せましょう」
自民党内ではいま、改正時期や段取りを巡る対立が表面化しつつある。船田氏ら「合意形成派」の動きを警戒するのは、首相に近く、来夏の参院選と国民投票の同時実施を掲げる「急進派」の議員たちだ。
「いよいよ安倍政権になって(改正への)機運が高まってきた。状況を見つめ、国民運動として憲法改正に取り組んでいきたいというのが総理の本意だ」
古屋圭司・前拉致問題相は3月19日、早期の憲法改正をめざす運動団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の総会であいさつし、首相の「本意」は早期改正にあると強調した。総会では、来夏の参院選に合わせて国民投票を行う目標が再確認された。
首相や古屋氏らは「連合国軍の押しつけ」とみる憲法の中でも、とりわけ戦争放棄を規定する9条改正こそ「本丸」と位置づける。公明や野党の反発が強い9条改正を実現するため、国会の発議要件を過半数に下げる96条改正の先行実施を首相に働きかけたのも、古屋氏ら「急進派」だった。
ただ、昨年の衆院選圧勝で首相は求心力を高め、9月の党総裁選も「無投票再選」との声が強まっている。2月の会談で船田氏らは、「時間」を得た首相にギアチェンジを持ちかけ、急進派の機先を制して当面の主導権を握った形だ。国民投票を行う時期の目標設定は、首相の改憲戦略の方向を決めるからだ。
「熟柿(じゅくし)路線」の船田氏らがめざすのは、緊急時の政府・国会対応を規定する緊急事態条項などを新設する改憲策だ。なぜ首相がこだわってきた9条や96条でなく、新条項なのか。(石松恒、渡辺哲哉)
■9条掲げず「まず一度改正」
9条改正の「正面突破」ではなく、国会の合意形成を通じて国民投票への地歩を固める――。安倍晋三首相は、自民党の船田元・憲法改正推進本部長と2月に会う前から、改憲戦略の転換をにおわせ始めていた。
「政治には理念も大切だが、結果を出すには国民的な理解が必要だ。国民投票で過半数を得られなければ、改正という結果は得られない」
1月29日の衆院予算委員会。首相は、自民の稲田朋美政調会長から憲法改正への姿勢について問われると、改正の「結果」にこだわる考えを強調した。背景には、2012年末の第2次政権発足後に起きた二つの出来事が影響している。一つ目は政権返り咲きを果たした直後の失敗だった。
12年12月の衆院選で大勝した首相は、連立与党の公明に加え、改憲に前向きな日本維新の会(現・維新の党)やみんなの党(14年に解党)を巻き込み、改憲の国会発議を可能にする衆参両院での3分の2確保をめざす戦略を描いた。その手段が、発議のハードルを下げる96条の改正論だった。
「私は第96代首相だが憲法96条を変えたい。(反対する)国会議員が3分の1を超えれば国民は指一本触れることができない。憲法を国民の手に取り戻すことから始めたい」。13年4月、首相は地元・参院山口補選の街頭演説で改正手続きの緩和を改憲の「入り口」にしたいと訴えた。
しかし、改憲派の有識者からも、この手法は「裏口入学」「立憲主義に反する」と激しく批判された。13年7月の参院選を前に、首相は「国民的な理解を得られている段階ではない」と、96条改正論を事実上撤回。急進的に改憲をめざす空気は一気にしぼんだ。
もう一つは、集団的自衛権の行使を認めた憲法解釈の変更だ。そもそも平和主義をうたう憲法前文と9条の抜本変更は、首相の改憲論の中核と言える。
従来の政府見解が集団的自衛権の行使を「持っているが使えない」と禁じてきたことについて、首相は06年に出版した「美しい国へ」で、「権利があっても行使できないのは『禁治産者』の規定に似ている」と批判し、9条改正の必要性を強調していた。集団的自衛権を使えるよう憲法解釈を変えた昨年7月の閣議決定で、首相は宿願の一つをかなえたと言える。しかし半面で、「9条改正は直ちにやる必要がなくなった」(首相側近)ことにもつながり、9条改正への勢いをそぐ結果も招いた。
首相が「国民的な理解」を強調するのは、96条や9条改正を本命として掲げられない事情があるからだ。首相と船田氏の会談に同席した礒崎陽輔・首相補佐官は今年2月21日、盛岡市での党会合で、改正内容より「結果」にこだわる手法をこう表現した。「憲法改正を国民に1回味わってもらう。『憲法改正はそんなに怖いものではない』となったら2回目以降は難しいことを少しやっていこうと思う」
ただ、本音を隠し、野党や国民との「合意」をめざせば、改憲にこぎつけられるのか。首相側近の一人は、首相も自民党もジレンマに陥っていると嘆く。
