Four Season Colors

現代詩と映画、読書、ゲーム、スポーツなど雑文を掲載
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読書のよもやま(2024.11.11)

2024-11-11 | 雑文
「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変え
たのか」鈴木忠平(文春文庫)

2021年に単行本が発売された際、多くの
ノンフィクション賞を受賞して、話題となっ
ていた本書。

今回の文庫本の発売にあたり、半書下ろしの
新章が追加され、完全版ともいえるものとな
っている。

試合は強いが集客に弱いことが、時代のフレ
ーズになっていた、落合博満が監督だった頃
のドラゴンズ。

マスコミへの秘密主義と、一部の球団幹部と
のギクシャクは当時も話題であり、記者の立
場から「嫌われた」監督を追っている。

先輩記者のフィルターを介して、ほぼ新人時
代から落合監督と接しはじめた著者も、最初
は懐疑的な立場でスタートする。

しかし、直接の会話や、選手やスタッフの声
なども聞き、印象は完全に変わり、好意的に、
肯定的に落合監督を理解しようとする。

主要な選手も、スタッフも、優勝と日本一と
言う結果を得て、「監督」としての評価の多
くは肯定的である。

そして、結果を求めるが故のシビアで冷酷な
対応から、精神的な距離を置く人はいるもの
の、ここには人間的な嫌悪や否定はない。

決断と手法が理解できない、自分とは合わな
いということはあれども、では落合「監督」
が「嫌われた」事実はどこか。

リーグ連覇を成した監督が退任することが、
その事実ともいえるが、連続で8年監督をや
れば、それは勇退でも不思議はない。

無論、決断をする誰かに嫌われたから契約は
続かなかったのだろうが、そうした表面的な、
結果的な事実はさておき。

退任と連覇が確実となり、ようやく人間的な
ものが垣間見えて、なんだがハッピーエンド
みたいな終わりを迎えて。

「監督」落合は結局よく分からないが、当時
の主力選手と落合監督との関係ややりとりの
記録は一読の価値がある。

情報の少なかった落合政権のチーム内部を、
物理的に近かった記者の視点でチラ見ができ
る、そんな作品。

水月

2024-11-07 | 
ぐぶぐぶ つもる なみなみ つもる

すいげつ はよる ななまん はるか

しましま つもる あくるは よあけ

ぶぐぶぐ うかぶ みなみな うかぶ

すいげつ はよぶ ななまん はるか

あわあわ うかぶ あくぶは よあけ

読書のよもやま(2024.11.04)

2024-11-04 | 雑文
「天文学者たちの江戸時代 増補新版」嘉数
次人(ちくま文庫)

書籍で江戸時代の本を見かけて購入すること
が多い最近、文庫新刊で目に付いたので本書
も購入してみて、読み終える。

表題から、夜空に思いをはせる江戸時代の学
者を想像するも、内容は主に暦(こよみ)の
お話だった。

江戸時代に行われた数度の改暦が、誰の手に
より、どのように行われたかを、残された文
献などから追っている。

渋川春海をはじめ、麻田剛立、高橋至時、間
重富らを中心とした、西洋の知識の取入れが
難しい時代の天文学者たち。

日本史ビギナーな自分は、一人二人の名前を
聞いたことだけはある、という程度なので、
人物ものとして新鮮だった。

意図的に入門的な、ライトな内容にしている
ので、本来、簡単とはいえないであろう改暦
の深い知識は出てこない。

自分のような数学アレルギーには喜ばしいこ
となのであるが、夜空ではなく、改暦の知識
を得たい人には物足りないか。

そうであるから、読み終えて天文や改暦の具
体的な知識が増える、ということはない。

あくまでも、人物を中心に、鎖国を敷いてい
た当時の江戸時代の、地球と宇宙の捉え方や
考え方がどうであったかを書いている。

本書に出てくる天文学者たちは、お役目とし
ての学者ではなく、限りなく個人の知的好奇
心のみによって研究をしていたよう。

碁方から天文学者へ、商人から天文学者へ、
自分たちが一般に持つ江戸時代のイメージと
は違った一面ともいえる。

夜空の星々の表紙とタイトルから、宇宙の本
と思いきや、これは改暦と人物の本。

読み終えて、具体的な感想もないのだけれど、
じゃあ、途中で止めるほど退屈かといえば、
そんなこともない。

自分のようなライト層が、途中でギブアップ
しないよう手加減してくれている、そんな優
しさも感じたり、感じなかったり。