「手練手管で憲法改正をやろうとすれば政治的な勢いは出ない。緊急事態条項などで野党と合意を図る路線も、96条改正論のように『正面からやらずひきょうだ』と国民に見透かされれば、再び失敗する。今の戦略で本当にうまくいくのか、誰も読み切れてない」(石松恒、安倍龍太郎)
■新条項の追加 各党、思惑にずれ
9条など今ある条文を変えるのでなく、新たな条項を追加する。船田氏が首相に示した方針は、公明や民主も、緊急事態や環境権、財政規律などの条項を憲法に加えることを模索してきた経緯があり、合意を図りやすいと踏んだからだ。
この議論が現実味を帯び始めたのは昨年7月、衆院憲法審査会議員団によるギリシャとポルトガル、スペインへの視察がきっかけだ。3カ国とも憲法に緊急事態と環境権の規定がある。スペインは財政難に苦しみ、憲法に財政規律条項を盛り込んだ。船田氏は視察中、公明と民主の審査会メンバーに「帰国後、こうした項目で議論の絞り込みをしたい」と働きかけた。
昨年11月6日、審査会の討議で、民主党の武正公一・審査会幹事は、緊急事態条項について人権尊重などを前提に「国家緊急権を憲法に明示」すべきだと発言。共産党を除く7党が必要性に触れ、船田氏は「緊急事態条項から議論を始められるのでは」と手応えを感じた。
だが、自民が圧勝した昨年末の衆院選後、各党の思惑は大きくずれ始めた。
民主の岡田克也代表は「安倍政権である限り、憲法改正の議論はしない」と明言。将来の改憲を容認する立場は維持しつつ、政権と対決する姿勢を打ち出した。衆参の審査会では当面、立憲主義などを議題とし、改憲の具体的な議論は避ける方針だ。党幹部の一人は「党内は改憲派が大半で、緊急事態条項などの必要性も感じる。悩ましい状況だ」と打ち明ける。
与党の公明党にも、改憲議論を本格化させたい自民への警戒感が広がる。
「憲法改正そのものが大きな目的ではない。中身が大事だ。改正の期限ありきでもない。国民とともに議論し考え方を共有することで、初めて改正が実現できる」。山口那津男代表は5月1日、東京・新宿の街頭演説で自民を牽制(けんせい)した。
集団的自衛権の行使容認を反映させた安全保障法制の与党協議では、支持母体の創価学会から公明に自衛隊の海外派遣拡大を懸念する声も寄せられた。公明は4月から約2年ぶりに党内の憲法論議を再開させたが、9条改正には反対の立場を貫きつつ、自民の出方をうかがう構えだ。
公明、民主がブレーキをかける中、カギを握るのは維新の党の動向だ。大阪市を解体し、府主体で都市再生をめざす都構想を最優先課題とする維新は、道州制の導入など「統治機構改革」のための改憲を掲げる。最高顧問の橋下徹大阪市長らが野党時代の安倍氏に接近し、改憲を掲げる新党結成に誘ったこともあり、憲法観は重なる。
橋下氏は、今月17日に行われる大阪都構想の住民投票で賛成多数を得れば、政権の支持を得て都構想を進める考えだ。そんな維新に政権も秋波を送ってきた。改憲に慎重な公明を揺さぶる狙いもあるとみられる。
首相は1月14日、テレビ番組で都構想について「二重行政をなくし、住民自治を拡大していくという意義はある」とし、「維新の党の皆さんが憲法改正自体に積極的に取り組んでいることに敬意を表する」と語った。橋下氏は翌日、呼応するように踏み込んだ。「憲法改正は絶対に必要だ。ぜひ首相に実現してもらいたい。できることがあれば何でもする」(渡辺哲哉、池尻和生)
◇
〈自民党などが検討する憲法改正3条項〉 欧州各国などの憲法で規定している。「緊急事態条項」は戦争や災害発生時の政府や国会の権限を定める。議員の任期延長や首相の解散権の制限などを想定する。自民党憲法改正草案では個人の権利制限も盛り込んだ。「環境権」は良好な環境の中で生活を営む権利で、国や国民の環境保全の責任を規定。「財政規律条項」は、財政健全化や予算の原則を規定として書き込む。
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いわゆる法律留保原則のうち、国と国民との重要事項に関わる事柄については根拠法を定める必要があるとの見解(本質性理論)に基づき
ナントカいう党の松田公太議員が、辺野古への基地移設はその重要事項にあたるか、と質問したところ、安倍氏は重要事項にあたると発言したそうです(このことの真の意味を理解していないと思いますが)。
ちなみに駐留軍特別措置法はありますが、根拠法としては密度に欠ける(閣議へ白紙委任まで行っている)ということで、到底辺野古への基地移設の根拠法にはなりえません。
ということで、松田氏は、辺野古基地移設特別措置法を国会へ提出する予定だそうです。
これ、提出されたらどうなるかというと、
仮に可決されると、憲法95条がかかってくるので、辺野古での住民投票を行わなければなりません。
逆に辺野古基地移設特別措置法が否決されると、それは国会が辺野古基地移設を認めないと判断したということになり、その判断を内閣が無視できるのか、という問題が生じます。
この結末、どうなるのか楽しみです。
http://thepage.jp/detail/20150428-00000003-wordleaf
松田議員はリベラルな感じですが、今調べたら、カジノ議連の副会長とは。
あと、日本を元気にする会に猪木を誘ったのが意味わからんw
美味しいとこ取りしたいならそこがタイミングでしょう。それ以上続けられるとアメリカにも火の粉がかかって来かねないので
安保条約は”全土基地方式”。全国どこでも米政府が指定した場所を日本政府が暴力装置たる警察と海保ほかで住民を蹴散らしてでも米軍に差し出すことになっています。従って、条約に反する結果を招きうる法律は作れないと政府与党は言うでしょう。また、仮に作り、住民投票で基地を拒否しても、裁判所はこの法律は条約遵守義務に反するから基地拒否は違憲無効と判決を出すでしょう。ひっくり返すには、まず裁判所に安保条約を違憲と判断させねばなりませんが、統治行為論で憲法審査しないと決めてるから、極めて厳しい。選挙で勝って最高裁判事を入れ替えるには15年はかかります。
琉球の反米軍政のコザ暴動に象徴される激しい運動によって、米政府が沖縄の施政権を手放したように、結局は沖縄を中心とする抵抗運動によって結果が動くでしょう。抑えていた沖縄の反米軍感情が高まり、米軍が”これじゃあオキナワを喪ってしまう”と思えば工事を止めさせると思います。
だから、安保条約には反しません。
で、これが可決・成立すると、名護市での住民投票が不可欠になるという話だと思います。
つまり、国会と言う中央政府の意思を確かめ、しかも、地域の住民の意思も聞くことになるので、地方自治の本旨にもかなうというわけだろうと思われます。
今度は沖縄の民意に止まらず
全国民の民意を無視するということになりますから
これはもうなんというか、アレですよ。中国、北朝鮮ヨロシクという烙印が押されるわけで
ま、この国の現状にふさわしいと言えばふさわしいですが。
それより共産党どうするんですかね。沖縄与党の一員で、かつ護憲政党なら早くに提案しとくべきだったのに。しかしそもそも、松田氏の提案に乗るのかどうなのか。移設法案って安保前提にしてるわけですから、素直にいけば反対ということになりますが、そうすると住民投票で移設阻止というプランは破棄せざるを得ず、、深刻なジレンマですなぁ。大人の対応するなら賛成するべきでしょうが。折衷で棄権とか、、冷めるなあそんな態度とると。。
こうなりましたか。
その他、が、何なのか不明ですが、
それより不要とした、自民、公明、次世代はこれで、民主主義や地方自治、法治主義の意味を理解してないか、ショーもないものという認識している連中であることが明らかになりました(共産党はそもそも基地そのものに反対しているために特措法不要としているので、他の基地是認3党とは事情が異なるわけですが)。
北朝鮮の労働党と遜色ない方々というわけです。笑えますな、、
まあ、別にこれによって、何かしら発見できたわけでもなく、改めての再確認、といったところでしょうか。
(米軍の言うとおり)基地を作ろうという法律だから、安保条約には反しない。法律が出来たら、特定の一区域に対する法律だから、憲法に従って住民投票を行う、と。結果が建設否決になっても憲法は条約に優越するから問題はないor仕方ないというわけですね。基地建設法に必ずしも住民投票の規定を書き込む必要はなければ(少し疑問)、安保条約には抵触しないと。憲法上、自動的に住民投票になるので、基地建設法と切り離して住民投票についての法律を作れば良いのでしょう。自民党は海外派兵一般法とか、一般法が好きだし、国民投票法も大好きだから、住民・国民投票一般法を作らせたら良いというものです。
これが国会の俎上に上がれば、憲法と日米安保システムのどちらが現実に優越するのかということがより明瞭になって極めて有意義でしょう。
環境権がないどころか。
草案25条の2 には「国民と協力して」とあります。
だから、国は国民に協力させる義務がある、とも読めます。
これに草案102条を合わせれば、国民が環境保全義務を負う可能性が高いのではないでしょうか?